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異世界軟弱物語  作者: よっきゃ
第三章
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目覚めたおっさんとお嬢様

 おっさんが目覚めたのはあの戦いから二日後のことだった。


 その吉報を知らせてくれたのは、建物中の窓を声の振動で割らんとばかりに叫んだリマの悲鳴だった。


 リマの話によると、おっさんの看病をしているうちに、うとうとと眠ってしまったとのこと。そしてその時、偶然にも眠りから覚めたおっさんがリマの胸をまさぐったらしい。その結果、リマの悲鳴が生まれたということだ。


「目覚めてすぐにリマにちょっかい出すなんて、ほんと根っからの変態ね」


 アタシが久々に目覚めたおっさんに賛辞を送ると、


「まあな」


 と、三文字の短い言葉だけを返してきた。


 時刻は午後三時。

 昼過ぎの陽光は、まどろみを含んでいた。


 斜めに射し込むやわらかな光はカーテンとともに揺らめき、おっさんが鎮座するベッドにまで届いている。


 おっさんは目覚めてはいるものの、ベッド上に根を張るようにして立ち上がろうとはしない。今は手鏡を見て身だしなみを整えている。


 そして整え終えたかと思えば、「ベッド最高やわあ、ベッドやわらかあ」と腑抜けた顔で腑抜けた言葉を連ねだした。今の顔は随分とマヌケっぽいわね。



 ……まあ確かに、やわらかいベッドは最高だとは思うけど。



 ふわぁーあ、と大きなあくびをしたあとアタシは、


「あ、そうだった。これお土産よ」


 持参したお見舞いの品をおっさんに渡した。



「お! 開けていいか?」


「ええ、いいわよ……って、もう開けてるじゃない!」


「おお! カットメロン! この世界でもお見舞いはメロンなんだな!」



 どこに感動しているのかしら。



「このアタシがアンタのためにわざわざ持ってきたのよ! 感謝しなさいよねっ!」


「うんうん。旨い旨い。旨いのう。最高じゃのう」


「全然聞いてないし……」



 おっさんは夢中でメロンを食べながら、「旨いのう、最高じゃのう」を繰り返している。

 その口調はまるでおじいちゃん。おっさんもこの二日で随分と老化したわね。


 まあ何にせよ、アタシが持参したメロンを喜んでくれているみたいでよかった。



 すると、メロンをあっという間に平らげたおっさんが、


「あ、そういやシエルは?」


「シエルはアイラのとこよ。ずっと付きっきりで看病してる。峠は越えたと言っていたけど、本当に危険な状態だったのよ。ついでに言うとリマも今はアイラのとこに行ってる」


「そ、そうだったのか……」


 おっさんはぶつりと呟くとそのまま黙り込んでしまった。


 アタシ達はあの戦いのあと、アイラの家にお世話になっていた。


 アイラはブロンザを拘束し、戦いの後始末を済ませたあと、アタシ達を家に招いたところで急に意識を失った。治癒術は受けていたものの、やはり完全に回復できていなかったのだろう。恐らくずっと痛みにも耐えて我慢していたのだ。


 自分のことを省みず他人を優先するその姿はまさに騎士そのものだと思った。



 そして、アイラはそれから未だに目を覚まそうとしない。

 命に別状はないとのことだが、二日間も目覚めないと不安になる。そんなアイラのことを想い、夜も眠れないほどに心配している自分がいた。


 まあ、アタシがこんなに眠れないのも、アイラをこんな状態にしてしまったのも、アタシが原因なのだからしょうがないのだけど。

 アタシがあのとき魔法をアイラに当てなければここまで酷い状態にはならなかったはずだ。



 と、アタシが眠れないことは置いといて、今はこのおっさんに聞きたいことがあるんだった。


 アタシは一つ咳払いをして、


「ところでおっさん。アンタのカラダ、変だなーとか、不思議だなーとか、何か思わないの?」


 おっさんのカラダのことについて聞いてみた。


 もちろん聞いた理由はあのこと--始めにブロンザに斬られたとき、明らかに死にかけていたのに、数分もしないうちに復活したことについてだ。


 アタシはこのおっさんが能力者なんじゃないかと睨んでいる。それをハッキリさせるための質問だ。



「うーん。俺は別に身体が変だとか不思議だとかは思わないけどなあ」


「ウソね。絶対にウソ。普通のカラダだったら急にキズが治るなんてありえないもの。だからおっさんのカラダは変なのよ。じゃないとブロンザに斬られてすぐに復活した理由がつかない」


「それはリマの治癒術が凄いから復活できたのであって俺は嘘なんてついてないぞ。……まあそうだな、サーチャがどうしても嘘かどうか知りたいんなら、一つだけ確かめる方法があるが」



 急におっさんが嘘か本当かをハッキリさせる方法を提示してきた。


 わざわざ自分が不利になるかもしれないっていう案を出してきたということは、やはり嘘ではないの?


 いやいや、騙されないわよ。この変態なおっさんにアタシが今まで何度騙されそうになったことか。


 まあとりあえず、その案とやらを聞いてみようかしら。



「そうね、どうしても知りたいわ。だからその確かめる方法ってのを教えてくれないかしら?」


「うむ。そういうことなら教えてやろう。嘘を見分ける方法、それは俺を舐めることだ。嘘をついているかどうかは舐めたときの味でわかるんだ。ということでサーチャ。俺を舐め--」


「死ねっ! この変態っ!」



 病み上がりのおっさんの腹にパンチを一発お見舞い。おっさんは苦しそうにお腹を押さえている。リマほどの攻撃力はないけど、アタシのパンチはおっさんに効いてるらしい。



 それにしても、やはりこのおっさんは変態だった。どうしておっさんはいつもこうなのかしら? シエルと大違いじゃない。



「ぐうっ……。ぐはあっ……。い、今の俺はボロボロの身体をなんだからね!? それと意外と心も弱いんだよ!? そんな汚い言葉を言われたら傷ついちゃうよ!? 汚れちゃうよ!?」


「あら、ごめんなさい。もっと綺麗な言葉を使わないといけなかったわね。どうかお死にになられてくださいな、このド変態様」


「余計傷つくよ!? それとド変態になってるからね!?」


「うっさい! ド変態は黙ってなさいよ!」


 アタシはおっさんを一喝、そして睨みを利かす。そしてアタシの鋭い眼光を見てか、おっさんは攻撃から身を守るように枕を盾にしがみつきぶるぶる震えだした。その震える姿はまるでか弱い乙女のよう。


 とにかくおっさんが元気なことは分かった。

 いつも通りの受け答えだし、もう体調は大丈夫でしょ。



 ……あ、そういえばもう一つ明らかに怪しいモノがあるんだった。そう、おっさんが死の間際に見ていたという例のブツ。

 ついさっきまで身だしなみを整えるために使っていた手鏡は、実は隠れた魔法のアイテムかもしれない。だからチェックしとかないと。


「おっさん、アタシにも手鏡を見せなさい」


「手鏡か? 別にいいけど、普通の手鏡だぞ」


 おっさんはそう言うと、ひょいとアタシに手鏡を投げ渡してきた。


 アタシはそれをじっくりと、まじまじと、隅々まで見てみる。そこには、真剣な顔で手鏡を見つめるアタシの顔だけが映っていた。


「うーん。確かに変なところはないわね。何の変哲もない手鏡ってところかしら」


「だろ? そんなにじっくり見ても映っているのは可憐なサーチャだけさ」


「……おっさん。急に褒めても何も出ないわよ」


 手鏡に何の細工もされてないことを確認したアタシはおっさんに放り投げて返却。

 これで手鏡も違ったとなると、あの現象がなぜ起きたのか本当に分からなくなった。



 まあ、あと残されているのはリマの治癒術が凄いってことくらいかしら。

 でも、おっさんが二回目に斬られた時は完全に治癒できてなくて、出血したままだったし。うーん。分からない。




 しかし、おっさんにはなんだか上手く話を逸らされた感がある。やはり能力者かどうかを直接聞いてみるしかないかしら。

 よし、そうと決まれば……!


 アタシはもう一度大きな咳払いをしたあと、


「おっさん。これから言うことは真剣に聞いて」


 一気に話と空気感を変えた。


 そして先日の戦闘で起きた不思議な例の出来事が、おっさんの能力のせいなんじゃないかと考えていることを説明。


 おっさんはどこか他人事のようにその話を聞きながら、


「ふむふむ。つまり、俺には何かしらの能力が備わっていると」


「そうよ。あの異常なまでの回復力。まさに変態だったわ」


「そうか。ついに俺は本物の変態になってしまったか。これで女装癖かつ露出狂シエルの一歩先を行く存在に……。いや、先走る--」


「おっさん。次ふざけてシエルのこと悪く言ったら破壊するわよ。回復なんてできないほどにね。さて、まずは何を破壊しようかしら」


「は、破壊する!? ナニを!?」


「そうね。何を破壊しようかしらね。とりあえず最初は変な--」


「お、大人しくする! シエルのように大人しくするから! だからどうか破壊だけは!」



 変な言葉が飛び出ないように口を破壊するって言おうとしたのに、まさにおっさんの口から出た変な言葉によって私の言葉は遮られ、破壊されてしまった。

 というかこのおっさん、何を必死になってんのかしら。


 それと結局また話が逸れていったような気がするけど……まあもういいか。詮索はこれ以上やめとこう。

 おっさんが能力者だろうとアタシには関係ないし。



 ……あ、忘れてた。

 そろそろアタシ達もアイラのところに行かないと。リマから「ナイトさんを連れてきて」って言われてたんだった。


 そのためには、まずこのおっさんを立ち上がらせてベッドから出さないといけないわね。


「まあいいわ。それよりアタシ達、これから一緒に行かないといけないところがあるの。だからおっさん、立って」


「一緒にイかないとイけないところがある!? 二人だけのヘブンですか!?」


「あーもー! 意味わかんないのよ! いいから早く立って!」


  「立って!? ナニを!?」


「もういい! 私が無理矢理立たせるわよ!」


「ひゃん!?」


 アタシはおっさんを守っていたシーツをベッドから強引にはがし、おっさんを力ずくで起こし立ち上がらせた。


 おっさんはパジャマを着ていた。服も着替えさせないといけないわね。



「……何を芋虫みたいにモジモジしてんのよ」


「サーチャが大胆すぎて……」


「はいはい。アタシは男みたいに凶暴で大胆な女ですよ。ということでさっさと服を脱ぎなさい」


「こ、これ以上はダメだ! 出る! イッてしまうかもしれん!」


「は? 出る? 行ってしまう? 一人で勝手に行くつもり? てか、行き方とか分かってんの?」


「イ、イき方ですかああ!? イき方……。お、教えてください……」


 何でこのおっさんは急に敬語になってんの?

 ずっとモジモジしてるし、ほんとなんなの?


「ほら、一緒に行くわよ。だからさっさと服を脱いで」


「服……脱がしてください……」


「は? 自分で脱ぎなさいよ!」


「サーチャ様に脱がしてもらいたいんです。そ、その代わりに俺がサーチャ様の服を脱がしますから」


 おっさんはそう言うやいなや、アタシの服をおもむろに掴みボタンを外そうとしてきた。



 こ、このおっさん……!!



「死ねえっ!!!」



 アタシは破壊するかのごとくおっさんの股間を蹴り上げ、


「アタシのことをまさぐろうなんて百万年早いのよ! このド変態!」


 思いっきり言い放った。



 おっさんは昇天したかのように気絶していた。




 --




 自分自身の手で服を着替えたおっさんは、誘われるかのようにふらふらとアタシの跡をついてくる。

 鬱陶しかったけどどうにか無視して、ようやくアイラの部屋の前に到着した。



 それにしても、アタシの屋敷もなかなか広いと思っていたけど、アイラの家は広いなんてものじゃなかった。アタシの屋敷が五つは入るんじゃないかというほどに広かった。

 おっさんをここに連れてくるまでに高価な調度品を幾つ見ただろうか。



「アイラの家って、まるでお城みたいよね」


「そうですね、サーチャ様」


「……おっさん。そのサーチャ様って言うのやめてくれない? あと敬語も」


「わかりました、サーチャ様」



 全然やめる気がない。

 駄目だこのおっさん……早くなんとかしないと……。


 恐らくおっさんは何かに目覚めてしまっている。早く目を覚まさせなくては。



「もう一度蹴り上げたほうがいい?」


 アタシが尋ねると、


「や、優しくソフトタッチなら……」



 もじもじと身体をくねらせて、とろんとした目でアタシを見てきた。


 気持ちが悪すぎる。全身に鳥肌が立った。



「寝そべりなさい。ここで、今すぐに」


「ここで、ですか?」


「そうよ。優しくソフトタッチされたいんでしょ?」



 おっさんはアタシの命令を受け入れ、何の躊躇いもなく絨毯の敷かれた廊下で仰向けに寝そべる。


 アタシはおっさんの股間には触れない程度に足を浮かせたあと、その足を急激に振り上げ、



「くたばれえええぇぇ!!」



 全力で足を急降下。


 アタシの玉砕作戦はまだ続いていたと言わんばかりに、武闘家さながらのかかと落としをお見舞いしてあげた。

 きっと今のアタシなら、天下一の武闘家になれるかもしれない。そんな一撃だった。



 そして、ずどん! という鈍い衝撃が廊下に響く。振動が周囲に伝わり、近くにあった窓が震えた。



 きっとこのおっさんは、さっき蹴り上げたから付け上がったのだ。だったら逆に振り下ろして地獄へと突き落とす。


 そう、アタシは地獄に突き落としたはず。なのに、なんでこのおっさんは天国に辿り着いたかのような幸せな顔をしているの?



 アタシが不思議に思っていると、ガチャリ、と真後ろのドアが開いた。

 ドアの隙間から顔を覗かせたのはリマだった。



 床に寝そべる幸せそうなおっさんの姿と、息を弾ませるアタシの姿を交互に見比べたあと、



「サーちゃん。こんなところで一体何をしてたの?」


「おっさんにお仕置きして目覚めさせてたのよ」


「ナイトさん、なんか幸せそうな顔で寝てますけど」


「こ、これはおっさんが変態だからであって--」


「サーちゃんも愉悦に浸った表情してるよ?」


「えっ?」


「本当だよ。まさか、サーちゃんも変--

 」


「う、嘘よ! 目覚めたのはこのアタシの方だったの? ま、まあ確かに、このおっさんにお仕置きする瞬間、嫌だとは思わなかった。むしろ、スカッとするからもっとやりたいと--」




 あ、しまった。

 焦って心の声が口に出てしまった。



 すると、リマはじとっとした目をアタシに向けて、


「詳しくは中で話しましょうか?」


 部屋の中に招き入れてきたのだった。




 --




「で? 何をしていたんですか?」


 リマがアタシ達に問い詰める。

 アタシとおっさんは、床に正座させられていた。


「な、なーんにもしてないよなあ? な? サーチャ様?」


「サーチャ、様?」


 リマの声がどんどん怖くなる。怖い。


「サーチャ様っていうのは急にこのおっさんが言い出したことであって、アタシが言わせてるとかそういうんじゃないのよ! 信じて!」



 アタシは必死に弁明した。

 アタシ、絶対にリマに勘違いされてる。

 アタシ、変態じゃない。

 それにこの部屋にはシエルもいる。

 どうにかして誤解を解かないと!



「サーちゃん? それ本当? じゃあ本当はさっき何をしていたの?」


「そ、それは……! こ、このおっさんを男にしてたのよ!」



 そうだ。目を覚まさせて、いつものエロくて男らしいおっさんにしようとした。

 敬語のうえに様を付け、さらには恥じらいのある乙女みたいな言動を振舞っていたおっさんはいつものおっさんじゃない。だから私は、おっさんを男にしていた。これで間違いない。



「よく言えました」



 リマはニッコリと笑ってアタシを褒めてきた。


 ほっ……。やっとリマにアタシがしたことが通じたみたいね。

 でもなんだろう。どこか冷たさを感じたような気がする。さっきの笑顔はいつもの可愛らしい小動物のような笑顔とは違ったような気が……。


 どちらかと言うと、アタシが変態に対して見せる冷たい目を、リマがアタシに対して向けていたような気がする。



 アタシ、変態じゃないよね?



 すると、リマは突然おっさんの近くに行き、


「サーちゃんを言いくるめてあんなことさせるたり言わせたりするなんて最低ですね。どんな言葉を使ってこんな可愛いサーちゃんを誑かしたんですか? ねえ?」



 突如怒ったリマのおっさん尋問が始まった。

 どうやらさっきの廊下での行為は全ておっさんの企てた策略のせいだと考えているらしい。


 おっさんはリマの眼圧に気圧され身震いをしながら、


「ち、違う。今回ばかりは本当に違うんだ。サーチャ様に聞けばわかる」


「ふうん。そんなんだ。じゃあサーちゃんに聞いてみるね」


 そしてリマはアタシを見て、


「さっきはナイトさんに廊下で変なこと要求されてたんだよね? 大丈夫だった? もしかして客室でも何か変なことされたりとかしなかった?」


「リマ、それは違うぞ。俺が要求したんじゃなくて、サーチャ様が要求、いや、サーチャ様が命令してきたんだ。それに変なことを言ってイかせようとしたのはサーチャ様で--」


「ナイトさんには聞いてません」



 リマが一瞥しおっさんを沈黙させる。

 アタシがおっさんにされたことといえば……。



「アタシ……部屋でおっさんに「舐めて」って言われたり、身体をまさぐられそうになったりして……」


「ち、違う! 最初に誘ってきたのはサーチャなんだ! 一緒にイかないとだの俺に脱げだのナニを立たせろだのイけだの--」


「ドン引きです」



 リマがゴミを見るかのような目でおっさんを見る。


「サーちゃんはナイトさんに変なことはしないって知ってるの。むしろ、ナイトさんがサーちゃんに変なことするかもしれないってことは知ってた。ということで、この件については私がたっぷりとナイトさんにお仕置きしますから」


「どうして俺がお仕置きを!?」


「さてナイトさん? 早速お仕置きの時間ですよ?」


「お、お仕置き……。優しくソフトタッチなら……」


「こんな風にですか?」



 パーンッ!!



 リマはおっさんの頬を思いっきり引っぱたいた。傍から見ても痛いというのがわかる。おっさんの頬は赤く腫れ上がり、鮮やかな紅葉のようになっていた。



「さて、お仕置きも終わりましたし、次はご褒美です。キスしましょうか」


「そ、それだけはやめてくれ……!」



 そうして室内で二人のかけっこが始まった。



 前から思っていたけど、リマってキス魔なのかしら? もしくは変態?

 変態が変態を召喚なんてありそうな話だし。


「ちょっと二人とも! アイラさんが寝てるんだから暴れないでください!」


 シエルが二人を止めようとするも効果なし。

 繰り返される終わりのない追いかけっこ。


 と、室内でドタバタ劇が繰り広げられていた時だった--



「お前ら!! 静かにしろっ!!!」



 この日一番の静かじゃない大声。


 その声は、アタシが眠れない夜もずっと聞きたかった声。アタシが待ちわびた声だった。

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