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【完結】転生したら嫌われ者の悪役令嬢でしたが、前世で倒したドラゴンが守護精霊になってついてきたので無敵なようです  作者: As-me・com


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第32話 終りの無い続き(ヒロイン視点 )



 《《次》》は、グラヴィス・シュヴァリエだった。






 あれから月日が経ち、あたしは再び学園にやってくる日が来た。


 領地内では前回と同じくちやほやされたがこれも全てセイレーンの魅了魔法のせいだと思うと心の底から喜べないでいる。セイレーンにも魅了魔法をあまり使わないで欲しいとお願いしたのだが断られてしまった。


 夢の話をしてもよくわからないと言う反応をされてしまったのだ。


 魅了魔法は相手の“好意”を増幅する魔法だと言うが、それが純粋な気持ちだけが対象ではないと既にあたしは知っている。でも、セイレーンは人間の愛に興味津々であたしの気持ちなどお構い無しなのだ。精霊は気まぐれでわがままだと言うが本当だなと思った。


 つまりは自衛するしかない。後、変に自惚れて勘違いしないようにしないと……。とりあえず、もうジェスティードには関わらないようにするしかない。


 そしてジェスティードを避け続けていたある日、あたしは例の悪役令嬢……フィレンツェア・ブリュードに出会ってしまう。


「あっ」


 前回でやられた酷いイジメを思い出してしまい思わず身を竦めてしまうと、あたしの態度にフィレンツェアが眉を顰めた。当たり前だ。だって“今回”は初めて顔を合わせたのだから。どうにか誤魔化さないと。と考えていると、なんとそこにジェスティードが現れたのだ。


「おいフィレンツェア、今度はこの男爵令嬢をイジメているのか。こんなに怯えてかわいそうに。お前は自分が“加護無し”だと自覚はしているのか?彼女は素晴らしい守護精霊を持っているんだぞ」


「あら、ジェスティード殿下。その方とは初対面で……私は《《まだ》》何もしていませんわ。と言っても、どうせ信じてはくださらないのでしょう?だって私は“加護無し”ですもの」


「ふん、そんな態度だから“悪役令嬢”などと言われるんだ。もう少し俺の婚約者らしい振る舞いをして欲しいものだな」


「……承知いたしました」


 綺麗なカーテシーで頭を下げたフィレンツェアだったが、その瞳はあたしを忌々しげに睨んでいるどうやら────またあのイジメの日々が始まってしまうようだ。たぶん、フィレンツェアから見ればあたしはジェスティードの寵愛を狙う姑息な男爵令嬢というところだろう。


 それからあたしは学園での居心地が悪くなり、逃げるように図書館に通った。それがフィレンツェアにバレて嫌がらせの一環としてたくさんの本を集めさせられたり、せっかく届けたのに突き返されたり……それでも命を狙われるようなことは無かったので、前回のイジメよりはだいぶマシだったのが救いである。


 でも、そこでグラヴィス・シュヴァリエに出会ったのだ。


 大量の本を抱えていた時に足元が見えず躓いてしまい、それを助けてくれたのがグラヴィスだった。



「こんなにたくさんの本を読んで勉強しているなんて、君はなんて努力家なんだ」


「シュヴァリエ先生……」



 グラヴィスのライトブラウンの瞳がとても優しく見えた。その時もセイレーンが楽しそうに“歌”を歌っていたのだが……なぜかグラヴィスは大丈夫のような気がしていたのだ。きっとこの人なら悪事になんて手を染めたりしない。と。


 それからグラヴィスはあたしにいろんなことを教えてくれた。


「人間は嘘を付くが、本は真実しか語らない」


 いつもそう言ってあたしのために本を選んでくれる。あたしにはそれが愛の囁きのように聞こえ、前回とは違う穏やかな時間が傷付いたあたしの心を癒してくれたのだ。フィレンツェアに嫌がらせをされていることも知られてしまったがグラヴィスは公爵令嬢であるフィレンツェアに苦言を強いてくれたと言う。あたしの味方はグラヴィスだけだった。


「俺がお前をどんな攻撃からも守ってやる」


「嬉しい……!」



 そんな時だ。なぜかジェスティードが図書館にやって来てあたしを捕まえようとしてきたのだ。


 前回のジェスティードは図書館になんか行ったことなど無いはずだ。とっさに脳裏に浮かんだのは“前回”のジェスティードの姿で……あたしは恐怖のあまり言わなくていいことを叫んでしまった。



「ジェスティード様、あたしはあなたの悪事になど手を貸しません!守護精霊を奪った人を奴隷にするなんて許されないわ!犯罪者なのはあなたの方よ!」


 あたしの発言に顔を青ざめたのはジェスティードではなくグラヴィスの方だった。


「ルル・ハンダーソン嬢、第二王子に向かってなんてことを……!」


「守護精霊を奪う?奴隷?……この女は何を言っているんだ?まだフィレンツェアに嫌がらせをされているというから、俺がわざわざ話を聞きに来てやったのに……!おい、グラヴィス・シュヴァリエ!教師の言葉だからと信じてフィレンツェアに見つからないようにやって来た俺の顔によくも泥を塗ってくれたな?!お前が希少な治癒魔法を使うルル嬢を助けてやってくれと懇願してきたんじゃないのか?!」


 “前回”とは違い、“今回”のジェスティードは犯罪には手を染めていなかったのだ。グラヴィスが自分の苦言だけでは嫌がらせをやめようとしないフィレンツェアを止めるために内密で相談したいからもジェスティードを図書館に呼んでいたなんて……。


「その女を不敬罪でひっ捕らえろ!!」


 その気迫にあたしはその場から逃げ出した。そして階段で足を滑らせ────首の骨を折って死んでしまったのだ。




 遠のく意識の中で、またもやピロン!と音が聞こえた。やはり“世界”が止まったようだ。



 そしてまたもや周りの風景がセピア色に染まり、白黒が反転していく。あぁ、これも同じだ。



『うわぁ、これも死んじゃったよ!おっかしいなぁ、バッドエンドばっかり……参考にしたやつどれだったっけ?あ、間違えてる……よし、やり直ししよ!』



 〈GAMEOVER! 攻略に失敗しました。グラヴィスルートBADEND〉





 そしてあたしは、また人生をやり直すことになったのだ。



 《《その次》》は、ノーランド・スラングだった。




 ジェスティードにもグラヴィスにも関わりたくなかったあたしは、学園をサボって街中をうろくつようになった。そこでひったくりに遭遇してしまい困っているところをノーランドに助けられたのだ。


 ジェスティードともグラヴィスとも違うタイプのノーランドに心が惹かれそうになったがそれをぐっと堪える。だってセイレーンがまた“歌”を歌っていたからだ。あたしが常に愛されるように願ってるからこそ魅了魔法を使うのだと……。でも荒んだでしまったあたしには魅了魔法がないと誰からも愛されないと言われているように感じたのだ。


 あたしは最初、ノーランドを無視することにしたのだ。関わってはいけない心に決めて……でも、ノーランドの愛はまっすぐだった。あたしはだんだんそれを受け入れる気になっていたのだ。もしかしたら今度こそ幸せになれるかもしれないと……。


 しかし、やはりと言うかジェスティードがあたしに絡んでくる。そして必ずフィレンツェアに敵視されるまでがセットである。魅了魔法の事はバレていないが治癒魔法の方は有名だったので王族に目をつけられるのは仕方がないのかもしれない。それに2回目時でジェスティードが犯罪に関わっていない場合があることを学んだので余計な事は言わずにフィレンツェアの嫌がらせも平気な顔をしてこなしてみせた。




 そして────あたしは死んだ。




 思い込みの激しいまっすぐなノーランドが、あたしとジェスティードの噂を鵜呑みにしてジェスティードを殴りに行ったのだ。それをジェスティードが剣でやり返そうとして……ノーランドは側にいたあたしを盾にしたのである。


「これで君の愛は俺だけのものだ。誰にも渡さない」



 あまりにも重すぎる愛の告白が耳に届く頃には、あたしの意識は途絶えていた。



 ピロン!


『えー、なにこれドン引きなんだけど。あ、悪役令嬢用のデータが混ざってるよぉ~、バグ?もう、バグだらけなんだけど!これも修正しないと~!』



 〈GAMEOVER! 攻略に失敗しました。ノーランドルートBADEND〉





 そして《《さらに次》》に、ジュドー・アレスターだ。




 もう、思い出すのも嫌になる。


 いつものようにジェスティードに目をつけられ、フィレンツェアにイジメられていたあたしはビリビリに破かれた教科書を持って中庭にいた。こんな場面で誰かに関わると必ずセイレーンが“歌”を歌おうとするので人目を避けていたのだ。


 なぜ自分がこんな目に遭わなければいけないのか。何度死んだらこの奇妙な世界から抜け出せるのか。それを考えたらぽろりと涙が溢れた。


「……お、お前は誰だ」


「あ!ご、ごめんなさい……!ここなら誰もいないと思って」



 その声に驚き、まさか誰かいるとは思っていなかったので声が上擦ってしまった。そしてセイレーンがまさに今、歌い出そうとしているのを見て大急ぎでその場から逃げ出したのである。


 その時の相手が後から留学してきたジュドーだと知り、隣国の第二王子なんて不吉過ぎると避けていたのだが……それも全て無駄な足掻きだったのだ。


 ジュドーにはしっかりとセイレーンの魅了魔法がかかっていて事あるごとにあたしに付きまとうようになった。もちろん警戒はしていたがだんだんと懐いてくるジュドーに絆されかけた頃……なんと、最初のジェスティードの時に露見したあの奴隷犯罪はジュドーの兄が黒幕だった事がわかってしまった。


 そしてあたしが希少な治癒魔法を使うことがわかると、ジュドーの兄はあたしを捕まえて利用しようとしたのだが……後はもうご察しの通りである。王座の争いなんかどうでもいい。どうでもいいから────。



 ピロン!


『うーん、全部消去しちゃうと復元が大変だからデータの上書きにしてるけど……攻略って難しいなぁ。よし、これも新しいシナリオを上書きにしとこっと!一部はそのまま使うことにしてぇ~』




 〈GAMEOVER! 攻略に失敗しました。ジュドールートBADEND〉





 こうしてあたしは、それからも何度も何度も死んでは時間の巻き戻る人生を繰り返し続けていた。


 何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も……。


 何十回、何百回とやり直し続けている中でいくつかわかったことがある。それは、あたしの死に直接関わる人物はジェスティードとグラヴィス、それにノーランドとジュドーの4人だけだということだ。その時のあたしがどう行動するかで相手が変わりはするがこの4人以外の男が関わってくる様子は無かった。


 そして、ジェスティードは他の3人の時でも必ずあたしに執拗に絡んできてそのせいで悪役令嬢フィレンツェアに必ずイジメられるのである。


 他には、同じ人物と関わっていても少しづつ変化がある事。同じように死んでしまうのは変わりないのだがその内容がまったく同じな時が無いのだ。そして回数を重ねるごとに巻き戻る時間が短くなってきている事。以前はセイレーンの魔法を初めて使う子供の頃まで戻っていたのに、それがだんだんと短くなりここ数回は学園に入ったばかりの頃で目が覚めるのだ。


 後は……この4人の性格が多少マシになっているところだろうか。一番はっきり違いがわかるのがジェスティードで、最初の時のように最低最悪な性格は無くなり回数を重ねるごとになんだか……言い方は悪いが馬鹿っぽくなっている気がした。それでも違う理由で結局は死んでしまうのだけれど。


 いつ頃からかはもう死んだ回数も数え切れなくなっていた。慣れたというべきか吹っ切れたと言うべきか……いや、あたしは悲観になるのをやめたのだ。悲劇のヒロインを気取っていてもなんの解決もしないのだから。


 そう、だから……いつの頃からかいつも死ぬ時に見る空の文字の意味を考え出していた。あれにはいつも必ず〈攻略に失敗しました。〉と書いてある。つまりあたしは何かに失敗したから死んではやり直しを繰り返しているのだと。


 そしていつも誰かひとりをどうにかしようと躍起になっていたがそれをやめたらどうなるのかと考えたのだ。例えば……ひとりではなく4人を同時にいつものように引っかき回したら“何か”が変わるのではないかと────。


 その時にはすでに4人それぞれの好みや振る舞い方は身に染み付いていた。途中までは完璧に攻略出来ているとは思う。でも、いつも最後に“何か”を失敗してしまうらしい。それを探るためにも、いつもと違う事をする必要があるのではないか。新しい人生の目覚めと共に、あたしはそう決意したのである。それに、4人もいれば多少失敗してもすぐにゲームオーバーとやらにはならない気もした。


 だから今回は、セイレーンにいつもと逆で魅了の魔法をどんどん使って欲しいとお願いしておいたのだ。これまでの記憶の無いセイレーンは特に気にすることもなく喜んでいるがあたしからしたら結構大きな賭けである。でもまた失敗したとしてもやる意味はあるはずなのだ。4人それぞれにめいっぱいの魔法を使ったときにどんな反応になるのかを知るために……そして、“世界”を変えるために。


 今度こそ生き残る為に。








「まぁ、そうしてたらこの有様なんだけどね……」


 精霊魔法であろうつむじ風に飛ばされてきたのは学園内にある湖の側だった。桟橋のかかっている静かな湖は林に囲まれていて今は人の気配もありそうにない。全身葉っぱだらけになりながらあたしはその場にぺたりと座り込んだ。


 ジュドーに向けた会話や行動は、“最初”は時間をかけてやっていた事だったが、“何度目か”からは細かい事を端折って詰め込んださっきのようなやり方でもジュドーは必ずあたしに一目惚れをして付き纏うようになっていた。でも……。


「グラヴィスに続いて、ジュドーまでも“違う”反応をするなんて────」


『……ルルったらぁ、フラれちゃったのになんでそんなに嬉しそうなのぉ?もぉう、わたくしの“歌”が届く前に飛ばされちゃったわぁ!あの人間とルルの恋愛模様が見たかったのにぃ』


 思わずニヤけるのが止まらなくなったあたしの目の前にはご機嫌斜めなセイレーンがいた。普段はあたしの前にも声だけで姿は滅多に現さないセイレーンだが、今回は相当不満だったのか珍しくハッキリと姿を現し、両頬をぷくりと膨らませて唇を尖らせている。


「まぁまぁ、むくれないでよ。別にいーじゃない。まだジェスティードがいるんだし」


 セイレーンは愛に盲目で一途な精霊だと言われているが、あたしからしたらただのミーハーな精霊である。とにかく人間の恋愛沙汰が大好きで恋バナが大好物なのだ。何回目かの人生の時にそれを知って少なからずショックを受けたものである。まぁそれでも、自由に空を飛び回り楽しそうに笑ってくれているのでいいかなとも思ってしまう。


 それはそれとして。とにかくあたし専属の恋のキューピッドのつもりらしいのだが、セイレーンの姿は天使(キューピッド)とはだいぶかけ離れていた。


 上半身は裸の人間の女性のようだが、その両腕には大きな翼になっていて下半身は虹色の鱗を持つ大きな魚だ。それに肌は真珠のように真っ白で輝いている。同じく真珠色の髪と瞳が神秘的ながらも不気味さを増している。そんなセイレーンがため息をつき肩を竦めた。


『もぉう、ルルったらまたそんな喋り方なんかしてぇ。愛を手に入れて持続させるためにはぁ、ちゃぁんと可愛らしい口調じゃないとあの王子サマにもそのうち逃げられちゃうわよぉ?』


「わかってるわよ、セイレーン」


 普段のあたしの口調は愛の教師を名乗るセイレーン直伝である。《《何回も》》繰り返し特訓させられ叩き込まれたので今は慣れたけれど、こんなわざとらしい話し方をする女の子が好きな男なんて“今の世界”ではジェスティードとノーランドだけだったようだ。まぁ、結局ノーランドは侯爵家からも追い出されたみたいだから失敗したことになるのだけれど。そのパターンはすでに経験済みなので今更慌てることはない。


 そして……どうやらジュドーとの運命の出会いは失敗したようだが、まだあの崩落を教える音は聞こえてこなかった。


『もぉう、本当に何がそんなに嬉しいのぉ?』


「ちょっとね……」


 《《いつも》》とは違う感覚に体が震えるのがわかる。だがそれは恐怖からではない。空を見上げ、後からあたしを追いかけるように飛ばされてきたボロボロの教科書を掴んだ。


 あたしは確かに笑っていた。だって“この世界”は、今度こそあたしの期待する世界かもしれないのだから────。



 その時のあたしはすっかり忘れていた事がある。この世界軸であたしがやらかしてしまった《《いつもとは違う》》もうひとつの事を。


 ジェスティードとのデート中にフィレンツェアを偶然みかけたあの日。なんだか胸騒ぎがして、ジェスティードには適当に言い訳をして急いで図書館へと向かった。そこで初めて悪役令嬢とグラヴィスが揃っているのを知り慌ててグラヴィスの攻略をしようと企んだ時だ。


 本をかき集めて積み上げている中で、《《それ》》を偶然見つけた。初めて見る《《それ》》が何の本かはよくわからなかったが、なぜか無意識に服の中にねじ込んだのである。そしていつの間にか無くしてしまったのだが、そんなことなど気にもしていなかった。


 まるで《《自分で移動してきたかのように》》本の隙間に隠れるように挟まっていた古びた本。


 ……まさかその“賢者の本”がこの世界を変える歯車のひとつだったなんて、その時のあたしは思いもしなかったのだった。







 ***







 ルルが“今の世界”に回帰する直前の出来事。


 神様はいつものように趣味の乙女ゲーム制作に勤しんでいた。




『うーん、乙女ゲームって難しいなぁ。こんなバグだらけじゃ聖女に見せられないよ……。ヒロインはみんなにめちゃくちゃ愛されないといけないのに!でも、メインキャラクター達の修正も終わったしこれならなんとかなるかなぁ。あとは早く悪役令嬢のラストを決めないとね!……あれ────何か表示が……あ、間違えて消しちゃった。ま、いいか。どうせさっきのバグの表示が残ってただけだろうし……。さて、先にお仕事しなきゃね。神様は忙しいなぁ~』








 〈シークレットルートの《《破損》》データが見つかりました。既存データに上書きを開始しmsk#%&@¥%+%#!&¥?〉





 こうして、誰も知らない“新しい世界”が始まったのだった。




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