表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界の欠陥魔法師  作者: 木崎 咲
七章 シャーリィ
79/111

七十二話 一時限目 魔力

ごめんなさい。遅くなりました。


恥ずかしながら、執筆に熱中して投稿を忘れていました。申し訳ありません。


話は変わりますが、fate/goの1.5部ラストが始まります。


年内に終わらないのではないかと思っていましたが、そんな事はありませんでした。楽しみです。


が、今はとにかくボックス10箱全てを開けなければ!


あ、ショートケーキは終わったのでもう要りません。


フルーツ、フルーツケーキプリーズ!



 ミカの態度に思うところがあったようで、ククルは話をする前に小休憩を提案してきた。


 時間にして数分。


 ミカはベッドに寝転んでいた。


「まず、この世界にある魔力には大きく二つの種類があるの」


 合図も無しに、唐突に彼女は語り始めた。


 ミカは上体を起こし、ベッドに座った状態で聞く。


「個体が持っている魔力。そして空気中や地中等、自然に存在する魔力。


 前者を一般的に『魔力』と呼び、後者を一般的に『マナ』と呼ぶわ。


 二つは大きく見れば同じ魔力なのだけど、決定的な違いがあるの。


『属性』を持っているか否か。あぁ、基礎五属性や上位五属性とはまた別の属性のことよ。


 混ざらない様に『色』と言う者も居るわね。


 魔力には属性があり、マナには属性が無い。


 属性(・・)と言うからには当然種類が存在しているわ。


 人間、獣種、エルフ、ドワーフ、魔族でもインプやラーンで持っている魔力の属性は異なっているの。


 まぁ、環境が魔力に影響を与えるらしく、この魔族領に居る魔族は少し属性が似ているのだけど。


 順を追って説明するから、詳しい説明はもう少し待ってね。


 こほん。基本的に魔力と言うのは属性が違えば反発し合う特性を持っているわ。


 ミカはリリィ様から魔力を貰っていたわね?


 その時、内から体が弾けそう、と思ったんじゃないかしら?


 いえ、理由が分からなくても『このままでは死ぬ』と、そう思ったでしょう?


 それは事実よ。


 貴方の中で、貴方の魔力とリリィの魔力が反発し合い、互いを追い出そうとして、それに器が軋みを上げていたの。


 ……分かったかしら?


 貴方の今の現状が。


 前に言った貴方の魔力。


 違う種類が四つも混ざっている。


 それが、どれだけ危険か。


 貴方は今、生きているのが奇跡なの。


 何で、どうやって生きているのか、そう問われても可笑しくないわ。


 それは本当に奇跡的なバランスで、崩れれば直ぐに死ぬ。確実にね。


 これが、貴方に魔法を扱わせない理由よ。


 奇跡的なバランスで生きているのに、それを消費して戦うなんて、あり得ないわ。


 敵に何かをされることもなく、魔法を使っただけで、貴方は唐突に死ぬ可能性があるの。


 例えそれが練習でも」


 納得できた?という視線を彼女はミカに向ける。


「いいえ」


 ミカは首を横に振った。


 魔力については良い。


 納得した。


 だが、一つおかしいと思った点があったのだ。


「僕は何度か頭痛がするくらいまで魔力を扱ったことがあります。これは魔力の欠乏によって起こると聞きました。奇跡的な魔力バランスで生きているのならこれはおかしいのではありませんか?」


 そう、現状のバランスが奇跡的で、魔力を使用することでそのバランスが崩れるのならば、魔力を失い欠けるほどの魔法を使用して生きていられるはずが無いのだ。


 一度だけなら運が良かったで済むかもしれないが、ミカはこれを何度か経験している。


 運で済ますのは不可能だろう。


「それを貴方に言ったのは人間じゃないかしら?」


 ククルの問いにミカは頷く。


「そう、人間はまだそんな勘違い(・・・)をしているのね」


「勘違い?」


「そう、勘違い。魔力が不足したら体が重たくなるだけよ。重度なら気絶するわ。頭痛なんて起こらない。魔力不足と頭痛には何の繋がりもないの」


 そう言って彼女はミカをじっと見る。


 そして、クスっ、と小さく笑った。


「なんですか?人の顔見て笑って」


「いえ。そもそも貴方が魔力不足を起こすなんて、あり得ないな~って。魔力の見える者からしたらその勘違いは可笑しいものよ?」


「?」


 彼女の言葉が理解できずにミカは首を傾げる。


「いい?貴方の魔力は膨大よ?貴方一人の魔力を燃料にすれば、私達の所有している領土、その全てを賄えるんじゃないかしら」


「……は?」


 ミカは口を開けて固まった。


 彼女の言っていることが分からない。


 規模が大きすぎて理解が出来ない。


「貴方は世界の四割近くを賄える魔力を持っているの。そんな人間が魔力欠乏を経験したって本心から言っているんだもの。笑うしかないじゃない?」


 ミカが固まっている間、彼女は一人、コロコロと笑っている。


「……じゃあ、なんですか?頭痛は錯覚だったと?」


 落ち着いた声でミカは問う。


 これは彼女の話を受け入れることができたから、ではなく。


 彼女の話にあった自身の魔力量から目を逸らしたが為の落ち着きだった。


 世界の四割云々はちょうど聞けていなかった事は幸運だったかもしれない。


 もし聞いていたら、正気を取り戻すのにかなりの時を要した可能性があったから。


 ともかく、思考能力を取り戻したミカは会話内容から魔力量とは別の疑問を問いかける。


 ミカは実際に魔力を扱って頭痛が起こっている。


 たまたま片頭痛を起こしたから~等では説明できない回数の頭痛をミカは経験している。


 勘違いのはずがないのだ。


「いえ。その頭痛は魔力不足が原因じゃないわ。別の要因があるの」


 彼女もそれを否定することはなく、そう答える。


 先程まで笑っていたのが嘘のように彼女の表情は真剣なものに変わっていた。


「いい?魔力不足で頭痛が起こるというのは人間の勘違いよ。


 頭痛は魔力バランスの崩れによって発生するの。


 あの頭痛は魔力バランスを欠き、死の一歩手前まで近づいたというサイレンの様なもの。


 何度か経験した、と貴方は言ったけど、その全てにおいて貴方の命は危険に晒されていたってことなの。


 何度でも言うけれど、貴方にとって魔法は危険でしかない物よ。


 それでも、貴方は魔法を扱いたいと言うのかしら?」


「ええ」


 即答だった。


「そう……」


 ククルは少し悲しげな視線をミカに向ける。


 まるでそう言うのが分かっていて、できれば断って欲しかったと思っていたかのような態度だ。


「残念ながら戦闘で便利なのは否めません。魔法(これ)がなければ僕はここにいませんし、今後やっていける自信もありません」


 それでも自分の勝率低いですし。


 ククルの態度を無視し、ミカはそう言って肩を竦める。


 どこか誤魔化すような、そんな態度だ。


 だが、実際にミカが勝った相手はどれも人間か、あるいは人間から魔族に成り立てだった存在のみ。


 後者に至っては複数人でかかっての勝利だ。


 その後の魔族戦では全てにおいて最終的に負けている。


 魔法を扱ってもこの結果なのだから、魔法をより上手く扱えるようになることが急務だろう。


 でなければ、今なお旅で鍛えているであろう弟により引き離されてしまう。


 ただでさえ今は弟に負け越しているのだ。


 これ以上の差を広げられるのは勘弁願いたい。


 そう思っていたからだろう。


 声や態度は気だるげだったが、目だけは真剣なものになっていた。


「……分かったわ。魔法の特訓も今後入れていきましょう」


「マジですか」


 ミカが素で驚く。


 今まで頑なに魔法を使用させてくれなかった彼女が折れるとは思っていなかったようだ。


「今後よ。特訓に入る前に説明しなくちゃいけないこともあるんだから」


「え~。まだ座学なんですか~」


 ククルの釘を刺すような一言にミカは文句を言いつつも立ち上がって椅子に座る。


 その態度にククルは何故か微笑ましげな笑みを浮かべる。


 可愛い物を見ているとでも言いたげな、そんな表情である。


「……なんですか?」


「フフ。いえ、何でもないわ」


 彼女の視線に気付いたミカが不機嫌を隠しもしない態度でククルを睨む。


 可愛い、というのは自身の外見にコンプレックスを持っているミカに取っては貶されているのと同等なのだ。


「では、話を進めましょう。もう一方、マナについて」


 ミカが不機嫌になったのは気がついていたが、そのままスルーして彼女は語り始める。


「マナは自然に存在する、いえ、自然を巡回している魔力のこと。


 私達はそのマナを取り込み、魔力を回復しているわ。


 人間もそう。


 この世界のあらゆる生き物はそうやって魔力を回復しているの。


 さっき魔力は反発し合う特性を持っているって言ったけど、マナは属性を持っていないからあらゆる物に、何の害もなく吸収されるわ。


 その後、生き物であればじっくりとそのマナを自身の属性に染め、自身の魔力として蓄えるの。


 そもそも魔力を体内で直接生成することは不可能……とまでは言わないけど、ん~、とりあえず今はできないって覚えてもらって構わないわ。


 だからすぐに魔力を回復する手段なんてない。


 この自然に存在しているマナから自身のペースで回復するしかないの。


 マナポーション、人間は魔力回復薬と言っていたかしら。


 そんな製品もあるけど、あれは魔力を摂取している訳じゃなくて、体内に取り入れたマナを自身の属性に変換するのを助ける薬なの。


 あれを魔力が見えるほどに圧縮した液体~何て勘違いをしている者も居るから騙されないようにね。


 個人的には使用しないことをオススメするわ。


 半強制的に変換ペースを上げるものだから副作用も出てしまうの。


 特に貴方の場合は命に関わるかもしれないから。


 さて、これが地域によってその者の魔力の属性が少し似ている理由と言われているわ。


 その場のマナから魔力に変換する際、変換しやすい属性の傾向があるらしいの。


 だから、地域によっては特定の魔法が得意とか、そういう存在が生まれやすいわ。


 もちろん、マナの影響より親の影響の方が強いから必ず特定の属性を持つ、と言いきれないけどね」


 一段落付いたのか、彼女はふぅ、と軽く息を吐き出して紅茶―――正確には紅茶の様なものだが―――を口に入れる。


 ミカの目の前にも一応あるが、手を付けていない。


 別にその紅茶の様なものが不味いという訳ではない。


 むしろ美味しいのだが、どうにも苦手なのだ。


 何と言えばいいか、匂いと味が違う、という感じだろうか。


 いや、その表現も正しいとは言えない。


 何せこの紅茶の様なものは無臭なのだ。


 なのに味は紅茶を少し甘くした飲みやすいもの。


 どうにも違和感を拭えない。


 ―――因みに毒などを完全に疑っていないのかと聞かれたらミカは首を横に振るだろう。


 だが、疑うにも限度はある。


 今回は先にククルが紅茶の様なものを飲んでいる。


 カップは自分で用意し、洗っているのも自分だ。


 これだけやってなお毒が盛られていたらもう諦めるしかない。


 そんな感じで割り切っている。


「とりあえずここまでで質問はあるかしら?」


 そんな事を考えながら紅茶の様なものをじっと見ていたミカにククルが覗き込むような体勢で尋ねる。


「……えっと、あー」


 ミカは彼女の方を向き、頬を掻きながらススーと視線を逸らす。


 体勢のせいで見えてはいけないところまで見えそうになっている双球が視界に入ってしまった為だ。


「こ、ここの土地は、どんな得意魔法が多いのですか?」


 少し言葉に詰まりつつミカは疑問を投げ掛ける。


「ここは闇、空、幻の三つね」


 そんなミカの様子に楽しそうな笑みを浮かべつつククルが答える。


「上位属性五個の内、三つ……。偶然、な訳ないですよね。察するにここがそういう土地だったから首都になった、ってところですかね?」


「ええ。その通りよ。補足をすると、元々この地は時属性も入れた上位五属性の内、四つもの属性をもった場所だったらしいわ」


「何で時属性は無くなったんですか?」


「諸説あるけど、正確には分かっていないわ」


「……それ、結構重要なことでは?」


「ええ。研究者が調べ続けているわね。今のところ、起点が動いている、という駆動説が有力ね。その場合、時属性の起点だけが動いているとは限らないからその対策も同時に考えられているわ」


「他の説は?」


「時属性だから時間を跳んでいるという不連続説。地殻変動か何かでこの地の起点が断絶されたという自然現象説。奪われたという強奪説。ただ、自然に力を失い消えたという寿命説。否定できないのはここらへんかしら?詳しく知りたいのなら後日説明するわよ?丸一日使うけれど……」


「いや、研究者とかではないのでいいです」


 そんな難しい話を、まだこの世界の当たり前すら理解できていない状態で分かるわけがない。


 ミカはそう思い手をヒラヒラとさせながら断った。


「じゃあ、他に質問は?」


 ククルに聞かれ、ミカは顎に右手を軽く当ててミカは少し考える。


「……今は特にないかな?あったらまた聞きます」


 何も質問が思いつかなかったのでそう答える。


 念のため、いつでも聞けるように予防線を張っておくことも忘れない。


「そう?じゃあ一旦休憩ね。半刻後に魔境門について説明するわ」


 そう言って彼女は席を立つ。


(魔境門。世界を渡る鏡か~。まさにファンタジーだよね)


 彼女の言葉を聞いて、ミカはそんなことを思う。


 自身が創作だと思っていた、そんな世界に居るということを改めて意識する。


 そしてミカはそんな異世界での生活のことであるこの城に留まっていた日々のことを思い出す。


 起床、鍛練、朝食、勉強、昼食、勉強、図書館の片付け、夕食、睡眠。


 翌日も起床、鍛練、朝食、勉強、昼食、勉強、図書館の片付け、夕食、睡眠。


 休日は起床、鍛練、朝食、二度寝、昼食、タマモもしくは図書館の面々との鍛練、図書館の片付け、夕食、睡眠。


(あれ?異世界(ファンタジー)だよねここ?)


 ミカは自身の行いを思い出して、首を傾げる。


 城での生活は家にいた頃と特に変わらない気がした為に。


 いや、むしろ休日が多い分日本より楽だっただろう。


 この世界の一週間は十日間もあった。


 その上、平日・平日・休日・平日・平日・休日・平日・平日・休日・休日と程よく休みがあり、疲れが取れやすかったのだ。


 因みに一月は三週間らしい。


(結局は慣れ、か)


 人間は慣れる生き物だとは良く言ったものだ。


 この生活が普通だと思い始めている。


 魔法なんてものが目の前にあるにも関わらず。


「はぁ~。仕事が楽って、良いわね~。何で私~今まであんなに働いてたのかしら~」


「今までどんな人生―――みょ!?ちょ、いつの間に人のベッドに、というか人のベッドで何してんですか!?」


「フフっ。みょ!?ですって、みょ!」


「うっさいわ!てか、教師が風紀を乱すなまともな服着ろよ!」


「服なら着てるわよ?」


「まともなっつてんでしょうが!」


 あくまでも普通だと思い始めているだけだ。


 彼女が目の前に居る限り、今の生活が普通だと、完全に思うことはないだろう。


 というか、これが普通だと思ったら終わりだとミカは心の底から思うのだった。


タイトルからも察せられた方もいらっしゃる通り、一話で説明会が終わりませんでした。


次回も説明会です。ごめんなさい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ