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GOD HAND  作者: ホムポム
第3章
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第41話 大好きな人

バシァァン 大きな水飛沫をあげ3人は落とされる。

暗緑色の水溜りへと。

「アサミ様!?リア様!?しっかりして下さいませ!」

マリーが全身を汚されならがらも二人を抱き起こす。


「…………。」「……ガ……あ……あ……」

アサミは眠っていた。

す~す〜と小さな可愛らしい寝息を立てて、

対してリアは意識が朦朧としていた。

着地時に頭を強く打ったのだろう。現実と夢の境界。

心地良い悪魔の誘いに必死に抗っている。

「リア様……それにこれは……(わたくし)はどうすれば……」


マリーは頭上を見上げていた。

2つに割れたサンドワーム。

その半身は生命を失う事なく、

突如現れた3人の生命を喰らいつくさんと



迫り来る巨大な大口 リアは瞬間で走馬灯を見る





ーーーーーーーーーーーー

穴倉の生活。それが私の最初の記憶。

名前なんかなかった。必要ないし他に必要な物は山程ある。


父と母は解らない。母と穴倉で生活していたが

いつの間にか母は帰らなかった。

多分殺されたんだろう。別に普通だ。


そして穴倉で生活していたが不意に穴倉に火を放たれ

逃げ出して来た所を私が人間に捕まり。

7年間という短い一生を終える。これも普通だ。

亜人に産まれた罪。天寿を全う出来る筈も無く。


人間の遊びで殺され、玩具として壊され……

それが亜人の産まれた理由なのだろう。人間の為の道具


「亜人の子供。誰か買わねぇか〜?酒が飲みてぇんだ!」

「ガキすぎんだろ!?この部隊にはマニアは居ねぇぜ」

「誰も要らねえなら俺が20ルドンで買うよ。

新しい技の試し打ちをしてみてぇ」


「アハハハ!一撃で死なねぇに30ルドンだ!」

「俺も死なねぇに50ルドン!」


顔は散々殴られ目も開けられないし。

開けたくない。気が付いたと知られたらもっと殴られる。

私に出来る事はこのまま死ぬだけ。それだけが救い。


「……オイ!隊長が来るぞ。ガキは毛布に包んどけ。」


乱雑に毛布に包まれ男が1言。

「亜人。意識が戻っても騒ぐなよ?」

手足の他に猿靴わをされ私は完全に何もできなくなった。

解るのは傷ついた獣耳で解る音だけ。

それも聴きたくない。それでも聴こえてしまう。


ザッザッ ザッザッ ……


足音は2つ 1つは全くと言っていい程聴こえなかったが

私には解る。


「隊長!お帰りなさいませ!」

部隊と呼ばれた連中が声をかける。


「……何かおかしいわね。ドグマ君。」

凛とした声。その声は私にはとても心地良く毛布の隙間から

ボンヤリと瞳を開ける。


女性に呼ばれた男は左を確認し……右を……

「…………。」目があった?気のせいだ。分る訳が無い。



真っ直ぐ私に歩み寄り。小汚い毛布を躊躇いもなく

バサッ 引っ剥がす。


「…………何よこれは?」

女性が歩いて来る。私はどうなるのだろうか?

この人さえ来なければ私はもうすぐ死ねたのに……

この二人のせいで私はまだ傷つかなければならない。


女性は手足を縛っていたロープを解くことなどしなかった。

ブチ ブチ 

摘んで力を込めることでロープを潰していた。

そして口の縛りだけは優しく丁寧に解き。

真っ直ぐな瞳で私に語りかける。


「貴女お家は?無理矢理連れて来られたの?」

「……あ……あ……」

私は女性と男達を交互に見る。

どう答えて良いのか分からない。どう答えれば。

私は傷つかずに……死ねるのだろうか?


女性は私を優しく抱きしめてくれた。

「ゴメンね。私のせいよね……貴方達!!」


女性は男達に背を向けたまま振り向かない。

私は女性の胸に埋もれていたので表情は分からない。

解るのは……ドグマと呼ばれた男だけが

女性の表情を伺う余地があった。


「あ……あの……隊長?俺達別に悪い事はしてないですよ。」

「他の部隊は皆やってますよ?なんで俺達だけが……」


思い思いの弁解を吐露する男達。

亜人を捕まえて殺そうとした。別に何も悪くない。

正しいのは男達のほうだ。それを咎める事が異常。



「……だったら別の部隊に行って死んできなさい。

貴方達が死んだら私は悲しいけど……私は貴方達を助けないわ。」


女性は死刑宣告をする。

この女性抜きで北の蛮族との戦争を生き抜けと。


他のどれだけの部隊が敗走しているのか。

どれ程の戦死者がでたのか。



しかし女性率いるこの隊だけは負傷者無しの

神がかった戦績を残していた。

その立役者は実績の無い若い女性と……30手前の男の二人。



女性は私を抱きかかえたまま

「私はこの子を家に返すから。命令違反なら

軍を辞めるわ。ドグマ君が今から隊長よ。良かったわね。」

30手前の男の肩をポンッと叩くが、

「俺は貴女に仕えている。国に仕えている訳ではない。」


そう言って私にキレイな毛布を被せ

女性の後ろを歩いて行く。


…………

一際大きなテントの中で、私は寝かされ治療を施される。

「喉は渇かない?お腹は空いてない?

傷は痛む?え〜っと……ドグマ君どうすればいいのかな?」


男達が見えなくなると女性はオロオロしながら

私を妙に心配しだした。


男が私を覗き込み……

「意識はしっかりしている。傷は薬草で十分。

口を切っているが……喋れる。人語が解るかが問題だな。」


男は淡々と現状を報告していく。

「ちょっとドグマ君!貴方なんでそんなに冷静な訳!?」

「エリス殿に鍛えて貰ったからな。この程度は怪我とは言えない。」


私は一歩も歩けない程ボロボロだったが

男性から言わせたら怪我ではないのだろう。

これが大人の人間。身体の造りが亜人と違うんだ。



「解ったわ!じゃあもうドグマ君とは組手しないから!」

「なっ!?それは困る。俺には貴女が必要だ。」


「えっ?止めてよね。私婚約者がいるんだから。」

「そう言う意味では無い。それに

……エリス殿。冗談なのか本気なのか判断しにくい。」


「フフッ」


しまった……思わず笑みが溢れてしまった。

亜人が人間を笑った。許される事では無い。


二人は私の顔を見つめて

「笑ったわね。貴方は笑った方が可愛いわよ。

女の子なんですもの!ホラ!もっと笑って!

お家の場所は覚えてる?

名前は言える?貴方じゃあ呼びにくいわ。」


「……家も…名前も…ありません。」


「……そう……」


女性はテントの入り口に立ち私に背を向け

何やら考えことをしている。


「これを噛め。味がしなくなったら吐き出せよ。

分かると思うが飲み込むなよ。」


私はコクリと頷きゆっくりと噛みしめる。

苦味が口中に広がり私を支配していく。


段々と苦味が消えた頃。男が器を差し出してくる。

これに吐き出せと言う事だろう。

恐る恐る草を……薬草を吐き出し



     「リア!!」


ピクッ 突然の大声に身体を震わせ女性に振り返る。


「ほら反応した!貴方の名前はリアよ!」

「……エリス殿……誰でも反応するだろう?」


男は当然の事を述べる。急に大声で叫ぶのだ。

反応しなければそれはどんな神経を

「あら?ドグマ君は反応しなかったじゃない。

当然よね?貴方の名前はドグマ.マグナスなんだから」


私に近寄り腰をおろし優しい、瞳で見つめ

「貴方の名前はリア……リア.カーティス。

もう誰も貴方を虐めたりしない。私がいるから。」


「……リア……。」

その言葉を発した瞬間涙が溢れてきた。


「そうよリア!私の名前はエリス!エリス.カーティス

今日から私とリアは家族よ!」


どんなに拭っても止めどなく涙が溢れる。

私は頷く事しか出来なかった。








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