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【完結】転生したら嫌われ者の悪役令嬢でしたが、前世で倒したドラゴンが守護精霊になってついてきたので無敵なようです  作者: As-me・com


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第38話 特別なひと(ジュドー視点 )



 オレがその場に出くわしたのは、ある意味で運命だったのだ。しかしまさか、それがこんな事になるなんて思いもしなかった。


 いつもならもう少し冷静に状況を判断しようとするはずなのに、頭に血が登ったオレは考える間もなくゲイルに精霊魔法を使ってオレをその場に運ぶようにと口に出していたのだった。








***







 あれから……そう、“もう一人のオレ”がフィレンツェアに対してやらかした上に色々と丸投げして勝手に眠ってしまった後から。オレは目まぐるしくなる程に大変な事に巻き込まれていったのである。






「ジュドー様。アレスター国から離れ、第一王子の目が無い場所であなた様と向かい合える日をずっと心待ちにしておりました。実は我が守護精霊が第一王子に囚われていて命令を聞くフリをしていたのです。ですが、我々はジュドー様のオッドアイを吉兆と崇拝する第二王子殿下派閥なのです!」


「は?」



 あれから護衛はオレにとって寝耳に水な事をペラペラと喋り出した。まさか第一王子である兄上が秘密裏に精霊を捕らえる術を研究していて、それが成功していただなんて……。しかもすでにこの護衛の守護精霊は兄上に捕らえられていると言う。そして未だ研究しているのだとしたら、たぶん犠牲者は想像以上にたくさんいるのだろう。



「……そうして第一王子は、守護精霊を捕まえてしまえば人間と精霊の契約を無理矢理にでも破棄させることが出来るのではないかと目論んでおられるのです。そして自由であるべき精霊を従わせ、自分たちの思うままに守護精霊を取り替えさせたり人為的に“加護無し”を作ることが出来れば自分の意のままに世界を操れるはずだと……。それに平民を“加護無し”にしてしまえば、それこそ人権など無いも等しい奴隷を好きなだけ作り出せる、とも。……第一王子は戦争を起こすおつもりなのです。もちろん“加護無し”となり奴隷とされた人間はその戦争の道具として使われるでしょう」


 それが事実ならばショックでしかなかった。しかしひとつ引っかかることもある。


「……つまり、兄上の目論見を知ってしまい守護精霊を奪われたからオレに兄上を止めて欲しいと、そう言いたいんだな?確かに第一王子である兄上を止める為には同じ王子である弟のオレを持ち上げるのが手っ取り早いだろう……それはわかる。だが……オレの瞳は、このオッドアイは不吉なはずではなかったのか。これまでずっと……あれほどオレの事をハズレ王子だと言っていたはずなのに、なぜ今更になって吉兆などと……」


「それは……その……いえ、じ、実は!」


 護衛が、少し言いにくそうに口ごもり出した。なぜならこの護衛自身もその昔はオレの悪口を言って兄上についていたひとりだからだ。……結局は兄上に利用されてしまったようだが。そして、それでも意を決したかのように護衛が口を開いたその時。


「その伝承の解釈が間違っていたのですわ」


 そう言って、金色の髪を靡かせたひとりの少女がどこからともなく姿を現したのだ。


「なっ……お前は今、どこから……?!」


 気配は無かった。その証拠にオレの守護精霊のゲイルも驚いて周りをキョロキョロと見回している。


『さっきまでは、確かに誰もいなかったよ!それに今も、目の前にいるのになんか変だ……!』


「気配が……普通と違う?」


 するとその少女は紫がかった瞳を弧を描くように細めると「……ぐふふ♡」と嬉しそうに口の端を吊り上げた。しかしその唇が、我慢の限界とばかりにわなわなと震えていて何か呟いているようにも見えた。


 オレを怖がっている……?いや、違う。あの笑い方は何か企んでいるような────それにしても、なんてねっとりとした絡みつくような視線なんだ。



「ブツブツ……(これはこれは……なんて素晴らしい容姿に見事なオッドアイでござろうか。ぐふ♡それに拙者の〈腐ったスカウター〉によればかなりの強者と見た。その戦闘力は計りしれぬでござる!ツンデレ要素も兼ね備えている上に受けにも攻めにも育つ可能性を秘めているとは……信者たちから聞いていた以上に掘り出し物のようでござるな……!〈オタ神〉殿のモノでさえ無ければ……いやいや、それでもたまに貸してもらえるならば《《この世界》》へ来たかいがあったというもの……新作はこれで決まりでこざるなぁ。筆が進みそうな予感がバシバシするでこざりますなぁ~)はぁはぁ、ぐふふふふふふ……♡」


 よもや年頃の令嬢の口から吐き出されたとは到底思えないその腹の底から込み上げてくるような笑いを聞いた途端、まるで獰猛な肉食獣がヨダレを垂らして今か今かとこちらを狡猾に狙ってきているような気分になりゾクリと背筋に冷たい汗が滝のように流れ出した。


 あのたくさんの令嬢たちに群がられた時も似たように感じたが、たったひとりのこの令嬢から感じるそれはその時のそれをはるかに凌ぐものだった。


 そう、これは────丸裸にされて縛り上げられた上に腹ペコの肉食獣の目の前に放り出されたような感じだ!


 オレはその視線に身の危険を感じ、思わず両手で我が身を庇うように隠したが逆効果だったようで令嬢の皮を被った獰猛な肉食獣の目がより輝いただけだった。


「ジュ、ジュドー様!実はこちらの令嬢は────「お待ちなさい。名乗りなら自分でいたしますわ」……は、はい。失礼いたしました……」


 オレが不審な眼差しでその令嬢を見ているのに気付いた護衛が、慌ててオレの前に出ようとしたがその令嬢が慣れた様子でそれを諌めた。どうやら護衛は彼女の事を知っているらしくその場に膝をつく。すでにその目は忠誠を誓っているかのように見えた。


「ジュドー殿下……」


 そして、さっきまでの怪しさ満載の表情をやめたかと思うと……淑女らしい顔つきになったその令嬢が見事なまでの華麗なカーテシーを披露して見せて来たのだ。


「改めまして、わたくしの名前はフランソア・ロットンと申します。ここより遥か遠くの異国の地にあるロットン帝国の第三王女でございますわ。普段は“この世界”に《《貴腐人》》のなんたるかを広める為に活動しておりますのよ」


「……ロットン帝国だと?そんな国があったのか……」



「はい。そして、我が国には様々な伝承が残されているのですが、実はその中には他の国に関する古い伝承も残されているのです。もちろんジュドー殿下の祖国、アレスター国に関する伝承も……。つまり、“オッドアイの瞳についての事柄も”ですわ。アレスター国に伝わるオッドアイについての伝承は間違っていたのです。その真実をお伝えするためにわたくしは、はるばる《《この世界》》へやってきたのでございます……《《ジュドー殿下の為》》に」


 初めて聞く国名にも驚いたが、その国の王女だというこの少女がオレの為にその遠い国からやって来たということにさらに驚いてしまっていた。


 それに、ずっと信じていた不吉だと言われるこのオッドアイの言い伝えが……間違っていた?


 オレはその時、酷く動揺してしまったのだ。


「オッドアイに関する伝承……だと?しかも間違っていたなんて……。いや、なぜそんな、聞いたこともない異国の地にアレスター国の言い伝えが……?それに、なんで見ず知らずのオレの為にわざわざ君はやって来たというんだ。そんなに詳しいのなら、オレについての事もよく知っているだろう?!」


「伝承について知っている云々は、わたくしの祖先が伝承マニアだったからだと伝え聞いておりますわ。それは最初はただの収集癖だったそうなのですが、そのうちに各伝承の謎を解き明かすのが趣味になった祖先は旅に出て調べては検証してを繰り返していたのだそうです。はるか昔に祖先はアレスター国へ調べた事を伝えようとしたそうなのですが、その頃はまだロットン帝国は国では無く小さな村だったそうで相手にされなかったのだとか……。そこから祖先は村を大きくしようと試行錯誤を繰り返し、それらの知識を後世に残してくれました。そして……わたくしの姉達の功績もあって今は帝国を名乗るまでに発展したのですわ。(本当は〈オタ神〉殿の裏設定資料集をこっそり読んでいたので知っているだけなのでござる。拙者の世界とこの世界を無理矢理繋げたから多少無理が過ぎるのは誤差範囲内でござるが、とりあえずジュドー・アレスターの関心は得られたようでござるなぁ。〈オタ神〉殿のメモの通り、コンプレックスの塊でござるからそれをくすぐれば……)それに……実はわたくしの国ではジュドー殿下はとても人気者なのです。噂はもちろん知っていますが、わたくしはそれを信じてはおりません。それに、どうしてもジュドー殿下のお役に立ちたくて……」


 一瞬またもや不穏な空気を感じたものの、ポッと顔を赤らめて俯きつつ上目遣いでオレを見てくるその令嬢……いや、フランソア王女に一気に好感が持ててしまったのだ。オレに対する好意的な態度に嘘が無いと感じたせいもあるが、わざわざオレの為にこの国へやって来たと言われて悪い気はしない。それに確かにこのフランソア王女にはオレのオッドアイの瞳を嫌悪している様子は無かった。むしろ気に入っているようだ。


「あの……実はわたくしと一緒にやって来たロットン帝国の令嬢たちがすでにジュドー殿下に接触したと聞きましたわ。我が国ではジュドー殿下はまさにアイドル……憧れの方なのです。はしたなくもジュドー殿下を囲って質問攻めにしたとか。もしかしたらお怒りではないかと思いまして、ロットン帝国を代表して、ご迷惑をおかけしたことを深くお詫びいたしますわ」


「いや、それは別に……戸惑っただけで、怒ったりなんかは……していないが「まぁ!よかったですわ!さすがジュドー殿下は御心が広いですのね!」え、えーと」


 なんだろう。フィレンツェアに感じたような気持ちではないが、悪い気はしない。たぶん、このオッドアイを受け入れてくれている希少な人物だからだろうか。それにオレを囲っていたあの令嬢たちもフランソア王女の仲間だったのかと思うとなぜか納得してしまった。あの令嬢たちはこの国ではなくロットン帝国の令嬢たちだったのだ。だからオッドアイを嫌悪していなかったのだろう。


「……とにかく、わたくしとわたくしの仲間たちはジュドー殿下の味方なのだと知っておいて欲しかったのですわ。ジュドー殿下のお兄様の悪行も裏の世界では噂になっておりまして、わたくしの耳にも入っております。それもあってなんとかアレスター国との繋がりを求めた結果……そこの護衛と繋がったのでございますわ。ジュドー殿下、どうかわたくしの集う集会に来てくださいませ……そこでなら、きっとジュドー殿下の憂いを晴らすお手伝いができるはずでこざいます。詳しくはそこで……」


 深々と頭を下げられ、さすがにそれを突っぱねる事は出来なかったのだ。


「……は、話を聞くだけなら……別にいいけど」



「────んふふふふふふふ………………」



 そうして承諾した途端、フランソア王女の雰囲気がまたもやガラリと変わってしまったのである。



「……………ぐふふふふ、はぁーい!言質を取ったでこざるよぉ♡それでは通称〈ジュドー殿下ファンクラブの集い〉、ビックリドッキリ写生大会にご招待するでこざるぅ~!!」


「へ?!」


 そしてフランソア王女がパチン!と指を鳴らすと護衛がバタリと倒れてしまい、どうやら意識を失っているようだった。そしてオレもいつの間にかロープでぐるぐる巻きにされていて、ゲイルに至ってはフランソア王女の手の中に捕まっている。あ、白目を剥いて……もしかして気絶してる?!


「ん、なぁ────?!」


 そうしてオレは、そのまま連れ去られてしまったのだった。




 その後は、なんというか……ある意味で地獄である。


 もはや無礼講とばかりに例の令嬢たちに群がられ、よくわからないポーズを要求されては延々と写生大会が続けられた。ちょっとでも動くと怒られるし。この間の態度との違いに「女って怖い」とつくづく思ってしまった。


 しかもフランソア王女の話をよくよく聞けば、なんと“もう一人のオレ”の知り合いなのだとか。その話を詳しく聞いてオレは愕然としていた。


 さらにオッドアイの正しい伝承を教えて欲しいと言ったら「あ、オッドアイは不吉にも吉兆にもどちらにもなるってだけでござるよー。たぶん政治的に都合の良い解釈が都合良く伝承に残ったんでござろうな。だから護衛殿には吉兆のパターンの方を吹き込んだだけでこざるよ、あはははー」と、軽く言われてしまったのだ。


 オレの長年の悩みの扱いが……軽い!軽すぎる!なんだよ、吉兆の方のパターンって?!



「まぁ、それは置いておいて「置くな!」それでなんと、“彼”はもう目覚められていたでござったのか。それは大変失礼したでござる。てっきり《《まだ》》だと思っておりましたので、少々強引に連れてきてしまったでござるよ。それでは、果たしてジュドー殿下は一体どこまでお知りなのかな……?」


 すっかり口調の変わってしまったフランソア王女の態度にビクビクしながらも、知り合いならばと、“もう一人のオレ”との出会いを語った。なにせこんな事など他の人間には話すことなど出来ないからそれはそれで話し相手が見つかって嬉しくはあったのだ。……いや、それにしても変わり過ぎだろ。色々無視されているし。


 ちなみに護衛はフランソア王女にせんのu……操られt……いやまぁ、うん。とにかく絶対にオレを裏切らない都合の良い存在になっていてオレの味方にはなっているそうなので深く突っ込むのはやめておいた。これからよく泣くらしく、それだけはどうしようもないのだとか。それに、護衛の守護精霊の事もちゃんと手は打ってあるそうなので任せることにしたのだ。


「拙者も“この世界”の守護精霊については思うところがあるのでござるよ。とにかく“彼”と相談させて下され……あぁ、記憶は一応共有しておられるのか────。おっと、それでも隠そうと思えば隠せるのでござるな。ふふっ、では出来れば……拙者の事はまだ伝えないでおいて下され。

 まぁ、どのみち起きて直ぐには思い出せないでござろうから……少しイタズラしてもよろしいかな?拙者も“彼”と会うのは久しぶりでござるのから、ご挨拶がしたいので……♡」


 こてんと、首を傾げてにっこりと笑うフランソア王女は可愛らしかった。まぁ、やはりフィレンツェアに感じるような気持ちにはならなかったが。それにフランソア王女の変な言葉遣いが慣れないせいかもしれない。それにしても、“もう一人のオレ”を追いかけて“別の世界”からやってくるなんて……“もう一人のオレ”は以外と罪づくりな奴なのかもしれないな。


「あぁ、“もう一人のオレ”にはオレも振り回されているから、少しくらい意趣返し出来るならそれは全然いいんだが……あの、フランソア王女……いや、“もう一人のオレ”と同じように君にも違う名前があるのか?あの、もし間違っていたら謝るが……もしかして君は“もう一人のオレ”の事を────」


 オレの言葉にピクリと反応するも、フランソア王女はにこりと笑顔を見せた。


「拙者は────いいえ、……“この世界”では、フランソアでいいでござるよ。それに……おっと、やっぱりなんでもないでござる。

 ……あぁ!それと……“彼”の大切な聖女についての情報があるのでござるのだが────」


「え」


 なにやら誤魔化されたようにも感じたが、その情報が耳に届くと同時にオレは急な眠気に襲われた。そして詳しく聞くことも出来ずに、そのまま“もう一人のオレ”と入れ替わったのだった。







 あまりに深く眠ってしまっていたようで、“もう一人のオレ”が誰とどんな話をしたのかはまだ知らない。やはり眠っていると記憶を共有するにも時間がかかるようだ。だが、オレは目覚めたと同時に眠る前にフランソア王女に聞いた事を思い出してしまったのだ。


 外はすっかり朝で、周りを見ればペンと紙を抱き締めた令嬢たちが死屍累々とばかりに倒れている。その顔はやりきったとばかりに満足気で、いくつもの紙の束がテーブルの上に積み上がっていた。なにやら全員ゾンビのようだ……一応生きているようではあるが。だが、そんな事を気にしている余裕はその時のオレにはなかった。


 眠る前にフランソア王女から聞かされた《《フィレンツェア》》に関する情報。それが気になって仕方がなかった。





「………実は、“彼”の大切な聖女の魂を持つ少女を付け狙っている輩がいるらしいとの情報があるのでござるよ。どうやら“加護無し”を探しているらしいのだとか……しかし敵も狡猾で拙者のどの情報網にもハッキリとは引っかからないので詳しい事はわからないのでござる。この辺も“彼”に確認しないとどうとも言えないのでござるが……もしよろしければ、もしもの為にジュドー殿下も気にかけておいて欲しいのでござるよ。それに……」


 かなりの情報を網羅しているだろうフランソア王女が眉を顰めて言葉を濁した。


「それに……もしかしたら、精霊が関係している可能性もあるのではないかと────」



 つまり、精霊から嫌われていて“加護無し”となってしまっているフィレンツェアの身が危険に及ぶかもしれない。フランソア王女はそう言いたいのである。



 即座にそれを思い出したオレは、フランソア王女の姿を確認することもなくその場を走り出た。あの時気絶していたゲイルは未だ寝息を立てていたがそれを鷲掴みにして叩き起こすことも忘れない。


 自分が今、どんな姿をしているかなんて気にもしていなかった。とにかくフィレンツェアの無事な姿を確認しなければ安心出来なかったのだ。



 そして本能のままに学園の湖の方面に行ったのだが……そこで見たのは、フィレンツェアに迫る黒髪の男の姿で────次に気付いた時には、オレはその胸にフィレンツェアをきつく抱き締めていた。


 まさか“もう一人のオレ”が、あの令嬢たちの過度な要望に応えるあまりにほぼ半裸状態になっていたなど思ってもいなかったのだ。


 そして、フィレンツェアに迫っていたらしい黒髪の男に威嚇しつつ素肌に感じるフィレンツェアの柔らかな肌の感触にふと我に返った。しかもここまで走ってきたからかオレはかなり汗をかいていてじっとりと濡れている。そんな肌にフィレンツェアの顔を押し付けてしまっているではないか。


 恐る恐る視線を下に向けて見れば……顔を真っ赤にしたフィレンツェアが、それこそ涙目になりながらオレを睨んでいたのである。


 ヤバい。と思った瞬間。何か言い訳をしようと口を開いたのだが……なぜかその一瞬でどこから湧いて出たのか口の中が氷でいっぱいになり、まともな声が出せなくなった。さらに腕の関節までが凍り付いたかのように力が出なくなると、フィレンツェアを捕らえていた両腕がオレの意志とは反してその体を一気に解放してしまったのだ。


 目の端に映った黒髪の男が「おやまぁ……」と呟いたがそれどころではなく……。


「ふぃ、ふぃれんひぃあ…!ほへはほの……」


「────こぉぉぉんの、ド変態ぃぃぃぃぃ!!!」


 ばちーんっ!!と、自由になったフィレンツェアの手のひらがオレの頬を打つ音がその場に響いたのだった。









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