表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/23

第1話

王都近郊の森に上位魔獣が出現したという急報を受け、騎士団はただちに討伐隊を編成した。

緊迫した空気が張り詰める出撃前の広場で、団長の太い声が響き渡る。


「第一部隊、前衛の指揮はカイル副隊長に任せる。頼むぞ、我が騎士団のエース」

「はっ! 被害を最小限に抑え、必ずや速やかに討伐してみせます」


カイルの声は力強く、迷いがない。その凛々しい横顔に、周囲の若い騎士たちから羨望と信頼の眼差しが向けられる。

入団からわずか1年。並み居る先輩騎士をごぼう抜きにし、今や誰もが認める騎士団の「エース」。それが、サラの幼なじみだった。


「カイル……」


後方支援部隊の列からその背中を見つめ、サラは胸の奥がチクリと痛むのを感じた。

みんなのエース。みんなの憧れ。カイルが眩しくなればなるほど、幼い頃のように「私だけのカイル」ではなくなっていく気がして、無性に寂しくなるのだ。


「サラ」


ふいに、出撃の直前になってカイルが小走りで駆け寄ってきた。

周囲の視線が一斉にサラに集まる。


「いいか、今回は上位魔獣だ。お前は絶対に後方から離れるなよ。危なくなったらすぐに逃げろ」

「ちょっと、子供扱いしないでよ。私だって第一部隊の魔道士なんだから」

「分かってるって。でも、俺がお前を守るって昔から決めてるんだ。……じゃあ、行ってくる」


頭をぽんっと撫でて、カイルは疾風のように前線へと駆けていった。

サラは彼に撫でられた髪をそっと押さえる。守る、と言ってくれるのは嬉しい。でも、それは「か弱い幼なじみ」に向けられた保護欲にすぎない。


「……置いていかれないために魔法を覚えたって、何度も言ってるのに」


サラは杖を握り直し、さらしでキツく巻いた胸の息苦しさを深呼吸で整えた。


戦闘が始まると、カイルの圧倒的な実力は瞬く間に戦場を支配した。

銀閃が走るたびに、強靭な皮膚を持つ魔獣たちが次々と地に伏していく。誰の目にも明らかな、次元の違う剣技。エースの名に恥じないその戦いぶりに、味方から感嘆のどよめきが上がる。


しかし、上位魔獣の群れは狡猾だった。

カイルが大型の個体に気を取られ、大きく剣を振りかぶったその一瞬——彼の死角である頭上から、息を潜めていた別の魔獣が鋭い爪を振り下ろした。


「カイル副隊長!」


周囲の騎士の叫び声が遅れる。カイル自身も、わずかに反応が遅れた。


——その時だった。


「『炎球フレア・バースト』!!」


凛とした詠唱と共に、カイルの頭上スレスレを灼熱の業火が駆け抜けた。

極大に練り上げられた炎の塊は、死角から迫っていた魔獣を空中で見事に焼き尽くし、跡形もなく消し去った。

熱波に髪を揺らしたカイルが、驚いて後ろを振り返る。

そこには、制止を振り切って前衛のすぐ後ろまで飛び出してきたサラが、杖を構え、肩で息をしながら立っていた。


「サ、サラ……!? お前、後方にいろって……」

「バカイル!!」


サラは涙目になりながら、戦場に響き渡る声で叫んだ。


「背中は任せたって、さっき自分で言ったでしょ! 私をただの泣き虫だと思ったら大間違いなんだから!」


凄まじい威力の魔法と、普段の大人しさからは想像もつかないサラの剣幕に、戦場が一瞬だけ静まり返る。

呆然としていたカイルだったが、やがてふっと吹き出すように笑い、そして、これまでにないほど嬉しそうな、誇り高きエースの顔で剣を構え直した。


「……ああ、そうだったな。悪かった、俺の優秀な相棒!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ