本当の姉
「ねぇ~さん、ねぇ~さん、買い物行こうよーー、今日の夕飯は何がいいかな?もつ鍋!もつ鍋が食べたいな!」
「いいね、真央ちゃん、もつ鍋にしましょうか!早速行こうよ!というのは嘘で、髪セットしてからね!」
桜田澪と真央にとって、一緒に夕飯の買い出しに行くのは、何ものにも代えがたい大切な日課であった。
真央は、髪もセットしないで、玄関に飛び出した。
「ねぇ~さんはやく、はやく、はーーやーーく」 「真央ちゃん、女の子でしょ!髪ぐらいセットしなさい!それに時間なんてまだたくさんあるのよ!ねぇちゃん髪セットするから待ってて。」
説教っぽい言葉であったが、楽しそうな感じが滲み出てた。
「4分間、4分間だけ待ってやる!」
「なんの真似ですか?」
澪はくすっと笑いながら、手際よくブラシを動かす。妹は玄関で待ち続け、軽口を叩いて姉を笑わせ続けた。
やがて髪をまとめ終え、約束のタイムリミットを迎えた。実際に経っていたのは、4分どころか5分28秒だった。
姉が髪セットしている間も、妹は玄関に待っていて、姉を笑わせ続けていた。
姉は急いで髪をセットし、妹が待つ玄関に向かった。
4分以上、5分くらい時間が経っていた。
「おまたせージャスト4分、さすが私!」
「どこがだよ!5分28秒経ってまーーす、ねぇ~さんが髪セットしてからストップウォッチ使って測りました!!」
「ははっ!厳しいなー!真央ちゃん、どんだけ楽しみにしてんだよ!コンニャローー」
「当たり前じゃん!私たちの日課、早くいきましょう」
2人は、玄関を開けて、灼熱の外へと走り出していった!
『うわーー、あっちぃーわ』
2人の声がハモった!
「帰りにアイスでも食べようか!真央ちゃん!」
「さすがはねぇ~さん、私がいま食べたいもの、それはズバリ、アイス、アイスです。」
灼熱な太陽の中、2人の他愛のない軽口の応酬が途切れることなく続いていく。
15分くらいして、スーパーに到着。
「もーつ、もーつ、もーつ、もーつ!」
もつという単語を復唱しながらスーパーの中に入っていく真央とそれを見て笑っている姉、外とは違い店内は、ペンギンが出てきそうなほどくらいに、涼しかった。いや外が暑すぎたのかもしれない。
「生き返るわー。ねぇ~さん、生き返るよね?」
「えぇ!」
2人の会話の勢いはさらに増していき、スーパーの中に流れているBGMをかき消すぐらいだ。
10分ぐらいスーパー内を回り、今日の夕飯の材料を集め、レジに向かい、買い物を済ませた2人だが、何か大切なものを忘れていた。
外はやっぱり暑い。当たり前だ。8月上旬の昼下がりだから暑くないはずがなかった。
「やっぱあっちぃー!......ァィス アイス!!」
妹の力強いアイスという単語を聞き、アイスを買うことを思い出した。楽しすぎて頭から抜けていたのかもしれない。アイスのこと。
「真央ちゃん、アイスを買いに行って頂戴、もちろんお・ま・か・せでOK」
「ねぇ~さんの命令は絶対!行ってきます!すぐ戻る!」
と言って小さな背中が駆け足で店内に引き返していく。駆け足だがしっかりと周りを見ている、姉は、そういうところが好きなのだ。
ほんの数分で戻ってきた。手には違う種類のアイスが2つ、いやよく見たら3つ手に持ってあった。
「ありがとうー。真央ちゃん!うん......あれ??3つ?2つも食べるの?デブ一直線だね!」
「これはねぇ~さんの!ねぇ~さんに喜んでほしくて買ってきたの。」
真央は顔を真っ赤にし、恥ずかしそうにそっぽを向いた。
「恥ずかしがり屋さん♡、でもありがとうねぇ!」
いつも通りの買い出し、いつも通りの他愛のない話、それだけで、2人の世界は十分に満たされていた。
『やっぱこのときが一番楽しい!』
そして、 アイスを頬張りながら、家に帰り、家に帰ったあとは2人で夕飯を作り、そして、仲良く一緒に食べ、そして、寝室で澪と真央は一緒に寝る、そんな穏やかな日常がいつまでも続けばいいと、2人とも思いながら、長い一日に終止符が打たれた。




