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DHUROLL  作者: 寿司川 荻丸
【結】

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96/144

95話ー糸を通すー

 世界中のエキポナで協力しようと動くも、非協力的な国に悩まされる一行。


 そんな中、とある国に鬼が襲撃する。


 悲惨なまでの実力差を世界は痛感する。


ー日本 埼玉ー


「まさか、サリドヒエラの英雄が来日するとはね」


「日本のこの区域は、貴方の管轄なのでな。筋を通しに来た」


「ご苦労なことで」


「日本に居ながら、何故本部を潰さない?」


「うーん、答えなきゃダメ?」


「返答によっては、"方角"戦を申し込むことになる」


「律儀だなあ。グリンドリンも聴いてたでしょ?あの方は案外エキポナに興味持たなかったじゃん」


「いや、邪魔だと仰った」


「そうも言ってたけど、俺ら集めた時にはそんなこと言ってなかったよね。あの方はカウントダウンにしか興味無いよ。エキポナ側はそれにも気付いてない。気付いてるなら話は別だけどね」


「それ___」


「案外さ、余計なことしてるのグリンドリンなんじゃねえの?」


「……何を」


「いいよ、"方角"戦。やるなら受けるけど」


「……」


「おっ!わかってくれて嬉しいよ!ありがとう」


「……流斗(るうと)には敵わんな」


「あ、ちなみに。良いよ、東京本部やっちゃって。でもでも、痛い目見るかもよ」


「上等だ」


「おいちょっと!そんな足音立てなくてもいいじゃん……行っちゃったよ」





ー東京本部ー


「東京本部前に4体のデュロルが出現!1体の額にツノを確認!鬼です!チームエル・ソルは直ちに出撃願います!」


 本部内に緊急を知らせる音が響いた。鬼の襲撃だ。前回はセキュリティを通り抜けて来たのに、今回は正面に堂々と姿を現した。


 流斗(るうと)じゃない。


 千歳(おれ)達は即座に装備を整えて出撃する。


 守衛の兵士と、先に到着した兵士が交戦していた。


 地面には……正方形の肉片が転がる。


 その血溜まりを踏むのが鬼だ。でっけえ棍棒持ってる。注連縄(しめなわ)を腰に巻いてる……。その姿を見た時、ふと前回の襲撃を重ねた。


 俺の目の前に居た鬼も、腰に注連縄巻いてた。


 俺の横をチームエル・ソルの皆が過ぎていく。


「周りは俺らが相手する!千歳(ちとせ)は鬼を頼む!!」


 藤長(ふじなが)は、背中は任せろと言わんばかりに抜刀する。


「おう!頼まれた!」


 鬼は、みんなに向けて棍棒を振りかざした。


 【雷盾 迅(じん)】


 畑山(はたけやま)から伸びる雷は棍棒へと絡み付き、それを地面へと叩き付ける。


 鬼は驚きを見せた。しかし、その直後に畑山の雷は正方形に四散した。


 分解させる能力、サリドヒエラを壊滅させた鬼だ。あいつに触れたり、技を喰らえば即死。


 高千穂(たかちほ)の放った矢は鬼の前で爆散し、鬼を黒煙で包む。


 2人が隙を作ったお陰で、他3人のデュロルとみんなを遠ざける事が出来た。


 鬼を包む黒煙は正方形に退き、棍棒を担ぐ鬼のシルエットが浮かび出る。


「まさしく鬼だな」


 畑山が言葉を漏らす。


「おい鬼!お前らの行動、訳が分からんすぎて気持ち悪い!!」


「ちょっと千歳(ちとせ)くん!挑発しないでよ!」


「千歳か。噂には聞いてる。お前らは邪魔だから排除する。それだけだ」


「やっぱこのレベルになると、話しても通じねえな。もう人じゃねえ」


 脳裏で流水(りゅうすい)の姿を重ねる。


「デュロルとして生きると、みんなこうなっちまうのかな」


 自分の言葉に、流斗をも重ねてしまう。


 デュロルであっても、心の無いデュロルで在ってほしくない。


「俺にはお前らエキポナも、そう見えるがな」


 鬼の足元から、正方形の線が地面を伝ってくる。足場が崩れた。鬼は足元を踏み込み、崩れた地面の破片を跳ね上げる。棍棒を振るい、更に細かくした正方形の破片が飛んでくる。


 見切れる速さ。その分かりやすい攻撃は、ただの目眩しだろ。案の定鬼は距離を詰める。


 【白炎刀(はくえんとう) 白(しろ)】


 振るった刀身から溢れた白い炎は、思いの外鋭く地面を抉った。


 炎の威力で正方形の破片は弾かれる。


 鬼は空中で体勢を変えて白炎を躱す。


 鬼が着地した場所に、予め矢を引いていた高千穂は指を離した。


 鬼は棍棒の先端を矢に向けて、柄先を掌でポンと叩いた。すると、矢は細かな正方形に分解され、爆散する。


「滝原(たきはら)は鬼(こいつ)と相性が悪い!他んとこ援護してくれ!」


「わかった!」


「近付けないから、こっから斬撃飛ばしてみる」


「援護する!!あいつを抑えれたとしても一瞬だ!隙は作れる!」


「私も視線は遮れる!」


「わかった!まず俺が、畑山が抑えれる隙を作る!」


 鬼を包んでいた黒煙が大きな正方形に退く。そこから歪んだ空気を見た。


「避けろ高千穂!!」


 高千穂は間一髪で躱した。高千穂後方にあった壁が大きな正方形に凹み、細かな正方形の破片を転がした。分解の空気を飛ばしたのか。さっきより規模がデカくなってる。


 近距離武器は触れた瞬間に全部分解されるはず。遠距離攻撃だとして、気付かれれば防がれる。さっきの畑山の雷も分解してたから、想も分解するんだろうな。


 意識外からの不意打ち。


 難易度バカ高えな。


 後1つ確かめておきたいことがある。


 俺は鬼に向けて広範囲に白炎を飛ばした。俺は即座にその場から離れる。白炎の幕は正方形に押されたように膨らむ。白炎を纏う四角柱は伸びて後方の壁にぶつかる。


「なるほどな!」


 俺は鬼に向けて、いつものように斬撃を飛ばした。すると、斬撃には白炎が纏った。無意識に白炎は放出される。


 斬撃が目に見えるのは、ありがたい!


 脚に想を集中し、地面を蹴ると同時に解き放つ。


 鬼を通りすぎたところで、想を集中させた脚で前方の虚空を蹴る。勢いは止まり、鬼の背後へ回り込んだ。先の斬撃が鬼へ届く前に、さっきより速い斬撃を飛ばした。


 鬼が俺の位置に気付いた時、先に放った斬撃が鬼の右脇を斬る。後に放った斬撃は分解されるも、白炎だけは鬼へ届いた。


 鬼に白炎は燃え移る。しかし、消す動作すらせず、俺に棍棒を振ろうとした。


 【迅(じん) 稲駆(いなかけ)】


 畑山の雷は格子状になり、鬼へと巻き付く。


 白炎は、畑山の雷にすら燃え移る。


 千切れかけた雷は強度を増し、鬼に困惑を与えた。


 鬼は俺を見失ってる。雷を解くより先に、俺の位置を探っていた。


 俺にだけ意識を向けることが、どれだけあいつらを楽にさせるか。


 高千穂が放った矢は、鬼の目元で爆散する。その威力に鬼は体勢を崩す。一瞬にして鬼を包んだ煙は、正方形に細かく分解される。しかし、その煙にすら白炎は燃え移り、炎の規模は大きくなる。


 白炎による目眩しと、炎による聴覚の妨害。俺が移動する際の風の抵抗すら防いでる。


 【極想(きょくそう)___】


 極想……!!


「高千穂!畑山!!全力で離れろ!!」


 虚空を蹴った風圧で、高千穂と畑山をそれぞれ押し飛ばす。俺も高度を上げて極想に備える。


 技を出す時間は作れなかった。


 【___崩界(ほうかい)】


 白炎は小さく正方形に区切られる。その細かな正方形は地面を伝って凄まじい速度で広がる。


 近くにある建物をその細かさで分解し、止まることを知らずに広がり続ける。木の葉すら分解されてるから、範囲も正方形と予測する。


 俺の想ですら分解される。ルータスにやったように、その部位だけを斬る為の想が途中で分解される。斬撃の想が届けば……。


 鬼の想は綺麗に正方形に分解される。各辺に触れた部分が分解されるなら、唯一分解されない箇所は……正方形の面の部分!


 地面の分解された大きさから見るに、直径3ミリメートルの正方形だ。


 寸分の狂いなく、垂直に斬撃の想を飛ばせばいい。直径3ミリメートル以内に斬撃を収束すればいい。


 俺ならそれが出来る!


 やったことは無いけど!


 やってみないと!!


 虚空を蹴り、鬼の頸(うなじ)の垂直に位置する場所に移動し、足が地面に着く前に白炎刀を構える。


 予め吸っておいた空気を吐き出す。


 【白炎刀 糸通(いととおし)】


 白炎を纏う斬撃を、見定めた位置に収束させる。針のように鋭い斬撃は、分解されることなく鬼へ飛んで行く。


 斬撃の想が、鬼を燃やす白炎に触れたと同時に、鬼は俺へと顔を向けた。


 鬼は僅かに体勢を変える……。


 避けられる……!


 【爆垂弓(ばくすいきゅう) 繼禰(つぐね) 針(はり)】


 鬼の後方から、高千穂の放った矢が飛翔する。


 針に糸を通すような正確性。援護は任せてよと言わんばかりに輝いた瞳。


 矢は鬼の後頭部に直撃して爆散し、その炎に白炎は燃え移る。鬼は弾かれたように体勢を崩す。


 体勢を崩した先は、俺の斬撃の軌道上だった。


 斬撃の想を受けた白炎は、斬撃の入った方向へ威力を上乗せする。


 鬼の首端を斬り、傷口から濃く赤い血が溢れ噴き出る。その血すら正方形に分解される。しかし、次第に血は分解されず地面を染めた。


 鬼は棍棒から手を離す。


 広範囲に広がり続けた分解も止まった。


「……かっ……かっ」


 鬼は声にならない音を漏らす。溢れる血を止めようと手で必死に抑える。


 傷口の白い炎が、想での回復を阻害してるのか。


 鬼は地面に膝を落とす。転がる棍棒を掴もうと前方に体重を移動させ、そのまま倒れ込む。


 棍棒に触れることはなく、顔を俺に向ける。


 力んだ右掌は俺を指した。


「……がっ……ぐぐ」


 何も言うことすら叶わず、力無くした腕は地面を叩く。


 命を奪う瞬間は、重い。



 米マフィア【Fear of Darkness】傘下

 【Collapse】ボス

 鬼名【崩鬼】

 グリンドリン・カルウェル 絶命。



 溜まってたかのように息切れする。


 実戦の感覚は忘れてない。


 あの鬼、死ぬのが怖いから手を差し出したわけじゃない。


 戦いに負けることが、身体の芯から悔しかったんだ。


 今までのデュロルは自分の死を前に怯えていた。あのルータスでさえ、死の直前には怯えたんだ。


 人生の最期。まだ生きたいと想えば、死を前に怯えるのは当たり前。


 でも、こいつは悔しそうだった。


 デュロルに成って味わえる、命を賭した戦い。


 そこに、生涯をかけてきた鬼なんだろう。


 最期、傷口を抑えていた左手を腰に移動させ、注連縄を掴んでいた。


 その注連縄に、誰のどんな想いが詰まってんだよ……。


「千歳無事か!!こっち終わったぞ!!」


 室瀬(むろせ)を筆頭に、チームエル・ソルの皆が戻ってくる。


「こっちボロボロだな。こいつ、サリドヒエラ壊滅させた鬼だろ?さすが千歳だぜ」


 藤長も息を切らしてそう言った。


「みんな無事で良かった!」


「鬼の側近ですら、かなり強敵だった」


 これでもかと冷静な川崎(かわさき)さんは、冷静なトーンでそう言った。


 その言葉にみんなウンウンと頷く。


 チームオロの人達が駆けて来て後処理を始めた。命を落とした兵士に合掌し、俺たちの出来る事を手伝った。





ー食品スーパー裏方ー


「流斗くん知ってる?夕方にJEAの東京本部にデュロルが襲撃したらしいよ?」


「あ!それ!知ってる!デュロルはデュロルでも、ツノの生えたデュロルだって?」


「ちょっと!私は流斗くんに話しかけてるんだから、おじさんは黙ってて」


「まあまあ、そう言わずにっ」


「流斗くん家も近いでしょう?今日はもう落ち着いてきたから上がっちゃいな?」


「いやいや、最後までやってきますよ!」


「おいなんだよ!若くてイケメンには優しいやつだな」


「当たり前でしょ!?イケメンこき使う訳にはいきませーん。おじさんはさっさと仕事しなさい」


「ちぇっ、人って平等じゃねえや」


「そのニュース見ましたけど、"鬼"は退治されたみたいですよ」


「まあ!上手いこと言ってる!私もその表現しようかな」


「なので、上がらなくても大丈夫です!さっさと仕事終わらせちゃいましょ!」


「イケメンの上に、性格も完璧……」


「そんなこと言っても何も出ませんよ?」


「もー!大人を揶揄(からか)わないの!!」


 グリンドリン倒しちゃうなんて、やっぱ努(つとむ)は強いね。





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