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TS女子が「頬へのキスでレベルアップが出来る姫」になりました  作者: イヌスキ
悪者共から姫を救え!(悪者ではありません友人です)
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十八話

「――――――!!」


 浅見が息を呑んだ。

 ミコからURLが送られてきたのでクリックして確認すると、表示されたのは掲示板だった。ざっと見るだけでもチーム花沢に対する事実無根の誹謗中傷だらけで、実名さえ書かれて居ないものの、バーサーカーや勇者などといった職業での書き込みがされている。


 横から手が伸びてきてウインドウが閉じられた。


「こんなん見たって楽しい事ないっスよー」

 達樹だ。



「おい竜神」

 百合が一歩下がるようにして、小声で竜神に話しかけた。

「このまま宿に泊まるのと、街の外に出るの、どちらが正解だと思う?」

「珍しいなお前が人に意見聞くなんて」

 百合は大抵独断でチームの指針を決めていたというのに。

「こういうデリケートな事態になると判断が難しい。というかぶっちゃけ浅見や未来のようなメンタル豆腐組の対処がわからん」

「豆腐じゃねーだろ別に。オレは出たがいいと思うかな。宿に篭ったら煮詰まりそうだ」

 百合は頷いて、一歩前へ出て、


「――大鷹の塔へ行こう」

 宣言するように言った。

「ここに居ても余計に絡まれてイライラさせられそうだからな。ここは一つモンスターを惨殺して気分転換しよう。せっかく装備も一新したしな」

「うん――そうだね。私は賛成」

「うっす! おれも賛成です。惨殺とかいうのやめてくださいコエーから」


 固まってしまった未来の手を美穂子が引いて歩き出す。

「おい竜神、どこへ行く? 街の出口は向こうだぞ」

「馬車借りて行くぞ。レンタルしてただろ」

「あぁなるほど……。どうせ未来がいるかぎりモンスターとのエンカウントも無いし妥当だな」


 馬車を借りて乗り込み、表示されたウインドウで行く先を選択する。


『大鷹の塔』


 塔の天辺にすごい宝があるらしいが、十メートル以上もある鷹が守ってて誰も近寄れないという最初のダンジョンだ。


 馬車に揺られいくばくも無く到着したダンジョンは、蔦に覆われ蝙蝠舞い飛ぶ禍々しい外観をしていた。

「うわぁ……」

 どこから見てもお化け屋敷のようで、美穂子は百合の背中に、達樹と未来は浅見の背中に隠れて入り口に歩いていく。先陣を切った竜神が鉄扉を開くと、体の中央に巨大な顔があり、顔から直接×印に腕と足が伸びる怪物が襲ってきた。


『バッテン小僧が襲ってきた!』


「ひあああああああ!!?」

「うわああああああ!!」

「きゃああああああ!!?」

 叫ぶのは未来、達樹、美穂子だ。


 竜神は後退せずその場で剣を抜いて切りかかり、浅見が魔法で援護する。百合は早速購入したばかりの銃をモンスターの顔目掛けて乱射する。


「ぎゃーぎゃー!」

「わわわわわ」

 パニックになって未来が騒ぎ、ダガーを取り落とす達樹が攻撃体勢に入る前に、


『竜神強志はバッテン小僧を退治した! 800ゴールドを手に入れた!』

 ファンファーレが響いてモンスターが消え、お金が振ってくる。

「うわああもう! いきなりこええええ!!」

「どの辺りが小僧なんだよ! 顔がバスのタイヤぐらいあったぞ!」

 達樹と未来が再び浅見の背中にしがみ付く。


「ふむ。未来の力を使わなくても倒せる程度だな。できるだけ『祝福のキス』は使わず進むか」

 百合が満足そうに頷いて一人ごちた。


 中に入るとまたも石造りの扉があって、そこを開くとピラミッドの中のような砂岩で作られた大広間になっていた。

「ぎゃー竜神先輩、ドア開けるときは開けるって言ってくださいっス!」

 またモンスターが出るかとダガーを手にしつつ達樹が叫ぶ。

 今度は何も襲ってこなかったのだが。


「あれ? 道、無いぞ? 行き止まりだ」

「パズルになってるんじゃない? ほら、あそこ」

 美穂子が壁を指差した。石をスライドさせるタイプのパズルがあった。大きさはかなりのもので、黒板程度もある。


「……? とりあえず動かして見るか……?」

 百合が腕を伸ばして石をずらしていく。


 ゴゴゴゴゴゴ


 地鳴りの音がして、天井から天使の彫像が下がってきた。彫像が地面に落ちると同時に、いかにも何かが発動したようなピロロンと明るい音楽が流れた。

「出っ張ったタイルに彫像を乗せるんじゃないかな。後四つ出っ張ったタイルがあるよ」

 浅見が床を指差す。

「なるほど。えーと、これを動かして一つ落ちてきたから……」


 百合がああでもないこうでもないとパズルを動かす。出っ張ったタイルは計五枚。四枚までは何の問題も無くクリアできるのだが、最後の一枚がどうしてもどうしてもうまくいかない。


「ええい面倒くさい! 達樹でも乗せておけばいいだろう! 私達が帰ってくるまでスイッチの上に立ってろ!」

 とうとう百合がキレた。

「いいいいやっすよ! いつ皆が帰ってくるかわかんないのに、一人ここに残れっていうんですか!? 絶対いやっすいやっす!」

 達樹の頭を押さえつけ暴れる百合の横で、浅見が口元に手をやって考え込む。


「えっと……こうなってこう、で、こう……」

「解けそうか? 浅見」

「たぶん大丈夫じゃないかな? 一度出よう」

 パズルを初期化してから浅見が再度挑戦する。

 見事五枚のタイルに彫像が落ちて、扉が開いた。

 ぱちぱちぱちと全員から拍手が飛ぶ。


「おおお! すげー浅見! さっすがー!」

「ありがとうございます浅見さん! おれまじで置いていかれるかと思ってました!」

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