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DHUROLL  作者: 寿司川 荻丸
【起】

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22/144

21話ー全力の敗北ー

 黒谷と対峙した千歳。


 川崎を上回る強さを見せた黒谷に対し、千歳は1人で渡り合うことができるのか。


ー現在ー


「デュロルってだけで恐れられる。デュロルってだけで生き辛くなる。なろうと思ってデュロルになる奴なんざいねえんだよ。けどな、これが俺の人生だ!!デュロルになったからにゃ楽しまなくちゃな!!」


「俺はデュロル自体が悪い奴だとは思ってねえ!!けどな!!お前みたいな命を粗末にして!殺しを楽しんでる奴らが!痒くなるほど嫌いなんだよ!!!」


「じゃあどうすんだ?捕まえて更正でもするつもりか?」


「そんなことしたって直るお前らじゃねえ!ぶっ飛ばしてとっ捕まえる予定だったけど、変えた!ぶった斬ってやるから!あの世で反省しろ!!それが、お前に人生奪われた人たちの願いだ!!」


「やっと、生きるか死ぬかの闘いができるんだな!ありがとよ!」


「言葉にできねえほど嫌いだ!!」


 俺は刀を抜き、走り出す。


「おっしゃ来た!!」


 黒谷は地面に手をついた。


 すると、地面が四角柱に横1列で飛び出し、黒谷までを遮られる。


「"凸(バースト)"!!」


 黒谷の後ろの壁から5本の四角柱が勢いよく飛び出し、遮るために飛び出た四角柱を砕きながら俺へと向かってくる。


「くそ!!」


 俺は避けれずにその四角柱に飛ばされ、3段目まで落ちる。


 黒谷は1段目の端から俺を見下ろすと、端を両手で触れる。


「乱凸先鋭(スピアディスターブ)!!」


 心臓を握るよう地は響く。


 すると、3段目の全方向の壁から四角柱が無数に突起し、先端が崩れて鋭利になる。


「突き刺せ!!」


 黒谷の合図と共に突起した柱は、四方から乱雑に飛び出してくる。


「くっ!!なんだこの数!!」


 避けきれない!


 何本か刀で受け流すが、後方からの柱は避けきれずに直撃した。


 飛び出してきた柱と同方向に吹き飛ばされるが、四方から乱雑に飛び出してくる柱に次々と吹き飛ばされる。


 四方から柱は飛び出さなくなった。頭上を複雑に行き交う柱がその激しさを物語っていた。


 この技を今俺1人に対してやっているが、これを街でやった場合、被害がデカすぎる。絶対この場所で決着つけねえと。


「んまだまだぁ!!」


 上の方から黒谷の声が聞こえた瞬間、複雑に行き交った柱から、小さく細く先の尖った棒が無数に飛んでくる。


 避ける場所がねえ!!


 次々と身体に当たって砕かれていく小柱が、次第に身体に刺さっていく。装甲もボコボコだ。このままだとまずい、故障(ショート)する!!


 俺はひたすらに走りまくり、複雑に行き交う柱を登っていく。その最中にも身体に刺さってくる。


 俺は何とか2段目に登るが、2段目の壁には既に先の尖った突起が準備されていた。


「第2ラウンド!乱凸先鋭(スピアディスターブ)!!」


 くそ!さっきのがまた来るのか!!けど、さっきのでもう見切ってる!!


 飛び出してくる柱を飛んで躱し、下を通過した柱を踏み台にし、上へ上へと飛ぶ。飛びながら黒谷の方を目指していく。


 1段目に着地し、後退する黒谷へ刀を振るうが、黒谷は片手で地面に触れ、分厚い壁を作り、一定の距離を保たれてしまう。


 俺は分厚い壁を斜めに斬り、ズレる方を蹴って飛び越える。壁を迂回せずに距離を詰めた。


 黒谷が動揺したように見える。


 幾つも壁を作り、それを突破して行く俺に近づこうとしなかった。


 俺は壁に飛び乗り、上を移動する。


 その俺を見た黒谷は地面に手をつき、黒谷自身の下の地面と辺りの地面を突き出し、上へと逃げた。


 俺は刀を納め、その飛び出た地面を踏み、上へ上へと飛び上がっていく。側面を蹴って別の柱の側面を蹴り、1番高い場所に居る黒谷の元へ向かって側面を駆け上がる。


 1番上の黒谷は地面から手を離し、俺のいる側面の反対側に向かって飛び降りた。


 俺は急いで側面を移動し、黒谷に向かって柱を蹴って飛んだ。


 納刀してあった柄に手を添え、アクセルに指を置く。


「届け!!!」


 俺は空中でアクセルを握りしめた。


 甲高い音と同時に勢いよく抜刀された刀は弧を描き、黒谷へと流れていく。





 駆け上がってくる千歳から逃げるため、反対方向へ飛び降りる。


 だが、千歳は柱の側面を移動し、飛んできた。


 千歳は納刀してある刀に手を伸ばした。まずい、2ヶ月前でさえ擦り傷をつけた刀だ。パワーアップされた今の千歳がアクセルを握るとなると、どれ程の深い切り傷になるかわからない。意地でも避けねえと!


 千歳はアクセルを握りしめ、甲高い音と共に、空気を切る分厚い音が聞こえた。


 刀は、腹部スレスレを横切った。


 おっしゃ!避けた……のか?


 俺の腹部からは血が吹き出していた。


 当たってない……いや、本当に斬られていない。


 刀身は俺の腹部から3センチは離れていたはずだ……!


 千歳が刀を振り切ってから1秒後に斬られた感覚があった。いやまさか、たった2ヶ月でこんな成長を遂げたというのか!?



 千歳は刀の風圧で俺を斬った。



 エキポナの刀の重さは通常のモノで250キロ程度。エキポナ自身の筋力が上がればそれに伴い刀の重さも増加させるのが普通だ。千歳の刀もそれなりに改良を重ね、重さは500キロいかないってとこか。その重さを目に見えぬ速さで抜刀し、アクセルの力も加わり、相当な威力を出すのは間違いない。


 しかし、風圧だけで物体を斬ることができるだろうか。


 この斬られた瞬間がやけにスローになる。


 俺は空中で体勢を変え、両足を天に向け、千歳を踏み台にするように蹴り、俺は地面に着地し、千歳はさらに上へと飛んだ。


 斬られた腹部に着地の衝撃がめり込む。俺は1段目の端へと急ぎ、ありったけの想(そう)を込めた。


 これだ、これだよ千歳、楽しすぎるぞ千歳!!これが生きるか死ぬかの闘いだ!!


 地面に両手をつけ、千歳を倒す!と強く想う。


「地裂開閉(グランドクローズ)!!落ちてこい!!」


 千歳は空中で身動き取れず重力に身を任せ、2段目中央まで落下する。


「閉じろ!!」


 2段目、3段目の凹んだ穴の壁が中央に集まり、千歳を閉じ込めた。


「千歳!!お前には俺の全てをぶつけてやる!!」


 俺は残ってる想(そう)をありったけ両手に込める。その両手を地面につけ、地に流した。


「大想(たいそう)!!」





ー数分前ー


「陽梨花(ひりか)はここに居ろ、様子を見てくる」


「私も行く!凄い音してるし、千歳さんが心配で……」


「黒谷は危険だ、近くにいるだけでも危なすぎる!」


「でも!!」


 ゴゴゴゴゴ!


 轟音は逃げて来た方からだった。立っているのがやっとなほどの揺れだった。


 陽梨花は迷わず走り出した。


 俺は陽梨花を追って止めるが、陽梨花は行きたいの一点張りで、振りほどいてまで行こうとした。妹が駄々をこねたのはこれが初めてで、少し動揺してしまった。


 妹を抱き上げ、音のした方へ急いだ。途中で視界カメラのスイッチを入れる。


 しばらく進むと、木々を抜け、視界がやけに晴れる。通って来た道が無く、不自然に積まれた土山を登ると、大きな穴が辺り一面に広がっていた。


「何だこの穴は……」


 思わず声に出た。山を削り、道を削り、大きく沈んだ土地はあまりに不自然だった。


 先程の轟音と、大きな揺れはこれだったのか。


 反対側の1段降りた場所から柱の束が伸びていた。その頂点から2人が飛び出したのが見えた。


「やっつけて千歳さん!!」


 陽梨花は叫んだ。目をくしゃっと瞑って、サラサラの長髪を揺らしながら。


 すると、千歳はさらに上空へ飛ばされ、黒谷は地面に着地した。


 黒谷はすぐに地面に両手をついた。千歳は穴の中央に向かって真っ直ぐ落ちていった。


 2段目に落ちるのに合わせて、2段目の壁が全方位から迫り、穴は閉じた。


「千歳!!!」


 あまりの揺れに立てず、地面に膝と手をつきながらそれを見ることしかできなかった。


 黒谷はその場で仁王立ちし、じっとしている。数秒後、黒谷は地面に両手をついた。


 千歳が落ちた場所を中心に、半径10メートルほどの円を残し、6方向へ壁が伸びた。壁は千歳の場所を中心に15度ほどの傾斜で、千歳から離れれば離れるほど地上から高くなっていた。それぞれ千歳を向く壁面には、ドリルのように捻れた先端の円柱が出ていた。





【大想(たいそう) 六方地鎖封印(グランディエドチェイン)!!!】


 これで終わりなのは勿体ないが、もう体力と想が残ってない。また次の獲物を探さないとな。


 6方向から、順不同に柱は発射された。


 この柱で勝手に死ぬかもしれないが、この技は殺すものじゃない。ドリルのように捻れた先端を6方向からうまく絡ませ、身動きは取れず、動けば動くほど先端どうしが捻れて締まっていく。


 もし生きてたとしても、俺が逃げる時間はあるだろうな。しかし油断した。たった2ヶ月で千歳がここまで力を上げるとは思わなかった。


 千歳に想(そう)を使い果たすとは思わなかったが、これで時間は稼げる。少し回復していこう。4人は食べねえとだなこりゃ。





「おい!ツトム!!ツトム!!目ぇ覚ませい!!」


 ……。


「おーい!あいつにやられたまんまでいいのか!!ツトム!!」


 ……ん。


「ツトム!!このままあいつに負けていいのか!負けぞ!?負けぞ!!!」


 ……負けてたまるかよ。


「お前の父は死んでも食らいつく男ぞ!越えるんじゃないのか!!」


 ああ、越える。


 父ちゃんのようにかっこよく。


 父ちゃんのように強いエキポナに。


 父ちゃんのように優しい人に。


「……ヒョーゾー……ありがとな」


「ツトム!!」


「黒谷を倒すことを諦めちゃいねえ」


「その傷だ、動くのもさぞ痛かろう」


「うん痛え、しかも動くとこいつら余計に締まってくんだよ」


 父ちゃんならどうした?峯岡のおっちゃんならどうした?


 峯岡のおっちゃんなら馬鹿力でどうにかするな。


 父ちゃんなら、敵の技を利用する。


 なら俺は、敵の技を利用した馬鹿力でここを出てやる!考えろ俺。どうする!


 6方向から挟まれてて、俺が動くたびに締まってくる。俺は何のために鍛えた?黒谷に殴られ、力の差を感じ、その差を埋めたかったんだろ!


 わかったよ利用してやるよ!!


 俺は腕を広げようと力を込める。


「うおおおこいやああああ!!」


 力を込めれば込めるほどに締まる力は強まる。


「ツトム!!死ぬぞ!!」


「なんのおおおおお!!」


 6方向から螺旋状の先端が締まり、装甲に食い込み、食い込んだ装甲が身体に食い込む。


 左腕の装甲が抉られ、肉に突き刺さる。


「ま……だまだあああああ!!!」


 千歳の強い想いは届く。



 1方向の柱は、砕かれた。





 千歳は出てこないか。死んではないだろうがな。


 この技はデュロルでさえも動きを封じる程のものだ、未だに生きて出てきたものはいない。


 ゴゴッ。


「は?」


 ゴゴゴゴゴッ。


「そんなわけ……」


 ゴゴゴゴゴゴゴ!!


 1つの柱は揺れ、辺りを響かせる。


 そいつは、柱と壁を砕きながら姿を現した。


「出たぞおおおお!!!」


 俺の最強の技が、敗れた。


「馬鹿力が……」


 砕いて出た勢いが余りすぎて、10メートルほど飛び上がっていた。


 俺は膝をつき、着地して走ってくる千歳を、ただ見ることしかできなかった。


 敗けた……。


 人生で初めての感情だ。こんなにも……、こんなにも……。


「これで最後だ黒谷!!」


 千歳はアクセルを握りしめ、目に見えない速さで俺を斬る。


 斬られた痛み。


 その1秒後にくる風圧にさらに斬られる。


 風圧は俺の後ろの地面を抉り、壁までも刻んだ。


 生暖けえ血が、俺に流れた。


 俺にも流れてたんだな。


「……ああ」


 思うように声も出やしねえ。


「黒谷、お前がデュロルになって感じた想い。俺は忘れねえからよ。俺は絶対!この気分悪い戦いを終わりにする!!デュロルになったから辛い人生なんて、ムカつくんだよ!!!人は生まれたんなら!辛く生きる必要なんてねえのによ!!お前の責任は!俺が成し遂げる様を空から見ていることだ!!約束だ!!」


 なにバカなこと言ってんだ。


「……やく……そくか」


「ああ!!」


「……うるせえ……な」


 このバカならって、少しでも想った俺がいる。


 任せてみるか〜。


 全力で闘って、全力で敗けた。


 敗けたのに、こんなにも、こんなにも______。



「……楽しかったな〜」


 俺はそのまま前に倒れる。陽は落ちて、辺りは暗くなっていた。


 段々と意識は遠のく。


 力も抜けていく。


「……なのに……不思議だ」



 ______気分が良いなんて。





 死傷者173名、エキポナ負傷者14名、エキポナ死者2名。


 鬼神(アラハバキ)幹部 黒谷 渉 絶命。




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