↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブは友達が欲しい 〜やり込んだゲームのぼっちキャラに転生したら、なぜか学院で孤高の英雄になってしまった〜  作者: 和宮 玄
第二章 探索学院編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/33

確かな成長

ご無沙汰しております。

カクヨムでは更新していましたが、章末までストックができたのでこちらでも更新していきます。

隔日で更新していきたいです。


また、本作の書籍版2巻が、来週の金曜10/30に発売の予定となっています。

webにはないシーンや素敵なイラストもありますので、ぜひご購入いただけると幸いです。


表紙にもいるシビラが、すごく可愛いですよ!

文庫で比較的お手頃な価格になっていますので、各種サイトでチェック&予約してもらえると嬉しいです!

 模擬試合はグラウンドで行われることになった。

 結局クラス全員が観戦することになり、俺が校舎を出ると出入り口でビビアンカが待っていた。


 ユキノたちに声をかける。


「みんな、先に行っていてくれないか」

「わたしたち全員でジントのこと応援してるから!」

「当然です!」

「カマしてやれ、ジント! 楽しみにしてるぜ」

「はいはい、みんな早く行くわよー。頑張って、ジント」


 ビビアンカと話があると察し、一人にしてくれたようだ。

 ユキノにアイシャとロイ、ナツミも続き、四人は他のクラスメイトたちが集まっているグラウンドの中央に向かった。


「お前に伝えるタイミングがなくてな、突然すまなかった」


 近くに人がいなくなったことを確かめ、ビビアンカは口を開いた。


「なぜ俺を公安会に? 登校初日からこんなことに……」

「先日、推薦する者がいないか確認される機会があってな。『孤高』──お前も公安会に行った方が今後の自由がきく。それに、これからのことを考えると力をつけられる絶好の機会だろう。見逃すわけにはいかない、そう思ったんだが」

「言いたいことはわかる。俺も公安会に入れるなら本望だ。だが、他にやり方ってものはなかったのか?」


 入学日にクラスメイトと模擬試合を行うなんて予想外もいいところだ。

 ビビアンカの発表の仕方が違えばと、もしもの可能性を考えてしまう。


「そう責めてくれるな。今の私はこういう性格なんだよ」


 まるで自分でも困っているのだという風に、ビビアンカは首を振った。


 現世と前世、二つの人格が混ざり合うことで生じる変化を、俺も身をもって知っている。

 そのためある程度の理解は示したいが、まったく困った教師だ。


「それにしても……私も、シビラ・アーウィンが対抗してくるとは思いもよらなかった」

「だろうな。まさか、シビラがアイシャじゃなくて俺に噛みついてくるとは」


 シビラは授業が始まると、アイシャと小さな諍いを起こす人物だった。

 そして、その後に生じる最初の事件をプレイヤーが追うきっかけにもなる。


 ビビアンカは俺の肩に手を置いた。


「お前が公安会に入れば、今後の例の件でシビラを助けることも容易になるはずだ。確か、教師の私では介入しにくい一連の事件だっただろう」

「ああ」

「だから、ここで力を示してやってくれないか」

「それは……メインストーリーに対処するためにか?」

「どうだろうな。これから世話をする生徒たちの担任として、頼んでいるのかもしれない」


 ゲーム内で『氷像』と称されていたビビアンカだったが、生徒たちの危機に駆けつけたりと協力的な姿勢がところどころに見られていた。

 間違いなく、教師としての責務のようなものは持っているのだろう。


「わかった。俺としても公安会には、入れるのだったら入れてもらいたいからな」


 公安会は、学院内で行動する際の強力な後ろ盾にもなるはずだ。

 それに実力を最大限に伸ばすことを考えれば、学院最強と名高い会長率いる公安会に勝る環境はない。


 俺が頷いてみせると、ビビアンカはグラウンドに足を向けた。


「恩に着る。こちらも適宜動くつもりだが、お前への協力は厭わない。頑張ろうじゃないか、主人公代理」

「……いや、俺に主人公の代わりは務まらないだろ」

「なんだ、お前はそのつもりだとばかり……」


 立ち止まったビビアンカに聞かれ、少し考える。

 しかし、やはり先ほどの言葉が正直な思いだ。


「俺は主人公なんて柄じゃない。アイシャたちとの関わり方を見ていても、ユキノの方がずっと主人公らしいと思うよ。俺は一歩引いてるくらいがちょうどいいんだ」

「そうかそうか。だとしたら、これから行う模擬試合で力を示すといい。手を抜いて他の立候補者が続出しないようにな。そして……」

「そして、何だ?」

「大逆転、クラスの人気者になるチャンスかもしれないぞ」


 ニヤリ、と笑ってビビアンカが歩き出す。

 その背中に俺はため息交じりに呟いた。


「俺がそんな柄じゃないことくらい、【ラスティ・マジック】をプレイしてたお前が一番知ってるだろ……」


 ビビアンカに続きクラスメイトたちが集まる場所へ行くと、眉間に力を入れたシビラが近づいてきた。


「わたくしは、いつ始めても構いませんわ。スミス先生、そちらの木剣を使えばよろしいので?」

「ああ。うちの保健室には十分な量の回復剤があるとはいえ、単なるクラスの模擬試合に使用許可は下りないからな。【剣魔術】抜きでの試合にはなるが、異存はないな?」

「はい、規則であるのでしたら仕方ありません」


 ビビアンカから木剣を受け取り、シビラは俺を測るように見つめる。


「それに剣を交じあわせれば、【剣魔術】がなくとも力量の差はわかりますもの」


 そう言って、シビラは離れた場所で入念にストレッチを始めた。


 俺も木剣を受け取り、ブレザーを脱いでいるとユキノたちがやって来た。


「ジント、預かるわよ」

「助かる。剣も頼んだ」


 ブレザーと腰に下げていた愛剣をユキノに預ける。

 シャツの腕を捲くり、体を伸ばしているとロイに背中を叩かれた。

 言葉はなく、微笑を浮かべながら頷かれる。


「では早速はじめるとしよう」


 ビビアンカの呼びかけがあったため、それに対して俺は軽く拳を上げ、シビラが待つ場所まで出た。


「ルールは簡単だ。【剣魔術】を使用しない、単純な剣術勝負だからな。勝敗は自ずと両者だけでなく、見ている私たちにもわかる形でつくだろう」


 他の生徒たちに語りかけるように、ビビアンカは話す。


 基本的にモンスターと戦ってきた俺に、対人戦の経験は乏しい。

 その上、シビラは入学時点においてクラスでもトップレベルの実力を誇っている生徒の一人だ。

 決して能力の伴っていない噛みつきキャラではない。

 気を抜いていれば、あっという間に敗北を喫することだろう。


「あなたの実力を確かめさせていただきます。全力でいかせてもらいますわよ」


 背筋を伸ばし、シビラは正中線に剣を構えた。

 洗練された誰よりも優美な立ち姿に、並々ならぬ気迫を感じる。


「もちろん、俺も全力でいく」


 ここで負けるメリットなどありはしない。


 それに──勝負を挑まれて、勝ちにいかないなんて俺の流儀に反している。


 自分に勝とうとする相手を前に、燃えないわけがないのだ。

 久しく感じていなかったゲーマー魂が疼く。


 面白い。

 俺を推薦することにしたビビアンカの顔に泥を塗らないためにも、勝負を持ちかけてきたシビラの思いに応えるためにも……集中だ。


「これよりジント・ウォルド対シビラ・アーウィンの模擬試合を開始する」


 俺が木剣を構えると、ビビアンカが勢いよく手を振り下ろした。


「試合、始めッ!」


 その時、駆け始めたかに見えたシビラが、気づくと懐に入り込んできていた。


「ハァァアアア──!!」


 一拍も置かず、高速で下から繰り出される逆袈裟斬り。

 剣先が俺の首元を目指して滑ってくる。


 しかし──ガンッ、と木剣がぶつかり合う鈍い音。


 目を見開くシビラを、俺は間に合わせた剣越しに力強く払いのけ、距離を取った。


「速さには自信があるのですが……少しは認めて差し上げましょう。やりますわね、あなた」

「俺の方も、昔から反射神経と粘り強さには自信があるんだ」


 向き合い、互いに剣先を相手に定める。


「さて。その反射神経と粘り強さで、どこまでわたくしの連撃に耐えられるかしら」


 シビラは、まるでその言葉が耳に届き終わるよりも先に、俺に接近してきた。


 速攻型だが、膂力も一線級。

 長い脚と腕を活かし、筋肉をしなやかに動かすことで異常な速さを実現している。

 ゲームの頃から知ってはいたが、いざこうして現実で相手にすると凄まじく優秀な人物だ。


 シッシッと細かく、鋭く吐かれる息が耳に響く。

 近距離から縦横無尽に繰り出される八連撃を捌く。


「オレ今、何回剣が振られたか見えなかったんだけど……」

「なにあの強さ……私には絶対勝てる気しないよ……」

「でも、まだ一撃も入ってないよな。互角……いや、このまま押し切るつもりか?」


 クラスメイトたちも、シビラの素早さに舌を巻いているようだ。


「防戦一方のようですが、さらに速度を上げていきますわよ!」


 シビラは一度距離をおき、さらに一段階上がった素早さで接近を試みる。


 その中にも、こちらのタイミングを外すための細やかな技術を感じた。

 どうやら独特な足の運びに秘密があるようだ。


 まるで放たれた矢の如く、いとも簡単に眼前に迫ってくる。


「速い……!?」


 ユキノか誰かが漏らした声が聞こえた。


 才能に満ちたこの強さを相手に、モブである俺に勝ち目はない。

 モンスターに比べ、遥かに高度な駆け引きが存在する対人戦だ。

 このまま隙をつかれ、対応できない角度から高速の一手が来てしまえば、もろに食らうことになるだろう。


 もしかすると──以前までの俺だったらそう思うような相手だったかもしれない。


 だが、コープス・バット戦から約三週間。

 俺も確実に、成長している。


「…………は?」


 闘志に溢れ、勝利を引き寄せようとしていたシビラの表情が凍ったように固まる。

 鞭のように振られていた彼女の腕は──今俺の手によって掴み取られ、微動だにしなくなっていた。


「悪いな。最近は少し力にも自信がついてきたんだ」


 モンスターを倒すだけでなく、日々地道に走り込みやトレーニングを行ってきた。

 その成果が、シビラを少しも動かさずに無力化させている。


 クラスメイトたちからのリアクションはない。

 静けさの中で風が吹いた。


 そっとシビラの首元に木剣を添える。

 しばらくして彼女は瞠目し、力をなくしたかのようにその手に握る剣を落とした。


「──勝者、ジント・ウォルド!」


 ビビアンカの宣言が響く。


 俺が手を離すと、シビラはその場に膝を突いた。

 少し遅れてクラスメイトたちから歓声が上がる。


「ジント、また強くなりましたか!?」

「今の試合、半端なかったぞ! まさかこんな一瞬で」

「やっばいわね、ホント」


 その中から駆け寄ってきたアイシャとロイ、ナツミが声をかけてくる。


「ふふん、凄いでしょ。うちのジントは」


 そしてなぜか、ユキノが鼻高々になっていた。


「なんでユキノが自慢げなんだ」

「えーいいじゃない。だってここ最近のジントの成長、わたしだけが知ってたんだから」


 まあ勝利を自分のことのように喜んでくれて、嫌な気はしない。


 俺たちが騒いでいると、ビビアンカが最後に全体に向かって聞いた。


「他に、ジント・ウォルドの公安会への推薦に異議のある者はいるか?」


 結果──異を唱える者は誰もいなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。