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異界の欠陥魔法師  作者: 木崎 咲
七章 シャーリィ
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七十七話 理解不能

fate/go新しいイベントの情報が出ましたね。


初の節分イベントでとても驚きました。

何がって?


『初の』節分イベントですよ?


鬼退治は節分イベントではなかったんですね。豆使ってたのに。


吃驚です。

 世の中には抗えない力というものが存在する。


 その力を前にしては人一人の抵抗など意味をなさない。


「こ、こんなの……無い」


 ミカは人間の無力さを痛感していた。


 現在、彼は床に倒れ伏している。


 服は所々が黒く焼け焦げており、体もボロボロだ。


「……どうこうできる、ものじゃない」


 彼は腕を伸ばし、ズルズルと体を引きずるようにして何かから必死に離れる。


 瞳から涙を溢しながら。


「……理不尽、に、過ぎるでしょ」


 背後から何かが聞こえるが、ミカにはそれが意味のある言葉に聞こえなかった。


 耳も殺られていたのかもしれない。


 こんな目に合わせた相手から逃げようと必死になっているミカの姿は、生にすがっている者のように見える。


「……あ、と、少し」


 この地獄の出口である扉を目の前にして、ミカの瞳に希望のようなものが宿る。


 手を伸ばせば触れられる。


 それほどまで扉に近づいた所で、カチャ、と静かな音が鳴り、扉が勝手に開く。


 ミカは呆けた顔で上を見上げる。


 彼の目の視界に黒い、女性下着が。


「……何してるの?」


「この世に神なんていないんだ」


 ミカは更なる暴力に耐えるため、顔を伏せて縮こまった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 何でもシャーリィの延命を行うにはリューリティティ一人の力では足りないらしく、その協力を得るために公園から直接その者の居る場所へとミカ達は転移した。


 それが、ミカにとっての地獄のような数分の始まりだった。


 転移した場所は何処かの部屋、あまり物は置かれておらず、それでいて広いので何処か殺風景に見える。


 大きめの本棚には本が詰まっており、机の上にも数冊乗っている。


 この部屋の主は読書家なのだろう。


 部屋には扉が四つも存在している。


 一つは出入口だろう。


 もう二つはわからないが、一つは浴室だということが分かる。


 何故か?


「……ぇ?」


 そこからバスタオルを巻いただけのリリィが出てきたからである。


 リリィは何故ミカ達が居るのか分からず、その場で固まり、ただただミカへと視線を向ける。


「……」


 ミカも、あまりにも予想外の展開に固まって見返すことしかできない。


 不意に、彼女の体を隠しているタオルが弛んで―――


 バチン!という音が響いた。


()っ!ああぁ!」


 リューリティティがミカの目を強く叩いたのだ。


 来るならリリィ本人か、シャーリィだと思っていたので、予想外の方向からの攻撃にミカは反応できなかった。


 感情をあまり出さない子だから羞恥心等には乏しいと勝手に思い込んでいたが、そこは人並みにあるようだ。


 ちなみに、ミカの目を叩いた後に「ぁ」と呟いた事から、 そこまでやる気はなかったのだろう。


 彼女はミカの目を掌で覆い隠そうとして、咄嗟だったので勢い余って叩いてしまったようだ。


 だが、叩かれた側のミカはそんな事には気づけない。


「や、見るなぁ!」


 次いで、リリィ、ではなくシャーリィが叫び、ミカへと火球をぶつけ爆発させる。


 日本で有名な映画での名言、『目がぁ~!』と声をあげる余裕もなかった。


 目もろくに見えない状態のミカは、当然反応することもできずに吹き飛ばされたのだった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 そして、冒頭の場面に戻る。


 目に与えられた衝撃で涙は止まらず、火球によって服はボロボロに。


 とりあえずリリィが着替えるまで外で待機しようとしたところで、ククルが部屋に入ってきたのである。


「落ち着いて考えると、ククルさんは気にする必要なかったんですよね。いつも下着丸見えですし」


 別室で自身の体格よりワンサイズほど大きい長袖長ズボン―――リューリティティが魔法で何処かから取りだしてきた―――の姿に着替えたミカが部屋に戻ってリリィ達の前に座りながら言う。


 リリィも既に寝間着に着替えて椅子に座っている。


 魔族であっても少女だからだろうか?


 彼女の寝間着はピンクのかわいらしいものだった。


「あら。見せるのと見られるのでは大分違うのよ?」


 ミカの横に座ったククルがわざとらしく胸の辺りを手で隠しながらミカに笑いかける。


 ちなみにこの部屋にはリリィの座っている柔らかそうな椅子以外に椅子はなかったのだが、リューリティティが何処かから取ってきてミカが着替えている間に対面するような形で並べたようだ。


 シャーリィの両脇にリリィとリューリティティが座り、その対面にミカと、その着替えを手伝ったククルが座っている。


 主であるリリィではなくシャーリィが真ん中なのは彼女が主役だからだろう。


「そんな格好をした人の台詞じゃないですよ。見せる見せない以前に剥き出し同然ですからね?」


 ミカはククルの姿を上から下までしっかり見て、そう感想を漏らす。


 彼女の格好はいつも通りのほぼ透明なローブを着ただけの姿であり、中の黒い下着が丸見えである。


「服装は性能重視だもの。見た目は二の次よ」


 まぁ、見た目も嫌いじゃないんだけど。


 そう言って彼女は自身の着ているローブを摘まんでパタパタと振るう。


「……ちなみにどんな性能で?」


 他者から痴女判定をされて構わないと思えるほどの性能。


 ミカはそれが気になったようだ。


 ククルは得意気な笑みを浮かべる。


「これは迷宮で私が直接見つけた物よ。効果は服の有無での防御性能の変化。ローブの下に着ている服が少ないほど魔法に対する耐性が高くなるの。逆に着込めば斬撃や衝撃に強い耐性が付くわ」


「……物理耐性を上げようとは思わなかったんですか?」


「直接攻撃なんて避ければいいじゃない。対して魔法は総じて避けにくいんだからそっちを優先するべきでしょう?それに魔法耐性の付く装備品は少ないのよ?」


 だから私はこの格好なの。


 彼女は先程とは逆に胸を強調するような姿勢で自身の姿をアピールする。


 この人普通に痴女なだけじゃね?とミカは思うが、それを口にする前に他の女子に目がいった。


 リリィ、シャーリィ、リューリティティ。


 三人ともが下を向いて暗い雰囲気を出していた。


 彼女達の視線の先には自身の体の一部が入っているのだろう。


 無いわけではない。


 が、ククルと比べてしまうと小さいと判断せざるおえない。


「…さて、雑談はここまでにして本題に移りましょう」


 これは誰にとっても良い話題ではないと悟ったミカはパンっ!と手を叩いて無理やり場の雰囲気を変える。


「うむ。シャーリィを救うという話だな」


 リリィがこれ幸いとすぐさま反応した。


 それに続くようにして、シャーリィとリューリティティも頷く。


「というか、シャーリィは何故妾に言わんかったのだ?」


「妾は主様の知識を共有しているのよ?妾に解決策が無ければ、それは主様にも無いということなの。だから、言わなかった」


 リリィの疑問にそう言いきったシャーリィは次いでリューリティティへと鋭い視線を向ける。


「それで。本当に可能なのよね?もし、その方法が妾の知っている『空間を固定することでその場に止める』方法なら却下よ。生きていたとしても動けないし喋れないなら意味無いわ」


「一人で十分」


「まぁ、そうよね。この方法は空属性だけで完結するもの。空属性頂点のリューリなら一人で簡単にできる事ね。一人では無理、何て言う訳ないわ」


「空間の固定とかいうヤバめなワードの行為を簡単にできるとか……」


「これが天辺よ。嫉妬するのも馬鹿馬鹿しくなるわ」


 シャーリィとリューリティティの会話を聞いてミカが呆れた表情で呟き、そんな彼へとククルが悟すように声をかける。


「で?主様に何をさせるつもりなの?」


「実体を造ってもらう」


「実体を造る?」


 リューリティティの回答を理解できずにミカは首を傾げる。


 だが、分からないのはミカだけのようで他の全員はリリィに何をさせる気かその一言で理解したようだ。


「中身の無い生物に中身としてシャーリィを入れる、ということかしら?」


 ククルの問にリューリティティはこくりと頷く。


「中身の無い、生物?」


 ミカは話が全く分からず首を傾げるしかない。


 だが、誰もミカに説明する気は無いようで、話は勝手に進んで行く。


「でもそれって、あまり意味無いわよね?」


「そうね。中身の無い生物に妾が宿ったとしても、妾が魔法であることに変わりはないわ。魔法で別の体を操るだけ」


「外の皮を作るだけのような物ね。むしろ体を操作する分、魔力の消耗が速くなって、余計に短い期間で消えることも考えられるわ」


「では、魔力を止めるような作りにすれば良いのではないか?」


「妾がその魔力だから、動けなくなるわ」


「む。そうか……」


「そもそもその方法なら主様一人で行えるもの。リューリの居る意味が無いわ」


 議論をしていた面々が説明を求めるようにリューリティティへと視線を向ける。


 少し遅れて、話についていくことのできていないミカも詳しい説明が欲しいと視線を向ける。


「生まれ変わるなら何が良い?」


「はい?」


 だが、彼女が口にしたのは周りの視線を完全に無視した上に、何の脈略もないそんな言葉。


 視線からシャーリィに問いかけているのは分かるが、繋がりが全く分からない。


「インプ?ラーン?獣種でもエルフでもアミアでも、自由」


 リューリティティは周りの反応を完全に無視してシャーリィへと問いかける。


「え?えぇ?えっ……と」


 突然の事にシャーリィは困惑して言葉が見つからないようだ。


 しきりに周りへと『どうしよう。助けて』という視線を投げ掛けている。


 が、周りも状況の理解が追い付いていないので誰も助け船を出すことができず、ただ見守るだけだった。


「……やっぱり、人間?」


「や、やっぱりって何よ。やっぱりって」


 今まで困惑していたシャーリィが少し強めの口調でリューリティティの言葉に突っ込む。


 その顔色は少し赤くなっていた。


「……?」


 彼女の様子を見たリリィは自身の胸に手を当てて首を傾げる。


 何やら複雑そうで、けれど、何故複雑なのか自身でもよく分からないといった表情だ。


「……」


 同じくシャーリィの様子を見て何かを悟ったククルは、リリィの様子も確認してニヤニヤと楽しそうに笑っていた。


「……嫌?」


 一瞬、意味ありげにミカへと視線を向け、リューリティティはシャーリィへと問いかける。


「い、ぃ、嫌、じゃない、けど」


 シャーリィは顔を伏せながら、消え入りそうな小声で呟く。


 それは横にいたリリィとリューリティティにしか聞こえない音量だったが、ミカとククルも彼女が何て答えたのかは態度を見て察することができた。


「ミカはどう思う?」


「……そもそも話についていけてません。何で『生まれ変わったら誰それになりたい』とか、シャーリィ関係ない話になってるんですか?」


 リリィの問にミカは首を横に振って答え、後半はリューリティティへと問いかける。


 この話に意味があるとは思っていない用で、彼の表情は非常に面倒臭いということを表しているものだった。


「…関係ある」


「どこが?」


「全部」


「……生まれ変わったら、とかいうのも?」


「そう」


 この回答にはミカだけでなく、全員がリューリティティへと疑惑の視線を投げ掛ける。


「……わからん。結局リューリさんはシャーリィに何をしたい、もしくはさせたいわけですか?」


 ミカは推測するのを諦めたようだ。


 基本的に彼女はあまり多くの言葉を話さない。


 言葉を省略して、最低限、いや、理解できないのだからそれ以下の言葉しか口にしない。


 その為、彼女の言葉を理解するにはそれなりの期間一緒にいなければ『何となく』すらわからない。


 今回のような難しい話題なら尚更だ。


 ミカはともかく仲が良いらしいリリィですらも会話を理解しきれずに首を傾げている。


 だからミカは簡潔に回答できるような問いをリューリティティへと投げ掛けた。


「転生」


 返ってきたのは予想通りの簡潔すぎる一言。


 だが、中身は予想外に過ぎるものであり、誰もが顔を見合わせる。


 リューリティティ以外全員が同じような、困惑の表情を浮かべていた。


ククルが普通に参加していますが、彼女は事情を聞いたわけではありません。


それなのに普通に会話に混ざれているのは、魔力を見る目を持っているので、シャーリィの状態を直ぐに理解したからです。


シャーリィも自身の状態が見られただけでバレてしまうというのを理解していたので彼女を避けていました。

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