母は強し
「あなたはその程度では無いはずです。まだまだ行きますよ」
「え!?ちょっ!?」
模擬戦を始めてから約三十分ほどで、母の動きにキレが増し始めた。
ジャブが速すぎて風圧が酷い。銃声みたいな音がしてる!?バケモンがよぉ!
今の母はいわゆる『ゾーン』に入っているので、殺意がダダ漏れである。
しかも集中力は増していくばかり。イかれてるよ、ほんとに。
正拳突きをバックラーで弾き、カウンターの突きを放つ。
「今のは良い技です。ならお返しです」
突きを避けて、母の回し蹴りが飛んでくる。
横に何歩か動いて、衝撃を減らす。あまりに速すぎて、回避はできなかった。
咄嗟の判断で衝撃を減らしてもなお、威力は凄まじく私は吹っ飛ばされた。
体勢を戻して、剣を構える。
母は踏み込んで距離を詰め、私に鉄槌打ちをぶちかます。
「痛ァァァ!!!!!」
痛っっっっっっい!!!激痛だわ!!死ぬかと思った!!
見事にクリーンヒットした。脳天がグラグラ揺れている気がする。
視界がぼやけているし、もしかしたら気絶するかも。
「これで終わりですかね。」
母が足技の準備を始めたので、私は死を悟る。
終わった―――――――
トドメとして放たれた回し蹴りで、私は意識を失った。
「クソがぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
何分経ったかわからないが、私は止め処無い激痛で目が覚めた。
口汚い言葉を叫びながら立ち上がって、周囲を見渡す。
「おはようございます、霞。元気がいいようで何よりです。」
「―――――――おはよう、お母さん。」
見られてたぜコンチクショウ!!!
起き上がった私の近くに母は椅子に座って本を読んでいた。さっきの暴言も問題なく聞こえているだろう。
元気満タンの私に向かって母は告げる。
「霞、あなたがゲームで様々な経験を得ていることは理解しました。護身術としても申し分ないです。」
「ってことは?」
「えぇ、配信を許可しましょう。しかし、勉強もおろそかにしないこと。いいですね?」
「イエスマイマザー!!!」
やったあああ!!!
これで気兼ねなくゲームができる!!最高!
急いで自室に戻ろうとすると、母に呼び止められた。
「どこに行くのですか?あなたは今日の反省を聞かなくてはなりませんよ?」
「マジか」
「マジです」
その後、私は母に5時間拘束されて反省点を聞きました。めでたしではなし。
成長の糧にはなったからいいけどさ。疲れたよ。
「ていう感じの事があったんですよねぇ。」
配信で今日のことを話していると、コメントが大量に付く。
:コメント:
:家にまず道場があることがおかしい。
:今のミストちゃんを超える母はヤバい
:ただでさえ強そうなミストちゃんが負けるとか母親何者だよ
:しかも徒手空拳の腕前は低く見積もってプロ級っていうね
あ、やっぱりおかしいんだね。あの母親。
「娘に武術を教えるので3日で道場を建ててください。」って言ったときもあったねぇ。
流石に引いたよ。ドン引きだよ、技術が進化したとはいえ3日で道場は無理でしょ。
ツクヨミを撫でながら雑談を続ける。
「このモンスターの素材で何を作りましょうかねぇ」
眼の前には、ストレス発散で狩り続けたモンスターの素材の山ができていた。
北1エリアの『初心の大草原』のモンスター約30体と、西1エリアの『蛇人唄う山』のモンスター3体、南1エリアの『針乱れ咲く浜』のモンスター20体の素材の山ができている。
我ながら狩りすぎたよねぇ。
本日狩猟した新鮮なモンスターはこちらです。
『ホーンラビット』15体、『ミニエアバード』10体、『フットラット』5体。これが『初心の大草原』。
『パラライズスネーク』が1体、『カースヴァイパー』が1体、『ポイズンスネーク』が1体。西1エリアの分。
最後が『ニードルラット』が5体、『レイピアホーク』が1体、『ファングウルフ』が4体。『ポイズンニードルスネーク』が10体。これが内訳かな。
取得できた素材はこんな感じ。
ホーンラビットは肉、毛皮、角。ミニエアバードは、羽毛、風魔石、嘴、肉。フットラットは前歯、毛皮、肉。パラライズスネークは麻痺袋、肉、皮、牙、麻痺魔石。カースヴァイパーは呪詛袋、毒牙、皮、肉。
ポイズンスネークは肉、皮、毒袋、心臓。ニードルラットは針、毛皮、魔石、肉。
レイピアホークが風切羽、羽毛、上級魔石、嘴、爪、肉。ファングウルフが肉、牙、爪、眼球。
ポイズンニードルスネークは肉、皮、魔石、尾毒針、毒牙。これで全部。
結構取れたね!
次は装備づくりかな。




