【プロローグ】異世界へ配信される
この作品は『魔法道具店ラウンレイフィ ~異世界配信、始めました~ 』の10話までの再構成作品です。
生成AIを用いた作品です。
地球にて『魔法道具店ラウンレイフィ』の配信が始まってから、数か月が経過した。
演者曰く、地球のことを異世界と表現し、遠く別世界から配信を繋いでいるらしい。
最初の頃、視聴者の数は少なかった。
誰が見ても異世界にしか見えない店内。
銀髪に赤い瞳の、美しい店主。
棚に並ぶ魔法道具。
来店する冒険者や商人、王族らしき人々。
そして、明らかに地球のものではない風景。
普通に考えれば怪しすぎる。
だが、怪しすぎるものは、逆に本物だとは思われない。
人間というのは不思議なもので、あまりにも現実離れしたものを見せられると、まず作り物だと考える。
最新AI生成映像。
リアルタイムCG配信。
ファンタジー系バーチャル配信。
あるいは、どこかの企業が水面下で動かしている宣伝企画。
だいたい、そんな扱いだった。
実際、映像の質は異常に高い。
翻訳の精度もおかしい。
コメント欄の言語が違っても、意味が通じるし、視聴者側にも自然な言葉として届く。
背景の小物まで作り込まれ、来客の演技も不自然さがなく、魔法の描写も妙に理屈が通っている。
だからこそ、視聴者たちはこう思う。
すごい技術だ、と。
毎日のように、垂れ流し配信されており、同時接続は50人くらいで推移していた。
少なくとも、数か月前までは。
魔法道具店ラウンレイフィ。
世界地図のどこにも載らない、絶海の孤島に存在する店。
そして、世界中のダンジョンや遺跡、迷宮に入口だけが現れる、神造の魔道具。
そこに住む店主は、今日も特に気負うことなく店を開けていた。
「魔法道具店ラウンレイフィへようこそ」
銀色の髪。
赤い瞳。
年のころは十代後半から二十代前半に見える、美しい女性。
「私の名前はラウンレイフィ。長いので『レイ』と呼んでください」
彼女の名前は、ラウンレイフィ・リンドリーズ。
長いので、本人はレイと呼ばれることを好んでいる。
「今日は、カードスペルという魔道具を作ります」
:開店助かる
:今日も作業回
:平和な日常回きた
:昨日の配信まったりしてて好きだった
:こういう回も助かる
:在庫管理大事だよね
「まだ考えているだけです。商品化するかは分かりません」
:考えてはいるんだ
:やっぱり作る気ある
:客なら売る店主
:平等でいいね
レイはコメントを横目に見ながら、カウンターの上へ薄い板を並べていく。
紙に見えるが、紙ではない。
魔力を通しやすく加工した、使い捨ての魔法道具の基材である。
カードスペル。
レイが最近作り始めた、新しい形式の魔法道具だ。
魔法を直接使える者なら、火を灯すにも、水を出すのも、相手を拘束するにも、それぞれの魔法を使えばいい。
だが、それでは術者の感覚や魔力量に影響される。
才能や熟練度により結果が安定しない。
使う者によって、同じ魔法でも威力の強弱が着く。
カードスペルは、そこを狭める。
あらかじめ結果を固定し、誰が使っても似た効果になるように整える。
便利ではある。
ただし、作るのは面倒だった。
「この薄い板に、魔法の結果を刻みます。文字というより、術式に近いですね」
:魔法カードだ
:使い捨て魔法、ロマンある
:スクロールとか護符に近い?
:現代だと説明書付きの非常用グッズみたいなもの?
「非常用道具、という言い方は近いかもしれません」
レイは先端に光の浮いた羽ペンを持ち、板の表面へ細い線を刻んでいく。
撫でるたびに、かすかな引っかき音が配信へ乗る。
:作業音助かる
:寝落ち用に良い
:でもたまにダンジョンボス来るから寝落ちできない
:この配信、日常と事件の差が激しい
「ダンジョンに入り口が現れる特殊なお店ですので、お客様はあまり来ないですね」
:普通の店はダンジョンボス来ないんだよなあ
:普通の店は勇者も来ない
:普通の店は神様が現れたりしない
「普通の店ではないので」
:それはそう
コメント欄が少しだけ笑いに傾く。
こういう空気は、レイにとって嫌いではない。
配信者という自覚は、今でも薄い。
あくまで、客のいない時間に遠い世界の人々と話しているだけ。
暇つぶし。
あるいは、店番中の独り言に近い。
けれど、数か月も続けば習慣になる。
朝に店を開ける。
棚を見る。
素材を並べる。
クリスタルに向かって挨拶する。
コメントを読みながら、道具を作る。
孤島で一人過ごしていた頃と比べると、ずいぶん賑やかになったと思う。
それが良いことかどうかは、正直よく分からない。
ただ、退屈ではない。
それは確かだった。
「これは道標用です。使い捨てで、一定時間、目的地へ向かうための方向を示します」
:便利そう
:迷宮で迷った時に欲しいやつ
:こういうのあると安心感違うよな
:でも頼りすぎると危なそう
「はい。ですので、目的地を明確にする補助を入れました」
レイは説明しながら、ふと手を止めた。
カウンターの端に置かれた小さな鈴が、かすかに震えたからだ。
店の扉は、まだ開いていない。
だが、どこか遠いダンジョンの奥で、入口が繋がろうとしている。
:ん?
:鈴鳴った?
:来客?
:コメント消えるやつだ
:誰だろう
次の瞬間。
――扉が開いた。
「魔法道具店ラウンレイフィへようこそ」




