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異界の欠陥魔法師  作者: 木崎 咲
四章 ラルバの危機
43/111

三十七話 八つ当たり

何とかできました。


ヤバいです。ストックが尽きました・・・。


できも良くない、かも?


2017/10/12 サブタイトル更新

「ぐふぅ!」


 ミカの手からギルド長が呻きながら落下する。


 目立った外傷はない。が、これはミカ達が何もしなかったわけではない。


 結構、全力で殴ったのだが、対して効かなかったのだ。


 伊達や酔狂でギルドの長をやっていないということだろう。


「さて、スライムどうする?できればスライムの索敵範囲から逃れる方法を、次策はスライムの撃退か拘束。個人的には全力で逃げたい」


「正直どっちも難しいな」


 ミカの問いに答えたのはケロッとして立ち上がったギルド長だ。


 ちょっとイラッときたミカはギルド長の顔面に蹴りを入れる。が、それは片手で防がれた。


「スライムを倒すのが難しいのは分かるな?」


 ギルド長は何事もなかったかのように話始める。


 ミカ達もそれに突っ込むことなく頷く。


「拘束も物理的なものから魔法まで何でも吸収するスライムには効果がない」


「・・・だったら他の町とかスライムに襲われたときどうしてたんですか?」


「基本的には俺達ギルドのメンバーがスライムに魔法を当てて囮になり町から離していた。その先に魔力を込めた何かを置いておけば完璧だな」


「その魔法を無視することはなかったんですか?」


「ない。スライムはほとんど自意識というものを持ってないようでな、基本的に直進し続けるだけなんだが、大きな魔力があるとそっちにいくことが多い。おそらく、魔力を感知する能力を持っているんだろう」


「けど、今回は指向性を与えられた」


「常に、嬢ちゃんが狙われ続けちまう。これはスライムから逃げるのが難しいってことの理由でもあるな」


 八方塞がりだ。


 倒すことのできない相手から逃げることができない。


(いや、リリィを置いていけば逃げることができるけど・・・それは後々困るよね。これは最終手段かな)


 ミカが人として最低なことを考えたとき、おずおずとした様子で手が上がった。


「・・・たぶんだが、妾、スライムの封印、できるかもしれん」


 上げたのはリリィだ。


「何!?それは本当か!」


 彼女のとても自信無さそうに、弱々しい声で言った言葉にギルド長が驚愕の表情を浮かべ詰め寄る。


 スライムというのは人間にとってはどうしようもない災害のようなものだ。


 それをどうにかできる手があるということに彼は驚愕していた。


「い、いや、その・・・」


「確証の無い、確実性に欠けたものよ。いえ、失敗の方が高いと思うわ」


 言いよどんだリリィを助ける形でシャーリィが口を挟む。


「それはどんな方法だ?」


「言えないわ」


「・・・なるほど。魔族の魔法。闇か」


 ギルド長の言葉にリリィとシャーリィが驚き距離を取る。


 ギルド長の言葉を聞いたミカも彼から距離を取っている。が、ミカは驚きの表情を浮かべてはいない。


(あの審判も怪しんでたし、それより強い奴が気づかないってのもおかしいよね。そりゃ)


 ミカは審判がかけてきたカマからそう予想していたのだ。


「何故・・・」


「いつ、気づいたの?」


「俺はこう見えてもギルド長だぜ?情報収集なんていくらでもできる。何より俺は人を見る目に自信があるんでな。いつ気づいたかってぇと最初にギルド前で見た時からだな」


 勘だよ、勘。


 ギルド長は軽く言うがリリィ達にとっては人間に、それも自身を襲ったような集団の長に正体がバレることは避けるべきことだと思っていた。


(・・・消す)


 シャーリィは構える。ギルド長を殺すために。


 彼はリリィの討伐が失敗したことを知っているはずだ。なら、(リリィ)が危険になる。


 そう判断した。


「そう構えんな。協力するぜ?その代わりといっちゃああれだが、その方法を知りたい」


 だから、一瞬、この言葉を理解することができなかった。


「・・・は?」


 間の抜けた声を上げてしまったが彼女は言われたことを理解し、


「無理ね」


 と答えた。


 シャーリィの答えにギルド長が理解できないと首を傾げる。


「何故だ?手は多いに越したことはねぇだろ?」


「この方法は主様と妾の二人だけで完結しているものよ。手伝う余地なんてないわ」


「それにそもそも人間はこの魔法を発動できんと思うぞ?」


「それは構わねぇ。封印の方法があるんならそれを調べることで人間用のスライム対策を作ることができるかもしれねぇ」


「・・・できないかもしれないわよ?」


「可能性だけで充分だ」


 と、ここで彼女達の会話を聞いていたミカにリリィが問いかける。


「どうする?」


「え?ここで僕に聞くの?」


「最終決定権はリーダーのものであろう?」


「いつの間に僕がリーダーになったんですか・・・」


 ミカは突っ込むがリリィはむしろその突っ込みに首を傾げる。


 見ればシャーリィもミカを見ていた。


「・・・その方法。魔族の機密とかじゃないよね?」


「・・・たぶん」


「物語であるくらいだから大丈夫でしょ」


 とても不安になる返答だったが、他にスライムから逃れる術が無い。


「できると思うならやってみれば?他に方法も思い付かないし」


 ミカはなげやりぎみに言った。


 別にミカ自身手助けできることはないし、彼女達も手助けすることはないと言っている。


 なら、勝手にやらせとけばいい。


 ミカの判断だ。


 ミカは彼女達の提案より現実的な提案がギルド長からされたのを聞き逃していない。


「それよりギルド長。協力をしてくれるんですよね?」


 ミカはニッコリと満面の笑顔を浮かべながら言った。


「ん?あ、ああ」


 ミカの笑顔は綺麗でとても男性とは思えないものだったのだが、それを見たギルド長は背筋に悪寒が走っていた。


「なら、車を用意してくれませんか?」


「車?」


「あぁ、ええっと、何だっけ?・・・魔動輪でしたっけ?あれ、ください」


「は?」


 ギルド長はミカの言葉に表情をひきつらせる。


「は?って何ですか?失敗したとき用の逃げる手を用意しておくのは当たり前でしょう?」


「いや、だがお前。あれ、高いんだぞ?貸し出しじゃダメか?」


「ダメですね。失敗したらこの町に来れるのいつになるか分かりませんし」


「いや、成功報酬なら分からなくもないが・・・」


「いやいや、ギルド長はこの町を助けることができればいいんですよね?なら、スライムの狙いが僕たちなんですから、僕たちが逃げればリリィをターゲットにしているスライムもこの町から離れます。ですから依頼は成功しか無いんですよ?」


「ぐっ・・・」


 ミカの言葉にギルド長がたじろぐ。


 かなり難しい顔をして悩んでいるギルド長をミカはニコニコと、それはもう楽しそうに眺める。


 スライムをどうにかする手を潰されたことをまだ根に持っていたのである。


 が、ギルド長は名案を思い付いたとばかりの表情を浮かべた。


「馬しーーー」


「あー、めんどくさいやー、僕達、あっちに逃げよーかなー」


 ギルド長の言葉を遮るようにして、妙に間の延びた声でミカは言う。


 彼の指差した方向はスライムとは真逆の方向。


 本当にそっちへと逃げればリリィを狙っているスライムは町を蹂躙するだろう。


「・・・テメェ。ろくな死にかたしねぇぞ?」


 それがミカの脅しだと分かっているギルド長は恨みがましくミカを睨む。


「行こっか、リリィ、シャーーー」


 もちろん、そんなことに付き合う気はないミカは脅しを再開する。


「分かったよ!用意すりゃいいんだろ!・・・これで対策ができなきゃ赤字だくそったれ!」


「いやぁ、協力感謝します」


「この・・・!」


 ミカの態度の変化にギルド長は怒りの表情を見せるが、ミカはどこ吹く風とばかりに涼しい顔をしている。


(これで移動手段が確保できた。スライムから逃げられる速度があればいいんだけど。そこはリリィ達に期待かな?)


「じゃあ早速行きーーー」


 ミカはくるりと反転して歩きながら言う。あまり長く向き合っていると上機嫌なのがバレると思ったからだ。


 実際はバレバレだったが。


 だが、ここで思い出して欲しい。この場でどんな戦闘が行われていたのかを。


 ーーーガツッ!


 とミカは足を亀裂に引っ掛けてしまい、


 ーーーガギン!


「あぐぅ!」


 金属製の物に頭から激突、


 ーーーゴン!


「・・・っ!」


 それに弾かれ地面にも頭から激突した。


 ミカは頭を抱えて丸くなる。もはや声もでない。


 この世界の神はしっかりと働いているとミカは思ったそうだ。


「・・・んぅ」


 ミカの近くからドサッと何が倒れる音と小さな呻き声がした。


 ガバッ!っと、さっきまで痛がってたのは演技だったのかと思うほどに俊敏な動きでミカは立ち上がって声の発生源の方を向く。


「・・・あ」


 声はフェルディナのものだった。


 彼女の存在を完全に忘れていたためつい声を出してしまった。


 ミカが激突したのは彼女ーーー正確には彼女の鎧部分ーーーだったようだ。


 念のため言っておくが、ミカが落ちたのは彼女の横であり、彼女が倒れたのはミカと反対方向だ。


 ミカが変なところに倒れ込んだりはしていない。


 彼女はミカがぶつかった衝撃で目を覚ました。


「・・・私、は?・・・くっ!」


 彼女は無理をして立ち上がろうとするが痛みに呻き岩に背を預ける。


「無理をするでない」


「・・・すまない」


 それを見たリリィが彼女に駆け寄り回復術をかけ、どこか難しい顔をしながらフェルディナが礼を言う。


 それを見て、激突したときの痛みで頭を押さえたミカが一言。


「僕もお願いしたい」


 ただの呟きであり、返事は期待していなかった。


「承りました」


 が、知らない声が聞こえ、ミカの頭に手が伸びてくる。


「ーーー!」


 ミカは知らない間に一人増えていたことに、しかも、その一人が真横に居たことにビクゥ!と驚いて硬直してしまう。


「かわいらしい反応ね」


 クスクスと笑いながらミカの頭に触れた女性が、そのままポンポンとミカの頭を軽く撫でる。


「?、??、・・・あだ!?え?何で?」


 状況を整理しようと思ったら一撃痛いのが混じった。


 が、いつの間にか体から痛みが消えていることに気づく。


 ミカは叩かれて傷が治るという現象が理解できなかった。頭に?マークがたくさん浮かんでいるような表情をしている。


 その間に女性はリリィのそばまで少し急ぎ足で向かって口を開く。


「ダメじゃない。それじゃあ外の傷を塞いでるだけよ」


「妾は回復魔法がーーーぬしは誰だ?」


「私がやるわ」


「え?あ、うむ」


 曖昧に頷きながらリリィがミカのもとに戻ってくる。


「誰だあれは?」


「誰ですか?」


 ミカはリリィの問いをそのままギルド長へと投げる。


「俺んとこの副長だ」


 彼は落ち着いた様子で言っているが、いろんなところから汗が吹き出ている。


「彼女が苦労人さんでしたか・・・」


 それに気づいた様子なくミカは呟き、改めて彼女を見る。


 この短い会話の間にフェルディナの治療を終えたようでこちらに歩いてきている。


 真っ白でゆったりとしたローブに身を包んでおりスタイルはほとんどわからないが、背は低め。リリィと同じくらいだ。


 髪はショートで癖ッ毛なのか毛先が内側にクルッとなっている。


 優しい目付きをしているが、顔が少しやつれている。それだけ苦労しているのだろう。


 軽めのメイクで整えればそれなりの美人になりそうな感じだ。


 うっすらとあるクマをどうにかする必要があるが。


 彼女はミカ達の近くにいたギルド長の前で立ち止まり、


「ぐぇ!」


 襟を掴み上げ逃げられないようにしてまくし立てる。


「私、言ったわよね?魔族の相手は私がやっておくからギルド長は魔動輪または馬車の手配、他の支部に救援の連絡、国王への連絡等々、そしてギルド内の避難民の護衛をお願いしますって。なのにどうしてここにいるのかしら?」


「いや、魔族がーーー」


「ここに魔族がいるのは私にも分かっていました。誰が調べたと思っているんですか?」


「だが、俺が飛んで来たから助かったやつもいてだな」


 と、ギルド長がミカを見る。


 話を合わせろ、と言うことだろう。


「そうなんですか?」


 副長はその視線を追ってミカに問いかける。片手でギルド長を保持したまま。にこやかに。


「いえ。むしろ邪魔をされました」


 ミカは事実を言う。


 彼女の視線が『嘘は許さない』と語っていたからだ。


「な、テメェ、魔動輪、渡さねぇ、ぞ!」


 ギルド長はミカを睨んで言うが、その声は途切れ途切れで苦しそうだ。


 視線を戻した副長がより強く首を絞めたのだろう。


「私達の長が失礼いたしました。こんな姿勢で説得力は無いかもしれませんが本心から謝ります」


 こんな姿勢というのはギルド長を吊り上げた姿勢のことだろう。


「ところで先ほどギルド長が口にした魔動輪を渡す。というのはどういうことでしょう?」


「・・・えっと、先ほどスライムをどうにかする代わりに魔動輪を貰うという交渉が成立してまして」


 下手をしたらギルド長と同じ目に会うと思ったミカは自然と丁寧な口調になっていた。


「魔動輪を、貰う?借りるのではなく?」


「・・・はい」


 彼女の目付きが鋭くなり、ミカは内心でヤバイと思う。


「・・・いえ。そのくらいの価値はありますね。こちらで手配します。・・・ギルド長、確か金貨が本棚の上から二段目、左から六冊目の裏にありましたね」


「な、何でそれを!?」


「普段誰があの部屋を整理していると思ってるんですか」


 そう言って彼女はギルド長から手を放す。


 ギルド長は何の抵抗もなくドサッと落ちた。


 部下に部屋の掃除まで任せているダメ上司の哀れな末路である。


「そうだ・・・ダナルが私の・・・うぅ」


 不意にそんな暗い声が聞こえてきた。


 フェルディナだ。


 彼女はミカ達のやり取りに見向きもせずに何があったのかを思い出そうとしていたのだ。


 ここまで時間がかかったのは思い出したくないことを無理に思い出そうとし続けたからだ。


 そして、その努力が実ってしまった。


 彼女は最後に見た、肉親の死を思い出してしまい、涙を流す。


「父上、兄上。私は、これから、何を信じて・・・ぐすっ、何を目指して、行けばいいんですか?」


 彼女の嘆きにリリィとシャーリィは慰めの言葉を探すが見つからず、それでも何かをしてあげたいのか彼女の側に寄る。


 ギルド組はどうしようもないとばかりに口を閉ざす。


 彼等は似たような目にあっている人を何人も見てきた。そして、そのどれもを解決したのは時間だ。だから、今回もそれを信じて口を閉ざした。


 そして、ミカは・・・


「そんなものは自分で見つけるものでしょう」


 冷たく突き放す。


「どれだけ問いかけても、嘆いても、答えをくれる人なんていない。居たとしても、それは貴女を利用する者か、陥れる者の二択でしかない」


 ミカは顔をしかめて言う。


 自身が家族を喪った時、周りから向けられる視線は同情だけだった。


 学校の友達や先生、親しくしていた近所の人も。


 初めは心配してくれていた親戚も、保険などで大金を得ると分かると誰もが自分達を家族に迎えようとしてきた。その権利を弁護士にまくし立てたりもしていた。


 だから、ミカ達は自身の保護者を自分達で選んだ。


 葬式にも来ていない他人。神月流の師範を。


 もちろん、完全に信用した訳ではない。


 だが、自分で選んだ相手だ。裏切られたら自身の見る目がなかっただけだ。


 師範に保護者になってもらって、生活を、家を変える、なんてことはしていない。過ごしたのは弟といつもの家で二人暮らし。


 完全に名前だけ借りた状態だ。


 お金を渡す気はない。そういったことを言っても『管理できるなら問題ない。責任は私が負っておきます』と返ってきたのは驚いたが。


「・・・そ、んな」


 フェルディナはそう呟き顔を伏せる。


 嗚咽まで漏らし始めたフェルディナを慰めようとリリィが背中をさすり、シャーリィは何も言わずミカを睨んでいる。


「副長さん。魔動輪はスライムが向かってきている門で受けとるので持ってきてください」


「え?ええ。わかりました」


 ミカはそんな彼女達を無視し、副長へと最終確認。


 彼女が頷いたのを確認したらミカは彼女達に背を向け言った。


「行くよ」


「だ、だが・・・」


 リリィは行くのを渋る。フェルディナを何とかしたいと思っているようだ。


「・・・はぁ~~~」


 ミカは立ち止まり深~いため息を一つ吐く。


「この世で信じられるのは『自分』だけ。・・・敵の言葉を信じてどうするんですか」


 ミカは首だけ捻って振り返る。視界の隅にフェルディナが入るように。


「魔族は幻属性も扱えるのでしょう?あれが本当だという証拠はありません。嘆くのは決定的な証拠を貴女自身の目で確かめてからにしてください」


「ぇ?」


 ミカは面倒そうに言って今度こそ歩いていく。


「え、ちょっと」


「妾達を置いて行くな」


 リリィとシャーリィはまさか置いていかれるとは思っておらず慌ててミカを追いかける。


 フェルディナはそんな彼らを呆然と見送る。


 彼女の瞳からは涙が一粒だけ、頬を伝っていた。



副長のテンションがコロコロ変わるのはストレスと寝不足と疲労によるものです。徹夜明けみたいな感じですね。


あと、彼女がミカを叩いたのはリリィの治療がなっておらず、つい。といった感じです。


すみません作者としての技量が足りず入れることができませんでした。


次回は・・・タイトル未定です。


ええ。ついに来てしまいました。タイトルすら書けない。


間に合わなかったらごめんなさい

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