表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~  作者: 壱弐参
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/327

第77話 ◆一筆、再び。

「うぅ……殺せぇ……!」

「別に殺さないわよ」


 そう言いながら、(みこと)は紅茶をかき混ぜた。

 ここはショッピングモールに併設されているチェーンの喫茶店。甘味もコーヒーも非常に評価の高い店である。

 勿論、伊達家の家計にも。


「悪いね四条さん。俺や(みこと)は、脅しとかそういうのには中学の頃から慣れてて、そういう雰囲気になったら録画や録音を必ずするようにしてるんですよ。いやぁ、なけなしのお金で中古のICレコーダーを買ったのはいい思い出だなぁ」

「どんな過去送ってきたんだよぉ……」

「親父は借金取りに、『コンクリに埋めてやる!』とか言われてたよな」

「でも、お父さんは『コンクリ買うお金あるなら借金待てるでしょ』って強気に言い返してたよね」

(みこと)も散々言われてたもんな」

「ICレコーダーを買ってからは来なくなったわよ。違法な取り立てには負けないんだから」


 ふんすと意気ごむ(みこと)


「お兄ちゃんが天才になったおかげで債権がまとめられたんだよね。あの時は一家でお祝いしたなー」

「まぁ、天恵が発現しないってわかった時、銀行も焦ってたけど、判()いた後だったし……いやぁ、可哀想な事したなぁ」

「でも、今はちゃんと返せてるもんね! お兄ちゃんのおかげで元金がどんどん減ってるんだからっ」


 そんな兄妹の会話に、四条は恐れおののく。


「さ、さっきからお前ら……お金の話しかしてないぞ……!?」

「そりゃ、人よりお金に苦しめられてきましたし」

「お金に学ぶ事が多かったからね」

「おかげで(みこと)はこんなに()()り上手に」

「お兄ちゃんは真っ当に生きて家族孝行してくれるし」

「「大変だったけど、後悔はしてないよ」」


 そう二人の声が揃ったものの、


「いや、全然感動的じゃないけど?」


 四条は眉を(ひそ)め、引き気味である。

 すると、思い出したように(みこと)が言う。


「ところで四条さん」

「な、何だよ……」

「この録音データなんですけど」


 玖命のスマホを一瞬で操作し、先程のデータを見せる(みこと)


「お、脅す気かっ!?」

「いくらで買っていただけます?」

「捻りすらしねぇのかよ! 何だよ、いくらだよ!?」


 半泣きの四条は、なりふり構わず(みこと)に肉薄した。

 当然、スマホは四条の手の届かない後方へ回している。


「こちらの飲食代という事でいかがですか?」

「……は?」

「話す上で店には入ったけど、ここの支払いが私たちなのは仁義的に違うと思うの」

「仁義に欠けた兄妹が何を言うっ!?」

「えぇ~? 筋は通ってるでしょ? さっきお兄ちゃんを悪者にしようとして、無い罪を被せようとしたんだから」

「くっ!」


 (みこと)の弁に何も言い返せない四条は、玖命を睨んだ。


「おい、何か言えよ、きゅーめー!」

「全ては(みこと)様の心のままに」


 玖命は静かに目を伏せ、胸に手を当てて(みこと)を崇めている。

 最早(もはや)、四条が出る幕はなかった。

 (みこと)に全てを詰められ、玖命からは放置。

 最初から、売ってはいけない喧嘩だったのだ。


「く……! この前も奢ったじゃんかぁ……!」


 ぐすんと目に涙を浮かべる四条。


「お兄ちゃんにした悪さを、ここの払いで忘れてあげるの。奢ってもらうんじゃないの。わかった?」

「ぐっ……わ、わかったよ! 払うよ! 払えばいいんだろっ!」


 四条が観念したところで、玖命と(みこと)は再び声を揃えた。


「「では、一筆書いてもらえますか?」」

「鬼かお前ら!?」


 その後、紙ナプキンに書いた契約書にサインした四条は、渋い顔をしながら、それを玖命に渡した。


「こ、これでいいんだろっ?」

「…………確かに。では、レジで支払いが終わった段階で、この録音データは四条さんの目の前で削除します」

「こんな安っぽい契約があってたまるかぁ……!」


 頬を膨らませ、未だ納得いってない様子の四条だったが、玖命と(みこと)は全く違う話を始めたのだ。


「そういえば四条さんって何歳なの? 私と同い年?」

「何の話だよ……」

「年齢の話……だけど?」

「通じてる! 通じてるよ! 言葉がわかんない訳じゃないんだよ!」

「なーんだ、お兄ちゃん、この人面白いね」

「そうなんだよ、精一杯生きてる姿に共感しちゃってさ。何か応援したくなるんだよね」

「きゅーめーの応援ってのは、私の財布を軽くする事なのか?」


 呆れた様子で四条が言うと、玖命は思い出したように言った。


「そういえば、鑑定課は大丈夫だった?」

「さらっと話逸らしてんじゃねーよ! あーはいはい! 大丈夫だったよ! おかげで私の面子保てたよ! ありがとな、ばーか!」


 やけくそ(まみ)れの四条を前に、(みこと)が聞く。


「お兄ちゃん、鑑定課って天才派遣所の裏方さんみたいな役どころでしょ?」

「そ、内勤さん」

「鑑定課みたいな部署って他にもあるの?」

「確かあったはず。ね、四条さん」

「きゅーめー、お前知ってて私に聞いてるだろ?」

「目の前に本物がいるんだから聞いておくべきかと」

「はははは……」


 乾いた笑いを零した後、四条は大きな溜め息を吐いた。


「はぁ、仕方ない。説明してやるよ、この私がな!」

「あ、紅茶おかわりくださーい!」

「あ、俺もコーヒーくださーい!」

「聞けよっ!」


 四条の疲労度が蓄積する一方、玖命と(みこと)は休日を満喫するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓カクヨムにて先行掲載中↓
『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。
↓なろうにて連載中です↓


『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~』
おっさんは、魔王と同じ能力【血鎖の転換】を得て吸血鬼に転生した!
ねじ曲がって一周しちゃうくらい性格が歪んだおっさんの成り上がり!

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ