八十三話 部隊
皆々様。お久しぶりでございます木崎咲です。
一月近くも開けてしまい申し訳ございませんです。
まだまだ細々と頑張りますです。完走までさせたいです。
いや、させて見せます!読んでくださる方が少なかろうと!
作者の決意みたいなものでした。
前回訪れた時とは違い、全員で戦闘を行う事はなかった。
聞けば、戦闘方法は魔王の気分によって変わるらしい。その戦闘方によっては今回のように数人だけしか闘わないということもあるのだと、単眼の魔族は残念そうに宣った。
何故残念がるのか、ミカには全く理解できなかった。
先ほどの戦闘で部屋があまり散らからなかった為、宮仕隊の片付けも三分と掛からずに終了し、その中に混じっていたタマモを残して彼等彼女等は部屋を後にする。
前回と違い、今回戦闘を行ったのはミカ・黒鬼のロウ・獣種のリーダーの三人だけだったため今回の話は結構な大人数で聞くことになった。
いや、その気になれば魔王が間引くこともできたのだろうが、今回はそれをしなかったのだ。
現在はある程度隊ごとで纏まっているようだが、ミカは隊に入っていないので自然と部屋の隅に追いやられる。
タマモと、何故かククルも同じ所に固まった。
理由を尋ねたかったが、現在の誰も口を開かない静かな空気の中で尋ねる勇気をミカは持ち合わせていない。
なので彼は静かに、周りに習って玉座に座っている魔王の方へと視線を向ける。
玉座の横に二人女性が居るのは気になったが、声に出すようなことはしない。
「前もって人間が戦力を集めていると話したが、予想より早く集まっている。我等の領土に近々攻めてくるだろう。よって、こちらからも戦力を送る」
魔王の言葉を聞いて、周りから嬉しそうな雰囲気が流れたことにミカはちょっと引く。
「今回の主戦力は鬼兵隊・獣種隊が担ってもらう」
「やはりか」
「しゃぁ!」
先ほどミカと戦っていたロウと獣種のリーダーが返事をする。
彼等はミカの技を受けて一分と掛からずに立ち上がっていた。
そして、三分後には普通に全快していたのだ。理不尽な存在だとミカは思う。
「隊の管理、指揮は塒隊。上手くやれ」
「承った」
返事をしたのは蛇女の魔族―――ジャーダだ。
彼女はざっくりしすぎな王の命令を粛々と引き受ける。特に喜んだり、嫌がったりすることもなかった。
まるで、最初からやるべき事を聞いていたかのような態度だとミカは思う。
「諜報部隊は一部隊のみ出撃だ。戦闘を行う必要はない。戦場の監視・情報収集に徹しろ」
「りょ~かいニャ!」
と、明るく返事をしたのは、その語尾から予想が着く小柄な猫の獣種だ。
外見は猫耳を生やした可愛くあざとい白猫少女と言った所だろう。王の命令を受けてやる気を出しているのか、彼女の四つに分かれている尻尾がそれぞれピン!と上を向いている。
何故獣種は隊二つもリーダーを担って居るのだろうと思ったミカだが、獣種のリーダーの周りに居るのが獣種だけなのに対して、彼女の周りに集まっている種族はどれもバラバラだった事から理由に予想がついた。
諜報部隊というのは種族混成の部隊なのだろう。そして、魔族は実力を重視する。
あの中で最も優れていたのがたまたま獣種である彼女だった、というだけのようだ。人間も魔族も見た目で強さは測れないというのは共通らしい。
「グラディウス。エルフの指示は任せる」
「仰せの通りに」
かなり信用されていることが分かる魔王の指示にミカには見覚えのないエルフが答える。
名前から彼がミカ達をこの城に入れてくれた存在だということは分かる。だが、やはり彼に見覚えはない。
名前も顔も直接対面して知っているはずなのに顔・体格・種族どれもが記憶に当てはまらない。同名の別人としか思えない。
やはり彼の認識操作は厄介だと常々思う。殺したとしてもそれが本当にグラディウスなのかミカには分からないのだから。
「残りは各々の仕事に励め。以上。出撃は明日だ支度をせよ」
魔王の言葉と共に選ばれた者は嬉しそうに、選ばれなかったものは悔しそうにして部屋を出ていく。
もちろん、嬉しそうにしているのは戦場に行く者達だ。三つ眼の魔族も残念そうにしていたのは意外だった。
初めて見たときは戦いをあまり好んでいなさそうだと思っていたのだが、そこはやはり魔族といったところだろう。
と、そんなことを思っている間に魔王達三人、ミカ達三人の計六人を除いた全魔族が部屋を後にする。
扉まで閉まったのを確認したミカは部屋の真ん中、玉座の前の階段前まで移動し、魔王を見上げて言った。
「で?弟、アキラの情報は?」
ミカにしては珍しい、不機嫌を隠しもしない声と態度だ。今回彼は弟の情報が得られるからと先ほどの戦闘を戦いきった。
だが、先ほどの集まりでその話題は一切無かった。
ただ、実力を見たいが為に嘘を言われたのではないかと疑い始めていた。
「先ほどの戦闘。何故、魔法を扱わなかった?」
魔王はそんなミカの態度など何処吹く風と言わんばかりに問いを投げる。ミカの問いは完全にスルーしていた。
「講師が使うのは危険だ、と言われたからです」
「ククルから危険域は既に測れたと聞いている。その範囲内であればお前は魔法を扱えた筈だ。何故、魔法を扱わなかった?実力を隠すためか?」
何故そんなことを話さなければならないのか、とミカは思うが、相手は例え戦闘狂であっても王だ。その問いには答えなければならないと思う程度の常識はある。
いや、この世界でそれが常識なのかは分からないが、ミカは常識だと思っている行動を取る。
「確かに、限定的ではありますが魔法を扱う許可は貰っています。あぁ、先ほどのが嘘というわけでもありません。言われていたのも本当です。できるだけ使うな、とも。ですが、先ほどの戦闘で手を抜いていた訳ではありません」
ミカは既に魔法の使用を条件付きで行っていいとククルから言われていた。理由は魔王が言ったようにククルがミカの危険域を理解した為だ。
魔法の使用条件の一つはククルが見ている事となっている。ミカ自身が限界を理解するまでは彼女の視界内でならば使用していいとのことだ。
先ほどの戦闘では彼女も観客の中に居た。その為、ミカはあの場で魔法を扱っても問題はなかった。
だが、ミカは魔法を使用しなかった。それを不審に思ったのだろう。
「例えばですが、魔王様。今まで剣一本で戦っていた者が剣を二本持って手数を増やしただけで強くなると思いますか?」
「なるほど。道理だな」
我ながら良い例えだったのでは?と自画自賛するミカ。
それに同意するように魔王も頷く。ミカには見えていなかったが、タマモですら納得したような表情を浮かべていた。
剣一本で戦っていた者がもう一本の武器を手にして二刀流になったとしてもそれを扱えるかどうかは別だ。
これをミカに当てはめると、既に持っていた武器が神月流だったり裏・神月流だったり、本人はあまり認めないがベルン流だったりとなり、新たな武器は魔法となる。
今までの戦闘では、それこそ二刀流で扱っていたではないか、と思われるかもしれないが、そもそも神月流とは相手に囲まれてから真価を発揮する武術だ。
ミカがこの世界の戦闘で複数人に囲まれた経験は三回ほど。リリィを助けたときの三人組、武党大会予選、人間最前線だった街での戦闘の三回だ。
うち二つは魔法について詳しく知る前、残りの一つも本命とはほぼ一体一のような状況だった。
真価を発揮できない不完全な戦法だったからこそ魔法の入る余地があったのだ。
もちろん、今後神月流に魔法を入れる事が不可能というわけではない。
三回目の本命前の戦闘でそれは確認した。上手く扱えば神月流に火力を加える事ができる事も分かった。
が、上手く扱うためには魔法をより詳しく理解し、少なくとも魔法に集中する必要もなく発動できるレベルにならなければならないだろう。
流石のミカも魔法を知って一月弱では荷が重い。
「理解したからといって、先ほどの戦闘が見るに耐えん物であったのは変わらんがな」
「……結構頑張ったんですが」
「貴様の戦法が気にくわん」
「私も。あの戦法は見ていて気分が良くないわ」
と、魔王の言葉に背後から同意する声が聴こえた。
振り返るまでもなく声の主は分かる。ククルだ。
「はぁ。そうですか」
ミカとしてはそう言うしかない。
気にくわないと言われたからといって戦法を変えるつもりはないのだ。変えてしばらくは確実に弱くなってしまうから。
他の戦法を極めれば神月流より強くなれる戦法等、いくらでもあるだろう。
だが、ミカは既に数年かけて神月流の副将になるくらいの実力を身につけているのだ。
『慣れ』というのは恐ろしく直しづらい。
既に慣れている神月流から別のものに変えるためにはそれ以上の期間をかけて体に慣らす必要が出てしまう。
今のミカにそんな余裕はない。
「もう先ほどの話は良いでしょう?それよりも、弟の情報を教えていただきたいのですが」
ミカの解答で間ができた為、これ幸いと魔王に尋ねる。
「人間が戦力を集めていると言ったが、その中にベルン流を扱う剣士が居るとの報告を得た」
「この戦争に参加させてもらいます」
魔王の言葉にミカは何の躊躇いもなくそう言いきった。
タマモが驚いたような気がしたが、彼は全く意に介さない。
弟が居るなら行く。ミカにとっては当然の行動だ。
「戦争ではない。我々にとってこれは演習にすぎん」
「別にどうでも良いですよ呼び方なんて。参加、させるために呼んだんですよね?それとも、弟を連れてくるからここで待て、と無駄な警告でもするつもりですか?それなら言わなければ良いだけですよね?」
「……まぁいい。お前を呼んだのは戦場に行って貰うためだ」
「会いたいなら戦争に貢献しろ、ということですね。それは構いませんが―――」
「いや。向こうでジャーダの指示する場所で待て」
「は?」
「既に話は通してある。ベルン流の使い手はお前の下に行かせるように、とな」
ミカの見立ては間違っていなかったようで、ジャーダは事前に話を聞いていたようだ。
ミカにとって都合の良い話。
「……それを行う魔族側の利点は?」
だからこそ、簡単には信じられない。裏があるのだろうと疑う。
「ベルン流を扱う者はパーティーで行動している。その一人一人が曲者揃いでな。そいつらが居なくなるだけで戦力の一割は削れるだろう」
「……それってつまり、その曲者を私に相手しろと言っているんですよね?」
「そうだ。これは取引だ。お前はこの方が良いのだろう?」
ミカが問いかけると魔王は笑ってそう宣う。
誰が話したのかはすぐにわかった。
「ご息女様と仲が宜しいようで何よりです」
ミカも笑みを作って言い返す。が、魔王の表情は全く動かない。
戦闘狂であっても流石は王といったところだろう。
魔王はただ笑ってミカを見続けている。断らない事が分かっているとでも言いたげに。
「指示が曖昧すぎます。具体的にはどの程度の時間を足止めすれば良いのですか?」
「決着が付くまでだ」
なのでミカは些細な抵抗として言い返したのだが、普通に対応された。
高々十数の子供が王に口で勝てるわけなど無かったのだ。
「……わかりました。元々断るつもりもありません。確認ですが、指示された場所に来た者を足止めすれば良いんですね?」
「そうだ。指定した者達が二手に別れたとしても、来た者だけでよい」
ミカの言外に示した言葉までを含めて魔王が肯定する。
「……それで弟が来なかったら無意味なんですが」
だが、それだけでは不足だ。
ミカにとって弟のパーティーメンバー等どうでもいい存在。いや、もし弟を傷付けていれば殺すべき存在に変わるのだが。
どうあれ、弟と合流できなければ待っている意味もない。
「其奴は強制だ。どんな手を使ってでも連れて行けと命じておいた」
「殺すのは無しです。『神月流が待ってる』と言うよう指示してください。それで少なくとも弟は来ますから。必ず」
「伝えておこう」
今のミカにできることは少ない。このような告げ口をするのが限界だ。
だが、今回はこれで十分。この一言が弟に伝われば確実に来るだろう。
ミカはそう思い部屋から出るために反転し―――
「では、ミカリーダー率いる虚月隊のメンバー紹介といきましょう」
「……は?」
両腕を広げ、笑顔でミカを通せんぼする彼女の行動とその口から発せられた言葉にミカは間の抜けた声をあげることしかできなかった。
魔王の側に控えていた二人はククルの後任です。一人が、ではなく二人ともです。彼女達二人でククル1人分です。
見繕ったのもククルです。
本当は喋らせたかったのですが、作者の技量が足りず...。
何事も上手くなりたいものです・・・。




