第46話 一日の終りは、温泉で
「イバラをやっつけたら、鬼怨だって瓦解しそうじゃね?」
「モモのいうとおりよ。ああいうのは、柱をぶっ潰したら一気に傾くわよ」
「みんなも、そんな感じでいいか?」
他の学校に聞いても、問答無用で合宿継続を希望した。
大人の冒険者たちも、あたしたちの意思に賛同してくれる。
「というわけで、嵐山さん。合宿の最終日は、イバラを潰しに行くから」
それまでは、生かしておいてやろう。
ヤツらがおてんとさんを拝める日は、あさってまでだ。
「わかりました。まったくあなたがたの闘争本能には、驚かされますね。ですが……」
あたしの意見に、嵐山氏はため息をつく。
「イバラの潜伏先が、わかりません。ドローンで逃げたイバラを追跡しましたが、ドローンを破壊されてしまいました」
「まあ、また合宿していたら出てくるっしょ」
「わかりました。合宿は継続します。ですが鬼怨を相手にするなら、本当に身の安全は保証できかねます。自分のことは、ご自身で守ってください」
「OKOK」
「本来ならば、『我々が全力でサポートします』というべきところなのに。代表である身として、こういう言い方しかできず、情けなく感じています」
「いいって! すごくがんばってるじゃん。嵐山さんは! そうだよな?」
あたしだけじゃない。みんな、麝香学園のがんばりをわかっている。
「というわけで、大変だけどさ。これからも合宿、楽しみにしているから」
「はい。今日はゆっくり休んでください。あれだけの大立ち回りの後です。鬼怨だって、休息しているでしょうし」
よっしゃ、風呂に入って寝るか。
この島は、温泉地でもあるらしい。
「おーっ。仕上がってんなあ!」
大浴場は、岩風呂だ。
灼熱の真夏といえど、温泉はテンションが上がる。
あたしたちは、さっそく湯に浸かった。
「みなさん、スタイルがよくてうらやましいわね」
スレンダーな蓮川が、あたしたちのプロポーションをうらやましがる。
「でも、一番ナイスバディなのって、ティナだよな」
さっそくのぼせたのか、ピオニは木製のベンチで寝そべっていた。
「うんうん。オレら女子の中でも、全校生徒でトップなんだってさ」
そのティナは、デリオン姫の背中を流してやっている。
「ティナ。そのおっぱいで、スリスリしてやってもいいぞ」
「そのほうが、気持ちいいんですか?」
「気分的に」
「では……」
冗談のつもりが、ティナは本気にしてしまった。バスタオルに石鹸をつけて胸に当て、ゴシゴシと背中をさする。
「おふ、おう」
デリオン姫が、小学生のオスガキみたいな声を上げ始める。
「姫様、トリップしていますから!」
従者の綿毛が慌てて、姫にお湯をかけた。
「はっ。ママに抱っこされてる夢を見ていたのだ」
「お妃様は、姫と対して変わらないスタイルでございますっ」
精神耐性の強いエルフに、幻想まで見せてくるとは。ティナ、恐るべし。
「てっきり、ピオニが一番胸でかいって思っていたけどな」
「オレは、そうでもないんだよ。春子と同じくらいで、形が違う感じ」
はるたんが洋ナシ型なら、ピオニはロケットバストだ。
「ン?」
あたしは、温泉の看板を確認する。
「ここって混浴なんだよな~。野呂さん呼ぶか?」
水着もあるし、大事なところを見られる心配はない。
「バカ言わないでよ! ここにアスカなんて呼んだら、あの子は卒倒してしまうわ!」
蓮川が、身体を隠す。
「それにしても、七星さん」
「ん?」
「どうして、勇者連合を受けなかったの?」
蓮川先輩に続き、ピオニも「そうだよ」とベンチから身体を起こす。
「おめえの腕なら、勇者連合だって二つ返事で入学OKなのに。金盞花女子って、元々ダンジョン部がなかったんだろ?」
「おーん」
はるたんが「ダンジョン部がない学校に通いたい」と言ってきたので、離れ離れは覚悟していた。金盞花からスカウトの通知がなかったら、勇者連合へ入学も考えたかも。
「あなたがウチに来てくれたら、めんどくさいピオニのお世話も任せられたのに」
蓮川先輩、かなり苦労させられてるんだな。
「でもなあ、勇者連合って都内じゃん。バイトの手伝いができんくなる」
金盞花女子もウチの実家も、郊外だ。金盞花も、家から目と鼻の先にある。
「タフだなあ。ダンジョン潜って、バイトもするのかよ」
ピオニの実家も店屋らしいが、手伝わないという。
「つーか。なにより、はるたんがいるってのがデカいんだよな」
はるたんがいるから、ダンジョン部が新たにできたから、というのが、金盞花を選んだ理由である。でも、はるたんの存在が一番大きい。
「だから、勇者連合の校風がキライってわけじゃないから」
とはいえ勇者連合は、あたしが通うにはあまりにもガチすぎだ。
はるたんとユルいペースで攻略するのが、一番性に合っている気がする。
「あ~あたしはやっぱり、こういうユルい活動のほうがスキだな」
「そうね。ウチらに慌ただしい戦場は、似合わないわよ」
湯に身体を浮かばせながら、あたしとはるたんは同じことを考えていた。
(第四章 おしまい)




