閑話五
ごめんなさい。遅くなりました。
テイルズ発売です。予約してたので買ってきました。
買ってきたのですが、なんと。
ps4新品売り切れ!
泣きたくなりました。
計画性の無い私が悪いんですけどね!
「あいつ、何でいんだよ」
アキラはぼやく。
現在、アキラは半径十メートルくらいのリングの上に立っている。
ギルドの登録に来たのだが、ここのギルドは小さく、大した設備がないせいで普通の登録ができないらしい。
都市が近いから普通はそっちで登録するのだ。
だが、この日は違った。
なんでも、この町に最も若い歳でランク六まで上り詰めた天才冒険者がたまたま寄っていたのだ。
その人物は既に冒険者を引退しているらしいが、アキラがこの町で冒険者登録ができないことに驚いていたところにこれまた、たまたま居合わせ『私が判定いたしましょうか?』と言ってきたのだ。
実力に合わせた登録ができるなら、とアキラは頷いてギルドの受付嬢を見る。彼女も頷いたので、方法はその天才冒険者に任せた。
決まった方法は単純なものだった。
彼女と戦えばいい。それだけ。
その結果、アキラはこのリングの上に立ったのだが、観客のなかに帽子を被って、眼鏡をかけたアクリアがいたのだ。
髪の色は黒くなっているが、正直下手くそな変装だ。整った顔はそのままで知っている人物には丸わかり。
その上、真っ黒な髪の人は彼女一人でむしろ目立っている。
しかも、所々の仕草が様になっており、他の人から見ても貴族の女性だと見抜かれそうだ。
当の本人はそんなことを考えもせずアキラに手を振って応援している。
アキラはにこやかに笑って握り拳を彼女に向け、親指を下に伸ばした。
彼女は笑ってアキラの真似をする。意味を理解していないようだ。
アキラの額に青筋が浮かんだ。
だが、何かを言うことはなかった。
アキラの向かい側から例の天才冒険者がリングを上がってきたからだ。
「お待たせしてしまい申し訳ありません。久しぶりに着たものですから調整に時間がかかってしまいました」
天才冒険者、ラナと名乗った彼女は丁寧に一礼して謝る。
その仕草に、アキラは一瞬メイド服を着た彼女を幻視した。それほどまでに、見本のような一礼だったのだ。
アキラは頭を振って今の幻を振り払い、改めて彼女を観察する。
歳は大体二十代前半だろう。
髪は綺麗な茶髪でショートカットにしている。
背は女性にしては高い。というか、この世界の女性は基本的に日本人より背が高い。だいたい一七〇無い位か。
胸は大きく膨らんでいて、くびれもくっきり分かるほどのもの。周りの女性が羨む体つきをしている。本人がどう思っているかは分からないが。
小顔で少し垂れている優しそうな瞳にスッと通った鼻梁。薄く小さい唇。
肌も白いが、不健康な程の白さではなく、最低限日に晒されたもの。
その体を紺色が中心のドレスで隠している。
動きやすいようにか、そのドレスは上下で分けられていて、間のへそ部分は丸出し。
着けている胸当てのサイズが合っていないようで、ある部分がむんにゅりと潰れていて少々直視しずらい。ーーーリングに登る際、本人はその部分を少し嫌そうに見ていたのがアキラの印象に残っている。
手には肘まである白い手袋を着けている。
スカート部分はかなり長く、地面すれすれだ。とても軽い素材なのか、そよ風程度でなびいている。
見えにくいが足には銀に輝くブーツを履いている。
そして、腰には二振りの短剣。片方は青、もう片方は赤い鞘に収まっている。
「気にすんな、こっちも来たばっかだ」
「・・・フフッ。ありがとうございます。...優しいのですね」
本当はそれなりに待ったのだが、アキラはそう言う。
言った後に、何処のカップルだよ。と自分に突っ込んでいた。
そして、ラナは一瞬驚いた表情を見せてアキラの言葉に微笑み返す。
最後に呟いた言葉から気を効かせたことがばれたとわかったアキラは彼女から視線を逸らす。
視界に驚愕の表情を浮かべているアクリアが写った。
声が聞こえなくなったと思ったら何かに驚いて固まっていたようだ。
彼女の視線の先にはラナがいる。
アキラは疑問を持ったが、審判役の受付嬢が手を上げる。
ーーーちなみに、この町のギルドにギルド長は居ないらしい。ここは支店のようなものだそうだ。
ラナが二振りの短剣を抜いて構えた。
アキラも刀を鞘から抜いて構える。
「それでは、特殊ですが、冒険者登録の実技試験を始めます!」
受付嬢の声にリングを囲っているギャラリーからの声が消える。
リング上の二人は構えたまま全く動かない。
静寂が場を支配する。
「始め!きゃあ!」
受付嬢が手を振り下ろし、その開始の合図と同時に二人が中央で互いの武器をぶつけ合う。
その中央にいた受付嬢が悲鳴を上げながら慌ててリングから降りる。
二人は武器を合わせたまま至近で見つめあう。
「・・・なるほど、剣技では私より上のようですね」
「・・・そのようだが、全力で斬りかかってない奴に言われてもな」
「いえ、これでも全力なのですが」
「力はな。お前の剣は普通に振られることを想定してないだろ?魔法で自身を強化するか、もしくは魔法を交ぜて戦うもの、ってところか?」
「驚きました。一度合わせただけでそこまで分かるのですか。・・・貴方の剣は逆ですね。魔法を視野に入れていないように思われます」
「お前も分かってんじゃねぇ、か!」
そこまで話して、互いに弾かれるように距離を取る。
距離を取ったはずだった。
「ッ!」
アキラの正面に右の短剣を額に向けて突きだしているラナの姿が。
アキラはとっさに上体を逸らして回避するが、彼女の短剣は二本。まだ、次がある。
彼女は突きの勢いのままアキラの横を通過。そのついでのように左の短剣をアキラの首に振り下ろす。
先ほどの突きと違い、攻撃に見えないほど滑らかな動き。
その動きに初動が遅れたが、何とか刀の柄で防ぐ。
が、無理をした動きのため、そのまま背中を地につけてしまう。
アキラはすぐさま立ち上がり、振り返りもせず横に飛ぶ。ただその場にいるのは不味いと、勘に従った行動。
アキラが立っていた場所にラナが降ってきた。
もし、勘に従わずに振り返っていたらアキラは串刺しになっていただろう。
だが、彼女の攻撃は止まらない。
どういう原理か、彼女が着地した瞬間、音もなくリングに土煙が舞う。
土煙が彼女の姿を隠し、前兆もなくアキラ目掛けて短剣が飛んできた。
アキラはそれを刀で払い落とそうと構えて、とっさにしゃがむ。
アキラの首があった位置を彼女の手に持った短剣が薙ぐ。
飛んできた短剣は彼女の何も持っていない手に再度収まり、間断なく振り下ろされる。
彼女は投げた短剣より先にアキラの背後に回ってもう一方の短剣を振るったのだ。
口で言うのは簡単だが行うのは難しい。というより、不可能だ。
だが、この世界にはその不可能を可能にしてしまう魔法が存在する。
自身を加速させる。そんなことが当たり前のように可能なのだ。
「ぐっ」
アキラは何とか前方に転がって彼女の振り下ろしを回避しようとしたが、避けきれずふくらはぎに小さな切り傷ができる。
だが、止まるわけにはいかない。
(速すぎんだろ!)
彼女は既にアキラの正面で短剣を振り下ろそうとしていた。
アキラは膝立ちになりながらも何とか間に刀を滑り込ませ、その一撃を防ぐ。
「・・・これを防がれるとは思いませんでした」
ギチギチと互いの武器を合わせながら、ラナが驚きの表情を浮かべて言ってきた。
称賛のつもりらしいがアキラはそんな事よりも気になることがあった。
「・・・これは、俺の実力を知るための模擬戦じゃなかったのか?どの攻撃も殺しに来てるようにしか見えなかったんだが」
アキラは小声で尋ねる。
どの攻撃も首や頭を狙ってきているのだ。
「ええ。そのつもりです」
彼女は囁き声で頷いた。
「このくらい行わなければ人の本性は分かりません。そして、確信しました。貴方にはお嬢様をお任せすることはできません」
「・・・お前は誰だ?いや、お前は何だ?」
アキラは彼女の言葉に警戒を強め、問いかける。
「メイドです」
「・・・は?」
解答を理解するのに少しかかった。
言葉から彼女はアクリアの関係者だと分かる。だからアキラは彼女を追っ手の女性騎士だと予想した。
だが、返ってきたのはまさかのメイド。戦闘員ですらないことに驚く。
「・・・メ、メイド?主人に奉仕するあのメイドか?」
「はい」
「・・・これだけ強いのに、メイド?」
「お嬢様を守るためには必要ですので」
「・・・メイドが、追っ手?騎士じゃなく?」
「はい」
「・・・天才冒険者は?」
「私です。ガルツ家に仕える前は冒険者をしていました」
「・・・引退理由がメイドってことか?」
「はい」
「・・・」
アキラは呆然と彼女を見つめる。いつの間にか互いの武器から音が消えていた。
「聞きたいことは以上でしょうか?」
彼女の腕に少しだけ力が入る。
その事に少し慌てたが、アキラはまだ力を入れない。
「いや、もう一つ。俺に任せられないとはどういう意味だ?俺が弱いってことか?」
彼女の言葉にこの程度が自身の全力だと思われていると感じたアキラが睨みつつ尋ねる。
その言葉に彼女は首を横に振った。
「いえ、始めに言いましたが貴方の剣の技量は私より上です」
「だったらどういう意味だ?」
「貴方は今のやり取りで死の危険に晒されました。その時、自身が浮かべていた表情が分かりますか?」
「・・・」
アキラは言葉に詰まる。分からないからではない。
分かってしまったから言葉に詰まった。
妹が死んでから、危険なときほど浮かべることが多くなった表情。
自身が父と同じ事を、誰かに殺されれば楽になれると心の底では思ってしまっている証拠。
「・・・笑っていたのです。殺されるような場面を喜ぶ者にお嬢様をお任せすることはできません」
死の危険が近くにあると笑ってしまうのだ。
楽しそうにではなく、嬉しそうに笑う。
この事を兄は知らないはずだ。兄が近くにいる場合はどんな危険が目の前で起きてもそのような表情は浮かばなかった。
逆に兄の身が危険になった為に怒りの表情を浮かべていた。
自身なんかより兄の方が大切だから。
「・・・そうだな」
「ッ!」
アキラの表情が消えた。
同時にラナの背に冷たいものが走る。
彼女はとっさに上体を逸らし、左右の短剣をクロスして、首を守る形にする。
ほとんど同時にアキラの三連閃。
初撃を避けられ、左右の剣も防がれる。
「・・・どうしてメイド長がそんなに強いのよ。必要ない技量よね?それ」
今の技を知っているアクリアは呟く。
我が剣は三度閃く。
アキラの得意技にして、アクリアが絶対に防ぐことはできないと思っている技。
城で使ったときとは違い、その軌道は初撃が避ける前に首のあった位置を。二、三撃目が避けた後の首を正確に狙っていた。
それを城のメイドが防いだことに驚くよりも先に突っ込みが出てきた。
ラナはアキラの変化に戸惑いつつも止まることなく大きく距離を取った。
二の太刀、終の太刀を放たずアキラは構えを戻す。
「そうだな。認める。俺は心の底では死にたいと思っている。生きていたってつまらないと思っている」
アキラが笑ってしまうのはあくまで意識をしていないときだ。集中すればすぐに消える。
「だがまぁ、こんなところに来ちまったんだ。俺が心の底でどう思っていようが、周りからどんな目で見られようが兄を見つけるまで死ぬつもりはない」
兄は意外と寂しがり屋なんでな。
そう言ってアキラは刀を軽く振る。力が全くこもっておらず、空を斬る音もしなかった。
「だから、抵抗させてもらうぜ?あんたから殺しに来たんだ。やり返されても、文句はないな?」
構えはない。構える必要がない。
ラナはその隙だらけに見える姿を見て、余計に警戒心を高めた。
「札を一つ切る。安心しろ、必殺技じゃねぇ。対策だってちゃんとある。この技はもう俺の兄には通用しねぇもんだからな」
だが、アキラは気にしない。
この技に警戒はむしろ悪手だ。
一点を見てしまうと術中にはまるもの。
「気張れよ?じゃねぇとーーー」
彼の言葉にギャラリーも静まる。遅れながらも雰囲気が変わったことに気づいたのだろう。
おかげで次の言葉は集まっている全員の耳に残るほど、辺りに響いた。
ーーーその命、あっさり消えるぜ?
彼女がギルドにいたのはもちろんたまたまではなく追いかけてきたからです。
ちなみに、アクリアは彼女が強いことを知りませんでした。
彼女が出るような危険な目には会ったことがなかったので。
追記
予告的なの忘れてました。
来週は切り札です。




