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レイナと砂漠とボードゲーム

「暑いねぇ!」

「レイナさん……元気ですね……」


 剣聖戦とやらに出場し、代理戦争を終わらせる為に新たな旅に出た私達は今、ガンガンに日が照る砂漠を歩いていた。


「砂漠なんて初めて来たからね!」

「それで元気になるのは師匠くらいなものかと……」


 暑さに負けそうなのか、だるそうなサロスが感想を漏らす。


「そう? でもさすがにこのままだと死にそうだよ?」

「師匠は死にそうには見えないですよ」

「見えないです」

「そお?」


 流石の私も自然には勝てない。暑いものは暑い。なので。


「イデア・ヒュノスティエラ」

「レイナさん?!」


 原初の魔法。吹雪を吹かせ、あまりの冷たさに砂漠が凍る。


「これでバッチリだね?」

「どこがですか! 今度は寒くて死にそうですよ!!」

「およ」


 そういわれて見れば、寒い? かな?


「装備で環境状態異常オフにしよ」

「しかも自分だけ対策してるし!」

「師匠、めちゃくちゃしますね……」


 砂漠対策で地肌は出さないものの、涼しい恰好をしていたアイシェは凍えそうな声で抗議し、サロスは火魔法でアイシェともども温めながら呆れたような声を出す。


「炎であっためる?」

「レイナさんが炎使ったら今度は砂漠より暑くなりますよ!」

「そかな」

「そうです!!」

「アイシェ、今までの旅、大変だったんだろうな……」


 なんか、サロスがアイシェを労わる眼をしている。なんでかな。


「じゃあどうしよう」

「とりあえず家を出してください」

「あぁ、なるほどー」


 私の魔法で作った家なら、寒さも暑さも関係ない、適温になる。


「ほいっと」

「師匠の魔法は相変わらずデタラメだ……」

「早く入りますよ」


 というわけで家に避難する。

 さて、これからどうしよう。


「しばらくは足止めかー」

「すごく他人事のように聞こえますけど、レイナさんのせいですよ」

「うっ」


 まあ、考え無しではあったね?


「それはそれとして」

「なんですか?」

「今度家を出したらしたいことがあって」

「なんでしょう。掃除とか、模様替えですか?」

「ううん。ゲーム」

「げーむ」


 え、何今の発音。この世界ってゲームの概念ないの?

 娯楽なさすぎじゃない? 大丈夫?


「簡単なボードゲームでもしようかと」

「げーむってなんですか」

「遊び?」

「師匠、遊んでる場合ですか」

「レイナさんらしいですけど……」


 なんか二人して呆れたように私を見る。なんでかなあ。


「まさかと思いますが、ここまで計算通りということは」

「ないない。私がそこまで思慮深く見える?」

「見えませんね」

「見えません」

「自分で言っといてなんだけど、傷つくね」


 二人して同意することなくない? 私を知りすぎてるアイシェはまだしも、サロスはさ。


「で、何をして遊ぶんですか」

「お、意外と乗り気」

「だって、遊ばないと解放してくれない気がしたので」

「解放て」


 別に監禁してないよ。軟禁もしてない。遊びたくてこの状況を作ったわけではないので。


「ホントに事故だよ? 悪気はなかったんだよ?」

「わかってます、レイナさんは素でやらかす人なので」

「うん、わかってくれてるのは嬉しいけどちょっと悲しい」


 素でやらかすのは事実だが、ハッキリ言われるとね。


「まいいや。で、リバーシでもどうかと」

「りばーし」

「ですか」


 アイシェとサロスが不思議そうにする。

 私はそんな二人にリバーシを取り出して見せ、サクッとルール説明。

 単純なルールなので二人は直ぐに理解してくれた。


「で、うん、あのね、アイシェ」

「なんですか、レイナさん」

「いや、いいんだよ? いいんだけどね?」

「だから、なんですか、レイナさん」

「うん……」


 あれから一時間、サロスを見る。

 アイシェとサロス、最初こそは互角だった二人だが、二戦目からは酷かった。

 なにがって。


「毎回全部『黒』にして勝つの、やめたげて?」

「なんでですか?」

「なんでって」


 そりゃ、いくらゲームとはいえ、ねえ。

 あまりにも残酷な、一方的な戦い過ぎて、サロスが可哀そうだ。


「勝負は真剣だから意味があるのでは」

「まあ、そうなんだけど、だからこそというか」


 真剣過ぎて、意味のある敗北ばかりが積み重なるサロスと、圧倒的勝利が続くアイシェ。

 楽しいのかな、これ。


「アイシェ、一応聞くけど、楽しい?」

「え、楽しいです」

「あ……そ、そう」

「……」


 サロスをフルボッコにするのは楽しいらしい。アイシェって結構鬼だよね。


「じゃ、わたしとやろっか」

「レイナさんとですか。負けませんよ?」

「うん……」


 まあ、うん。やればわかるよね。

 てなわけで、一時間後。


「……っ。もう一回!」

「いや、アイシェ、流石にもういいって」

「ぐぬぬぬぬ!」


 勝負は私の連戦連勝。流石に全部自分色とはいかないが、それでも毎回私の勝だ。

 僅差だけどね。


「もう少しで勝てそうなのに……」

「うん、まあ、ね」


 そうね、そう見えるよね。


「アイシェ、なんで勝てないか、わかる?」

「……わかりません」

「そかあ」


 まあ、理由はいくつかある。

 その中でも一番大きいのは……。


「アイシェ、角を取れば勝てるってものじゃないんだよ?」

「でも、有利じゃないですか」

「まあ、そうなんだけど」


 それに関しては否定はしない。でも、ね。


「自分がしたいことを押し付けるのは、私が教えた戦い方だけど、これ、ゲームだからね?」

「それは、どういう」

「あのね、ルールがあって、お互いに決まった行動しかとれないってことはね『すべてのデータが揃ってる』方が勝つんだよ」

「……どういう意味ですか」

「うーん」


 なんていえばわかるかな。ハッキリ言う?


「私、このゲームやり込んでるから、全部の手を知ってるし、なんなら6×6は後手必勝なんだよ」

「……え?」

「つまり、白有利ってこと」

「……え」


 今度の「え」はサロスだった。


「あの、師匠」

「ん?」

「白が有利、なんですか」

「そだよ」

「……それで連敗した俺って……」

「あ」


 サロスが落ち込んだ。ごめん、わざとじゃないんだよ。


「レイナさん、それ、ゲームになってますか?」

「なってないよ? だから、私は参加してなかったでしょ」

「う。それは、そうですが」

「それに、アイシェ白なら同じことできる自信、ある?」

「……無いです」


 まあ、アイシェなら何度もやれば覚えるだろうけどね。でもまあ。


「ま、私が言いたいのは、あんまり勝過ぎても楽しくないよねってことと、楽しくやろってことかな」

「むぅ……ちょっと理不尽では?」

「まあ、ちょっとね?」


 無理やり自分の理屈通したみたいで、いい気持ちはしてないね。でも、楽しんで欲しかったのだ、二人に。


「まあでも、わかりました。勝つだけなら白を選べばいいですが、楽しくやるなら……」

「そ、勝ちにこだわっても仕方ないゲームだからこそ、気楽にねっと」


 後手必勝ゲーなのだから、うん、気楽に気楽に。


「さて、それじゃ今度は……チェスやろう」

「ちぇす、ですか」

「うん」


 まあ、これも後手有利なゲームなんだけどね……。でもそれは言わない。


「やりましょう、サロス」

「あ、あぁ、やろうか、アイシェ」


 そういって立ち直り(?)アイシェに向かうサロス。

 さてさて、これでしばらく楽しく遊べるといいね。


ご読了ありがとうございました!

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次回更新は次回日曜日の21:00までを予定しております。

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