八十七話 会話M
ど、どうも~お久しぶりです~。
はい。一月半も開けてしまいました木崎咲です。
大変遅くなってしまい申し訳ございません。
ヤバイですね本当に不定期になってます。初めの頃想定している流れからも大分変わって来ています。もはや自分の作品に振り回されてる気が……。
これからも不定期になりそうですが細々と、完結まで頑張ってみせます!
1/9 前書き修正しました。
簡潔までってなんやねん。と、突っ込んでしまいました。
弟がリリィ達と話している間、ミカもまたアクリア達と自己紹介を兼ねた会話を行っていた。
会話と言っても現在は敵対している間柄であり、会話に乗ってくれているのは自宅を襲ったアクリアと言う女性と、何処かで見た覚えのあるクロークと言う青年の二人だけ。
この場にはミカ、アクリア、クロークの三人以外にも女性が二人に男が一人、計三人の人間が居る。ミカを除いた彼等五人が弟のパーティーメンバーといったところだろう。
「模擬戦を行う?」
そんな中、ミカの言葉が意外だったのか、アクリアが疑問の声を上げる。彼の提案が意外だったのだろう。彼女は何故わざわざそんな事を?と言いたげな眼でミカを見返す。
「一応、今回のこちらの目的はあなた方の足止めですから。ただ待つのも暇でしょうし、何よりただ話しただけで解散してはそちらの外聞も悪いでしょう?一応これ、戦争なんでしょうし」
ミカは彼女の視線を受けてそう答える。
だが、彼女が聴きたいのはそういう事ではなかった。
「そうではなく……ええっと……」
「魔王の側近である『幻魔のククル』が居る時点で、俺達の勝ち目はゼロに近い。なのに何故わざわざ『誰も殺さない』なんつう面倒なルールを付ける?足止めをするならとっとと俺達を殺せばいいだけだろう?」
自身のパーティーメンバーを気にして口ごもってしまったアクリアに代わってクロークがミカへと問いかける。
彼等にとって、ミカの問いかけは命の安全が保証されているという時点で乗らない訳にはいかない物なのだが、その上、強者との稽古を付けてもらえると来た。
はっきり言って、不気味でしかなかった。
「え?ククルさんってそんなに強い人だったんですね。一度の戦闘じゃあ分からないものですね」
そんな視線を向けられていることにも気付かず、ミカはそんな事を呟く。
その内容にククルの事を知っている様子のクロークと、一応ここは戦場だというのに何故かメイド服に身を包んでいる女性が化物を見るような眼でミカを見る。
ククルとの戦闘で生き残るということは人間にとってそれほどの事なのだ。
「…でも、受けてもらわないと困ります。弟はこの模擬戦受けますし、今からは『こっち』で得た力の競い合いですから。あ、別に弟の味方じゃないんなら構いませんよ?どうせそういう人は弟がこの模擬戦から弾きますから」
「……何故」
「ん?」
と、模擬戦の中身について話していたミカに、これまで一言も話さなかった女性が声を上げる。
ミカは彼女に見覚えがあった。が、顔を合わせるなり何故か責めるような視線で睨んできたので気づかない振りをしていた。
「何故、貴方が魔族側に立っているのですか!」
女性―――フェルディナが声を荒げてミカに問う。
自身の力を家族に知らせるために出場したラルバの武闘大会。その決勝で競った相手。そして、その町でミカと共に魔族となってしまった知人相手に共闘した間柄。
追い詰められたときに助けてくれた相手 (フェルディナ視点)であり、精神的に立ち上がれなくなってしまった時に叱咤してくれた恩人。
そんな人物が、当たり前のように魔族側に立っていた。
裏切られた気分だった。
「私は貴方に感謝をしていました。あの時貴方が、ただ現実から逃げるだけの私に時間を作ってくれたお陰で、現実に突き当たっても歩き続ける事ができました」
結局、あの時にダナルから見せられた映像―――家族の死は事実だった。それを実際に確認したフェルディナはその場で泣き崩れた。
涙を枯らすほどに泣いた。
けれどそれは、その日だけの事だった。
翌日には事実を受け入れ、前を向いていたという。
それも、魔族への復讐等という暗い理由ではなく、自身と同じような目に合う人が少しでも減るようにと目標を掲げて。
そう思うことができたのは、映像を見ただけで諦め失意に居た自身を歩かせてくれたお陰だと、受け止めるだけの時間の余裕を作ってくれたお陰だと彼女は思っていた。
それなのに、自身を励ましてくれたその彼が、当たり前のように魔族側に立っている。
「貴方にとってあの時の戦いは茶番だったのですか!」
彼女は口にした通り、ミカに感謝をしていた。もう一度会ったら、今度は一緒に人々を守るために戦おうと誘うつもりですらあったのだ。
「えっと、質問が多いので順に答えていきますね?」
ヒステリック気味に叫ぶ女性に対して、ミカは一瞬面倒そうな表情を浮かべる。正直、貴女がどう思っていようが知ったこっちゃないというのがミカの本音だ。
だが、彼女が言った内容で例外を除いた面々からも『何故?』という視線を向けられてしまう。
唯一の例外であるアクリアは程度事情を察することができたのだが、こちらもまた事情を説明すべきという視線を向けてきている。
なのでミカは『面倒だ』という思いを困ったような笑みで隠し、説明を始めた。
「先ず、自分が魔族側にいる理由ですが、まぁ、こっちに来て最初に遭遇した場面が人間三人に少女が追い詰められている所だったんですよ」
「やはり……。それで、助けた少女が魔族だった訳ですね?」
「そうです。だから自分は魔族側に居ます」
ミカは異世界がどうこうという事は一切省いて簡易に説明する。
真っ先に反応したのは事情を予測していたアクリアだ。ここのメンバーの中で唯一ミカがこの世界の者ではないことを知っている人物。
だからこそ初めて遭遇した魔族を助けたという行為に疑問を持たなかった。
「はぁ?魔族を助けただぁ?」
「何故その様な事を?魔族は私達人間の敵でしょう?」
だが、それは彼女がミカの事情を知っていたからだ。
この世界の常識であれば彼等の様にミカの行動そのものが理解できない。名も知らない大剣を背負ったゴツイ男と、メイドの二人はその常識を持ってミカの行動を責めるような声を上げる。
「……事情があるの。彼だけじゃないわ。彼の弟でもあるアキラも魔族の事を知らなかったの」
彼等にとっての当然の疑問に答える様子のなかったミカに代わってアクリアが軽く説明する。
「はぁ?魔族の事を知らない?んなわけねぇだろ何言ってんだ?」
「だから、事情があるんです」
「―――で、次ですが」
明らかに納得していないようだが、そこまで付き合うつもりのないミカは無理矢理話を進める。
「何か自分のお陰で家族の死を乗り越えた~みたいなことを言っていましたが、それは貴女が精神的に強かっただけです。自分は関係ありません。共闘だってあれの攻撃対象にリリィが入っていたから撃退しただけです」
「っ!待て、最初に会った少女が、魔族だったと言ったな?初めて会った時、貴方の側にいたのはリリィという少女一人。なら彼女は……」
「そ。魔族の少女。今もあそこに居ますよ。髪と肌の色が変わってる位で他は同じ、あ、顔の傷も無いですが変化はその程度なのでわかると思いますよ?」
フェルディナはミカの言葉を聞いて、初めは『自身にとってはあの時の言葉が支えになったのだ』と反論しようと思っていたのだが、リリィの正体に気付いたことでその事が頭から転がり落ちてしまう。
口喧嘩もしていたが、一度は共闘し、憎からず思っていた相手が魔族だった事が相当にショックだった。
そんなフェルディナの様子を一切気にすることなくミカは軽く振り返り、当時のリリィとの違いを列挙し説明する。
彼の視線の先では件のリリィがククルの後ろに隠れて弟の様子を伺っているのが見えた。
「で、あとは……茶番がどうとかでしたね。えっと、要するに魔族側なのに魔族と戦ってたのがおかしいって認識でいいですか?」
「っ。あ、あぁ。そうだ」
リリィが魔族だったことのショックから立ち直れていないフェルディナはそう頷くことしかできなかった。
「これは自分も後から知ったんですが、派閥みたいなのがあったみたいですね。権力争いみたいな物があって魔王の座を奪おうとしていた派閥の魔族があの時襲ってきた奴ららしいです。なのであの魔族と敵対していたのは演技でもなんでもありません」
「……おい待て、まさか」
「彼女は討伐に失敗した『魔王の娘』!?」
ミカの言葉に反応したのは質問をしていたフェルディナではなく、クロークとメイドの二人だった。
『攻撃対象にリリィが入っていた』『魔王の座を狙った魔族』この二つの情報にそれぞれが持っていた情報を合わせて二人はリリィの立場を推測したようだ。
だが、ミカはそれに答えない。ただ、ニコリと笑うのみだった。
「さて、勘違いの訂正が終わったところで話を戻します。と言ってもこちらからはもうないですね。模擬戦を行いますっていうのを知らせに来ただけですから。できれば弟の事を聞いてみたかったんですが……」
そこまで言ってミカは顔だけ振り返る。
もう話は終わったらしく弟がこちらに向かって歩いてきていた。こちらの事を考えてゆっくりとした足取りでだが、いろいろと聞く余裕は無いだろう。
「時間切れみたいです。まぁ、勘違いを訂正できただけで良しとしますかね」
「待ってください」
弟のパーティーに背を向けたミカをアクリアが呼ぶ。
が、ミカはそれに反応することもなく歩き出した。
「貴方は、魔族側で不自由無いですか?」
その背に向けて尚もアクリアは語りかける。
「私は貴方達を巻き込んでしまいました。だから、私は貴方達の幸福に貢献する義務があります」
ミカの足が止まった。
同時に奥にいる弟の足も止まっているのがミカには見える。
ミカが視界を遮る形になっているためアクリアはそれに気づかず続ける。
「家族と離れ、辛く悲しいでしょう。それでも、わずかだとしても、幸福と呼べるものを、この世界で得ることはできていますか?」
彼女の問いにミカが振り返る。
「っ」
アクリアは振り返った彼を見て気圧された。
彼の瞳には感情が感じられなかった。
それでも彼女は問いかけを止めない。巻き込んでしまった責任感から聞かなければならないと踏み止まる。
「得られているのであれば構いません。私も少しは気が楽になると思います。けれどもし、わずかな幸福も得られていないのでしたら―――」
「ねぇ」
アクリアの言葉をミカが途中で遮る。
彼の声は彼自身が驚くほどに冷めていた。
「幸福の定義って何?」
「……え?」
「幸福かどうかをどうやって判断するの?」
「んなもん『自分が幸せを感じるかどうか』だろ?他人が定義できるもんじゃねぇ。幸せだと思ったならそいつは幸福だ」
予想もしていなかったミカの問いかけに固まってしまったアクリアに変わってクロークが答える。
「そうですか。なら大丈夫ですよアクリアさん―――」
その内容を聞き、理解したミカは安心させるよう優しい笑みを彼女へと向け言う。その表情と少し弾んだ明るい声音にアクリアは肩の荷が降りたような、少しホッとした様子を見せ―――
「―――弟以外の家族が死んでから『幸せ』を感じた事は一度もありませんから」
「……ぇ?」
―――その表情とは裏腹な内容が理解できなかった。
「こちらに来る来ないは関係ありませんので、気にする必要は無いですよ?」
ミカは優しい笑みを浮かべたまま、明るい声で言う。
今の会話は笑うところでは無いはずだ。明るい口調で『家族が死んだ』とは普通言わないはずだ。
声音、表情と話の内容が噛み合っていない。感情がちぐはぐで、どこか狂っている。
「……」
アクリアは彼の言葉に答えることができなかった。ただ呆然と見返す事しかできなかった。
少し待って返答が無い事を察したミカは再度歩き、近くで待っていた弟とそれぞれのメンバーの感想や今から行う集団戦の合図等を楽しそうに話し出す。
そのミカの笑みがアクリアにはどうしようもなく不気味に映っていた。
今回の会話A&Mはミカの性格やら神経やらの異常を知らせるような回です。
何度目か分かりませんがまた言わせていただきます。
私は何故ミカをこのような性格にしたのか!書きにくいわ!
愚痴に付き合っていただきありがとうございます。
次話はまた戦闘です。描写、頑張ります!




