表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミニ四駆に悔いを残していたら過去に飛ばされたの巻  作者: さかざき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/55

帰還

スタートラインに、3台が並ぶ。


1レーン スピンコブラ。

3レーン アストロブーメラン。

5レーン 小覇龍。


会場を満たしていたざわめきが、次第に1つの塊となり、静かに収束していく。

このレースが決勝の、そして大会の最後だ。


実況マイクから張り詰めた声が響く。


「いよいよ、このレースが決勝レースの中でも最終レースになります!」


観客席がどっと沸いた。


「現時点での大会最高タイムは、コウスケ選手・小覇龍!

それに迫るのが、ユウ選手・スピンコブラ!

差は、ほとんどありません!

アストロブーメランも、大逆転を狙っているぞ!」


コウスケは、前だけを見ていた。

隣にいる存在を、意識しないわけがない。

だが、視線を向けることはしない。


――決める。


「注目しましょう!」


1拍。


「……用意」


心臓の音が、大きく響く。


「スタート!!」


3台が、グリーンシグナルと同時に弾けた。


スピンコブラが、わずかに前へ出る。

鋭い加速。

スタート直後の展開は、ユウに分があった。


「スピンコブラ、先行! 続いてアストロブーメラン! ぴったりと食らいつく!」


小覇龍は焦らない。

コウスケも慌てる様子はなく、外側コースを確実なラインで走っている。


3連続のサイクロンバンク。

スピンコブラが1段深く入り、立ち上がりで差を広げる。


「ここはFMタイプの真骨頂! バンクでリードを広げた!」


高さのあるドラゴンブリッジを難なく越え、レーンチェンジャーへ。

アウトコースを走りながら、スピンコブラは減速することなく駆け上がり、スタートラインへ戻る。


観客席から、どよめきが起こった。


――ユウ、速い。


アストロブーメランも追走し、逆転の機会を伺う。

スピード、コーナーリングともに、全国大会出場者の名に恥じない走りだ。


小覇龍は外側コースを走り切り、センターコースへ移行する。


レース中盤、大きな展開の変化はない。

だが、トップのスピンコブラと、最後尾の小覇龍との差は、確実に縮まっていた。


インコースを走っていたアストロブーメランは、スピンコブラを捉えきれないまま外側へ。


その隙を突く。


芝生セクション。

小覇龍が一気に伸び、アストロブーメランを捉えて2位に浮上する。


「芝生で小覇龍がまくった! これは速い!」


ここから小覇龍は、スピンコブラより内側のラインを走る。

有利な位置で、差を詰めていく。


最終ラップ。


スピンコブラは外側。

小覇龍は内側。


圧倒的に不利な条件の中、前半で築いたアドバンテージが削られていく。


バンクで並ぶ。


一進一退。

前に出ては抜かれ、離しては詰められる。


互いに、一歩も譲らない。


「すごい展開だ! 完全に互角! どちらが勝ってもおかしくない!」


コウスケは、マシンの走りにすべてを委ねていた。

小覇龍は応えている。

これまでで、最高の走りだ。


――このまま、行ける。


そう思った、その瞬間だった。


コーナーで、ついにスピンコブラの前に出る。


「ここで、トップに躍り出た小覇龍!!」


(よし! もらった!!)


コウスケの脳裏に、勝利の文字が過ぎる。


だが、直後のレーンチェンジャー。

背後から、一気に距離を詰めてくる影があった。


風を切る音。


スピンコブラ。


「スピンコブラ、猛追!!」


(まだだ、まだ終わっていない!)


ユウの汗ばんだ手に、力がこもる。


最終コーナー。

その内側から、スピンコブラが滑り込む。


「並んだ! いや――抜いた!!」


コーナー後の、最後の直線。

小覇龍が、すべてを振り絞って追いすがる。


2人の想い、視線、情熱が、誰よりも強く、まばゆく交錯していた。


「ゴーーーォル!!

勝ったのは……


ユウ選手! スピンコブラ!!」


歓声と拍手が、渦を巻く。


コウスケは、その場に立ち尽くしていた。


「タイムは!?」


決着は、レースの順位ではない。

大会最速タイムで決まる。


会場中の視線が、モニターへ集まる。


……


………


………


スピンコブラだぁぁあ!!!


わああああ!!!


会場が爆発した。


第3ヒートの激闘の末、最速タイムはスピンコブラによって更新された。


コースアウトはなかった。

直線では誰よりも速かった。

コーナーも最後まで安定していた。


極限の走りを認めたコウスケは、ふっと笑った。


「…バケモノめ!

これ以上ないくらい準備してきたけど……

ユウはすごいな!」


コウスケが、手を差し伸べる。


ユウも、迷わずその手を握った。


「コウスケ、ありがとう。

どちらが勝ってもおかしくないくらい速かったよ」


「すごいレースでござった!

2人とも、最高でござるよ!」


ジョンも加わり、ライバルはいつの間にか親友に戻る。

まるで、憑き物が落ちたように。


互いの健闘を、素直に讃え合っていた。


「……あれ?」

「ん?」

「何でござ……」


――観客席に、ユリがいる。


あの別れから半年ほどしか経っていない。

白いワンピース姿の少し大人びたユリが、そこにいた。


3人の視線に気づき、ユリは親指を立てて微笑む。


きっと。


「ナイスゥ」


そう言っているのだろう。


3人はそれに気づき、同時に小さく笑った。


「……あれ、ユリちゃんだよな」

「間違いないでござる……」

「来てくれたんだ……」


短い言葉で、十分だった。

視線を交わすだけで、半年ぶりの再会の温度が伝わる。


ユリの元へ駆け出す3人。


そしてユリの元へ辿り着いた、その瞬間。


意識が、遠のいていく。


……


……


……


2026年に、帰ってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ