twilight
「ハァ………ハァ………!」
深夜の住宅街を少年が全力疾走していた。
その静けさとは似合わない必死の形相だ。
まるで何かこの世のものとは思えないモノに襲われているかのようだ。
いや──襲われていた。
その姿は確認できないが、間違いなくこの世のモノではない『何か』に少年は襲われているのだ。
背後に迫る闇はまるで彼を呑み込もうとしているかに見える。
もうどれくらい走っているのだろうか。
足の裏は擦り切れているのか痛みで感覚が無くなりかけている。体力は底を尽きかけていて一度でも止まれば二度と動くことが出来なくなるだろう。
まだ死にたくない。ここで死ぬわけにはいかない。
確かに今の平凡な日常には退屈していたところだが、こんなことは求めていない。
まだやりたいことがある。彼女だってできたことない。高校を卒業して、大学に進学して、普通の企業に就職して、結婚もして、子供もできて──とにかくまだまだ生きていたい。
「ハァ………クソっ………!!」
そんな決意とは裏腹に足は止まってしまった。体力の限界だ。
来た道を振り返る。──どうやらまだ追いついて無いようだった。
落ち着いて周囲を見渡すと、どうやら自分の家の近くまで来ていたようだ。
よかった、助かった──呼吸を整え顔を上げたその瞬間
「グルァァァァァァァァァァァ!!!!!!」
突如頭上から『何か』が落ちてきた。
街灯に照らされ現れたその姿は醜く人型ではあるが人とは似ても似つかぬ姿をしていた。
50メートルほど離れているというのに鼻が曲がるような異臭を放っている。
骸骨のような頭部、蛇のような牙、蝙蝠のような翼、鷲のような爪、蜥蜴のような尻尾──
あまりにも非現実的な存在が目の前にいた。
「なんなんだよ、コイツは………っ。」
この現状があまりにも非現実すぎて、夢かと疑いたくなるほどだった。
「はい夢でした………にはならいよな。」
その虚ろな目は間違いなく自分を見据えていた。
「グルァァァァァァァァァァァ!!!!」
突如として『何か』が襲い掛かってきた。
逃げる体力もない。もはや祈ることしかできない状況だった。
誰か、助けてくれ──
そんな起こるはずもない奇跡に淡い期待を込めながら少年は呟く。
「どうしてこんな事に………。」
彼女の言うことを素直に聞いていればこんな事にはならなかったかもしれない。
『何か』はそぐそこまでに迫っていた。
そして──




