氷結晶は砕けない
とある日の朝。私とエルゼさんはライブ配信をしていた。
彼女は初の配信デビューで、さっきからずっと人の文字を描いて飲み込んでいる。
緊張してるねぇ。温かい目で視聴者に返信しているエルゼを見て、あくびを1つ。
流れる動作で時計を見て、私は彼女に声をかけた。
「エルゼ!そろそろ行こうか。」
「わかったわ!」
場所を説明せずに、私達は門に向かう。
今日は初配信兼、彼女の練習日なのだ。
エルゼの能力とか構成を見るのも初めてで、ちょっとウキウキしてるよ!
:コメント:
:どこに行くの?
:前のボス配信から初めてだから楽しみ!
:新メンバーもかわいい!
:ミストちゃん、ファンサして!
ほう、私にファンサとな?良いだろうしかと見よ!
配信用のカメラに向かって、満面の笑みとピースサインを突きつけた。
エルゼも釣られてピースをしてる。かわいいね!
「満足した?」
ファンサをやめてコメント欄を覗く。
まぁ、予想通りの称賛の嵐だわ!オホホホ!!
:コメント:
:有難う御座います。家宝にいたしまする
:かわいい!かわいい!かかかっっっっk
:誰か壊れてるやついるぞ。みんなかわいい!
:美しいでございますわぁ!
褒めに褒められて調子に乗った私は、軽やかな足取りで目的地に到着した。
眼前に広がりますは、げに恐ろしき呪い山。
ゴツゴツと尖った岩が点在し、更には多くのヘビ型モンスターが住まう圧倒的不人気エリア。
「西1エリア『蛇人住まう呪山』です!楽しんでね!私達。」
「ここって不人気エリアじゃなかったかしら?」
「気にしないで!コマけぇこたぁいいんです!」
そうして私達は山に侵入する。
入った途端に、私は違和感を感じ取った。
何者かが私を睨んでいるような、漠然とした不安。恐怖心などとは違う、心がかき乱されるような不快感が私にまとわりついて離さない。
警戒しなきゃだね。
「ヴァルラプス、周囲の索敵強度を上げておいて。ツクヨミは影に潜って。」
「あいわかった。」
「了解だ」
十全に対策するため、私は彼らに指示をしておく。
私達がダウンしてもツクヨミが強制下山させてくれるから、大丈夫。
指示出しをした直後、岩の隙間から何かが姿を出す。
「シュルル………」
隙間風のような音を響かせ、姿を表したのは売っ匹の蛇だった。
細く伸びた胴体に乾ききった岩のような鱗を持つ蛇型モンスター。『ロックスネーク』。
物理耐性がマジで高いから近接職は会いたくないモンスターだね。
「エルゼ!肩慣らしみたいだよ!」
「そうね、任せて!」
新調したローブを靡かせ、彼女とその相棒が前に出る。
相棒の白い毛皮に青い瞳を持つ狼の名は『コユキ』と言うらしい。常に冬毛みたいですっごいもふもふなんだよ。ツクヨミは短毛種みたいだから感じれないもふもふ感だね。
コユキの種族は『フロストウルフ』。狼系の氷派生。高いAGIとINTを駆使した避けタンクや移動砲台の役割をこなす。魔導師のエルゼさんとはすごい相性が良い。
彼女もこの日のために装備を新調したようで、白いローブと皮鎧を着用し、腰の部分にはナイフを差し込んである。魔導師的にDEXも上げてると思うから要求値は多分大丈夫だね!
「行くわよ、コユキ。」
「ヴァフ!」
そう言うと彼女はアイテムボックスからメインウェポンを取り出した。
身の丈もある木を丁寧に削り、頂点には宝玉、下部には狼の紋様を刻んだ美しい杖。
店売りのを必死に強化して自身に適した形に『変異』させたようだ。
「『大地よ、空を満たせぬ永遠の愚者。空よ、大地に触れ得ぬ永遠の富者。双極よ、歪みし理を正せ。』『氷牢』!」
杖を出すと同時に詠唱を始め、スキルを起動。
頂点の宝玉が青白く輝き、大地を冷気で満たす。
地を這うしかできない『ロックスネーク』に回避方法は無く、そのまま凍りついた。
やるね!開始と同時にデバフを入れるなんて。
「畳み掛けるわよ、コユキ!『ビースト・ヴァイト』!」
「ヴォフ!」
指示を受けたコユキは、瞬時に疾走してロックスネークに噛み付く。
しかし硬い表皮と氷に阻まれ牙は通らない。するとコユキの牙が輝き、氷ごと表皮を噛み砕いた。
ロックスネークは粒子となって消え、解体後の素材のみ残った。
オート派なんだ、エルゼは。
「いいわ!コユキ!」
「ヴァフ!」
器用にハイタッチを交わす二人を見て、私は思った。
―――――――教えること無くね?
次回、私の大ピンチ!?




