表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミリのシンデレラストーリー   作者: ゆいき
旅へ
38/277

ユセとの再会

私は朝の稽古に早速サクラを連れて行った。

早朝なら鎖を外して自由に飛ばせるし、誰も驚かせることもない。

ランニングや基礎運動をしている間、サクラは悠々と空を飛んでいた。


「次。短剣を構えろ」

「は、はい…!!」


すでに体力を殆ど使い果たし、私はへろへろと短剣を引き抜いた。

ここからは短剣の稽古だ。

私の手のマメはこれで作り上げられている。


私は呼吸を整え、短剣を構えた。

レイは自分の長剣を引き抜くと鋭く言った。


「来いっ」

「はい!!」


レイの特訓はとにかく実践的だった。

私にひたすら攻めさせてびしばし甘いところを指摘してくる。

時にはレイが攻撃に転じてくるので、今度は私がそれを必死に防がなければならなかった。

今日も死に物狂いで短剣を扱っていると、突然異変が起きた。


「うっ…」

「れ、レイ!?」


レイが体勢を崩したので私は慌てて突き出したそ短剣を引っ込めた。


「あ、さ、サクラ!!」


レイに突撃していたのはサクラだった。

どうやら私がレイに襲われているとでも勘違いしたのだろう。


「や、やめなさいサクラ!!これは特訓で、別に私がいじめられてるわけじゃないのよ!!」


わたわたとレイに襲いかかるサクラを捕まえようとしたが、その前にサクラの首はレイにがしりと掴まれた。


「このトカゲ、俺に牙を剥くとはいい度胸じゃないか」


レイは剣を投げ捨てると反対の手でサクラの口を捕まえ間近で睨みつけた。


「いいかトカゲ。俺はお前より上だ。よく覚えておかないとそのうち丸焼きにして骨まで食い尽くすからな」


暴れていたサクラはその迫力にきゅうと項垂れると大人しくなった。


さ、さすがはレイ。

これぞまさに鬼躾。

…恐い。


とりあえず朝の稽古を終えると、私はサクラの首輪に鎖を付け直した。

鎖の端は私の左腕につけた小手に繋ぐ。

サクラは私の左肩に器用に留まった。

屋敷に向けてレイと歩いていると、なにやら門の外が騒がしくなっていた。


「何だか、人が沢山いる気配がするんだけど…」


私に言われるまでもなくレイはすぐにその理由に気付いた。


「あれは…セスハ騎士団だ」

「セスハ騎士団…?」


つい最近聞いたような…。

レイは痛烈な舌打ちをした。


「どうやらこの国巡りに最悪の護衛があてがわれたみたいだな。どうせリヤ・カリドが呼び寄せたのだろうが…」


あ、そうだ!!

ヤドカリだ!!


私は偵察に行くレイにひっついて、門の外を見に行った。

こっそりと壁の隙間から覗いたが、目の前にいるのはごく普通の整然とした騎士団だ。


「そんなに酷いようには見えないけど…」

「当たり前だ。あれでも実力派揃いの国内トップクラスの騎士団だからな」

「ふぅん…」


何だか拍子抜けして眺めていると、レイが小さな声をこぼした。


「驚いたな。ユセ様だ」

「え!?」


私はレイが顎でしゃくった先を覗き込んだ。

そこには確かにユセがいた。

レイは眉を寄せた。


「籍は外していないとは聞いていたが…。まさかセスハ騎士団に戻られたのか」

「何か都合が悪いの?」

「元々リヤ・カリドは自分より王族に血が濃いユセ様が気に入らないらしい。しかもユセ様はくだらない血筋主義でも媚びを売るタイプでもない。上手くはいかないだろうな」

「え…」


レイは私をちらりと見た。


「先に言っておくが、これはユセ様の問題だ。目の前で何を見てもミリは決して手を出すなよ」

「でも…!!」

「うるさい。お前が動けばややこしくなるだけだ」

「うぅ…」


何となく反論できない。

私はむっつりと黙り込むとレイに続いて屋敷に入った。

オルフェ王子率いる行列は、また最初のように膨れ上がった。

しかも今度は騎士団に取り囲まれて何だか物々しい雰囲気だ。


私とレイは王子からさらに引き離されて列の中頃を歩くことになった。


「本来なら反時計回りに内陸の国を巡るのが合理的だが、今回は逆に進む」


レイが歩きながら説明してくれる。

私は行列を眺めながらふんふんと聞いていた。


「まずはベルク国に足を運ぶ必要があるからだ」

「シウレ姫に、会いに行くんだね」

「その通りだ。まだあの国は喪に服しているだろうから、王子は礼儀を持って姫に手を合わせに行く義務がある」

「うん…」


礼儀、礼儀、礼儀…。

王子もそりゃ疲れるだろうな。

私は肩に乗ったままのサクラを撫でながら列に合わせて歩いた。


近くにいる騎士たちはサクラが気になるようでちらちらとこちらを見てくる。

まぁ、そりゃドラゴンなんて滅多に見ないもんな。

居心地は悪かったが私は出来るだけ周りはかぼちゃだと思いながら無視をしていた。

地続きの小国を二つ横断すると、もうそこはベルク国だ。

まぁ小さいと言っても国は国。

ベルク国にたどり着く頃には辺りはすっかり夜を迎えていた。


「つ…疲れたぁ。ここがベルク国?何だかあんまりスアリザと変わらない雰囲気だね」

「明るくなれば違いはよく分かる」


王子御一行は城に近い一等地に通されると、姫たちはそれぞれ目ぼしい貴族の屋敷に通された。

騎士団や結界師、その他の私たちは城下町まで下げられそれぞれ当てがわれた宿に案内された。


「わ、私たちもここなの?」


古い宿に通され、私は思わずレイを振り返った。


「国外では王子の庇護だけで側にはいられない。国際問題まで絡む高度な社交の場では俺たちは邪魔なだけだ」

「ひ、ひえぇ…」


そりゃ邪魔だわ。

むしろこっちの方が気は楽だ。

レイと同じ部屋にされているのは少し気になるところだが、考えたら後宮でもずっと一緒にいたんだからまぁいいか。

私はサクラの鎖を外そうとしたが、レイはそれを厳しく諌めてきた。


「そのトカゲはそこの柱にでもつないでおけ」

「えぇ…?」

「お前、他国で早速問題を起こしたいのか」

「うぅ…はい…」


ごめんねサクラ。

外国には外国でのやり方があるのよ。

私は謝りながらサクラを柱につなぎ、枕をベッドから持ってくるとその下に置いた。


寝るための支度をしていると、こんこんと控えめなノックが聞こえた。

私は思わずレイを見たが、レイは落ち着いて扉の外に声をかけた。


「どちら様か。人を訪ねるには適切な時間ではないが」

「すみません。僕はセスハ騎士団所属のユセというもので…」


その名と声に、私はすぐに反応した。

レイが止めるのも聞かずに扉に手を伸ばすと音を立てて開いた。


「ユセ!!」


飛び出てきた私にユセは驚いた顔をしたが、すぐに笑顔を見せた。


「フィズ…!!」

「無事で良かった!!」

「それはこっちの台詞です。無事で…良かった」


変わらぬ癒される笑顔。

私は何だか泣きそうになってユセにしがみついた。


「ふ、フィズ…?」

「ユセ…。本当にユセだぁ…」


ユセが真っ赤になって狼狽えていると、レイが後ろから私を引き離した。


「フィズ、いい加減にしろ。ユセ様、失礼致しました」

「いえ…」


ユセはレイにきっちりと頭を下げた。


「こんな時間に大変失礼致しました。気付いていながらも昼間は中々寄れなかったものですから」

「…勝手な行動はつけ込まれる隙になります。見咎められる前にお戻りください」

「はい」


ユセは素直に頷くと私に向き直りにっこりと微笑みを浮かべた。


「それでは僕は戻ります」

「あ、ユセ…」

「おやすみなさい」


私とレイに挨拶を残して、ユセは扉を閉めて行ってしまった。


「せっかくわざわざ来てくれたのに…。少しくらい話しさせてくれてもいいじゃない」


さっさと追い出したことに文句を言ったが、レイはぷいと顔を背けて先に寝床に入ってしまった。


明日からは何日もかけてベルク国を横断することになる。

私は明かりを消すとレイとは離された場所にある方のベッドへ潜り込み、今日も疲れた体を静かに休めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ