第四十九話 姉さんの壮絶な休日(後編)
メイドの格好をした美香と紅緒とゴスロリ服の雛、そして警護しているかのように後ろを歩く黒服数人は異様に目立つはずだったが、何故か見てくる人が少なかった。どこかに走っていく人の言葉に耳を澄ませてみると
「勇者御一行が来た」
「奇抜な格好の人達ががエントランスの方に…」
「ある意味珍しい…」
……聞かなかったことにしよう。
「ねぇ美香?」
「……姉さん、どうかしたの?」
「さっきからエントランスの方「さあ姉さん! 雛の買い物を済ませてしまおう、帰りに写真を好きなポーズで撮らせてあげるから!!」」
私がすごい剣幕で言葉を遮ると一瞬驚いた顔になっていたが、すぐに嬉しそうに「約束だからね?」と言って引き下がってくれた。雛の方を見てみるとそんな私達の姉妹のやりとりを楽しそうに見ていた。
人混みが少なくなったおかげで雛の残りの買い物もつつがなく終る事が出来た。私は特に雛にサービスは出来なかったけど、喜んでくれたのでよしとしよう。エントランスとは反対側の入口で、雛と別れることにした。
「姉さんそろそろ帰ろうか、雛をあまり連れ回したらいけないもの」
「そうよねー。雛ちゃん、今日はありがとうね」
「別にいい。美香と紅緒、今日一日見てて楽しかったし」
「そう」
そう言って別れようとした瞬間だった、私は背後から雛の方に向けられた殺気と魔力を感じ取り、雛を抱えて真横に跳んだ。雛の後ろに待機していた黒服達に風らしきものがあたると、黒服達が皆倒れてしまった。姉さんは何故か当たっていない。
「何!? 美香の同類?」
「わからない…けど、敵なのは確かだと思う。雛は大事ない?」
「大丈夫、美香のおかげ…」
雛をおろして、風が吹いた先を見つめると奇妙な3人が立っていた。一人は勇者風の男性、一人は魔法使い風の女性、一人は肉弾戦が得意そうな筋骨隆々なおじさんだった。勇者は雛の方を見ると、叫ぶ。
「俺はハンス! 勇者をしている。メイドは違うと思うから、多分小さいのが魔王美香だな?」
「ハンスくん、多分違うと思うの。その横の…」
「ハッハッハ! 覚悟しろ!」
「そうなのか? 俺は美香の顔を見たことがねぇからな、ハンスを信じるぜぇ!」
「……うぅ、ハンスもガストンも話を聞いてよぅ」
折角魔法使い?の娘が正してくれそうだったが、ハンスの高笑いに遮られてしまう。
勇者はハンス、格闘家はガストンと言うらしい。勇者は平均的な体つきで170cmくらい、ガストンは2mはあるだろうか。魔法使いの娘は緑色のロングの髪が可愛い。
私は展開が面白くなったので、訂正はせずに雛の前に身を乗り出す。その時、姉さんも出てきてくれた。
「私の主をやらせるわけにはいかせません! 姉さん、行くよ!」
「はーい、あのおじさんは任せてねー」
「雛は隠れて狙撃するの」
雛は倒れてる黒服達からライフルのケースを拾って走っていった。私と姉さんは勇者達に立ちはだかり雛を安全にする。
「主はあまり強くないので…私達が相手をします!」
「ハッハッハ! メイドに負ける訳無いだろう!」
それを聞いた時、思わずにやけてしまったが、どうにかこらえる。
おじさんが動こうとした時、姉さんが動く。一瞬で間合いを詰めて首に蹴りこむ。
「あ………ぐぅっ……」
「いい感触!」
2mもの巨体がよろける。さすが格闘家といったところか、完全には倒れない。
「っはは! 俺を倒れさせるにはまだたりないなぁ!」
そう言って姉さんに拳を繰り出す。しかし、姉さんはそれを躱して鳩尾に一撃を当てた。その瞬間に合わせてガストンの足に弾が貫通する。その方向を見ると雛がライフルを構えて構えていた。
倒れたガストンは気絶していた。
「ガストンさん!」
魔法使いの娘の呼びかけも虚しく、ガストンは倒れた。
「はい、私の勝ち!」
「さすが姉さん!」
勝利宣言をして、姉さんが息を吐いた時に事件は起きた。
ドスッ…
気づくと姉さんの胸から剣が飛び出している。
「ハッハッハ! 勝てばいいのだ!」
「ハンスくん!?」
「やったぞ! この調子で倒せば俺は英雄だ!」
さっきまで様子を見ていた勇者が不意を突いて攻撃していたのだ。たった一人刺したくらいで喜んですらいる。
………ああ、遊ぶのは止めよう。
頭の中が初めて天音と戦った時と同じくらい黒くなっていく。
「どうした? おじけつい…」
台詞は最後まで言わせなかった。美香がハンスを縦に割ったのだ。
「ああっ、ハンスくん…」
その言葉が聞こえた時にはその娘の首を掴んで立っていた。
「あなた、名前は?」
「あっ…ぐぅ…」
「名前は?」
握る手の力が強くなる。
「レ…レヴィ……」
「そう。で、さっき刺された人は治せる?」
美香の目は黒くなっていた。それを見たレヴィは泣き出す。
「な、治せます!!」
「なら治して、今すぐ!!」
姉さんの近くに連れて行くと姉さんの胸から剣を抜き取りレヴィを姉さんの近くに下ろす。レヴィは呪文を急いで唱える。姉さんの傷はたちまち塞がっていった。
「……ごほっごほっ」
姉さんが凄いからなのかすぐ起きてきた。私の中の黒いものが消えていく。
私はすぐに駆け寄った。
「天音! レヴィを回収して尋問しておいて!」
「はい、姉様!」
美香の影から声がした直後、レヴィは影に飲まれていく。しかし、美香には紅緒しか目に入ってない。
「姉さん大丈夫?」
「……多分、大丈夫」
それを聞いて美香は安堵した。
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それから紅緒は病院に行ったが何も異常は無かった。その次の日には仕事に復帰してデスクについている。
「休日はどうだったの?」
アリスが楽しそうにしている紅緒を見て話しかける。
「あはは……ホントに壮絶な休日だったわ」
言葉を濁しつつデスクに写真を置く。
「この娘が妹さん?」
その質問に紅緒は笑顔で答えた。
「ええ、最高に可愛くて凄い私の妹よ!」
まずは一言。
すみませんでした。
一週間で一話投稿を目標にしてましたが、忙しくなったりして中々投稿できませんでした。
最後まで投稿はするつもりなのでこんな私の作品でよければ見てくださると嬉しいです。




