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9 幼なじみは万能

 俺が猫人族の族長になってから二週間が経とうとしていた。その間、俺がしたことは一つだけだ。この村のことはここにいる第一婦人の涼子に任せる、と村の皆に伝えたことだけだった。

「これは、こっちに、あれは、そっちに、それは、あたしに渡して…」


 族長の椅子でただ座って居るだけの俺の横で、涼子が机の上を整理しながら忙しいそうに動いていた。一週間前のワーウルフ討伐が効いたのか村人達は涼子の指示を従順に聞き、働いている。


「なぁ、俺もなにか手伝おうか?」

「私が生徒会の仕事手伝ってって言った時、恋次なにした?」

「…涼子の横でただ座ってた」

「そうよ、出来てるじゃない」


 俺の今の状況への皮肉なのだろうが、もう少し夫に優しくても…。


「もう少し夫に優しくても…」


 思ってたことをつい口にしてしまっていた。


「告白もしてないくせになにが夫よ!」

「告白はしてきただろ?沢山したぞ?」


 この世界に来てからはしてないが、前の世界でたぶんギネスに載るくらいしたはずだ。


「ええ、確かにしたわね、朝会うなり、おはようの代わりに付き合おうとか、昼ご飯を食べる時、いただきますの代わりに付き合おうとか、夜、おやすみの代わりに付き合おうだとかね、それを毎日毎日、告白って特別な日に特別な場所でするものでしょ?」


 確かに、涼子の言うように俺は毎日告白をした、でもそれは…。


「俺にとって、毎日が特別だったからな」

「…も、もう…ん~~」


 涼子の顔がみるみる真っ赤になっていく。


「どうした?熱が出たか?仕事のし過ぎなんだよ、今日はもう休め」


 俺は涼子の手を取り、腰に手を回した。涼子の顔がさらに赤くなっていく。こんな涼子を見るのは初めてだった。さらに心配になり急いで寝室まで涼子を連れていき寝かしつけた。


 執務室に戻った俺は涼子の代わりをやろうと机の上を見たがなにがなにやらまったくわからなかったのでその場にいた猫人族にまかせた。


「なぁ、この能力はなんだ?」


 俺は新しく増えた四つの能力の内一つがテキストを読んでもわからなかったから、ミオンの部屋に行き聞いてみた。


 この能力は俺が空に向かって撃ったスターゲイザーを見た猫人族の女性が俺を好きになって得た能力だ。


 得た能力は次の四つで、身体強化フィジカルブースト瞬光脚フラッシュレッグ猫眼キャットアイ猫愛キャットフェロモンこの四つの中でキャットフェロモンだけがわからなかった。


「はい、なんの能力でしょうか?」

「キャットフェロモンというやつなんだが」

「ああ、ハズレスキルですね、使うと猫人族を安心させるという効果しかないスキルです、わたくしに使って見てくださいな」

「そうか、ハズレか、わかった、使うぞ?…キャットフェロモン」


 俺は手をミオンに向けてから能力を使った、とたんにミオンの目がトロンとトロけた。その目のままミオンが俺に向かってにじり寄ってくる。


「ど、とうしたのかな、ミオン?」

「ナオーン!」


 そう、ミオンが叫ぶと、初めて会った時の様に俺の顔中を舐めまくり始めた。


「ちょ、ミ、ミオン、そ、こは、鼻の穴、だ、中まで舐めるな」

「ナオーン、ナオーン、ナオーン」


 数十分後、ミオンが正気に戻った。


「…まさか、猫人族以外がこの能力を使うとこんな効果が…そういえば猫人族固有スキルにこのスキルがあったのを思い出しました、恋次様、このスキルは即刻封印してください」

「ああ、わかった、こんな無限マタタビみたいな能力、猫人族にとって危険だもんな、封印するからこの能力のことは涼子には」

「ええ、封印してくださるのならお伝えしませんわ」

「ありがとう、助かる」

 

 こうして、俺は無限マタタビを封印することにした。


「昨日は悪かったわね」

「涼子が謝ることなんてないぞ」

「そう、ありがと…」


 なんか涼子の様子がおかしいな、まだ少し顔が赤いし、目もキョドキョドしている。


「そ、そうだ!ちょっとこういう物作りたいんだけど良い?」

「全部涼子に任せてるんだ、俺の承諾なんか要らないから涼子がしたいこと好きにしてくれて良いぞ」

「わかった、ありがとう」

「それで、なにを作るんだ?」

「ンーと、まず石鹸、次にシャンプー、できたら化粧水も作りたいな」


 見事に女性関連ばかりだな、これを反対なんかしたら俺は暫く口を聞いてもらえなかっただろう。


「作れるのか?」

「石鹸とシャンプーは簡単なんだけど、化粧水がちょっと難しいかな」


 簡単なのか、さすが学校一の秀才だな。


「頑張ってくれ、出来上がったら量産体制を作って他国に売り出そう」

「凄い、族長らしくなってきたじゃない」

「まぁな、村の人が優しいのもあるが、この村を好きになってきたからこの村のためにできることは常に考えるようになったな、涼子はどうだ?楽しいか?」


 俺の質問に対して愚問ね、みたいな表情をした涼子は微笑むと。


「当たり前じゃない」


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