第二話 開戦の煙幕
最近、この改進軍である異変が起きている。それも、和夜が先導者になってからのことだ。やはり間違いだったのだろうか。それでももう変えることはできない。それも、今回の異変に関して言えば、他の師団よりも、俺が師団長を務めている第三部師団だけに限って異変を強く感じる。何故だろうか。連中がある部屋で会議をしているのだ。連中の勝手により、報告は会議が終わり次第師団長に口頭で伝えることになり、紅葉は思うように動けなかった。それでも何度か覗いたことはある。ホワイトボードに陣形図が貼ってある。明らかに攻撃用、しかも特攻用の陣形である。こいつらは反乱しようとしていると俺の勘が言っている。それもそうだ。二年も作戦立案、陣形作成していればこれが攻撃用の陣形であることぐらいわかる。そのほかの見分けだってつく。俺の作戦立案で右に出る者はいないと信事に言われたことがあるくらいだ。それに、おれは改進軍初代創設者の三名しか参加権のない作戦会議に参加したことがあるくらいだ。信事のお気に入りの一人だった、ってことだろうか。そんな俺だから、薄々気付いていた。こいつらの裏には、何か大きな陰謀がある。
しかし、薄い希望はまだある。こいつ等の参謀が青二才だからか、この陣形には様々穴だらけなのだ。網目のような虫食い所があり、突っ込み所は満載、初心者のやりがちな陣形図だった。
ある日、鹿児島の北部に設置されていた武器庫が鹿児島南部に移転され、武器の補給がより鹿児島本部に近くなった。武器庫整備の班の顧問は、銃に関する知識の多さと実践の経験を多く積んでいるという二点が評価され、この俺、紅葉が務めていた。その日、武器庫内では運び出されたまま仮置きされていた銃器を本設置に移行するための整備が行われていた。
「師団長、こいつはどこにします?」
同班の一人が聞いてきた。FN-P90を持っていた
「微妙だな、サブマシンガンの突撃用、クリス・ヴェクターの隣に設置しよう。」
「了解です。」
「頼む。」
「それでは、HK-416はどうします?」
「M4,SCARと同じブロック、それぞれの間に設置するのだ。」
「了解です。」
最近、突撃用の武器が増えた。そもそもアサルトライフルの「アサルト」は突撃を意味するからな。そうでなくても、突撃用サブマシンガンとして改進軍が採用しているFN-P90や、支援サブマシンガン、クリス・ヴェクターまで来ている。逆に狙撃銃やショットガン、グレネードも少ない。戦略的攻撃に特化した銃が多いのだ。無論、ここに武器庫を移転させることについての案を出したのは第三部師団の一兵士だ。ここにある武器を使って反乱をしようというのだろうか。それもそうと、まだ明けていない箱があった。おそらくマガジンだと思っている。俺は箱をゆっくりと開けた。
「うぉ、何だよハンドガンか。」
「こちらはどこに設置します?」
「サブマシンガンの手前、できれば突撃銃の近くだ。」
「ちょうどいい空きブロックがあります。そこでいいですか?」
「ああ、頼む。」
次々と運ばれてゆく。そこには、ガバメントやベレッタM92F、ガバのカスタム、ウォーリア、グロック、他様々なハンドガンがあり、最後にはSIGP320があった。信事が使っていた銃だ。あぁ信事よ、お前の勇気を半分分けてはくれまいか。とは言っても、彼もまだ生きている。あの日、病院で俺たち改進軍と誓ってくれた。戻ってくるって。だから希望を落としてはならない。このことは掠矢に相談しなくてはならない。和夜にもだ。これが今における最善策のはずだ。
「内乱だぁ?間違いないのか?」
掠矢が場違いな声をあげる。
「はい、間違いありません。」
「そんなはずは――。」
「いや、こいつが言うからにはそうなのだろう。」
「え?」
「お前はまだ知らんだろうが、こいつは俺が今まで見てきた改進軍のメンバーの誰よりも信用できる。経験も多いしな。」
「恐縮です。」
掠矢は、あることを和夜に尋ねた。
「そういや、お前、信事の元にずっといたんだろ?」
「はい。」
「それじゃ、信事は反乱について、どう言っていたんだ?」
「その質問の回答を聞く覚悟はおありですか?」
そうとうな回答なのだろうか。俺と掠矢は互いに首肯した。
「武力を否定してきた我々が互いに命を奪い合うくらいなら、改進軍は解散して首を差し出す。」
最もだろう。今、俺の師団は機能しない。第一、第二、第四部師団長と協力して陣形を作ることにしよう。和夜頼るしかないのだ。この作戦はコイツにかかっている。この改進軍において最も起こってはいけない内乱。それを止めるために命を失ってはいけない。最悪の任務が幕を開け、開戦の煙幕が鹿児島の空を切り裂いた。




