↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『同室騎士の恋愛事情』→『没落α騎士は不遇なΩ王子に忠誠を誓いたい』【9月19日電子書籍配信開始】  作者: 禅


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/28

リアハの受難 後編

 シュバルツの思い出話を聞いたヴェールがうんうんと頷いた。


「そういえば、そんなこともあったね。しかも、そのあとでモブリールは『この距離は同室として正しいのか? おれが変なのか?』って、すっごく悩んでいたし」

「そうだったな。そのあとも同室との距離について悩んでいたようだが……」

「でも、途中から吹っ切れたように同室と肩を組んだりしてたよ」

「なら気にすることもなかったな」


 頷き合う二人を眺めながらリアハが苦笑する。


「そのモブリール君とやらに同情するよ」


 たぶん、この二人を見ていて同室との距離感がわからなくなったのだろう。その気持ちも分からなくもないが。


 リアハが乾いた笑みを浮かべていると、ヴェールが何かを思い出したようにシュバルツへ質問をした。


「そういえば、いつからか膝枕を拒否するようになったよね? どうして?」


 ふわふわな亜麻色の髪を揺らし、上目遣いで背後に立つシュバルツを見つめる。

 その真っ直ぐな視線から逃げるように黒い瞳が素早く逃げた。


「気のせいだろ」

「いや、その態度で気のせいって言う方が無理があると思うよ?」


 リアハが頬杖をついて呆れたように言う。

 そこに翡翠の瞳が追いうちをかける。


「ボク、何かした? もしかして、知らないうちにドジに巻き込んでた!?」


 慌てるヴェールをシュバルツが両手で制する。


「そうじゃない。ただ、その……」


 言いにくそうに口ごもりながら顔を逸らす。


「なに?」


 ズイッと体ごと迫ってくる亜麻色の髪にシュバルツが観念したように口を動かした。


「……気になるヤツに膝枕をされて平然としていられなくなったってことだ」


 歯切れの悪い口調にヴェールがピンときた顔になり、それから小悪魔のように微笑んだ。


「ねぇ、シュバルツはいつからボクのことが好きだったの?」


 先程のお返しとばかりにヴェールが可愛らしく小首を傾げながらシュバルツへ迫る。


「いや、そ、それは……」


 困ったように眉尻をさげたまま黒い瞳が必死に逃げる。

 だが、そんなことはお構いなしにグイグイと迫る翡翠の瞳。


 先程とは打って変わって形成逆転。


 そんな二人の様子にリアハはクイッとお茶を飲み干してカップを置いた。


「じゃあ、私はお邪魔みたいだから帰るね」


 そのまま立ち上がったリアハに対して、いつもはさっさと帰れというシュバルツが慌てて引き留めた。


「いや、もっと居ろ」


 その発言に亜麻色の髪がピクリと跳ねる。


「シュバルツ、浮気?」


 ジドッと見つめる翡翠の瞳に黒い瞳が丸くなる。


「なんでそうなる!?」

「だって、ボク以外のΩにもっと居ろなんて……」


 そう言いながら拗ねたように目を伏せる。

 もちろんヴェールは本心から言ってはいない。


 そのことはシュバルツも感じ取っているはずなのだが、慌てたように必死に説明を始めた。


「オレは浮気なんて絶対しないし、そもそも、あいつは第二王子の番(つがい)だろ! そんなヤツに手なんか出さないし!」

「でも、リアハさんは渋くてカッコいいし、ボクよりずっと落ち着きがあるし……」


 そう言いながら可愛らしく唇を尖らせる。

 その表情にシュバルツはヴェールの顎を掴んで顔を近づけた。


「わかった。そこまで言うなら……」

「え?」


 やりすぎた、と翡翠の瞳が悟った時には遅く……


「ちょ、んっ……ぁ……」


 ヴェールの口が激しく塞がれた。


「ぅん、ふぁ……」


 赤い舌が絡まり、甘い吐息と淫らな水音が静かな庭に響く。

 その途中でガクッと亜麻色の髪が崩れた。


「あっ」

「……おっと」


 腰が抜けたヴェールをシュバルツが逞しい腕で支える。

 そのまま力が抜けた体をピッタリと引き寄せたところで低い声が赤くなった耳を舐めるように囁いた。


「まだ疑うなら体にわからせるが、どうする?」

「……ダメ」


 息も切れ切れに話すヴェール。その頬は朱色に染まり、翡翠の瞳は蕩けている。

 そんな姿を愛おしそうに見つめる黒い瞳。


 それは砂糖でも裸足で逃げ出すような甘い光景で。


「私は何を見せられているのやら。失礼するよ」


 肩をすくめたリアハが歩き出すと、ずっと気配を消して控えていたベンノという若い使用人が頭をさげた。


「主とその護衛が失礼をいたしました」

「いつもなら、あぁなる前に君が止めるのに、今日はどうしたの?」


 その問いに顔をあげたベンノが良い笑顔で答える。


「リアハ様の従者の方から早く城へ戻すように伝言がありまして」

「つまり二人のイチャイチャを見せつければ勝手に帰ると考えたわけ?」

「僭越ながら」


 見た目より度胸が据わっているベンノに灰色の瞳が細くなる。


「まったく、君も策士だね。うちの軍に来ない?」

「失礼ながら、仕える主は一人と決めておりますので」

「だよね。お茶、ご馳走様」


 リアハは軽く手をあげて蜂蜜より甘い雰囲気を放つ屋敷をあとにした。



お読みいただき、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
NolaブックスRegaloより9月19日に電子書籍サイトより配信開始となります!
販売サイトはこちら↓
NolaブックスRegalo
Web版よりスッキリと読みやすく、そのぶん後半をしっかりと加筆して二人の活躍が増えております! ぜひぜひお楽しみください!

i1252254
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。