表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブは友達が欲しい 〜やり込んだゲームのぼっちキャラに転生したら、なぜか学院で孤高の英雄になってしまった〜  作者: 和宮 玄
第二章 探索学院編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/32

物語の始まり +あとがき:【本作に関する重要なお知らせ】

※あとがきにて、重要なお知らせがあります。そちらだけでも目を通していただけると嬉しいです。書籍化、連載再開についてです!

 物語の始まりは入学式だった。


 メインストーリーは主人公であるプレイヤーが、第三探索学院に推薦入学を果たし、式典に参加するところから開始する。


 学院生活に抱く不安と高揚。

 数多くの未知と危険が存在する学び舎で、同じく新たに門をくぐった新入生たちと出会い、互いを知り、世界を探索する術を学んでいく。


 もちろん同級生といえど、中には相容れず敵対する人物もいる。

 彼らは時に課題をこなす際の障壁となり、時に刃を向け合う事件に発展し、そして時に都市に蠢く闇と絡み合い──。


 その度に、プレイヤーは己の力で打ち払っていく必要がある。

 探索者としての道を駆け上るために、出会った仲間たちと協力し助け合いながら。


 俺もこれから学院で日々を送るのだ。

 当然、【ラスティ・マジック】のストーリーに沿うように立ち回り続けることにも限界はあるだろう。


 しかし、せめて周りと関係性を築く努力くらいはしなければならない。

 前世──日本で通っていた学校で、同級生との付き合いが決して得意でなかったなどと言い訳をしている場合ではない。


「……」


 入学式が行われる大講堂。

 席に座った俺は、そんなことを考えて短く息を吐いた。


「ほんと、すごい人数だよね」


 隣の席では、頻りにユキノが辺りを見回している。

 美しいミルクティーベージュの髪が揺れ、男女問わず周囲から自然と視線が集まっている。


「それに制服だから、みんな同じ服装だし。なんだか変な感じしない?」

「たしかに、他ではない景色だからな。まあ、すぐに慣れるさ」


 前方には広々としたステージがある。

 その下から備え付けの座席が並び、映画館のシアターのように後列にいくほど段々と少しずつ位置が高くなっていっている。


 前列から順番に赤を基調とした制服姿の生徒たちが埋めていき、俺たちが座ったのは前から三分の一あたりの、ちょうど真ん中あたりだった。


「うーん……でも、最初のうちは慣れないことばかりね。この大講堂が、こんなに広いのもまだ不思議なくらいだし」


 ざわざわとしている中で、ユキノは独り言のように漏らす。


「きっと、嫌でもすぐに慣れるしかなくなるはずだぞ。学院側も、いきなり飛ばしてくるだろうからな」

「え?」


 講堂の左右の壁に目をやると、前方に扉大の線が入っているのが見えた。

 ゲームと同じように、ここでも驚愕に値する演出が待っているようだ。


 外観は古びた小屋にもかかわらず、中に入ると巨大な講堂になっていた。そんなことを上回るインパクトがある経験を、式の後にできるはずだ。


「……まあしかし、同い年の人間がここまで集まっているのは改めてすごいことなんだろうな」


 簡単に教えてしまってはユキノの楽しみを奪うことになる。

 誤魔化すために俺が話を戻すと、ユキノはじーっと見つめてきたが、しばらくして諦めたように口先を尖らせた。


「そうね。合格者は、140人前後って話だったかしら? 人数もすごいけれど、ここにいるのがみんなわたしたちと同じ十五歳って……」

「その上、身分も住んでいる階層も違うんだからな。都市中を見渡しても、学院以外ではお目にかかれない光景に違いない」

「本当に、ここに来ないと知り合えなかったはずの人たちばかりよね」


 ユキノは、入学前から仲良くなった金髪の少女を頭に思い浮かべたらしい。


「アイシャとかね。まさか、入学日よりも先に友達ができるとは思わなかったけど。学院に行くって決めたことで、ここまで新しい出会いがあるだなんて」


 ゲームの世界が現実のものとなった今、物語のような明確なスタート地点はなくなった。

 すでに入学に至るまでに、俺たちは何の因果かプレイヤーが手を取り合っていくことになる主要な人物たちと出会い、関係が生じてしまっている。


「……そうだな」


 まさに友達百人できるかな、といった様子でユキノはわくわくしている。


 これまでに知り合ったのは、まだ主要人物のほんの一部だ。

 さらにゲーム本編では関わることのなかった人物たちも、現実では同じく意思を持った対等な存在である。


 全ての人々の思惑などが交差し、ストーリーであった出来事に変化を生じさせながらもリアルは形作られていくことだろう。


 ゲームでも学院生活は十分に刺激的だった。

 しかし、現実化したことで果たしてどこまで厄介なものになるのだろうか。


「他にもどんな出会いが待っているのか楽しみだな」

「うん。あっ、それでジント。さっきの学院側が飛ばしてくるって、何か気づいたことでも……」


 微笑みながら頷いたユキノが、再び先程のことを尋ねようとする。

 しかしその途中で、ボーゥ、と講堂内に汽笛のような音が響いた。


「おそらく、式典が終わる頃にはわかるはずだ」


 ステージに人が出てきたのを見た俺は、ユキノの耳元に顔を寄せ、あくまで予想という体裁を守りつつそう言った。


 周りに合わせて会話を止め、口を閉じて前を向く。

 きょとんとしているユキノも、しばらくするとステージに視線を移した。


 気がつけば音はなく、静寂が場を支配していた。

 唯一ステージを歩く人物の足音だけが鳴っている。


 壇上に乗った年老いた女性の異様なまでの存在感に、誰もが目を引きつけられている。彼女はぐるりと一周、席に着く新入生を見てから口を開いた。


「ご入学おめでとうございます。お会いできる日を心待ちにしていました。私は本校の学院長を務めているクイントンです」


 肩口で切り揃えられたグレイヘアーに、穏やかな口調。

 物腰が柔らかい高齢の女性をイメージさせる特徴だが、その姿から安心感を見出した者は一人もいないはずだ。


 串を刺したように真っ直ぐと伸びた背筋。

 赤い軍服にも見える装いの下には、この場の誰よりも研鑽し引き締まった肉体があることが、誰の目からも容易に想像できた。


「私からはまず初めに、この第三探索学院で皆さんが四年間過ごす上で必要となる心構えについてお話しします。細かなことは、この後それぞれのクラスに移動してから担任の教師に教えてもらってください」


 クイントン校長の瞳には、歳に似合わない少年のような輝きが宿っている。


「ご存知の方も多いとは思いますが、本校の教育理念は『自由であること』です。我々の生活圏外……都市外で活躍する探索者を輩出するためには、私も自由が大切だと考えています。──ですが、一体『自由であること』とはなんでしょうか? 自由、ではありません。我々が『自由であること』とはです」


 静かに、声が空気を震わせる。

 腰に下げた細剣の柄に左手を乗せ、校長はゆっくりと口角を上げた。


「答えは私にもわかりません。ここにいる一人一人が、それぞれの答えをこれから出していくでしょう。私たちはその助けになればと、何かを強制することなく、自分の頭で考え、行動し、責任を取れる環境を持って皆さんを迎え入れます。それが自分たちなりの『自由であること』だと信じて」


 誰かが息を呑み、また誰かが喉を鳴らす。

 ゲームで見たものと違いはないが、俺はただ圧倒されている自分がいることに気がついた。


「貴族か平民か、身分で私たちが扱いを変えることはありません。しかしだからと言って、皆さんが己の思想を無理に曲げ、誰にでも平等に接する必要もありません。我々教師陣は秩序を守るために行動し、成長を促すために手を貸すことはありますが──あとは好きにしてもらって構わないのです」


 それは、底知れぬ自由を用意するという宣言。


「自分で道を選び、自由に生活してください。この学院では、いつも危険が側にあります。都市の外に広がるフィールドと同じです。選択や行動、その結果さえも自分自身のもの。皆さんは探索者の卵ではありません。一人の探索者として、四年間で手の届く限りまで成長できるよう励んでください」


 生易しい安全の下にある偽りの自由ではない。

 放任主義とも取れる、真に自由な環境。

 責任は自分で持ち、あとはお好きにどうぞとだけ語ると、校長はステージの袖へ目を向けた。


「それではクラス発表と、教室への移動に参りましょう。ここからは公安会の皆さんにお任せします」


 ほぼ同時に、ステージ上に一人の女子生徒が現れた。

 制服に身を包んだ、長い銀髪をなびかせる上級生だ。左腕に腕章をつけている。


 彼女が深くお辞儀をすると、校長は会釈してから去っていった。

 張り詰めていた空気がほんの少しだけ緩む。


「おいっ、あの人……」

「今代の公安会長だろ……? 初年度から公安会員になって、四年の今じゃ教員にも劣らない実力者だっていう」


 登場した上級生に、俄に言葉を交わす一部の者たち。

 俺たちの後ろにいる男子二人も、こそこそと興奮したように話している。


 公安会とは代表の生徒たちから成る、様々な特権が与えられた生徒会のような組織のことだ。その会長は、世間的にも随分と名を馳せていたようだ。


「公安会、会長のオラーゼだ。クラスの発表と、教室への移動を始める。前の列から中央で左右に分かれ、端にいる会員たちの指示に従ってくれ」


 凛とした声音で会長が言うと、前方の左右にある扉大の線がずれ、壁がエレベーターのドアさながらに開いた。

 その手前には、金属製の回転式三本バーがついたゲートが床から迫り上がってきている。


「各自、学生証を手に持ち待つように」


 会長のその言葉が合図だったのか、座席の左右にある階段状の通路にいた十人前後の公安会員たちが動き始めた。会長同様、左腕には腕章がある。


「……ジントが言っていたのって、これのこと?」

「ああ。スミス先生から雑談のついでに、クラス分けの特殊性を聞いていたからな。あそこにある扉のことも知っていたんだ」


 制服と一緒に受け取ったカード──学生証を取り出していると、ユキノに訊かれたのでビビアンカ経由で知ったことにした。


 最前列の生徒からゲートに学生証を当て、ドアの先に消えていっている。

 しばらくすると俺たちの列の番になった。


 俺とユキノは左側のゲートに向かう。


 そわそわと順番を待つユキノの姿は、まるで遊園地の入場ゲートのようだ。

 俺の番になったので、公安会員の指示通りに学生証をゲートの上部にある円の中に触れさせる。


 すると、レベルの測定時のように水色の光で『E』と浮かび上がった。今回は手の甲にではなく、ゲートの板にだが。


「地面に『E』と描かれた場所に進んでくれ。さあ、次」


 俺はバーを押し、ドアの先に入った。

 そこで立ち止まってユキノを待っていると、彼女も『E』と出たようだった。


 ドアの先は石造りの駅のようになっており、天井にかけられた照明が薄暗く空間を照らしていた。

『A』から奥に『B』『C』と地面に描かれたエリアが柵で区切られている。


 これこそ本当に、遊園地のアトラクション乗り場のような光景だな……。


「良かった、同じで。表示された文字が同じだったらクラスも一緒なのかな。先生から何か聞いてる?」

「ああ……たしか、同じクラスになるはずだ」


 エリアごとに同じクラスになる者たちで適宜まとめられるため、エリアが同じということはクラスも一緒という認識で間違いないはずだ。


 1年E組。

 ゲームでプレイヤーたちが所属していたクラスだ。

 主人公とニックの枠に俺たちが滑り込んだと考えれば、順当な流れと言えるだろう。


 エリアに行くと、まだ他に誰もいなかったので先頭で待つことにする。


「これって……」


 ユキノが見る開閉式の柵の向こうには、線路が敷かれている。

 その時、隣のエリアの前に、左から来た大きめのトロッコが止まり柵が開いた。


「も、もしかしてわたしたちもあれで移動するの……?」


 彼女の声に重なって、仕事に勤しむ公安会の面々が誘導する声が聞こえてくる。


「『D』のみんな、乗ってくれ! 止まった駅で八人全員が降りるんだぞっ! 絶対にだからな! 万が一降りなかったら……まあいい! 今日くらいは痛い目に遭いたくないだろう。大人しく指示に従っておいてくれよ! 頼むから仕事を増やさないでくれ!」


 トロッコは八人乗りだったみたいだ。


「痛い目って……何?」


 何やら不穏な言葉に、ユキノがぎょっとして目を合わせてくる。

 トロッコを降りなかったらどうなるのか。俺も詳しくは知らない。


 俺たちが一緒になって乾いた笑いを漏らしていると、すぐに『E』エリアにも残りの六人が来て、前に止まったトロッコに乗り込むことになった。


 ゴトゴトと振動しながら、トロッコが薄暗い線路の先へ進んでいく。

 アーチ状の巨大な扉を出ると、大講堂からまた別の【魔空間扉マジックドア】の先に直接繋がったのか、鉱山の中のような場所に出た。


「ユキノ、ちゃんと掴まっておけよ」

「え? って、段々速くなって……っ」


 冷たい風を切り、右や左に曲がり、上下に線路が波打ちながらトロッコは加速していく。


「これ、本当に事故が起きたりしないんだよね?」

「気をつけないと舌を噛むぞ……!」

「ジント、だから安全なのよね!?」


 風の音がうるさく、声を張ってやり取りをする。

 しかし、初めはそう言って怖がっていたユキノも、すぐに楽しくなってきたらしい。


「きゃぁぁあああっ!!」


 気がつくとトロッコに掴まりながら、いい笑顔で叫んでいた。


 線路は途中で何度も分岐したり、交わったりする。

 そして、やがて打って変わり、俺たちは静謐な石畳の駅に到着したのだった。

前回の更新日を確認したら、3年以上の月日が流れていました……。


お久しぶりです。

そして、長らくエタってしまっており大変申し訳ありませんっ。


私生活の方でいろいろと変化があったり、別作品に取り掛かっていたりしていて、完全に本作を過去のものにしかけていました。

続きを構想してはいましたが、ジントの活躍を引き続き書きたいとは思いつつ、心のどこかでは「やっぱりもう……」と諦めかけていました。


実際に、どれだけの方がまだ本作のことを覚えてくださっているのかわかりません。

今さら続きを書いても需要がないだろう。

そんな言い訳をして目を背けていたのも事実です。


新作を書こう。

切り替えるために、心にそう決めた時もありました。


しかし、そんなときでした……!


なんとなんと!

別サイト経由で本作がコンテストを受賞! 書籍化が決定したのです!


それから一年以上、水面下で書き直し修正や増量など、いろいろと頑張ってきていました。

より熱を込め、より面白いものになるように、と。


驚きますよね。

小説って、新作を書籍としてお出しするには結構時間と労力がかかります。


そしてついに、よーうやく本日、『モブは友達が欲しい』第1巻が発売される運びとなりました。


あまりにいきなりのご報告となってしまい、大変申し訳ございません!

あ、今日はエイプリルフールですが、ウソじゃなくてマジです。一応、念のため。


そして、可能な限り多くの方に手に取ってほしいと思い、今回は手頃なお値段になるようにと担当さんに「文庫で出したい」とお願いをしてみました。


昨今、紙の高騰などで、書籍の値段が上がり続けています。

1400円前後する単行本は単行本なりの良さがありますが、おかげで今回本作はHJ文庫さんにて、税込み792円で発売することができました。


正直、最近ではラーメン1杯さえ、これ以上の値段であることが大半だと思います。

他にも様々なものと比較しても、数時間は楽しめる小説1冊が792円は決して高くないのでは……!?


どうでしょう。

こういった形でセールストークを繰り広げてみようと画策したのですが。

少しは関心を持っていただけているでしょうか?


何にせよ、私自身に入ってくる利益を削る形になりましたが、皆様が少しでも手に取りやすくなるための小説家努力として、文庫での刊行を選びました。


もう本当ーーーに、今となっては一度更新を止めてしまった後悔や反省でいっぱいです。

しかし様々な幸運やご縁があり、コンテストで拾っていただき、書籍化をきっかけに続きを執筆することを心に決めることができました。


本作は読んで応援してくださった読者さんがいたからこそ、書き続け、書籍化することができたと思っています。

その感謝を込め、作品を捧げます。

ぜひ、書籍を購入して皆様の力で応援していただけると嬉しいです。


イラストはイラストレーターのnimaさんが、素晴らしい超絶画力で担当してくださっています。

すでにamazonなどのサイトでも買えますので、覗いてみてください。

「これはいい……ッ!!」とポチっとしたくなること間違いなし!


超長期間の休載によって本作の内容を完全に忘れたという方も。

うっすらとしか覚えていないという方も。

もし「なんとなく面白かったし再度読んでも今も楽しめるの確定だからな」と思ってもらえるようでしたら、ご購入のほど何卒よろしくお願いいたします……!


連載再開や書籍化に向け、一度止めてしまった筆を再び動かすのには、かなりの不安がありました。

しかし今は、覚悟を決め、面白いと思ってもらえるジントの物語を書こうと腹を決めています。


仕事や学校の帰り道に書店に寄って、通販サイトでポチッと購入ボタンを押して、ご購入いただけると幸いです。


本作を応援してくださった全ての方々に感謝と、これからの決意を表明したところで今回は失礼いたします。


最後に2章の連載再開についてですが、【今月中】になる予定です。

現在、絶賛頑張っているところです。

今回は間違いなく再開し走り抜けますので、完全版である書籍で1章を振り返りつつ、イラストなどでキャラのイメージを鮮明にしてから、引き続き楽しんでいただけると嬉しいです。


それでは、書籍版もweb版もあわせて、何卒よろしくお願いいたします……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ