第47話 幼女先生はおいはぎをする!
「先生、何のご用でしょうか?」
呼び出された俺は職員室に来た。
だが、担任の幼女先生――メダイ先生は違う場所で話そうということになり、現在、俺たちは職員室の隣、談話室にいる。
談話室には2つのソファがあり、1つは先生が座った。
その向かいに俺とリコリス、メミが座り、ラクリアは後ろで立っている。
呼び出しがかかったのは俺だけなのに、なぜこの3人がついてきているのか。
別に1人で来てもよかったのだが。
『兄様が行くのでしたら、私も参ります』
『気になるから行きたい!』
『私もだYO!』
と言ってきたので、一緒に来た。
まぁ、3人とも事情は知っているし、問題はないだろう。
後の2人はというと、研究室に残っている。
部屋の外には俺を追っかけてきた学生が集まっているのか、少し騒がしい。
しかし、幼く見えるメダイ先生は気にすることなく、話し始めた。
「モナー君、今朝の新聞は見ましたか?」
「はい」
「なら、率直にお聞きしますね、モナー君。あなたには体のどこかに勇者の紋章はありますか?」
ここは正直にお答えしないとな。
「いいえ。ありません」
うん、正直な気持ちは大切だ。
勇者として働くなんてまっぴらだからな。
「…………え? ほんとですか?」
「はい、先生。ほくろとかはありますが紋章みたいなものはないですよ」
「私も確認しましたが、可愛いお尻のほくろ以外特に気になるところはありませんでした」
そう言ってきたのは、隣にいるメミ。
彼女は微笑みを浮かべていた。
…………俺の発言に信憑性を持たせようとしてくれるのはいいが、ほくろに関する情報は先生に教えなくてよかったと思うぞ。
「…………」
しかし、メダイ先生は言葉を信用していないのか、ジト目を送ってくる。
「モナー君、嘘はいけません」
「嘘じゃないです」
気持ちには嘘をついていないんで。
すると、メダイ先生は立ち上がり、俺の上着を掴んだ。
…………先生、一体何をする気だ。
先生は、俺の上着を脱がそうとし始めた。
「勇者じゃないはずがないです! ……さぁ、服を脱いでください! 私が紋章を確認してあげます!」
「いやー! 先生においはぎされる! 助けてぇー!」
「そんなこと言っても、私はひるみません!」
助けの声を外に求めたが、メダイ先生は服から手を離すことはない。
ならばと、先生の手を振り切ろうとするが、先生は服をぎゅっと掴んだままだった。
…………くっ、この先生強いな。
俺が振り切ろうとしても、手を離さないとは。
「さぁ! 脱いでください!」
「嫌です! 本当に嫌です! ちょっ、ボタンを外さないでください!」
「先生、ダメです! 兄様の服を脱がせていいのは私だけです!」
「先生、いけー! ネルの服を脱がしちまえー!」
「FOOOOO!」
逃げようとする俺、なんとしても俺の服から手を離さないメダイ先生、先生の手を掴むメミ。
周りのリコリスやラクリアは好き放題言って、部屋はカオス、カオス、カオス。
先生に引っ張れながらも、俺はなんとかドアのところまで行く。
そして、ドアを開けた。
「あ、教頭先生」
開けた先にいたのは、つるっぱげのおじさん――教頭先生。
俺の服を引っ張るメダイ先生は、ばっちり教頭先生と目が合う。
教頭の目はメダイ先生の顔から手をなぞり、そして、俺を見る。
「メダイ先生は一体何を……」
「えっと、その、これは……」
「教頭先生! 俺、おいはぎされてます!」
「モナー君!」
そうして、おいはぎが見つかったメダイ先生は、教頭先生からご叱責をお受けになられた。
その時、「いくらモテないからといって、男子生徒の欲情してはならない」とか言われていた気がする。どんまい、先生。
だが、結局、俺も事情を知った教頭先生の命令で、男の先生に別室へ連行。
上半身の服を脱がされ、秒で腕にあった紋章を発見された。
ああ……嫌だったのに……。
紋章を見つけられた俺は、メダイ先生がいる部屋に戻る。
すると、先生は半泣きで俺を待っていた。
よほどかわいそうに思ったのかあの悪魔女リコリスが隣に座って、「先生、大丈夫。かわいいわよ、男に見る目がないだけよ」と慰めている。
「モテない」ことを指摘されてショックを受けたみたいだな……どんまい。
俺はソファに座り、メダイ先生と向き合う。
俺の隣にはメミとラクリア、先生の隣にはリコリスが座った。
悪魔女は先生の背中をずっとさすっている。
涙目のメダイ先生は、静かにこう聞いてきた。
「モナー君、君は勇者として働きたいですか?」
うん……もうここは率直に言うべきだろう。
「先生、俺は勇者として働くのは嫌です」
他の6人の勇者がいるし、そいつらめっちゃ強いと聞く。
俺がいなくとも、魔王なんて余裕で倒せるはずだ。
すると、先生は残念そうな表情を浮かべ、静かに頷いた。
「モナー君がそういうのならば……ええ、わかりました。勇者としての活動は強制しません……ですが、勇者と公表しなくとも、新聞に出た以上君には世間の目がつくことを覚悟してください」
「分かってます」
「……モナー君も知っているとは思いますが、勇者の方の中には勇者業を行いながら、好きなことをなさっている方もいらっしゃいますよ」
確かに、フェグタの勇者はアイドルをしていると聞くし、メグレズの勇者は作家だということも知っている。
そんな兼業勇者を知っているけども、俺としては勇者自体をしたくない。
したいやつがしたらいいんだ。
――――そう思いながら、勇者として活動しないことには違和感があった。
心のどこかでは「すべきだろう」と言ってくる自分がいる。
勇者に使命があるのは分かっている……分かっているけども……。
考えこんでいると、遠くからドゴンッという音が聞こえてきた。
今のは校門の方からしたが、研究の実験か何かだろうか?
「先生、今日何かイベントでもあるんですか?」
「いえ、今日は何も予定されていませんが……」
爆発音に訝し気に思っていると、一時して、バッと入り口の扉が開いた。
そこには息を切らす見知らぬ生徒がいた。
「あの! アルカイドの勇者さんはいらっしゃいますか!?」
★★★★★★★★
『アルカイドの勇者に会いに来られた方が暴れています!』
そんな報告を受け、俺はすぐに校門の方へ向かった。
人だかりができてはいたが、注目を浴びている彼らの近くには人がいない。
みんな、怖くて離れているようだった。
「だーかーらー! 俺らは! アルカイドの勇者に会いに来たんや! 邪魔すんなや!」
注目されている2人の男――1人はオレンジ色の髪で、もう1人は青色の髪。
そんなド派手な髪色の男子生徒は、警備員の胸倉をつかみ、怒号を放っていた。
2人が好き放題暴れたのか、道はバキバキに割れ、門はぐにゃぐにゃで原型をとどめていなかった。
随分と狂暴なやつらだな……怖っ……。
「なぁ、お前ら何してるんだ」
そう声をかけると、2人がバッとこちらを見る。
顔がめちゃくちゃそっくりだな……。
襲ってくると思って身構えたが、なぜか2人の動きは止まった。
「あ! あれや! あれ! 探してたやつやんけ!」
「そうだね。彼は新聞で見た顔だ」
そう言って、2人は真っすぐ走ってきて、俺に詰め寄ってきた。
「なぁ! なぁ! あんた、アルカイドの勇者やろ?」
「絶対そうだ。そうだろ」
いや、そうだけどさ……。
「おたくら、誰だよ」
そう問うと、2人はニヤリと笑みを浮かべ、手の甲を見せてきた。
そこにあったのは勇者の紋章。
だが、俺のとは少し異なるデザインものだった。
「俺らはミザールの勇者や! よろしくな、新人勇者!」




