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「4」

ブックマークなどありがとうこざいます。

「いらっしゃいませー!ご注文はいかがなさいますか?」


「アイスのロイヤルミルクティー、キャラメルシロップ追加で」


「はい、かしこまりました!632円でございます!」


 さてここは、香織さんの勤めるカフェ『シュターバ』全国展開している大手のカフェで、本格ドリップコーヒーから甘い氷のドリンクまで幅広く売り出している。

 その中であえてのロイヤルミルクティー、更にキャラメルシロップを追加する事でちょっと普通の人とは違うと認識してもらうのが今回のポイントだ。

 バイトが始まる前や終わった後にほとんど寄って常連になり『いつものロイヤルミルクティー、キャラメルシロップの人だ!』という感じで覚えてもらう作戦。


 しかしながら……初っ端に香織さんのレジに当たれるなんて本当についている。


 香織さんは黒い長い髪を後ろにお団子にしてまとめ、キャップ帽の後ろの空いている部分から出した髪型をしていた。

 前髪も後ろと一緒に全部まとめているようだ。

 小さい顔、くりっとした大きな瞳、すっと高く、しかし小さい鼻、笑顔はとっても可愛いがなんとなく儚げな雰囲気もあるその姿。

 多分、俊哉でなくてもクラッときてしまう人は多く居るんだろう。

 でも、まだ知り合いにもなっていない、店員と客の関係だ。話しかけない方がいいはずだ。


「あ、お客様、100円多く出ておりました」


「え、あ、うそ」


「ふふ、お返しいたしますね」


  うわ、めっちゃ可愛い。


「あ、ありがとうございます」


「こちらこそありがとうございます。ドリンクあちらからお出し致しますね。ごゆっくりどうぞ!」


 こりゃ……こっちも要注意だな。

 男たちが放って置かないぞ。


 こうなったら例の香織さんタイムシフトを取り出して、いつシフト入っているか確認してから来た方が良さそうだ。


 とりあえず今日はこのロイヤルミルクティーを飲んで……。

 自分のバイト初出勤。こっちも頑張らなくてはいけない。




 そう言えば昨日から夏休みに入っている。

 テストはもう同じ内容4回目なので寧ろ当てないことの方が難しいのだが、あまりにも出来すぎてしまうのは良くないと考えてある程度間違えたものを提出した。

 まぁ、成績上位には入れるだろう。


 サークルの方は『射法八節』を完璧に覚えて俊哉に伝えたため、打つ時の体の型を教わっている最中。

 なかなか矢を打つ行為に行けないのは悔しいが、俊哉がずっと俺を教えてくれているので、女の子たちは俊哉に近づきにくいみたいだ。

 俊哉、友達に対して面倒見が良いよなー。と思う。

 サークルと言えば飲み会が多いイメージだが、お酒飲まされそうだからと俊哉は参加していないらしい。だから俺も行ってない。

 つまり、俊哉はサークルに入っているものの、女の子たちと交流ないまま過ごせているという事になるのだ。


 やっぱ入って正解だな。

 柳田さんも俊哉ではなく、教えてくれる先輩といい感じと話では聞いた。もしかして前までは、俊哉が教えていたのかもしれない。


「あ、やばい、時間」


 色々と考えていたらバイトの時間が迫ってきていた。

 とりあえず今は新しい仕事に集中して、俊哉のことは終わってから考えよう。


「ありがとうございますー!」


 お店を出て行く時の香織さんの笑顔はやはりとても綺麗だった。







「つーかーれーたー」


「おかえり、夕食作っといたから食べたら?」


「ありがとう……ただいまー」


 バイトを終えて家に着くとキッチンスペースに俊哉が座っていた。

 すでに夕食は食べ終えたのか雑誌を読んでいる。

 俺は疲れた体に栄養を入れるため、俊哉の料理を頂くことにした。


 冷蔵庫の中にはハンバーグが入っていた。更にラップした綺麗なサラダ、白米、コンロにはキャベツやトマト、玉ねぎなどの野菜がたくさん入ったコンソメスープも入っている。


「おや、しゅんやは神なのかな?」


「そうだけど?」


「まじ、ありがたやー」


「ちなみに、冷凍庫にはハンバーグの予備が入ってるから」


「何か寄付した方がいい?」


「今週のゴミ出しお前な」


「はーい、承知しましたー」


 料理を温めて机に着くと俊哉が俺に向き直った。

 なんとなく嫌な予感がしたので無視をしてスープを飲む。

 あったかいな……心が温まるよ。

 そんな心とは対照的に、とても冷えた声で俊哉が俺に話しかけてきた。


「……今日告白された」


「え、まじ?誰に」


「……覚えてない」


「覚えてない!?返事どうするの?」


「そこなんだよな」


 そこなんだよな、じゃない。


「なんか、髪が長くて、茶髪で、ブランドの鞄持ってるやつだった」


「それじゃ分かんないけど……」


「……みんな同じような顔に見えるんだ、勘弁してくれ」


 勘弁して欲しいのはこっちだ。

 そもそも名前の分からない相手から告白されて何を悩んでいるのか。とても可愛い子だったからなのか。

 でも知らない子と急に付き合うとか、俺はできないのだけど普通はどうなのだろう。


「ルイが一回持ち帰ってって言ったから、保留にしてきたんだって」


「誰か分からないのは俺のせいじゃないでしょ」


「…………」


「どうするつもりだったの?」


「綺麗めな子だったし、受けようと思ってた」


「えー……名前も分からないのに」


「適当な彼女いた方が楽だろ」


「適当って、そういうの良くないよ」


 初めて彼女を作った時の自分も、彼女が欲しかったから付き合ってしまった覚えがあるけど、結果相手を傷つけてしまったと思う。

 しかし。それにしても、その特徴ってまさか。


「柳田さんかな?」


「あー、そんな名前だった」


「…………」


 面倒見てくれてる先輩はどうした!!

 もっと頑張ってよ!!

 でも、もしかしたら俺が相談するように言わなかったらそのまま付き合っていた可能性を考えるに未来は変わりつつあるということだ。

 いい方向に進んでいると信じよう。


「絶対その人はだめ。俊哉じゃなくて柳田さんが悲しむことになるよ」


「……でも、俺の顔がすごくタイプって言ったから、俺と理由そんな変わんないだろ」


「え!?あ、そ、そうなんだね……」


「ああ」


 まさかの理由に驚きを隠せないし、告白する時に顔がタイプだからですって言うものなのか、という事にびっくりしてなかなか良い理由が思いつかない。

 若い子たちって皆んなそうなの?俺そういうの良く分からないんだけど。

 あーもう仕方ない。ちょっと強引だけどこれしか思いつかないからこれで行く。


「……むむむ、見える見えるぞ、本命が見つかった時に別れづらい姿が!!」


「は?」


「これは、今は、付き合うべきではない!!」


「…………」


「…………はず!!」


「…………」


「いや、止めてよ」


「本当に見えてるのかと思って」


「見えてないよ!」


「それは残念」


「でも、やっぱりさ。付き合うならもうちょい知り合ってからがいいよ。もう大学生だしさ、結婚まで行く可能性だって……あるんだし」


「外見に似合わず真面目だよなー」


「はいはい、悪口悪口」


 とりあえず今回は見送るかーと言ってテレビをつけ始めた俊哉にホッとしながら、残っていたハンバーグをグサリと刺した。

 危ないところだった。これで付き合ってしまっては今後の計画にも大きな支障が出ていたはず。

 今後たくさん出てくるだろう告白案件も、なんとかかわしつつ、来年まで耐えぬく。


「来年か……」


「なんだ?」


「いや、こっちの話し」


 どれくらい彼がモテるのか知らないがもしかしたら結構大変かもしれないので、気合いを入れないと。

 そう思っていたら俊哉が俺の方を向いた。


「ん?まだ何かある?」


「言い忘れてた。来週から合宿だから。行くだろ?」


「が、合宿……」


「あれ、行かない?」


「いや!行く行く!」


 そんなイベントがあるなんて聞いてない。

 夏合宿とかカップルイベントみたいなものじゃないのか。と思ってしまう。それは俺の大学生に対する偏見だろうか……。

 どちらにしろ、合宿中なるべく俊哉の近くに居よう。


 そんな事を漠然と考えたのだった。


お読みいただきありがとうこざいます!!



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