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異界の欠陥魔法師  作者: 木崎 咲
六章 紅き都市の城
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六十一話 思い違い

ふはははは。大☆遅☆刻なり!


ごめんなさい。


もう私の技量が無いだけという言い訳の余地もない理由での遅刻です。


できてすぐの投稿なので誤字脱字等が多いかもしれません。ごめんなさい。


毎日投稿してる人たちを私は尊敬します。

 ミカの発言により重たい空気が流れ出す。


『無償の善意ほど信じられ無いものはない』


 ミカはリューリティティを睨んでそう言ったが、今は彼女を見てすらいない。


 彼の瞳は少し下がり机を見つめていた。


 その姿はまるでここではない別の場所を睨んでいるようにも見えた。


「・・・その、えっと。ご、ご主人様!この話を断られるのでしたら・・・どうしましょうか!?」


 そんな気まずい空気の中、タマモがミカに話しかける。


 彼女なりにこの空気をどうにかしようと思ったのだろう。


 現に彼女の表情は無理に笑っているものだし、声も無理矢理明るく話そうとしている感じだ。


 残念ながら、実際は声が震えていて明るさもあまり感じられない、というか所々上擦った声をあげている緊張丸分かりものだったが、


「・・・フフっ。なにその声」


 それでも効果はあった。


 ミカから冷たい雰囲気が霧散したのだ。


「ご、ご主人様があんな雰囲気を出すからですっ!何とかしなきゃって、私頑張ったんですよ!笑うなんて酷いです」


「ごめんごめん。フフっ」


「ご主人様~!」


 タマモの声が所々裏返っているのがツボに入ったようで何とか堪えながら謝る。


 いや、堪えようとしたが、堪えきれなかった。


 その態度にタマモが食って掛かる。


「だからごめんってば」


 ミカは彼女の動きを押さえる為に頭に手を置く。


 それだけでなくそのままタマモの頭をわしゃわしゃと乱雑に撫で始めた。


 何かを誤魔化すように。


「ぅぁぅ…や、やめてください~」


 口ではそう言いながらもタマモは抵抗しない。


 顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしているが、表情は嬉しげだ。


 ミカは彼女の抗議を無視して撫でまわした後、リューリティティ達へと視線を向ける。


「さて、交渉は決裂した・・・と言いたいのですが、貴女方の提示したものが魅力的に過ぎます」


 まぁ、それゆえに決裂したのですが。とミカは頭に手を当て、首を横に振りながら言う。


 これ見よがしにため息まで見せて。


 その姿は誰がどう見ても『芝居がかっている』と答えるような仕草だ。


「時にラスティローレンさん、フェアさん。貴女方程の実力者が何故このようなところに?」


 ミカは唐突に変わったミカの態度に困惑しているフェア達へと、これまた急な問いかけを投げ掛ける。


「なに?」


「どういう意味です?」


 この問いを聞いた瞬間に怒りを顕にミカを睨む。


 一瞬だけミカの口に小さな、本当に小さな弧が描かれた。


「おっと、失礼しました。『何故このようなところに?』というのは『何故図書館などにいるのか?』という意味ではなく『何故戦場に出ないのか?』という意味です」


 ミカは彼女達の問いを正確に理解して、というよりまるで予想していたかのような態度でスラスラと答える。


 フェアがミカへの警戒レベルをあげた。


 彼女にはミカが答える前に浮かべた笑みが見えたのかもしれない。


「先ほどの現れ方から、リューリティティさんもかなりの実力者だとお見受けしますが、確信はないのでここではカットさせていただきます」


「リューリ様は僕達より強い」


「ええ。私共などリューリ様の足下にも及びません」


 ミカの言葉に条件反射のような速さで二人が声をあげたが、ミカは軽く頷くだけで話を続ける。


 今それはどうでも良いと言わんばかりに。


「現在魔族は、人間の領土を取ろうと戦争を行っているはずです。改めて、何故、ここにいるのですか?」


「分からないのか?」


 ラスティローレンの問いにミカは笑顔で答える。


「元・魔王の方に従っているから、ですよね?」


「・・・分かっているなら何故聞いた?」


 ラスティローレンがミカに鋭い視線を向け問いかける。


「いや~。間違ってたら恥ずかしいので確認をしたかっただけです。そう睨まないでください」


 それに対してミカはヘラヘラとした笑みを崩さない。


 ラスティローレンの視線に殺意が込められた。


 さすがにやり過ぎたと思ったのかミカの表情が真剣な物に変わる。


「つまり、貴女方は現・魔王の方針に反対、という事でいいですか?」


「そうだ」「ええ」


 ミカの問いに二人が即答する。


 リューリティティも同じタイミングで頷いていたが、ミカは二人が即答したことに疑問を覚えた。


「・・・二人は人間を怨んでいないんですか?察するに、貴女方のその傷は人間の行いによるものでしょう?」


 現在の魔王が人間の領土を攻めているのならば、それに反対している元・魔王は人間と和解を目指していたと考えられる。


 人間に対してトラウマを持ってしまうほどの目に合ったのならば和解をしたいなどと思わないだろう。


 だから、即答したことが不思議だった。


 ミカの問いに二人は少し驚いた表情を浮かべ、それぞれの傷、ラスティローレンは右目に、フェアは左耳に手を当てる。


「・・・よくお分かりになられましたね」


「・・・確かにこの傷は人間につけられたものだ。全く怨んでいない、と言えば嘘になる」


「では何故現・魔王の方針に反対なんですか?僕が言うのもあれですが、合理的に人間を殺せるチャンスですよ?」


 ミカの問いに二人は互いに目を合わせて頷き、声を揃えて答えた。


「「リューリ様が反対だから」」


「・・・ぇ」


 その内容にミカ、ではなくリューリティティが驚いていた。


「はぁ~。・・・人に理ゆ―――」


 彼女達の解答にミカはどこか蔑んだ瞳を向けてため息を吐く。


 ため息の理由を二人が視線で訪ねてきたので答えようと口を開いたが、それは途中で止まった。


 リューリティティがミカに手の平を向けて静止したのだ。


 彼女は二人に一度視線を向けて口を開く。


「前に好きなようにしていいって言った。違う?」


「ええ。言われました」


「だから僕らは好きなようにさせてもらっています」


「・・・その答えが、さっきの?」


 リューリティティが二人に問う。


 ミカには分からなかったが、いつも近くにいる二人には彼女の雰囲気が変わったのが分かったようだ。


 彼女達は何かを恐れているように見える。


「え、えぇ」


「何かおかしかったでしょうか?」


「・・・座って」


「「・・・座ってまぁ!?」」


 ミカの視線から二人が消え、少し低い位置から驚きの声が聞こえた。


 リューリティティが二人を椅子の後ろに強引に移動させたようだ。


 椅子は一ミリたりとも動いていない。


 やはり彼女は空間転移系を得意としている魔族のようだ。


 座った体勢のまま転移された二人は突然支えを失ったので当然こける。


 リューリティティもいつの間にか彼女達の目の前、ミカたちに背を見せるようにして立っている。


「私の指示に何でも従う。そんなの奴隷と変わらない。私、奴隷が欲しくて貴女達を助けたんじゃない。特にフェア。貴女、人間に奴隷として従っているのは辛いと言っていた。なのに、何で自由になったはずの今、そんな事言うの?私、貴女達を縛ってたの?」


 リューリティティが今までの起伏の乏しい声は何だったのかと問いたくなるほど悲痛げな声で、今までに無いほどの長文を二人に訴える。


 そのさまにミカ達は驚いていた。


「そんな事ありません!」


「僕たちはリューリ様に助けられた。だから、何かを返したいと、いつも―――」


「もう返してもらってる!」


「「っ!」」


「私、いつも一人だった。それが当たり前だった。だから、最初にラスティを助けたのはただの気まぐれだった。本を読みきって暇だったから、何となく()を覗いて、たまたま目についたから助けただけだった」


「「・・・」」


「それが、思いの外気分が良くて、もう一度()を覗いた。それでフェアを見つけ、助けた」


 城に戻った後、かなり面倒だったから二度とやりたくないけど。と、リューリティティがこぼしたが誰も気にしなかった。


「初めはただの気まぐれだった。けど、二人が来てから楽しかった。毎日、今までに無いほど。私は二人に幸せを返してもらってる」


「わ、私達だって…ここに来てからずっと幸せでした。でも―――」


「―――こんな幸せが続くわけがない。だから僕たちはそれが少しでも長く続くようにと思って」


「二人を嫌うわけ無い」


 リューリティティの言葉に二人が固まった。


 彼女達は捨てられる事を恐れていたのだ。


 だから彼女に従っていた。彼女に一切逆らわなかった。


 もう、昔のような生活には戻りたくないから。


 向き合っているリューリティティにはそれが分かったのか、彼女は手をいっぱいに広げて二人を優しく抱き締めた。


「意見が食い違うことも、喧嘩することもあるかもしれない。それでも私は二人の事を本気で嫌ったりなんかしない。絶対に」


 二人の瞳に涙が溜まる。それほど不安だったのだ。


 不幸になれてしまっていたからこそ心から離れなかった不安。


 幸せが続いていた事が、いつまた不幸になるか分からない事が怖かった。


「私達はもう、その、…家族・・・みたいなもの、なんだから」


 だから、彼女の言葉が嬉しかった。


 涙が出るほどに。


 だけど、純粋に涙を流すことはできなかった。


「こちらのことはお気になさらず」


 若干白けたような瞳をしているミカと目が合ったから。


「リ、リューリ様。その、私達も意見を言いますので、話し合いましょう?」


「いや、い、意見をまとめた方が、いいいんじゃないかな?」


 二人の顔が羞恥でみるみる赤くなっていく。


 フェアは席に戻ろうと考えたが、ラスティローレンは一旦逃げようと考えたようだ。


 ラスティローレンの言葉にフェアがなるほど、という表情を浮かべる。


「・・・ぁ」


 彼女達の言葉でようやく思い出したのかリューリティティが小さく声を漏らして少しだけ振り返る。


 見ていたので当然気がついたミカは、どうぞ、と言わんばかりに掌を差し出す。


『続けてください』という意味だ。


「賛成」


 彼女はそれに気づかないふりをしてフェア達に同意し、今度は完全に振り返りミカと向き合う。


「時間をください」


「どのくらい?」


「・・・一万文字読めないくらい」


「・・・十五分くらいかな?そのくらいなら別に問題無いかな」


 まさかの文字数での返答に少し固まったが、本を読むことがそれなりにあったミカはおおよそこのくらいだろうと適当に辺りをつける。


「感謝。本読んでいいから」


 それだけ言って彼女達は消えた。


 彼女もやはり見られたのが恥ずかしかったのか、ミカと視線を一度も合わせなかった。


「さて・・・」


 彼女達が完全に居なくなったのを確認してミカは席を立つ。


「本を取ってくるのですか?」


「いんや」


 彼女達が交渉を続ける的な話を最後に口にしていたのに席を離れることを不思議に思ったタマモがミカに問い掛ける。


 問いかけた内容は今最もありそうな事だと思ってのものだったのだがミカはそれを否定した。


 では何をするのか?とタマモは首を傾げる。


 傾げつつもミカについていく。


「・・・えっと。何がしたいんですか?」


 彼は隣のテーブルに移動しただけだった。


 その行動の意味が分からずタマモはミカに尋ねる。


「まぁ、念のため。彼女の転移でいきなり後ろからとかあり得るし。位置を知っていないと転移からいきなり攻撃するのは難しいはずだし」


 ここが見えるなら意味無いかもだけど。ミカは呟いて椅子に浅く腰かけた。


 突然近くに彼女達が現れてもとっさに動けるように。見られても座って待っていると思わせるように。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 ミカの予想した十五分よりも早い、およそ十分で彼女達は戻ってきた。


 敵対しないという意思表示のためか転移ではなく歩いて。


「あれ?」


「リューリ様。あそこにいます」


 先程まで話をしていた机にミカ達がいなかったためリューリティティが首を傾げたが、フェアがすぐにミカ達の方を示す。


「ずいぶん早いですね。意見は纏まりましたか?」


 彼女達が目の前に座るや否やミカが問い掛ける。


 彼女達は互いに見つめ頷きあってから口を開く。


「僕たちは僕たちの幸せを守る」


「そして、現・魔王は(わたくし)達の幸せを脅かす存在になります」


「持ち物、案内、知識。これらを提供する。代わりに現・魔王を引きずり下ろして」


 彼女達が口にした内容に驚いたのはタマモだけだった。



話が、終わらぬっ!

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