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DHUROLL  作者: 寿司川 荻丸
【結】

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95/144

94話ー崩壊ー

 世界中のデュロルに聞こえた"声"。


 世界同時会議が開かれる中


 その時を狙うようにして襲撃される。


ー東京本部襲撃から2時間後ー


「おいおい、凄えやられ様だな」


 健史(けんし)と峯岡(すぐる)の墓参りした後、武雄(たけお)達の顔を見に行った。夏美(なつみ)も奏(かなで)も元気になりつつある。珍しく冬絵(ふゆえ)も付いてきて、賑やかな空間を過ごした。


 千歳(ちとせ)の家系は騒がしくないとな。


 だが、世の中はそうもいかない。


 東京本部に鬼の襲撃。向かう途中、世界各国で同じ事件が起きたとニュースで知る。


 仕事が早え。


 この事件が、民間人にどう影響を与えるのか考えて欲しいがな。


 デュロル側には吉報だろうよ。


 お陰で高速道路も上りは空いてる。下りは、まあそうだろうな。


 東京本部から立ち上る煙を見ちゃあそうなる。


「あの!豪壮寺(ごうそうじ)元帥!止めたんですが!会わせろと聞かず……!」


「泰介(たいすけ)ぇ、まだ元帥なんて呼び方強制してんのか!」


 瓦礫を持ち上げた泰介が俺を睨んだ。目を合わせた瞬間、泰介の表情は晴れ上がった。


「重三(じゅうぞう)!!おま……え!?久々だなあおい!!」


「相変わらず声のボリュームがデケェ!!でーっはっはっは!」


 辺りで作業していた兵士らが何だ何だと顔を向ける。


「重三見てっと昔を思い出すなあ!懐かしいな!」


「懐かしすぎて老けちまったい!」


 辺りはザワザワしだす。


「正直、重三の手を借りたいと思っていた。来てくれてありがとう」


「そんな事と思ったぜ。俺はあくまで手を貸すだけだ。この事件は、みんなの力が必要だからな」


「わぁってる」


「チームエル・ソルは何処だ?」


「あぁ、あいつらなら……」


 遠くから叫び声とタイヤの擦れる音が聞こえる。


「……ん!!……いちゃあああん!!爺ちゃああああああん!!」


 キキーッと車椅子でドリフトして来たのは、我が孫の努(つとむ)だ。


「ちょっと!はぁはぁ。暴走すんなバカ!!」


 後から追い掛けて来たのは久美(くみ)だった。


「千歳の爺ちゃんやっほ!来てたんだね!」


「随分騒がしい登場だな!努!久美!お前ら良くやった!!世界デュロル保護機構をぶっ飛ばしてくれた!」


 メッセージのやり取りはしたが、やはり実際に会って言いたかった。


「おう!ありがとう!!そんでよ爺ちゃん!さっきさ!さっきさ!」


「落ち着け努!ゆっくり喋れ!」


 興奮してる努は何を言ってるのか聞き取れない傾向がある。


「流斗(るうと)がヤクザで、鬼のデュロルに慕われてて、水月(すいげつ)組って言ってた」


「……ん?」


 聞き取れたはずだ。何故聞き返した。だーかーらーと前置きされ、ゆっくりと同じ言葉を聞かされて尚、聞き返そうとしてしまう。


「流斗……」


 その名前には覚えがある。努が小学生の頃、久美といつも3人で居た奴だ。


 それがヤクザで。鬼のデュロルに慕われてて。水月組の……。


 水月か。


 "元"最重要警戒デュロルに指定された水月(すいげつ) 春五郎(はるごろう)の意思は、根も葉もない噂と共に世へと浸透した。


 春五郎は無差別に人を殺めて食ったと。鍋を囲んだ同士だけは見逃したと。


 理性を失って尚、義理人情を貫く姿勢が、ヤクザには響いたのか。水月の苗字を組の名前にしたんだろうな。


「努……覚悟、出来てんのか?」


 努の目は思いの外真っ直ぐだった。


「ああ!出来てる!俺の手で、俺の手で止めなきゃ!」


「例え、もう遅かろうともか?」


「止めたい。流斗は多分デュロルで鬼なんだと思う。鬼達に慕われる程の。遅くても、これ以上……流斗に人の命は奪わせたくない」


「……そうか」


 俺に似やがって。


「それに、流斗に聞きたい」


 努の後ろで、久美も同じ目をしていた。


 3人の間にしか無い記憶。


「流斗に行き着けるかは、こっからの働きに掛かるな」


 世界の主要な国々の本部は急襲された。それでも壊滅までは至らず、災害対策環境で機能していた。主要チームエル・ソルの無事も確認されている。


 豪壮寺(たいすけ)の呼び掛けで世界のチームエル・ソルは協力体制を取ることになったものの、具体的な案や策は出されず。協力的な国もあれば、非協力的な国もそこそこあった。


「我が国は我が国で捜査します。日本の力を借りずとも、我が国の兵士だけで事足りますし。情報共有はするので、そちらも情報共有お忘れなく」


 情報共有も大切だろうが、今置かれてる状況的にそうじゃねえだろ。と、声に出したい気持ちを抑える。ここ大人ね。


 まだ騒ぎが起きてから時間も浅い。非協力的な国が居ても致し方ない部分はある。


 しかし今日の事件みたく、また世界各国で同時に襲撃があった場合、対応しきれるのだろうか。


 俺が育てた日本のチームエル・ソルは、ぶっちゃけ世界レベルだと思ってる。


 想(そう)の使い方をマスターしてるし、1人1人が各国のチームエル・ソルに伝授した方が良いに決まってる。


 努が人に教えるところは想像できないけどな。


 どうしたものか……。





ー非協力的な国の1つ サリドヒエラ共和国 世界同時襲撃から2日後ー


「今ここには!国中からチームエル・ソルが集まっている!この国の精鋭達だ!互いを高め合うには丁度いい機会だろ!限界を超えろ!掴め!デュロルを返り討ちにしろ!!」


 キツい……!上はバカなのか!?


 日本の力借りた方が良いに決まってるだろ。


 まあ、サリドヒエラのチームエル・ソルも世界トップレベルだし大丈夫だろうとも思ってる。


 あいや、むしろ日本の力借りなくてもイケんだろ。


 ただ訓練の量がバカ増えるのは納得出来ない。


 ただでさえ世界トップレベルの俺達だぞ!?


 オーバーワークは皆嫌いなんだ。


 金が出るから皆頑張ってるにすぎない。まあ実際、金が出るなら良いやとは思ったし、いっか。


「良いか!お前らは国の顔だ!お前らがどうしようも無いんじゃあ国の恥だ!!徹底的にやり込め!!」


「イエッサー!!」


 しばらくデュロルの活動は収まるだろ。まあ、何かあっても俺なら直ぐに片付けるけどな。


 ……っ!


 建物全体が大きく揺れた。崩落音の合間に響く警報が、俺らの脳裏を掻き乱す。


 あの日と一緒だ。


 崩壊音は徐々に近付く。


 教官が音の方を見やった。


 右手奥の天井に、正方形の線が連なって浮かび上がる。線の隙間から砂埃が噴き出る。


 そして1つの正方形が下に動くと同時に、他の正方形達も連動し、天井は崩れた。


「構えろ!!来るぞ!!」


 教官は叫びながら俺らの後方へと撤退する。


 心拍数が焦りを表してる。


 只者じゃない何かが、ここへ来ている。


 今俺らが居る場所は、施設の地下23階だぞ。ここまで、兵士達の防衛を突破したと言うのか。


 崩れ落ちた天井から、何かが降ってきて着地した。立ち込める砂埃の中、2本のツノを確認できる。


 砂埃の中の影は、自身の身長より長い何かを振るった。砂埃は細かな正方形に分けられ、空気に溶けるようにして消える。


 そのデュロルは、今までのデュロルと明らかに違っていた。


 2本のツノがあることはもちろん、腰に何かを巻き付けてる。日本の神社仏閣で見たことある……注連縄(しめなわ)か?それを前で結んでる。


 その鬼が肩に担いでるのは、2メートルはある棍棒だ。


 オーラが違う……この前襲ってきたデュロルの中に鬼は居なかった。鬼を初めて見る。こんなにも、存在が重いのか。


 俺らは武器を構える。死ぬわけにはいかない。


 世界に名を馳せるチームとして、魅せなければならない!


「強そうだ」


 心臓を掴まれるような声。


 その声を合図に、スヴィア地方チームエル・ソルが駆け寄る。あのチームは近距離に特化してる。大武器相手には部が良い。


 ナナの弓で鬼の足元を泡で滑らせ、踏み込み辛くさせる。そこに、他3人で一気に詰める。


 それに、クイムの刺突剣を避けれるデュロルはまず居ないからな。


 鬼は棍棒を振り上げる。それじゃクイムの剣速には間に合わないだろうな。行けクイ……ム……。


 クイム……!?


 鬼が左拳をクイムに突き出した瞬間、クイムは正方形の肉片となり崩れた。目でそれを理解した。しかし、棍棒は振られる。


 棘の付いた棍棒はまずフリンの脇腹へと入り込む。瞬間、フリンはクイム同様に崩れた。


「やめろ……」


 絞り出した声は、非情な鬼への乞いにしかならない。


 フリンの血を纏ったまま、棍棒はテトムスをも崩した。


 たった一振りしただけで、チームエル・ソルの3人を殺した。


 棍棒を振り切った風圧に、フリンとテトムスの血飛沫が乗って来る。生暖かな匂いが、この室内に充満した。


「最初の突きは速かった。避けるのが遅ければ当たっていた」


 あの鬼は何なんだ。全ての動きを見ていたのか。


 鬼は足元に重心を落とした。すると、鬼周辺の床に正方形の線が入り、その線は瞬く間に広まった。


 俺らはその線に触れぬように飛ぶ。線は俺らの下を通り過ぎ、端へと到達する。


 下に意識が向いてしまった。そう気付いた時既に、ナナが崩れた風圧が届いていた。


 鬼は壁を蹴り、教官を崩した。


 俺らは床に足を着ける。俺らに着地した感覚は無く、そのまま階下へと落ちていく。


 階下に叩きつけられ、直ぐに立ち上がる。鬼が着地した音がした。その直後、俺の隣に居た相棒の影が下に消えた。


「まずい!片脚が!」


 相棒の片脚は不自然に出来た正方形の穴に嵌っていた。


 こっちに来る!


 身構えた。しかし、鬼は正反対へと駆ける。


「今のうちに……!」


 【崩肉(ほうし)】


 鬼は棍棒の先端を相棒へ向けた。そのまま柄先を掌でポンと押した。


 俺の目の前で、相棒の頭が正方形に崩れた。


 ……遠距離も……だと。


 何故俺は、遠距離は無いと思い込んだ?


 鬼って存在は、俺らの予想出来ない程に強いのか?


 日本は、その鬼を3体も葬ったのか!?


 俺は涙を流していた。涙の横に、ヨダレも垂れる。


 共に切磋琢磨した仲間が、言葉通り一瞬にして死んでいく。


 俺らのチームは世界のトップクラスなんだろ?


 無敗なんだぞ?


 ズルいだろこんな強さ。


「そうだ、日本が……」


 気付けば、もう俺だけになっていた。


「どうした。お前だけだぞ。そうやって地面に乞うても、地面は助けちゃくれない」


「日本に……日本が……!日本が、貴方達の邪魔をしようとしている!!日本が首謀国なんだ!貴方程の強いデュロルなら、日本を壊滅できます!!」


「俺は弱い。あの方から【崩鬼(ほうき)】の名を授かってはいるものの、この身に余る名誉だ。その弱い俺に、乞うてどうする」


 この国のチームエル・ソル全員を相手にして、無傷。


「貴方程の強さなら……!!」


 俺は……何て……なんて……。


「格好の悪いことよ」


 恥を知れと聞こえた。全身は等間隔で熱くなる。


 俺の思う、最高に格好悪い最期だよ。


「日本か。管轄外だが、行くべきだな」





ーサリドヒエラ共和国チームエル・ソル壊滅から5分後 東京本部ー


「サリドヒエラ共和国から、チームエル・ソル壊滅との報告が……」


 うーん……。


「サリドヒエラの実力は確かだった。想(そう)の扱いに長けてはいなかったが、それでも壊滅しちまうのか」


 豪壮寺(たいすけ)は顎に指を添えた。


 サリドヒエラから送られてきた視界記録は、残酷なものだった。


「鬼……やはり強いな」


「重三(じゅうぞう)から見てもそう思うか」


 触れるだけでエル・ソル程のエキポナを殺せるデュロルが、一体どこに潜んでいたんだ。


 あの"声"がしてから、強力な鬼が一気に姿を現した。


 どれほどの力が制御して、鬼達を抑えていた?


 鬼程の力を持てば、今までのデュロルみたく、自身の欲を満たそうとする気も強くなるだろ。


 この鬼に欲があるとは思えなかった。


 サリドヒエラ共和国本部への単体襲撃は指示か?


「重三、焦りが顔に出てるぞ」


「ああ、正直焦ってる」


 最後の兵士の言葉で、奴が日本に来るかはわからない。


 努(つとむ)は戦線に立てる程に回復した。


 しかし、この鬼との戦闘に駆り出させるわけには……。


「重三。これだけは言っておく。保守的になるなよ。そうなった時点で、負けを考え始めてる」


 俺は泰介(たいすけ)を見た。肩が軽くなった気すらした。


「お前、たまには良い事言うんだな!でっはっは!」





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