第1話 友達になろうよ。それとも、……、恋人になる?(恥ずかしそうにしながら)
消えないで。とき。
友達になろうよ。それとも、……、恋人になる?(恥ずかしそうにしながら)
幽霊って夜にあらわれたり、とっても怖かったり、出会ってしまったら、『死の世界に連れて行かれてしまったり』するような、そんな恐ろしい存在なんだって思っていたのだけど、でも実際にぼくが出会った幽霊はそんなことは全然なかった。
むしろなんだか全部が反対だった。
明るい昼の時間に、気持ちのいい風の吹いている青色の空の下で、いつも太陽に負けないくらいにきらきらと輝きながら笑っていたし、怖くもなくて、すごく元気で(幽霊だけど)面白くて、そして、ただ一緒にいるだけで、ぼくに嫌なことを忘れさせてくれて、代わりにすごく勇気を与えてくれた。あったかくて、前向きで、まっすぐで、なんだかいつも全速力で走っているみたいだった。
それから、すごく綺麗で可愛かった。(ときには言わなかったけど)
「私たち友達にならない? それとも私が幽霊だから、友達にはなってくれないのかな?」
真っ白な教室の中で、窓際の席(そこがぼくの席だった)にならんで座って、二人だけで話をしているときに、そんなことをときは言った。
ときは幽霊の少女で、ぼくと同じ十六歳の高校生だった。
ぼくの通っている高校の白いシャツと水色のスカートの制服を着ていて、その綺麗な髪に黄色のりぼんをつけていた。そんなときと教室で話をしていると、なんだかときが幽霊だってことを忘れてしまいそうになった。だけど、ときはやっぱり本物の幽霊で、その証拠に『ときには影がなかった』。そして、鏡にもうつったりはしなかった。
はじめてぼくがときを見たとき、教室の中で一人で空を眺めていたときにぼくがおはようって話しかけると、ときはびくっとしてから、素早くこっちに振り向いて(なんだか驚いた猫みたいだった)本当にとっても、とってもびっくりした顔をした。
「君、私が見えるの?」
そんなことをびっくりした顔のままで(そんな自分の顔を指さしながら)ときは言った。
話をしてからわかったことだけど、ときのことが見えるのは、どうやら『今のところ世界にただ一人、ぼくだけ』みたいだった。
ぼくはときに友達になろうっていわれて、「もう、ぼくたちは友達だよね」とぼくは言った。
するとときはなんだかとっても嬉しそうな顔をして、「うん。ありがとう」って言ったあとで、それからときは青色の空から突然の天気雨が降ってきたみたいに、ぼくの制服をぎゅっとつかんでから(小さな子供みたいに)とっても静かに泣きはじめた。
とても遠い夏の日。ときと一緒に過ごした思い出の日。
大人になった今でも、ぼくはそのときのことをすごくはっきりと覚えている。
だって、ぼくが忘れてしまったら、ときが本当に、この世界からあとかたもなく消えてしまうような、……、なんだか、そんな気がしたから。




