新たなる旅2
カイミの町を出港し、海達は、船の甲板で休んでいた。
船では、することも無く、たまに魔道具を作成したりして時間を潰していた。
船での生活が4日経った頃、雨が降り、時化になり、船が大きく左右に揺れて
バランスも取り難く、船員たちも必死に踏ん張っていた。
すると、海の中から大きな足のような物が現れ、
船を海中に引きずり込もうとした。
リリは、剣で足のような物を斬り落とした。
一瞬、引きずり込む勢いが弱まったがすぐに足のような物が襲って来た。
今度はミカルが切り落とし、そのまま甲板の上に躍り出た。
リリとミウが背中合わせの状態で海を睨みつけた。
すると、一斉に水中から、足のような物が8本現れ、船を攻撃してきた。
「クラーケンだ!」
リリとミカルは左右に別れ、船に巻き付こうとしている足から攻撃し、
船を沈ませない様に斬りつけて行った。
クラーケンが、船から外れた瞬間にサーシャが魔法を放った。
「エクスプロージョン」
クラーケンに直撃したが、まだ生きていた。
海の中ということもあって威力が半減したが、すでに虫の息であった。
海が、続けて魔法を放った。
「アイスランス」
海の中だろうと魔法でできた氷の槍は勢いをそのままに
クラーケンに突き刺さり、絶命させた。
海に浮かんでいたクラーケンを、海はアイテムボックスに収納した。
クラーケンの襲撃騒動があってから3日後、
海達は、トライアングル大陸のゲヘナの港町に到着した。
船から降り、海達は周りを見ると半数以上が獣人だった。
海達は、この町で宿を取り、1泊することを決め、
宿を探したが、殆んど空室は無く、野宿するしかなかった為に
この町に早々に見切りをつけ、王都を目指した。
王都までは、海岸線を走るので風が吹き、とても心地よかった。
日が暮れ始めたので、広い空き地を探し、そこにコテージを出して
宿泊する事に決めた。
翌日、王都に向けて出発し、半日程で王都に着いた。
その足で王城に出向き、城門にいた兵に手紙を渡し、
返事を待った。
暫くして、兵士が戻って来て、入場を許可されたので、兵士の案内に従い、城の中を進み
謁見の間に通された。
「ようこそ、遠い所をお越し下された。
私はアングル国、国王、ヒューイ アングルだ」
「初めまして、陛下、私はアスタロッテ王国、国王、ドレイン デ アスタロッテの娘、
シンディ デ アスタロッテで御座います」
「貴殿がアスタロッテ王国の姫であるか、中々に峰麗しい姫であるな」
「有り難う御座います。
こちらが国王から預かった親書で御座います」
シンディは、手紙を取りに来た宰相に渡した。
「確かに、預かった。
近いうちに返事をしよう。その間、部屋を準備したので、そちらで旅の疲れを落とされよ」
挨拶と親書を渡すという大役も終わり、
アングル国が準備してくれた部屋に向かうはずだったが、
案内の兵士は、城を出て外に準備された馬車に乗り込むように言って来た。
誘導に従い、馬車に乗り込み、向かった先には屋敷があった。
「部屋じゃなくて屋敷なのですね」
「みたいじゃのぅ、まぁ小さな部屋を宛がわれるより良いぞ」
「私も、こっちがいい」
「あたしも、王城よりも落ち着くよ」
海達は、返事が来るまで、ここで待機することになり、
シンディに付いて来たメイド達は、屋敷の中を隈なく見て回っていた。
海は、市場をヨセフに案内をして貰った後に、ヨセフを家に帰すことを約束した。
「家に帰れるのですね」
「勿論だよ、道案内はしてね」
「はい」
「それから、奴隷の契約を解除出来なくてごめんな。
縛りはないから、それに勝手に取ってもいいからね」
「はい、有り難うございます」
海達は、ヨセフの案内で市場に着き、珍しい物を買い込み、
ミウ達も珍しい小物や魔道具を買っていた。
そんな中、海達の知らない所で、ヨセフの知人が、行方不明になっていたヨセフが
人族に連れられている所を発見し、ヨセフの父親に知らせた。
何も知らない海達は、市場での買い物を楽しんでいた。
すると、突然、兵士達が海達に襲い掛かってきた。
「えっと、どういう事ですか?」
「貴様を逮捕する。抵抗をするな」
「何もしていませんけど」
「街の住人から報告があったのだ。
人族の人攫いがいるから捕まえてくれと」
「あの・・・僕達はアスタロッテ国王の依頼でこの街に大使を連れて来たのですが」
「何を馬鹿なことを言っている。
ならば何故、獣人を奴隷にしているのだ!」
「ああ、ヨセフ、説明してあげて」
「はい」
ヨセフが説明をすると、兵士達がお互いの顔を見合わせ困った様子になった。
「あなた達は本当に大使の護衛ですか?」
「はい、それと、国王の娘さんもいますけど」
「え・・・」
シャルーラが前に出てきて挨拶をした。
「アスタロッテ王国、第2王女、シャルーラ デ アスタロッテです」
兵士達は絶句した。
他国の姫で大使に襲い掛かってしまったのだ。
ましてや、奴隷となっていたこの国の少年を保護してくれた相手を人攫いと決めつけ、
逮捕しようとしたのだから、言い逃れが出来なかった。
「どうします?」
「・・・・・・」
海は、勝手に襲い掛かって来たのだから反省して貰おうと思った。
「返事をしてもらえますか?」
兵士達は青ざめ、武器を落とし、茫然と立ち尽くした。
その時、1人の壮年な男が走って来て、海に斬り掛かった。
「死ねぇぇぇぇぇ!」
海は避けて、斬り返した。
「ウギャァァァァァ!!」
海は、斬り掛かった相手に剣先を向けた。
「突然、斬り掛かったという事は、斬られてもいいという事だと捉えました」
男にヒールを掛けて出血を止めた。
その時、ヨセフが叫んだ。
「父さん!!」
「え!」
海もヨセフも驚いた。
兵士達は、斬り掛かったヨセフの父を取り押さえた。
「なにをする!」
「この方たちは、この国に来た大使だ。
それに、奴隷になっていたあんたの息子を助けて連れてきてくれたんだぞ!」
ヨセフの父は、驚き、海を見た。
「すいません、すいません」
ヨセフの父は土下座をして海に許しを乞うた。
その様子を見ていたミウが口を挟んできた。
「海よ、もう良いじゃろ、いい薬になったと思うぞ」
「うん、もう、やたらに斬りつけたりしないでくださいよ」
そう言うと、父親は、頭を下げたまま、もうしませんと誓った。
「貴様らもじゃ!相手の言う事もきちんと聞かんといかんぞ」
「はい、すいませんでした!」
「分かってくれたらいいよ。大事にはしないから心配しなくていいよ」
海の言葉に兵士は胸を撫で下ろした。
「ヨセフ、案内ありがとう。
元気でね」
「海さん、有り難うございました。これからは気を付けます」
ヨセフは父を担いで帰ろうとした。
「ヨセフ、待って」
海はそう言うと魔法を放った。
「ホーリーヒール」
ヨセフの無くなった腕が治った。
「!!!」
父親は、驚き、言葉にならなかった。
「お父さん、大事にね」
「はい!
海さん、ありがとう」
ヨセフは父親と帰って行った。
買い物を終え、屋敷に帰って来た海達は
市場での事をシンディに話した。
「海様、やりすぎです!!
ここは、アスタロッテではありません!もう少し、大人しくして下さい」
海は明日、外出禁止が決定した。
海という名前に、少し後悔しました。
海上でのシーンになると、海が海にみたいになり、読みづらくなってしまいました。すいません。
不定期投稿ですがよろしくお願いします。
温かい目で見て頂ければ幸いです。




