ワンワンパニック
衛兵が僕が生き返ったのを確認すると、宮廷まで案内してくれた。
「お前すぐ死ぬんだなぁ。」
衛兵は生き返った僕を見て感心していた。
宮廷魔術師は、僕の姿を見るやいなや興味深そうに記録をしていた。
「ところで困ってることはないか? 」
僕は言った。
「最近オークが多くてそれで困ってるね。」
宮廷魔術師はそう答えた。
「オークかぁ。」
僕は言った。
「まぁやるしかなかろう。」
僕はとりあえず戦法を探すことにした。
戦士ギルドの練習場があったので借りることにした。
「何にもないけど使ってくれ。」
ギルドマスターはそう言ってくれたので助かった。
液体化能力を手に入れてるのでそれの応用で瞬時に分身と合体が可能なことを発見した。
そして杖についても調べてみた。
しかし何もわからない。
僕の能力ではわからないのかもしれない。
いや天使でもわからなかったから能力がいくらあってもわからないものかもしれない。
毎日20時間筋トレしても普通の人に追いつけないこの体で世界を救うのは難しい。
不死の力があってもそれは失敗が許されるだけに過ぎないのだ。
瞬時に生き返れるわけでもない。
とりあえず杖で麦で作れられた練習用かかしに向かって攻撃することにした。
パスパスと弱い音をあげる。
「精霊なのにお前弱いらしいな。」
ギルドマスターは言った。
「そうなんですよね。」
僕は言った。
精霊ではないのに、精霊と思われるのはなんだか良心の呵責を感じる。
「俺は、いろんな奴に指導したが、一番は自分を知ることだ。」
ギルドマスターの言葉に感心した。
「なるほど、この未知の体は僕も知らないことが多い。」
僕は言った。
「こういう武器はどうだ? 」
ギルドマスターはそこらへんに置いてあった鉄の剣を僕に渡した。
「うん、いい感じだ。」
手になじむ感じがする。
僕はそれを使って練習用のカカシに向かって横に振ったり縦に振ったりして攻撃した。
「武器を使えば、筋力がなくても武器の力くらいは発揮できるはずだ。」
なるほど、これはいいかもしれない。
「あの、余ってる武器あったら貰いたいんですが。」
僕は言った。
「別にいいぞ、安物だしな。」
そう言って鉄の剣と鉄の斧と鉄のメイスと鉄の短剣を僕の近くに置いた。
「じゃあ頑張れよ。」
ギルドマスターは、練習場からギルドの建物に入っていった。
さて、お気づきだろうか。
そうです分身です。
僕は液体化して分身をできるだけ増やそうとした。
液体になった僕からどんどん僕の分身が飛び出していった。
「よっと。」
「おっと。」
「うわああ。」
「ふおっと。」
結果僕たちは僕も含め僕が5人になった。
すごくややこしい。
「俺はアルファでいいや。」
一人目が答えた。
「じゃあ俺ベータ。」
二人目が答えた。
「じゃあ俺イプシロン。」
三人目が答えた。
「じゃあ俺オメガ。」
四人目が答えた。
さて僕は隊長となったわけだ。
「僕隊長でいいよな、まぁなりたい人がいれば手を挙げて。」
シーン。
そうだ、僕はいつもこんな奴だった。
「はいはい、じゃあえーと僕隊長で。」
みんながうなずいた。
「みんな武器をとってくれ。」
僕がそういうとみんなおもむろに武器を取り始めた。
「これはどうかな。」
アルファが言う。
「いやいや、やはり斧でしょ。」
ベータが言った。
「いやあやはりメイスの時代。」
イプシロンが言った。
「なぁに短剣あれば一刺しよ。」
オメガが言った。
しまった、僕の武器がない。
いやあったか。
とりあえず僕は謎の杖を使うことにした。
「では僕達エックスの部隊X-M○Nの訓練を始める。」
僕は言った。
それに対してアルファが異議を唱えた。
「それは危ないのでX-GUYにしましょう。」
するとベータが言った。
「それはなんか破廉恥なのでXsにしましょう。」
するとイプシロンが異議を唱えた。
「エクゼとかださいぜ! XYZ-ドラゴン…。」
それに対してすかさずオメガが言った。
「やはりここは、はぐれX部隊はどうだろう。」
うーんどれも微妙だ。
「じゃあとりあえずX部隊で。」
僕は言った。
こうして僕達の訓練が始まった。
「隊長! オメガが手を滑らして短剣に刺さって死にました! 」
アルファは言った。
ぐぬぬ。
「ええい! 構わず続けろ。」
僕は言った。
カーンカーンと組み手をする音が鳴り響く。
「さてオメガが死んだから、僕が入るぞ。」
イプシロンのところへ行った。
「イプシロンはメイスだったな。」
僕は杖を構えた。
「私のメイス裁きをみせてあげやしょう。」
イプシロンは言った。
僕は杖を構え長さを活かしてイプシロンに向けて素早く振り下ろした。
イプシロンはそれをよけるも、油断していた。
そして僕は素早くイプシロンに向けて杖を刺した。
もちろん寸止めで止めた。
「やっぱり隊長は強い! 」
イプシロンは言った。
「しかし、愛犬の事が心配だ。」
僕はふとつぶやいた。
転生失敗したなら愛犬もまずいんじゃないだろうか。
僕は考えた。
「おい、天使! 」
僕は叫んだ。
「Hey! 」
赤色の天使が出てきた。
「あー、愛犬ですね、はいはい。」
彼女は何やら魔法を唱えた。
「キエエエエーイ。」
すると愛犬が目の前に現れた。
「おお、ポチ、なんかお前すごく強そうな見た目してるな。」
ポチは柴犬だったが今のポチは狼のような見た目でサイズも大きい。
でもポチだとわかる。
「転生したら、狼になった件。」
ポチは言った。
「俺よりラノベっぽいのはやめてくれないか。」
僕は言った。
「なんか、あなたの能力がほぼほぼポチに移ったので犬として転生するはずが、上位種の狼になりました。」
彼女は言った。
「ポチは死んだら消滅するのか? 」
僕は聞いた。
現状僕は死なないが死んだら消滅する。
ポチがそれなら危険だ。
「いや、それはないです、ポチの処理は正常に完了しています。」
彼女は言った。
「よかったなぁ。」
僕はポチを撫でた。
他の僕も集まってきた。
「おおポチよ!。」
ベータは言った。
「おおポチじゃないか。」
アルファは言った。
「おおポチ会いたかったぞ。」
イプシロンは言った。
「なんで、飼い主増えてるんだ。」
ポチは言った。
「お前しゃべれるようになったんだなあ。」
アルファは言った。
「いやちょっと待ってさすがに混乱する。」
ポチは言った。
「むしろお前がしゃべれることが一番混乱だよ。」
ベータは言った。
「しかし不思議なものだ。」
イプシロンは言った。
「じゃあそういうことで。」
彼女は消えようとした。
「まて、力がないから戦えないんだが。」
僕は言った。
「その杖なんですけど、念じて振ってみたらどうですかね? 」
彼女は言った。
そして彼女は消えた。
「なるほど、杖をちゃんと使ってなかったな。」
僕は杖を念じて振ってみた。
するとオメガの死体の水溜りが僕に吸収された。
「なるほど、僕専用の効果があるみたいだな。」
僕は言った。
「ポチに向かってやってみよう。」
ポチに向かって杖を使ってみた。
「実験台はやめちくり。」
ポチは言った。
すると何やら表示が出た。
<< 狼に擬態しますか? >>
なんだこれは。
とりあえずはい、と言ってみた。
すると僕の姿はポチと同じものになったのである。
杖は当然持てなくなったのでそこに落ちてしまった。
「すげえ! 」
アルファは杖を手に取って言った。
「まさか飼い主が飼い犬だったとは。」
ポチがうまいこと言った。
アルファもポチに擬態した。
「俺も! 」
ベータも杖を使った。
おめでとう! ベータは擬態した!
「俺も! 」
イプシロンも使おうとした。
それに対して僕は言った。
「お前が擬態したら、杖持つ人がいないじゃん! 」
僕は言った。
「だけどここの武器どうする? 」
イプシロンは尋ねた。
「アイテムボックスみたいなのあればなぁ。」
僕は言った。
「アイテムに使ったらどうなるんだろう。」
イプシロンは鉄の斧に向かって杖を振った。
すると鉄の斧は消えてしまった。
「これアイテム収納できるぞ! 」
イプシロンは言った。
「じゃあそれに全部入れちゃえ。」
僕は言った。
こうして人間の姿の僕であるイプシロンと3匹の僕とポチで森に出かけるのであった。
仲間一覧
エックス犬(無印)
アルファ犬
ベータ犬
イプシロン
ポチ
死亡一覧
転生時の死 1回
エックス(完全) 1回
エックス(無印) 1回
アルファ 1回
計死亡数:4回
擬態能力と収納能力を手に入れた!