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異界の欠陥魔法師  作者: 木崎 咲
二章 武闘大会
17/111

十五話

今回長めです。

頑張りました。そして書くのってやっぱり難しいです。

違和感、無いでしょうか?

「これより!!決勝四回戦!!フェルディナ選手対ゴディーダ選手の試合を開始いたします!!」


 審判が大声で観客に呼び掛ける。


 会場では細剣を鞘に入れたままで居合いの構えをとっているフェルディナ選手と、自分より大きい両手斧を地面と平行にして体を少し捻った体制で持っている身長180cm程の男が向かい合って合図を待っている。


 武器だけで分かりやすい、スピードタイプ対パワータイプの試合だ。


 審判が手を上げる。


 二人は睨みあったままピクリとも動かない。


「始め!!」


 審判が手を振り下ろすと同時に二人は動いた。


 フェルディナ選手は霞むほどの速度で相手に迫り居合い斬りを、ゴディーダ選手はそれを迎撃するようにその場で空気を裂くような横凪ぎを、それぞれに向けて放つ。


 観客達にはゴディーダ選手の刃がフェルディナ選手をとらえたように見えた。


 フェルディナ選手はゴディーダ選手の横を通り過ぎ、五メートル程離れたところで止まる。細剣は鞘に入っている状態だ。彼女からポタポタと赤い血が垂れ落ちている。

 ゴディーダ選手は両手斧を横に振り切った体制でその場に留まっている。


 二人は互いに背を向けたまま動かない。


『・・・』


 静寂が会場を包み、


 フェルディナ選手が構えを解いた。


 それを合図にしたかのようにゴディーダ選手は前のめりに倒れる。その横腹には大きな切り傷が。


「勝者!!フェルディナ選手!!」


 ワァァァァァ!!!!と観客から大きな歓声が上がる。


(ひゃ~、速いねぇ~。男の人も結構強いのに、タイミングも彼女が最初の速度のままなら(・・・・・・・・・・)ピッタリだったしね)


 先程の交錯、ミカには見えていた。

 フェルディナ選手はゴディーダ選手が両手斧を振り始めた瞬間、最後から二歩目の際、ほんの一瞬だけブレーキをかけた。だが、ゴディーダ選手もこれには反応できていた。対応して動いていた。

 次が問題だ。

 彼女はブレーキをかけたことによって下がった速度を次のたった一歩で直前よりも速い速度(・・・・・・・・・)まで加速し、ゴディーダ選手の横を通過したのだ。

 この高速の緩急によって生まれた残像をゴディーダ選手は切り裂いたのだ。

 フェルディナ選手も無傷とはいかなかった。彼女の腕からは大量というほどではないが血が垂れている。

 ゴディーダ選手も見えてはいたのだろう。だが、体がついていかず、刃の加速が間に合わなかったようだ。それでも彼女に傷を与えるほどの速度を瞬時に出したのは充分凄いことだが。


 と、ミカがそんな考察をしている間に彼女がミカ達の目の前にある階段から降りてくる。


 彼女はこの待機場所にいるメンバーを一人一人見て、視線がミカで止まる。


「ほう?貴方も残ったのですか。・・・改めて向き合ってみても、やはり、覇気を感じませんが、少し評価を改めておきます」


 彼女はミカが本当に残っていることに驚いている。が、それでもまだ運が良かっただけだと思っているのかミカのことを下に見ている。


「はぁ・・・。覇気、ですか。まぁ、そんなものは持ってませんね、確かに」


 ミカはとりあえず曖昧に頷いておく。彼女に見下されているのは分かっているが、どちらが上かは試合で確認すれば良いだけだ。


 リリィはニコニコとしている。彼女の言葉をそのまま、いい意味だけ受け取っているようだ。やはり、彼女の方が人を見る目が無いのではないだろうか。少なくともミカはそう思った。


「初めまして、レディ。私はルドゥマナ・バクセン。次の準決勝で争うものです。お見知りおきを」


 フェルディナ選手がダナル選手の方へと向き直ったタイミングでルドゥマナが仰々しく一礼をして自己紹介をする。


 ミカは思う。


(僕と態度違いますね?)


 そう思うのも無理無いだろう。もはや、誰だこいつ?レベルだ。


「ご丁寧に、ルドゥマナ殿。私はフェルディナ・トゥ・ラライナ。次の試合、より良くするため互いに力を尽くしましょう」


 彼女はミカには見せたことの無い笑顔を見せて応える。背後にはダナル選手が護衛のように立っている。


(貴方もですか。何?この茶番)


 ミカはため息を吐いて、その場からそっと離れる。自分が邪魔者のような気がしたからだ。どうでもいいが、ボッチの思考である。


 そんなやり取りをしている間に審判の男性が降りてきた。彼は中の状態を見て、というか、隅で小さくなっているミカを見て小さく笑う。


(ちょっとどういう意味ですか?)


 ミカにこの場で問いかける勇気はなかった。


「準決勝は会場が整い次第始めます。ダナル選手とミカ選手は準備をしてください。こちらから合図をしますので準備ができたら会場が見えるこの場にいてください。また、他の選手や特別観戦席をご利用していた方はその特別観戦席で見ることができますので利用したい方は私から見て左にある扉から行くことができます。案内の者が待機していますので彼女達の指示に従ってください」


 男性は必要なことだけ言って会場へと戻っていった。

 フェルディナ選手はダナル選手を激励するかのようにポンと叩いて離れていく。それにたいしてダナル選手は獰猛な笑みを返している。

 仲間に返す視線とは思えないが彼流なのだろうか?


 そんなことを思いながらミカは会場が見える場所に移動する。準備などは何もない。持っている剣だけだ。


 ダナル選手は何か準備があるのか、両手剣を立て掛けて腰のポーチをガサゴソとあさり、何かを取り出す。


 出てきたのは黒光りしている抜き身の両手剣でーーー


「はぁぁぁぁぁ!?」


「ひゃぅ!?」


 ミカは驚いて大声を出してしまう。その声に驚いてフェルディナ選手が意外と可愛い悲鳴を上げる。隣にいたリリィは驚き過ぎて声も出せずに硬直している。


「・・・何だ」


「いきなり、なんですか?」


 ダナル選手とルドゥマナ選手が不機嫌そうにミカを睨む。


「あ、その、失礼しました」


(うん、落ち着こう。魔法で四次元ポケット的なものが有るんだから、アイテムボックスが有っても不思議じゃないから。異世界でアイテムボックスが有るのは当たり前でしょ。この世界はファンタジーこの世界はファンタジーこの世界はファンタジー・・・よし)


 ミカはすぐ謝り、彼らから少し距離をとる。見た目は落ち着いているように見えるが、内心では自分を落ち着かせるために自己暗示擬きを行うほど冷静さを欠いていた。


 だが、そんな自己暗示擬きでも効果が効あったのか、ミカは落ち着いてダナル選手を見ることができた。


 準決勝で武器を量産されているようなものでなく、業物のような両手剣に変えて重さを確かめるようにしているダナル選手を。


「・・・ぇ?」


(あれ?殺す気満々に見えるのは気のせいかな?)


 ここでミカは思い出してしまった。彼がトラックから降りたときの視線を。その時の視線はーーー人殺しの目に見えたことを。


(・・・うわー、これ、本気かもな~)


 が、その視線を思い出したにも関わらず、ミカは取り乱したり等はしなかった。それどころか、心の声もどこか平坦でーーー


「それでは皆さん!!これより準決勝を開始いたします。選手の入場です!」


 その様はまるで、自分の死がどうでもいいことだと言っているようにも見えた。






 歓声のなかミカとダナル選手はそれぞれ己の武器を構えて向かい合っている。特別観戦席ではリリィ達が全員座ってこちらを見ている。


 ダナル選手の構えは一回戦と同じ突進しながら上段からの振り下ろしの構え。

 対して、ミカは右手に剣を全く力をいれずに垂らし、左手は鞘を撫でているという全く構えに見えない構えをしている。


(構えが前と同じ・・・フェイントじゃなければ、たぶん一撃で勝てる方法があるけど、同じ技を同じシチュエーションで、しかも連続で撃つとかあり得ない。・・・あり得ないよね?)


 ミカはフェイントを疑い、ダナル選手のわずかな重心の変化も見逃さぬようにじっと見つめる。


(もし、同じだった場合は、剣の特殊効果的なものに注意しないといけないかな。意味もなく武器を変えたりはしないだろうし)


 もちろん、ただ、前のより殺傷力の高いだけかもしれないが、警戒しておいて損はない。そんなことを思いながらミカは合図を待つ。


「ミカ選手、準備はよろしいのですか?」


「・・・?まぁ、よろしいですよ」


「失礼。いつまでも構えをとらないので。双方始めますがよろしいですね?」


 ミカは待ち時間が長いなと思っていたけれど、それが自分のせいだと分かると審判とダナル選手に軽くだが頭を下げ答える。


「気を使わせてしまってすみません。こちらは準備万端です」


「・・・」


 ダナル選手は無言で首を縦に振る。

 それを見た審判は片手を上げて宣言する。


「では!これより準決勝を一回戦を開始いたします!・・・始め!!」


 審判の合図と共にダナル選手がミカへと向けて飛び出す。構えは振り下ろしのままだ。


(マジか・・・、ならーーー)


 考えたのはそこまで、ダナル選手は一回戦よりも早い速度でミカの眼前まで到着する。

 ミカは素早く剣帯から鞘を抜き取り、振り下ろされている両手剣に当てる。

 拮抗はしない。もとよりミカに力比べをしようなどという考えはない。

 片足を軸にダナル選手の力のほとんどを回転エネルギーに変えてミカは高速回転をする。残った僅かな力も余さず利用し、後ろに少しさがることで、勢いのまま通過しようとするダナル選手との相対速度を調整、三回転目でちょうど横を通過しようとしたダナル選手の横首へと回転エネルギーに変えたダナル選手の力を剣の柄に乗せてそのまま叩き込む。


「ゴヒュ!!」


 空気を吐くような奇妙な声を上げてダナル選手が倒れる。驚いたことにこれでも気を失わないようでヒューヒュー、と首を押さえながらなんとか呼吸をしている。


 神月流・呪輪(じゅりん)


 相手の力を片方の手で受け、運動エネルギーを回転エネルギーに変換し、逆の手で相手に返すカウンター技。

 回転数が少ないほど返す威力が大きくなり、使用者の負担も大きくなる。

 最高威力は半回転もしない高速高威力の即攻カウンターになる。


 神月流の道場では師範が認め、その中の希望者にのみ正しい『呪輪』を教わる権利が与えられていた。表の技では数少ない攻撃的な技で、裏を学ぶためにはこれが実戦レベルで使えることが条件の一つだ。

 また、日本の道場や試合ではこの技を直接使うことは禁止されていた。相手に大きな怪我をさせる恐れがあるからだ。

 ただ相手の攻撃をクルクル回って受け流すだけの『受輪』を使ってまで隠していた神月流の切り札ではあるが、使えない技を覚えようとする奇特な人物はそうそういないので、この技を覚えている人物は少ない。


 この技の使用者に危険はほとんど無い。が、


()ったー!!」


 ミカは大声を上げながら左肩を押さえてうずくまっている。

 呪輪は攻撃的ではあるが、あくまで、安全な(・・・)見せ物である表の技だ。

 だが、この場合は頭に『地球なら』が必要になる。

 地球には身体強化の魔法(・・)等という物は存在しない。人間を軽々と吹き飛ばせるような超人はほとんど居ないし、そのような相手を想定した技ではない。


 何が言いたいのかというと、相手の力が予想よりヤバかったということだ。


(うっわ、痛った!予想より力強(ちからつよ)いよ!一回転のつもりが三回転したし!バカ(ぢから)め!!・・・動かない、肩外れてない?)


 内心で文句をいいながらもミカはなんとか立ち上がり、片方の手を首に、もう片方の手を地面に付けた四つん這いの体制になっているダナル選手に近づいて首筋に剣を当てる。


「ふぅ・・・。降参してください」


「ーーーゴボッ!!」


 ダナル選手は何かを言おうとしたようだが咳き込んで言葉にならなかった。


「あっ、そっか。喋れないか・・・訂正します。降参の意図があるなら・・・どうしよ?・・・とりあえず腕を曲げて胸を地面につけてください。それが降参の合図ということで。審判さん、いいですか?」


 それを見たミカはダナル選手の首筋に剣を当てたままダナル選手と審判の男の二人に問いかける。審判の男が頷いたのを確認したミカはダナル選手の首筋に剣を少し立てる。


「さぁ、どうしますか?」


「・・・」


 ダナル選手は動かない。首筋から血が一滴垂れる。


「・・・五・・・四・・・三」


 焦れたミカはカウントダウンを始める。それでもダナル選手は動かない。

 いや、ほんの僅かに動いている。誰からも見えていない口がモゴモゴとーーー


「・・・二」


 ゴッ!!

 カウントダウンの途中でミカはダナル選手の後頭部を全力で踏みつける。


 会場がシーンと静寂に包まれる。観客だけでなく審判すら唖然としてそれを見ていた。


「・・・ふぅ。地面に胸をつけた(・・・・・・・・)ってことは降参ってことですね?」


 事を起こした当人は笑顔でダナル選手を踏みつけている。

 ミカにはそもそも零まで数える気などなかった。無言だといつ反撃が来るか分からないが、数えておけば相手はそのタイミングに合わせて何かをしようとする。そして、その間が無防備になりやすい。

 この試合では、降参宣言を聞かずとも気絶させれば勝ちだ。わざわざ待つ必要など無い。


「・・・勝者、ミカ選手」


 ミカの視線にちょっと嫌そうにしながらも審判は勝者の発表をする。ミカの行動は彼から見たら試合を汚すようなものに見えているようだ。


 会場は静まったまま、その中でミカは脱臼したせいで落とした鞘を踏みつけて回転させながら上げる。その鞘に剣を納刀。今回は魅せるつもりはない。左手を動かせないので納刀方法が限られてしまうのだ。

 まぁ、一旦剣を置いて鞘を剣帯につけ直してから納刀すれば良いだけなのだが。面倒らしい。


 ミカは観客からの声が一切無い中で退場していった。







「そんな・・・ダナルが、一撃で?」


「言ったであろう?ミカなら十回中十回勝てると」


 フェルディナ選手が呆然と呟いた言葉に何故かリリィが得意そうに答える。


「ですが、リリィさん。今の攻撃はかなりのリスクを負うもののようです。いくら身体強化を行っていたとしてもタイミングが少しずれただけで致命傷を負う。そのような技を使わなければ勝てないのなら十回中十回、と言うのは過大評価が過ぎませんか?」


 ルドゥマナ選手は暗に『今回は幸運で勝っただけだろう?』と言っている。

 彼は今の攻防をしっかりと把握できていたわけではない。ミカが剣に弾かれた辺りから分からなかったが、弾かれる際は鞘で防いでいたのは見えていた。そのタイミングがギリギリだったのでとっさだったと彼は思っていた。

 それに、彼の勘違いはそれだけではない。


「使っとらん」


「は?」


 話が繋がらずルドゥマナ選手は首をかしげる。

 が、リリィも戦うかもしれない相手に情報を教えるつもりはないようでそれ以上は何も言わない。


 ミカは魔法の使い方など知らない。身体強化など使っていない、というか使えないのだ。


 だが、リリィはミカが魔法を知らないということを疑問に思う。


(妾を助けてくれたときミカは確かに魔法を使っておった。でなければ手刀で人を斬ったりはできん・・・はずだ。なのに知らない?それに、この世界で魔法を使っていない集落、あるいは町が存在するのか?そこでは魔物をどうやって退治しておる?食料はどのように守っておる?それも、人数が多いことが利点の人間だからこそ必要な苗字が要らないほどの少人数で・・・。コクロウならば知っておったのかな・・・)


 そこまで考えリリィは首を振る。彼女だってミカを全て信用できているわけではないのだ。

 助けてくれたミカには感謝している。

 だが、一度裏切られたことのあるリリィはミカを信じきれていない。ミカは人間だ。そして、人間と魔族は敵対関係にある。その上、思い返してみるとミカは自分の情報はほとんど話していない。そんな相手に全幅の信頼を寄せられるはずがない。


 しかし、一人では生き残れないということも自覚(じかく)している。

 だから、明るくふるまって捨てられないように、お願い事ができるほど信頼してもらえるようにと彼の理解者を演じようと努力している。

 本当は泣きわめきたいのを我慢して、城に帰るためにミカを利用しようとしている自分に罪悪感を覚えながら。


(まずは魔法を教えて恩を売り、魔物の情報も話して、一緒に居ることの利点を示す。シャドウホールも使えるな。そこから城へ行くように誘導する。・・・はぁ、最低だな、妾は)


 予選前、控え室に入る前にミカに自身の魔法について話そうとしたのは罪悪感に負けそうになったというのも大きかったが、捨てられると思ったのも大きい。あれは軽々と話していいものではない。

 ただの幻術だと言えればよかった。ばれないようにミカにもかけたと言えればよかった。だが、言えなかった。


(捨てられる可能性がある。それがこんなに怖いなんて・・・)


 屋敷の者に一人にしてと追い出したこともあった、一人で外に出たいと思ったこともあった。なのに今、一人になるのを、ミカに捨てられるのを(・・・・・・・・・)恐れている。


「ちょっと、いきなり黙らないでください。どういう意味ですかと聞いてーーー」


「次の試合はすぐに開始いたします!出場選手は準備の方をお願いします」


 ルドゥマナ選手の言葉は審判の合図と歓声でかき消された。


「・・・気になりますが、自分のことに集中しましょう。では、ラライナ様全力でいかせてもらいます」


「・・・ええ」


 渋々ながらルドゥマナ選手は立ち上がり、会場へと向かう。フェルディナ選手もミカのことを聞きたそうにしていたが待たせるわけにもいかずついていく。


 リリィは二人を見もせず、ミカが戻ってくるまで一人で自己嫌悪におちいっていた。


できれば一週間投稿を頑張りたいです。

今日は前回から8日たってますが。

毎日投稿している人はすごいと思います。

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