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異界の欠陥魔法師  作者: 木崎 咲
七章 シャーリィ
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七十九話 準備の準備

遅くなってしまい申し訳ありません。


最近執筆が遅くなってます。


購入したゲームも溜まってしまって……。ライトノベルも溜まってしまって……。


あぁ。暇が欲しいです。

「はい。まだ最初の問題が終わってないでしょー」


 リリィの魔法が恐れられなかった事によってワイワイと浮わついた雰囲気が流れていたが、それをククルが手を一回叩いて霧散させる。


「さて、リリィが実体を作れる理由はわかったかしら?」


 全員がククルへと視線を向ける中、彼女はミカへと問いかける。


「とりあえずは」


 ミカはそう曖昧な返事を彼女へと返した。


 実際に全て理解したとは言いがたい。


 そもそも幻覚とは意識を持っているものに発生する現象だ。


 なのに何故、世界などという意識どころか本能すら持っていないであろう物に幻覚を見せられるのか。


 何故世界が誤認したら幻が現実として反映されるのか。


 そこら辺の理由が全くわからないが、それを聞いてしまうと話が今日中に終わらない気がしたのだ。


 そもそもこの集まりはシャーリィの延命を行うためのもの。


 リリィの魔法がどういう理屈で働いているのか、というのは関係ないのだ。


「充分よ。元々完全に理解できるとは思ってないわ。私も無理だもの」


「なのに説明してたんですか?」


「この中では一番詳しいもの」


 ミカはククルの言葉を聞いて、つい、リリィの方へと視線を向けてしまう。


 それで良いのか本人?と。


「?」


 リリィはミカの視線を受けて小さく首を傾げた。


 彼女にとって自身の事は自身よりも他人の方が詳しいということが当然のようだ。


「疑問はいっぱいあるとは思うけど、質問は研究室の変人にでも聞きなさい。言葉を理解できる保証はないけれど」


「意味無いじゃないですか」


 ミカの言葉にククルは小さく笑みを浮かべる。


「話を戻しましょう」


 笑って誤魔化したのだ。


 彼女は何事も無かったかのように話始める。


「私が魔眼を持っているのは知っているわよね?私の眼は魔力を見る」


 彼女は自身の眼について改めて説明をし、視線をシャーリィへと向ける。


「保有魔力量。流出魔力量。そして、その姿を保つための魔力量。別種の魔眼を持っているジャーダは五日と言っていたけど、私の見立てだと彼女は五日持たないわ。流出ペースもほんの少しずつ上がってる。このペースだと四日、正確には三日と半日程度ね」


「そんなに短いのか……」


 ククルの出したシャーリィの寿命を聞いてリリィが泣きそうな声で呟く。


「ええ。時間はないわ。だから、早めに、今日この時間からでも準備を始めた方が良いと思うのだけど?」


 ククルはそう言ってリューリティティへと視線を向ける。


 その視線には具体的な方法の話をしよう、といった意味合いが含まれていた。


 リューリティティは彼女の視線にしっかりと頷きを返して、


「生まれ変わるなら何が良い?」


 と、シャーリィへと問い掛ける。


「……」


 場が沈黙に包まれる。


 この瞬間、誰もが固まり、誰もが同じ事を思ったという。


(話が、戻った)


 そう、きちんと、話を戻すと言った通りの事を思ったのだが、ククルが言った意味はこうではない。


 やり直しをしたかった訳ではない。


「リューリ。私が言ったのはそういう意味じゃないわ。方法の説明をして欲しいのだけど?」


「実体を作るのに魔力を消費する。先にしておいた方が回復する余裕が―――」


「それだけ消費したら話を聞く余裕が無くなるじゃない」


「……確かに」


 リューリティティはククルの言葉に感心して頷く。


 彼女の態度に少し呆れたような表情をククルは浮かべていた。


 彼女は知っているのだ。


 リューリティティが魔力を一定以上消費したときの疲労に耐えきれず、すぐに眠ることを。


 自分でそうなるのにリリィがそうなることを想定していた様子が無いことに呆れていた。


「……」


 リューリティティは周りに視線を向けて、口を開く。


 だが、その口から声は出ていない。


 言葉にする前に口を閉ざしたのだ。


 ミカは既視感を感じる。


 前にもこんなことが無かったか?と。


(あぁ。魔王に会う前の)


 そして、すぐに思い出す。


 彼女に王座の間へと行くルートの説明を求めたとき、彼女は面倒だ、と言って王座の間へと直接転移したのだ。


 だが、今回は無理やり行動することができる状況ではない。


 結局、説明するしか無いのだから問題ないだろうと、そう思っていた。


「体を作る」


 リューリティティはリリィを指差して一言言い、


「もろもろ取り出してその体に入れ込む」


 自身を指差して一言言い、


「以上」


 と言葉を終えた。


 彼女は説明の大部分をすっ飛ばしたのだ。


 再度場が沈黙に包まれる。


「はぁ~」


 最初に口を開いたのはククルだ。


 彼女は盛大なため息を吐いた後、リューリティティへと視線を向ける。


 結構きつめの視線なのか、直接見られている訳でもないリリィが少し怯えているようにミカには見えた。


「……また、そうやって面倒(めんど)くさがる」


 怒りを押し殺したような小声がミカの横から聞こえた。


 ミカは横目でククルの様子を伺う。


 そこには何時ものように笑っているククルの姿があった。


(女性は怖い。……納得だわ~)


 何時ものように、それがむしろ怖かった。


「良いわ。朝までに人数分説明書を作っておきなさい。起きたら読むから」


「何時もと同じ?」


「ええ。その方が楽なんでしょう?貴女の場合」


「ん」


 ククルはどこぞのブラック上司のような指示をリューリティティへと出す。


 現在日は沈みきっている。


 そこから翌朝までが期限の課題。


 短すぎる期限に普通は嫌そうな反応を示すものだろうが、リューリティティはそのような反応を見せず、ククルの指示を快諾した。


「そういう事だから、説明はとりあえずお仕舞いね。朝にはそれぞれの部屋に説明書が置いてあると思うから昼までに読んでおいてね」


「すみません。そんな難しいの読めません」


 ククルの説明にまだ文字の勉強中であるミカが意見を言う。


 ミカの読解力は何とか単語を読める、といった具合だ。


 説明書、等と言う高等な書物を読むことなどできるレベルではない。


「明日の午前は元々勉強時間なんだから、私が読み聞かせるわ」


 ククルの言葉にミカは小さくガッツポーズ。


 それに気づいたシャーリィがミカへと冷たい視線を向けていた。


 女性と二人きりになることを喜んでいるとでも思ったようだが、それは検討外れだ。


 ミカは勉強時間が減ることを喜んでいたのである。


「あ、待てククル」


 そんな二人の行動に気づいた様子もなく、部屋から出るために椅子から立ち上がりかけたククルへとリリィが待ったをかける。


「何?」


「体はもう作っておいた方が良いのか?」


 リリィの質問を受けてククルはリューリティティへと視線を向けた。


 今回の方法を理解しているのはリューリティティだけだ。


 ククルは何となく予想ができているようだが、確信も無いためリューリティティへと意見を求める。


「作って」


「だ、そうよ」


「えぇ!?」


 リューリティティの返答を聞いたシャーリィから落ち着きが無くなる。


「…そ、それは、今じゃなきゃ、ダメ?」


 彼女は視線をあちこちにさ迷わせながら問いかける。


 心なし、ミカへと視線を向ける回数が多かった。


「ほ、ほら。作っても時間が経つと食べることもできない体が弱っちゃうじゃない?」


 言い訳のようにまくしたてるシャーリィを見てリューリティティはコテンと首を傾げた。


 何を言っているのかわからない、という態度ではなく、本気で言っているのか?といった感じだ。


「二月は問題ない」


「いや、それは問題あるでしょ?飲まず食わずなら死ぬよ?その体」


「魔法で」


「そんな軽く」


「諦めなさい。天辺はできるの」


「……マジで魔法ですね」


 リューリティティの言葉にあり得ないと思ったミカだが、ククルがミカへと、どこか悟ったような優しい声をかける。


 それを聞いてミカは(しか)と理解した。


 天辺の魔法は万能なのだ、と。


「そ、そういうことじゃなくて……」


 ミカが一人悟っている中、シャーリィが恥ずかしがりながらも声をあげる。


 消え入りそうな声だったが、その場にいる全員が彼女の方へと視線を向けた。


 その事に一瞬怯むシャーリィだったが、意を決して口を開く。


「……ほ、本当に、()じゃなきゃ、ダメ、なの?」


 意を決したにしてはずいぶんと弱々しい声だった。


 だが、その中でも強調された一言と、その瞬間に向けた視線からククルとリューリティティは理解した。


「原因は自分ですか?」


 視線を向けられたミカは自身が原因であることは察することができたようだが、その理由がわからないようで首を傾げている。


 リリィもミカの発言から理解したようで、顔を赤くしてうつ向く。


 ミカは説明を求めてククルへと視線を向けた。


「そっか。もう気にする年頃よね」


 どこかしみじみとした様子で呟いてから彼女はミカに説明する。


「リリィの魔法で作る体は産まれたままの姿なの」


「……あー。成る程」


 ククルの言葉を聞いて理解できない者は居ないだろう。


 今から作るのはシャーリィの体。


 まだシャーリィではないとはいえその体を見ることはシャーリィの裸を見ることと変わらないのだ。


 それに相手がシャーリィであろうと誰であろうと女性の裸を男が見ている場面など現実で見たくはない。


 周りが女性しか居ないのなら尚更だ。


「話も終わりましたし、部屋に戻りますね。なにかあったらククルさんよろしくお願いします」


「ええ。明日の朝にまとめて言うわ」


 彼女達がどのような事を行うのかは結局よくわからなかったミカだが、結果が女性の裸を見てしまうということは理解した。


 とりあえず彼は、後のことは全てククルから聞けば良いと判断し、そそくさとこの部屋から退散する。


 挨拶などはなにもない。


 誰もが扉が閉まるまで無言で待っていた。


「で?人間にする?」


「ちょ!なぁ!?きき聞こえたらどうするの!」


 ミカが完全に部屋から出たのを確認。


 直後にリューリティティがシャーリィへと問い掛ける。


 突然の問いにシャーリィは慌てながらも扉の方を警戒しながら小声でリューリティティを怒鳴るという器用なことをやってのける。


「否定しないのね~」


 そんな彼女をからかうようにククルがニマニマと笑ってシャーリィへと詰め寄る。


 少し赤くなって固まるシャーリィをリリィが少し複雑そうな表情で見ていた。


(こっちはわかっていないのね。本当に知識も経験も同じなのかしら?……記憶を見るのと実際に体感するのでは大分違うものね。それがこの違いかしら?実感してきたはずの本人より実感していない方が理解してるのは何故なのかしら?)


 ククルはシャーリィへと詰め寄りつつリリィの様子も伺っていた。


 二人の様子の違いに彼女は興味を示す。


 いや、それだけではない。


(にしても、良い反応ね~)


 彼女の笑みは心から浮かんだもの。


 からかうことも普通に楽しんでいた。


 次はどう声をかけるか、等と目的そっちのけで考えていた。


「い、良いから!早く始めて!」


「人間で?」


 それを空気で察したのか、シャーリィが慌てて声をあげる。


 が、すかさずリューリティティの追撃が。


 いや、本人はそのつもりは無かったのだろうが、結果的に追撃した形になってしまった。


「ぁ、ぅ……そ、それで―――」


「ごめんここどこ?」


「ひゃわぁ!?」


 シャーリィが顔を赤くして何かを言おうとしたそのタイミングで部屋の扉が開き、ミカが入ってきた。


 その事にシャーリィが驚き飛び上がる。


「あぁ。ごめん。これ以上は入らないから」


 ミカは扉から体半分ほど入れた状態で部屋を覗いていた。


 いや、覗いていたといったら語弊がある。


 彼は壁の方を向いてリリィ達へと声をかけていた。


「気にしなくていい。まだなにもしてないから」


「何も、ってまだ始めてないんだ?」


「種族決めもまだ」


「……普通に主と同じにすればいいのに。寝るの遅くなりますよ?」


 リューリティティがなにもしていない事を示したのでミカも彼女達の方へと視線を向ける。


「で?」


 リューリティティの短い問い。


「いや、女性は気にすべきでしょう?」


「違う。どうしたの?」


 睡眠不足になっても構わない、という意味かと思ったが違ったようでリューリティティが訂正する。


 あ、そっちね。と呟き、戻って来た理由を話す。


「いや。ここに来るとき転移してきたじゃないですか?だから、部屋の戻り方がわからなくて」


 そう、ここにはリューリティティの魔法で直接転移してきたのだ。


 部屋への戻り方が分かるはずもなかった。


 あー、と頷くリューリティティ。


「動かないで。今送る」


 言った瞬間にミカが部屋から消える。


 リューリティティが転移させたのだ。


「……で?」


 そして、今度はシャーリィへと短い問いをかける。


「……あ、主様と同じで」


 人間にすればミカを意識している事がここにいる者以外にもバレてしまう。


 当然、ミカにも。


 その事に気づいたシャーリィは急に怖くなって、自分を変えるのを止めたのであった。


ここの話、短いものを想定していたんですが……。


ヤバイですね。異界の欠陥魔法師、百話で想定の半分も進まないことに……。


私は何を持ってそのくらいで終わると想定していたのか……。

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