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DHUROLL  作者: 寿司川 荻丸
【起】
9/144

8話ー始まりー

 鬼神幹部 黒谷へと接触した千歳。


 鬼神はそんな千歳を警戒し、予定より早めに事を進めようとしていた。


 そしてついに……。


ー11月19日8時半ー


「えーただいま情報入りました。埼玉県北部で電車が地面の下敷きになる事故が発生。土砂崩れの可能性を視野に捜査は進められています」


ー同日10時ー


「土砂崩れとは考え難い事件となりました。土砂崩れは上部の地面が崩れ、土砂が下に流れるように発生します。ですが、上部の地面のズレは確認できず、下方から地面が盛り上がるような跡があり、それに電車が埋もれてしまったようです」


「現在確認されてる被害は、死者53名、負傷者70名。被害にあった鉄道は運行をストップしています」


「えーこちら現場の梨原です。現在乗客の救出を急いでおりますが、雨の影響により応援のレスキュー部隊の到着が遅れており、救出作業は難航しております。どんどん気温も下がってきていますので、一刻も早く乗客の皆様が救出されるよう最善を尽くします」


「今後雨の影響によりどんどん気温は下がるみたいですね〜」


「そうですね。電気が復旧しましたら暖のきく車両にいた方がいいと思われますが、何か進展がありましたらこちらからご報告いたします」


「これが自然災害とは思えませんね。デュロルの仕業と考えてはいいのではないでしょうか」


「デュロルの可能性もありますので、近隣にお住いの方は十分に注意してください」





「俺、これに見覚えある。鬼神の幹部の黒谷(くろたに)が同じような能力使ってた」


「なんだと……!?まだ約束の時間より早い……。まさか、もう始まったか。現場のエキポナと繋いでくれ!」





ー11月20日正午ー


「つい先ほど、羽田空港から乗客を乗せた旅客機が山に墜落する事故が起きました!原因は現在調査中です!」


「2日立て続けにこんな事故が起こるなんて。やはりデュロルの仕業なのでしょうか」


ー同日14時ー


「えー今日起きた旅客機墜落事故の原因ですが、飛行中に大木が衝突したそうです。デュロルの仕業とみて捜査を続けております」


「旅客機に搭乗した乗客352名が命を落としました」


「たくさんの命が失われ、言葉が見つかりません。これがデュロルの仕業だとしたら、決して許されることではありません」





「352名……。明らかに鬼神の仕業だ!!まだ尻尾は掴めんのか!」


「捜査は続けてますが、何の目撃情報もなく、容姿も分からない為、捜査は難航してます!」


「クソ!!これじゃどんどん被害が大きくなるばかりだ!!これ以上被害を広げないためにも、総動員で聞き込み少しでもそれに似た目撃情報がないか探るぞ!」





ー11月21日正午ー


「今日午前、新潟県で4棟のビルが崩壊する事件が起こりました。死傷者は500名を超える見込みです。3日立て続けの不自然な事故は全て鬼神(アラハバキ)の仕業と予測します」


「えー明日出勤の方は、外出は極力避けてください」


「公共交通機関の一部の運行もストップしております。外出の際は十分に注意してください。





「デュロルの目撃情報入りました!!ビルを崩壊させたのは1人のデュロルで、身体は一般デュロルの3倍はあるとのことです!」


「くそ、それだけじゃ何も掴めない。3倍もあるって、どんな野郎だ!」





ー11月22日11時ー


「つい先ほど、箱根の遊覧船で無差別殺人が行われた模様。死者124名」


「もうやめてくれ!鬼神の方!もう、やめてくれないか!」


「JEAは何をやっているんだ!これ以上被害を拡大してどうする!」


「9年半以上前の約束をJEAが守っていればこんなことにはならなかったはずだ!」


「えーJEAにも責任はあると私は考えますね〜」


 アナウンサーの必死な叫びも届かず、罪のない人々は、鬼神の手によって犠牲になっていく。


「遊覧船内の様子が10時37分に、SNSに投稿されています!乗船してた人が撮影したようです!」


「なんだと!!今すぐ映せ!!」


 そこには、遊覧船内の出入り口を塞がれた中で、乗客の1人を盾にする上半身真っ黒で装甲が下半身にしかないデュロルが映っていた。


「きーみーたーちーは!わいに殺されるんやでー!へーへーへー!!」


 すると、座っていた1人の乗客が窓ガラスの破片をデュロルに突き刺した。


「いーってってー!だーが残念やな、ジジイ!」


 デュロルは掌から刃物を生やし、刃物を突き刺した中年男性を斬った。


 一瞬で船内は悲鳴に包まれる。撮影者も手元をブレさせながら、懸命に撮影を続けた。


「明日ー、埼玉の河原に行ってみ?わいの仲間がいるで〜!まあ、お前らここで死ぬんやけど〜へーへーへー!!」


 その言葉の後に、乗客は次々と殺されていく。


 それを最後に映像は途絶えた。





 逃げもせず撮影を続け、デュロルの悪行を教えてくれた撮影主と、その場にいて犠牲になった人たちに、敬意と黙祷を捧げる。


 この人のお陰で、鬼神の尻尾が掴めそうなのだから。


「新潟でビルを崩壊させたデュロルとは目撃証言が合わず、鬼神(アラハバキ)の他のメンバーかと思われる」


「ひでえ、許さねぇ」


「明日!埼玉の河原の全てにエキポナを配置しろ!!不審な動きをした者を発見したら直ちに捕らえよ!」


「はい!!」





ー11月23日9時埼玉県北西部荒川ー


「誰か来たぞ!あいつがデュロルの可能性もある。警戒しろ」


ジジッ

室瀬(むろせ)、荒川の上流付近でデュロルらしき人影を確認。そっちから少し応援を頼む」


ジジッ

「任せろ藤長(ふじなが)!」


 この日、埼玉県のありとあらゆる場所の河原にエキポナが隠れ、鬼神が現れるのを静かに待っていた。


 埼玉県全域に及ぶこの捜査は他県のJEA支部や交番からの応援により成り立った。


 埼玉県北西部荒川上流付近を担当していた藤長(ふじなが)班が怪しい人影を確認する。


「顔は撮れたか?」


「おう!バッチリよ!」


 怪しい人物は辺りを確認し、デュロルへと変身した。


 デュロルは空を見渡し、飛行機が飛んで来るのを確認すると、手で流木に触れる。すると流木は浮き、空に根を向けた。


「今だ抑えろ!!!」


「させるか!!!」


「な、なんだお前たちハ!!」


 デュロルは砂利を握りしめ、向かっていくエキポナに投げる。放たれた砂利は銃弾のごとく飛んでいく。


「伏せろ!!」


「ガアアア!!」


 数名のエキポナの兵士に直撃する。


「後ろに回り込め!!あいつを抑えろ!」


「うおー!!」





ー同日ー


「ボス。客人ですぜ」


「誰だ」


 ……。


「とんでもねえ大物のお出ましか。何故あんたが日本にいる」


「拙者、一匹オオカミを目指している身。カッコよかろう?」


「相変わらず自分勝手な人だ」


「拙者、ルータスさんには敵わん故、貴殿らを説得しに参った次第」


「あんたらの言う条件は守っているはずだ。何も文句は言えないと思うが」


「10年なんて長期に渡る作戦、確かに条件は守られておるが、ちょいとやり過ぎじゃないか」


「やり過ぎ?こちらは10年前にこの大量殺人もJEAに予告しての結果なんだよ」


「んにしても、これ以上デュロルの評判を崩されては。貴殿らを消す必要も出てくるであろう」


「そう厳しいこと仰らずに(かず)(しん)さんよ。一匹オオカミになるには見逃すことも大切ですよ」


「では、口止め料として、エキポナ兵士を1人いただこう」


「そんなんでいいのか?」


「拙者、大好きで候」





ー同日ー


「皆、鬼神幹部の捕獲ご苦労だった!これから奴を事情聴取するが、鬼神らが助け出しにくる可能性も考慮し、警備を強化しろ。油断するな」


「はい!!!」


 上河原(うわがはら)と呼ばれる(山辺情報)鬼神幹部の捕獲に成功した藤長班。


 上河原(うわがはら)は他の鬼神メンバーの収容されてる階からさらに下の階に収容され、厳重に警備された部屋に頑丈に縛られている。


 鬼神の大量殺人は、上河原を捕獲した日からパタリと止み、緊張の日々は続いていた。





伊歳野(いとしの)!まだできない!?」


「待って!こんな早くから鬼神が動き出すなんて思ってないもん。僕頑張ってるんだもん!」


「悪い悪い、急かしちまった。刀を借りて出動したけどよ、違和感しかねえんだ」


「千歳の今の筋力にあった刀がなきゃ、上手く扱えないだろうね」


「今デュロルに出くわしたら殴ってやるぜ」


「申し訳ない!あとほんの少しだけ待っててくれ!完成は間近なんよ!」


「わかった!お前だから信用できる言葉だ!」





 4日に及んだ大量殺人の波は一時止むが、世間にはダメージが大き過ぎた。JEAは各地の復興と、野良のデュロルの対処、鬼神の調査など手に追われていた。この一連の事件を防げなかったJEAにも国民は目を向けた。


 9年半前の映像などを使い、鬼神特別番組などが多くのテレビ局で報道され、JEAが原因とまで言う者も出てきた。築き上げたJEAの信頼度はたったの4日で崩れ落ちた。それと同時にデュロル組織「鬼神」を批判する番組などもあり、どちらが悪いかなど討論する番組まで出てきている。


 俺は確かに上の行動には苛立ちを覚えるが、俺が薬作れって言われても無理だ。文句言えん。けど10年で何の研究の成果もないのはどうかと思う。


 これから鬼神と戦うかもしれない時期に、スポンサーも手を引き始め、流れは悪くなる一方だ。


 千歳はこの世間の流れも身に受けず、只ひたすらに鬼神壊滅へ向け、自分のやるべきことをやっている。


 考え過ぎなのは俺らだけかもしれんな。千歳含む注目の新人5人は国民の意見に耳を傾けていない。これはダメなことだ。しかし、彼らは自分の意思は曲げていない。言い換えれば、こんな状況でも自分勝手ってこった。


 なんでまた峯岡に似たような奴らが揃ったのか……。俺は少し期待しているがな。


 以上、堀でした。





ー上河原捕獲から4日後ー


 ガチャン。


「上河原。何か話す気になったか?」


「おめーらに話すことなんてないネ!」


「まだ意識はしっかりしてるようだな。まだデュロルに飲まれないなんてな」


「そんじゃそこらの小僧と一緒にするナ」


「お前の体内の様子からすると、人間を捕食しないでもう2ヶ月は経ってるだろう。なぜ感情を保てる」


「オレ自身のことは教えてやんヨ。別に何もしていないがネ」


「何もしていない?」


「ああ、そうダ」


「お前、まさか……?」


「そうだネ、だいぶ前ニ」


「……」


 ガチャン。


「どうしたんです?無言で部屋出ちゃって。理由聞かなくていいんですか?」


「何を聞いても無駄だ」


「何故です?」


「あいつらは、自分がデュロルになった原因を、克服してやがる」


「……!つまり」


「そうゆうことだ。ただ殺人を楽しむ為、こんな大掛かりなことを。多くの人の命を。あいつに麻酔を打ち、眠ってる間に例のモノをぶち込め。奴らは必ず来る」





ートレーニングルームー


「堀さん!!トレーニングルームに顔出すなんて珍しい!!」


「千歳、お前には伝えておこう。鬼神の真実を」


「!?」





ー鬼神アジトー


「上河原の奪回作戦、頼んだぞ」


「任せてよ。ウチは死なない。アンドリュー、お前が心配なんだよ」


「おー!?詩織ちゃんわいのこと心配してくーれてる!?てーれーるー!どしてどして?」


「弱いから」


「こりゃまた毒舌やっ!」


「あなた達2人も頼むわよ。箱内(はこうち)くんはアンドリューについて、酒井(さけい)くんはウチについてきてね」


「その面倒見の良さが仇となるぞ咲村(さきむら)


「人前で苗字は呼ばないでチ○カス」


「ボスにまで毒舌やっ!!怖いね〜」


「ゴダゴダ言わないの。さっ!あなた達行くわよ!」





「千歳!出来たよ!超特急で作ったから、何か不備があるかもしれないけど、その時は言ってくれ!」


「おう、ありがとよ!」


「うおっ。目つきが違う。怒ってるね」


「ああ。鬼神を究極にぶっ飛ばしたくなった。伊歳野ありがとよ!すんげえ助かった!」


 バシッ!


「わっ!千歳くん!?刀できたの!?」


「ああ、待たせた」





ー同日18時15分東京本部正面入り口ー


「うわあ!襲撃だ!!知らせろ!!」


 施設内にサイレンが鳴り響く。


「デュロル4人が正面玄関を突破、エレバーターを破壊し地下へと下りて行きました!!」





「来やがった」


「え!?襲撃!?」


高千穂(たかちほ)、戦闘準備だ!!里道(さとみち)と室瀬と藤長にも声をかける。地下へつながるエレベーター前のロビーを抑える。下へ降りて行ったなら上がって来る道もそこ一つだ!勝負をかけるぞ!」


「わかった!!」


ジジッ

「里道くん!藤長くん!室瀬くん!聞こえてたらみんなに伝えて!!戦闘準備してエレベーター前ロビーに集合!!」


「ありがとう!向かおう!」


 俺と高千穂はチームオロの研究施設前の庭から、広大な敷地のほぼ真反対にあるエレベーター前ロビーへ向かう。





「うわあああ!衝撃波だ!!」


「すいません!どいてください!お願いします!」


 ボヌゥン!


「大丈夫か!!鈴木が吹き飛んだぞ!!」


「ごめんなさい!」





「なんだこいつ!体から刀が生えてやがる!!」


「わいに攻撃しても無駄やーってー!」


「なんだこいつ!ぶよぶよしてやがる!大槌が効かねえ!!」


「おおっと、くらっちまった。刀気に入ってたのに〜」


「な、なんだ!?今度は手が大槌に変化したぞ!!」


「へーへーへー!!」





「こいつ!斬っても切っても傷が修復する!」


「バーカ。斬らしてあげてるのっ!時間の無駄よ」


「そいつを止めろ!そこを通すな!!」





「うわぁ!なんだこいつの皮膚!刀が入らねえ!」


「矢も射抜けない!!弾かれちまう!!」


「チクリチクリ」


「クッソ!!次々通られる!これ以上先に行かせるな!!!」





 侵入してきたデュロル4人は順調に下へ下へ降りて行く。上河原のいる階に行くには、エレベーターで黒潮らがいる階で降り、まっすぐ進み反対側の厳重な扉の先の階段をさらに5階下に降りなければならない。


 千歳の到着より先に数十名が地上エレベーター前ロビーを包囲。里道、室瀬、藤長や川崎、雪崎など大人数がそこに集まっていた。


ジジッ

「デュロル達は山辺(やまべ)黒潮(くろしお)菅岡(すがおか)には一切目をくれずに、真っ直ぐに上河原を目指しています!!」


「やはり、目的は上河原1人か」


ジジッ

「上河原部屋前班!!応答せよ!!現状を報告せよ!!」


 ……。


「奴らは、辿り着いてしまったようだな」





「お待たせ!まだデュロル達は出てきてない?」


「お、たかつほつん。これからだ。上河原を奪われた」


「あれ?さっきまで千歳くん後ろついてきてたのにどこ行ったの?」


「千歳も一緒だったのか?」


「うん、いつの間にかいなくなってる」


「あ!!高千穂いた!!!お前置いてくなって!!迷っただろ!」


「毎日生活してるとこで何迷ってるのよ!!」


「高千穂がいなくなるからぁ!それより、まだ上がってきてないんだろ?」


「ああ。これからだ」


「望むところだ鬼神!!かかって来やがれ!!と、言いたいとこだけど、こここんな人いんのか。お前らちょっと着いてきてくれ」


「お前のことだ、何か考えがあるんだろ?」


「もちろんだ!」




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