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7『辿り着いた先』


 本来執事とは、使用人の長としてスケジュールや資産の管理等を幅広く行う専門職だ。だが、この鈴鳥家ではメイド長である柊弥生が兼任している。

「なぁ、俺って執事である意味あるのか?」

 早朝の組手を終えて、オーロは宮子に訊ねた。

「私の専属の執事だ。私が満足ならそれで良い」

「そういうもんかね」

「何か不満でもあるのか?」

「いや、友達みたいな関係に思えてな」

 オーロは内心を包み隠さず述べる。

「ふふ、そうかもしれんな。あー、その、何だ、私はお前と居て楽しいが、お前はどうなんだ?」

「勿論、楽しませてもらってる」

「そ、そうか」

 安堵した様子で、宮子は足早にシャワー室へと向かった。あの卒業式のあたりから、宮子の様子がおかしい。何かを隠しているような気配をオーロは感じていた。

 ある日、宮子が映画の招待券を持ってオーロの私室を訪れた。

「友人から押し付けられたんだが、一緒にどうかと思ってな」

「映画かぁ久し振りだな。喜んでお供させてもらおうか」

 そうして、街に繰り出したオーロと宮子は劇場のカウンターで招待券を入場券に交換してもらう。しかし、上映開始まではまだ少し時間があった為、近くのカフェで時間を潰す事にした。

「オーロに聞きたい事があるんだが」

「どうした? 急に改まって」

「オーロは元の世界に帰りたいのか?」

 真剣な眼差しで、宮子はオーロを見据える。

「……そうだな。前の世界に召喚された頃はそう思っていた。でもな、名前を捨てたあの日から、元の世界とは決別したつもりだ」

 そう言って、オーロは珈琲を口にする。宮子は何やらホッとした様子だった。

「そろそろ行くか。もう開場している頃合だろう」

 二人は席を立つと、劇場へ足を運んだ。

「……その、すまなかった」

「いや、お前のせいじゃない」

 映画の内容は正直微妙だった。いたたまれない空気の中、二人は帰路に就いた。

「少しいいか?」

 宮子の提案で、西日の差す緑地公園に立ち寄った。備え付けのベンチに腰を下ろし、フードトラックで購入したアイスクリームで口を冷やす。

「オーロ。一度しか言わないからよく聞いて欲しい」

「? ああ」

「私は……お前が好きだ。ずっと私の傍に居て欲しい」

 赤面する宮子を夕陽が隠す。

「俺で良いのか?」

「お前じゃなきゃ駄目なんだ」

「そうか……俺もな、宮子の事が好きなんだ」

 しばしの沈黙の後。

「そっちのアイス味見しても良いか?」

 オーロがアイスクリームを差し出すや否や、宮子がオーロの唇を食む。

「……甘いな」

「ああ、甘いな」

 これから宮子は、鈴鳥グループの一人娘として、怒濤の人生を歩むだろう。だが、その傍らには、常にオーロが居る。異世界を漂流して辿り着いた終着としては、悪くない結末ではないだろうか。

 ここまで駆け抜けてきた戦いと出会いを思い返しながら、オーロは口辺に笑みを浮かべた。


ここまで読んでくださってありがとうございます。他にも書きたい作品があるので、今後ともよろしくお願いします。

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