第6話
『早く自分の家に戻りなさい!』
という少女の訴えにより無月たちは急遽自宅に戻ることとなった。
「あなたの家は!?」
「こっちだ」
公園に転移した無月は公園を出て右の道を指さした。
「案内して!」
少女はそう言って無月に案内させ家に向かう。
家の前まで来るが特に変わった様子は見られず、リビングに明かりが点いている。
「速く中に!」
変わった様子が見られなかったのは外見だけだった。
不用心にも鍵は掛けていなかったし、
中に入ってみれば玄関を初め廊下も異様な程荒れていた。
すると少女は急いで靴を脱ぐと家の中に入っていった。
「遅かった!」
リビングの方向から少女の声が聞こえ、無月たち3人はリビングへと向かった。
「!!?」
リビングの光景を見た瞬間、その様子に3人が絶句する。
「お母さん!?」
そこには血でできた水溜まりの真ん中で倒れている如月桔梗の姿があった。
「何があったんです!?」
無月は桔梗を抱き起こし問いかけるが返事は全くない。
顔は青ざめ眼は開いたままでどこをみているかわからない焦点が合っていなかった。
そして腹部を見ると桔梗の腹には刃で刺したような傷跡がついていた。
「くそっ!…もう死んでる」
「そ、そんな…」
無月は桔梗の眼を閉じさせるとゆっくりおろして寝かすと床を叩いて大声で叫んで悔しがり、
祢音は桔梗の傍にしゃがみ込み、顔に手を当ててひたすら泣いている。
血の水溜まりに無月と祢音の涙がぽつぽつと落ちる。
「まさか、総帥補佐が殺られるなんて…誰の仕業だ?」
普段ヘラヘラしてるメデスでも、この状況はかなり驚いたようで普段と顔つきが違う。
「知ってたんだな。お前は」
そう言って無月は唇を噛んで、振り返ると下を向いている少女に目を向ける。
「はい」
と少女は小さく呟くように答える。
「誰が殺したかも知ってるのか?」
「はい」
再び少女は同じような調子で答える。
「詳しい話はあなたたちの本拠地でしたいのです。連れて行ってはもらえませんか?」
少女は顔をあげるとそう無月に要求してきた。
「そこでお前の正体も教えてもらうぞ」
「わかりました」
というわけで4人は組織の本拠地へと向かった。
本拠地の総帥の間の前に行くと
「!如月、丁度聞きたい事があるんです!」
と珍しくレミアが慌ててこちらに向かってくるのが見えた。
どうやらここにも情報は届いているようだ。
「その少女は?」
レミアは無月たちの先頭に立っている少女を見下ろす。
「話は後です。長老に会わせてください」
冷静になって聞いてみればこの少女は見た目は中学生ぐらいなのに発言が妙に大人びている。
「保護された少女ですか?…わかりました」
そう言うとレミアは急いで総帥の間の扉を開ける。
総帥が座っているはずの玉座に総帥である日向は座っていなかった。
「長老、如月無月、如月祢音、メデスの3名そして捕らわれていた少女が帰還しました」
レミアが誰もいない玉座に向けて呼びかける。すると玉座が光り出し――
『よくぞ戻った』
と言う声とともに光の中から長い髭を蓄え左眼を失っている。
そしてダン○ルドアを連想させる老人が現れた。
『オルタナティブ』の最高位『長老』の老人、名は『オーディン』。
かなり高尚な魔法使いだ。
「長老!?総帥はどこに行ったんだ?」
そう無月は問いかけるが
「まぁ待て。その少女が野々宮に捕らわれていた少女か」
オーディンはその銀髪の少女を観察するように見る。
「あなたがオーディンですね。
私の名は『フェイト・アマテラス・アカシャ』フェイトとお呼び下さい」
そう名乗る少女は5歩ぐらい前に出てからそう言った。
「『アカシャ』の名を冠する者か!?」
冷静そうな印象を受けるオーディンの顔が見た目とは想像できないほど驚いた表情を見せる。
「ええ、あなたに今の現状を伝えるために来ました」
そしてフェイトは話し始めた。
「まず、如月桔梗を殺したのは『オルタナティブ』の総帥、如月日向です」
「何だと!?」
「え!?」
その言葉に異常に反応したのは無月と祢音。
「まさか親父が!?何かの間違いじゃないのか!?いや、何で知っている!?」
次々に無月はフェイトに叫んで問いかける。
「2人とも落ち着くのだ!
フェイト様は宇宙の記憶『アカシックレコード』をダウンロードできる唯一のお方だ」
「つまり、過去や未来がわかるって事か!?
だから野々宮はオレらが殺しに行くって知ってたのか」
無月はやっと心に残っていた疑問が晴れたようだ。
「はい、私は過去や未来がわかるといっても躰は普通の少女でしたので、
殺されないためには彼に従うしかなかったのです」
とフェイトは淡々と手助けした理由を説明する。
「じゃあこれから何が起こるかわかってるのか?」
信じられないとでも言うような顔でメデスが途中で口を挟む。
「いえ、いつでも、どこでも、どこまでも未来や過去を読み取る事はできないのです。
器があまりにも小さく躰が耐えられません。
野々宮は私が未来が見えるときだけしか賭場に行きませんでしたから……。
それに今分かっているのは彼がこの事件の犯人だという事。
動機は世界を変えるためのようです」
フェイトは焦りも怒りも無い、無感情に今自分のわかっている事を答える。
「世界を変える?だからこうして頑張ってるんじゃないか!
それに何で母さんは殺されるんだ!?」
フェイトは振り返り、無月の眼を見て答える。
「どうやら桔梗は日向の誘いを断ったからのようです。今はそれぐらいしかわかりません」
「まさか…お父さんが?」
祢音は信じられないと、そんな表情で呆然として立ちつくしている。
「無月、祢音、メデス!お前たちに新たな任務を告げる!
組織の裏切り者如月日向を抹殺しろ!!」
冷静になりきれていない如月兄妹を叱るように怒鳴りつける。
「待ってください!この2人に肉親を殺せというんですか!?」
この任務内容に異論を唱えたのはメデス。
メデスは2人を見せつけるように手を伸ばして叫ぶ。
「調律者たる者、このくらいの精神力を持ってもらわねば困るのだ。
いうなればこれは試練でもある」
しかし返ってきた言葉は冷たいものであった。
「オーディン、私もこの結論には賛同しかねます。他の調律者に任せるべきです」
フェイトもこれには反対したいようでオーディンを説得するが
「いくらフェイト様の意見でもこればかりは受けいることはできません」
オーディンは意地でも無月と祢音にやらせたいようだ。
「しかし――」
そう言うフェイトの目の前に手が伸びる。
「フェイト様、これはオレたちで始末します。親であるならなおさらです」
無月からは大きな悲しみの念が感じられたが声はいたって冷静だった。
「そうですか。あなたがそう言うのでしたら私は何も言いません」
フェイトは本心では納得したのかしてないのかわからなかったが引き下がったようだ。
「無月、オレも付き合うよ。さすがに2人じゃキツいだろ」
と言ってメデスは無月の肩に手を置く。
「悪いな。頼むよ」
「まずは日向の居所を把握できねば話にならん。
それは演奏者を使いこちらで捜索する。お前たちは水月島で待機だ」
「オレたちは捜索できないのか」
「わしが日向の立場なら子といえどお前たちが障害となるならば抹殺する。
水月島に刺客が来る可能性もないとはいえない。
そしてそれによる一般人の被害も必ずないともいえないのだ。わかったな。
では任務成功の報せを待っているぞ」
そうして任務を与えられた3人とフェイトはそれぞれの部屋で一夜を過ごし、本拠地の門の前に来ていた。
「フェイト様はどうするんですか?」
いつも通り3人は黒いコートを羽織り、無月はフェイトに問いかける。
「私はここで彼らをサポートします。
皆さん、総帥の実力は並大抵ではないはずです。ですが必ず生きて還ってください」
「「わかりました」」
「再びあなた様の笑顔を見るため、必ず生きて帰ってきます」
メデスはそう言ってフェイトの両手を握る。
「はは・・頑張ってくださいね」
フェイトは苦笑いをしてそう答えた。
「では行ってきます」
無月は一旦水月島に戻るため転移魔法の魔法陣を出現させる。
「気をつけてくださいね」
「「「はい!」」」
そして無月たちは光に包まれ転移した。




