きさらぎ駅 RTA 5時間 36分13秒 part1
「きさらぎ駅RTA はっじまーるよー」
「まずRTA、何・故・か・!先駆者が居ないのでタイマースタートとタイマーストップはこちらで決めさせていただきます」
「一応、先駆者は居たんですけどね。残念ながら先駆者のはすみ姉貴は途中で帰らぬ人となったので記録は存在しておりません」
「私も先駆者の二の舞にならないよう、丁寧丁寧にきさらぎ駅を探索していきましょう」
「ではタイマースタートはきさらぎ駅に到着してからとします」
乗客の居ない電車の中で一人声が響く
「まず、きさらぎ駅に行くには寝る必要があります。目が冷めた時にきさらぎ駅のアナウンスが無ければリセです。」
「次回も頑張りましょうねー なお、他の乗客がきさらぎ駅に巻き込まれた場合、大幅なタイムロスに繋がるので常に無人の電車を選んでおります。」
「通常プレイなら居たほうが良いので試走する場合は複数人で乗り込みましょう」
「その場合は新浜松駅からスタートするのが遭遇確率が高くオススメです。」
「この場所でも確率は0ではないので何事もリトライです。では皆さん。きさらぎ駅に到着するまでカットです」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「次はきさらぎ駅~ 次はきさらぎ駅~」
乗客の居ない電車の中で静かにアナウンスが鳴り響く
「はい、地の文は飛ばしてここからタイマースタートです。ちなみにタイマーストップは現実世界で目を覚ました所でストップとします」
電車の扉が開く、一人の人間がものすごいスピードで走り出し改札口を出て周りの状況を確認する。中は荒れ果てており立て掛けてある時計の時刻は丑三つ時で止まっており動く気配はない。
辺りは暗くどうやら電気が通って無いようだ。
「電気が通ってないのでリセット!」
「したい所ですがまだリカバリーが効きます」
「このきさらぎ駅脱出方法が幾つかあるのですが、1つ電車の中に残り続けて電車をどうこうする方法」
「こちらも速いのですが、『きさらぎ駅RTA』と銘打っている以上このルートは使えません」
走りながら駅から離れる。足は迷わずゆらゆらと揺れる明かりの方に進んでいた
「堅実な方法の一つは地道に来た道を戻ることです。歩いて帰っても良いのですがこの場合はどこかで乗り物を用意して移動するとタイムが縮まりますがこのルートは時間がかかるのとひたすら移動するだけで地味なので無しです」
「ただ色々とガバをして、どうしようもなくなったらこのルートを使います。記憶より記録、完走すれば世界一ですからね!!」
「そしてもう一つのルートは……」
足は緩めず明かりの方にどんどんと進んでいく、笛と太鼓の音が聞こえ始める。どこかで祭りでもやっているのだろうか?
「地の文をここでキャンセル、ここで惑わされて駅に戻ったり、笛が鳴っている舞台の方に行くとガバになります」
「まあ舞台の方に行くとヒロインがいるのですが、クロノトリガーのマールとのデート並みに面倒な事が多く多数のロスが発生するのでこのまま祭りの屋台の方に進みます」
笛の音色が少し遠ざかっていき、綺羅びやかな屋台が並ぶ場所にたどり着く。人混みの人々は何故か気配は薄く何故か顔は霞んだように見えないし覚えられない。
「はいはい。行き交う奴らなんてフラグやアイテムもらえなければ全部モブです」
「むしろぶつかってタイムロスになるので全部成仏してほしいですね」
周りを見渡してみると射的ゲーム、型抜き、くじ引きを始めとした屋台でおなじみのゲームが見え、他の場所からはイカ焼き、綿菓子、たい焼きといい匂いが漂ってくる。
「まずは射的ゲームに進みます」
「ちなみにここで売っている綿菓子やらたい焼きやらイカ焼き等の食べ物は全部罠です」
「これはヨモツヘグリになりバットフラグであるバットステータス:ヨモツヘグリを受けてしまいます」
「ここに来るまでに十分にお腹を満たしておきましょう」
そう言いながら足早に人を避け射的ゲームに進んでいく、
「地の文キャンセル! オヤジ!!射的ゲームを10回!!」
数千円を顔の見えない屋台の人物に渡す。返事を待たず近くにある射的用の銃に弾を込め目の前の古い硬貨を狙い始めた。
「ここで手に入る古い硬貨を入手する事で、きさらぎ駅にある券売機から現世行きの切符を購入する事ができます」
話しながら片手間に銃を撃っていく、なお硬貨という性質上的が小さいのか一向に当たらない。所謂ガバというやつである。
「ここでヒロインが居ればヒロインの欲しい物を撃ったほうがいいです。好感度あげて脱出に必要なアイテムを貰いましょう。」
「全然当たりませんねー ちょっと本気を出します。」
追加でさらに数千円を屋台の店主に渡す。それを受け取ったのを確認すると再び打ち始める。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「……まったく当たりませんでした。十分練習したんですけどなんでですかねー?」
「これは酷いガバ。これは余裕のリセットも視野に入りますが」
「まだ! まだ!!ここからさらなる運ゲーに挑んで成功すればこのガバも巻き返せます!!!」
素早く射的の屋台から身を引き何軒か離れたくじ引きの屋台に向かう
勿論行き交う人を器用に避け
らけれず時々ぶつかりながら移動していく。
「おいごら!!どこに目をつけて……クソッ!こいつら全員目がねぇ!!」
「オヤジ!!くじ引き100連ガチャ!!! もう無事にRTA成功しても電車でお家帰れないねぇ!!」
そう言って万札をくじ引きの箱の横に叩きつける。また店主の返事を待たず手づかみで大量のクジを引いた。
「狙うは勿論、1等のカメラ……ではなく3等の硬貨です!!」
「ちなみにここでヒロインの好感度を十分に稼いでおくとヒロインの不思議パワーでこちらは1等、ヒロインは脱出に必要な3等を引きます」
「まあ今回ヒロインは居ないので自力で当てることになりますが、この運ゲーが嫌だったから射的ゲームにしたんですがね!!!」
そう言いながら大量のハズレの文字が書かれたクジを開いていく。そして最後の一枚が開けられた……
-2等-
カランコロン カランコロンと鐘の音が鳴り
大量のハズレクジの上に可愛らしい巨大なクマのヌイグルミがドンと置かれた。
「ちがあああああああああああう!!!そうじゃない!そうじゃない!!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
くじ引きの屋台の前でうずくまる。先程まで死ぬほど煩かった声が止んだせいか少し笛の音色と太鼓の音が大きくなった気がした。
「リセ……リセ……」
「完走……世界一……」
「完走…すれば…世界一」
ぐったりとした状態からまるでゾンビのように体を起こす。
「完走。完走すれば世界一なのでこのままプレイを続行します」
「ただ、この状況下で残り時間を考えると、最初に説明した一番時間のかかるルートである線路を逆走するルートで帰る事にします」
クマのヌイグルミをひっつかんで、ノロノロと足を進め徐々にスピードを上げていく、途中放置してあった自転車に素早く乗り、きさらぎ駅に戻ってきたのを確認すると電車で来た道をひたすら逆走し始めた。
「では気を失い電車の中で目を覚ますまで、暇だと思いますので」
「そんな皆様の為に~」
「私の大好きなボイスドラマを聴いてもらいます」
ポケットからおもむろにミュージックプレイヤーを取り出す。そこからなんだか優しい音楽が流れ始めボイスドラマが始まった。
「はー今日もいいペンキ!」
「次は終点〇〇~ 終点~」
誰も居ない電車の中で無情にも声が響く、どうやら無事に帰れたようだ。
……というわけで記録は 5時間 36分13秒です
脱出EDは消費した物は正式に消費しますのでお金もすっからかんとなりました。
でも、
-銀の手は消えない-
じゃなかった。このガバの結晶であるクマのヌイグルミは消えません。
今度はご帰宅RTAですよー この無駄にデカイクマのヌイグルミ担いで歩いて帰ることにします。
ではまたー記録更新の際に会いましょうねー
あと、私も走ったんだからさぁ お前らも走るんだよ!!!