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狩り人101

さて昼食となった訳だが…

この昼食前には肉の腸詰作業が行われていた。

この腸詰に扱われるボアング肉なのだが、様々な部位が存在する。

ただ脂が少ない部位に対しては干し肉へと回される事となるのだが。

干し肉に回さなかった部位である脂の多い肉は赤身と共に微塵切りにて混ぜ合わせ腸詰になる。。

元来、猪系の獣と言う物は脂の融点が低いのか脂をくどく感じない物だ。

いや、脂の無い猪肉など価値が皆無と言える程に下がると言っても良かろう。

この脂肉は臭みも無く甘みさえ感じる程なのだ。

特に今回のボアングクラスともなれば脂身に旨みだけでなく清涼たる香りが薫る。

この脂身があってこそ、少々獣臭い所もある赤身の味が昇華すると言って過言あるまい。

そんな脂身と赤身を刻み詰めた腸詰。

無論、香辛料や香草、茸や苔に水草や藻などを混ぜ合わせたそれは絶品となるであろう。

それは確定と言っても良い。

何故ならば…

「ダリル兄ィ…

 この肉ぅ、美味い、美味いよぉ~

 茸も美味いけどさぁ。

 このシャクシャクが堪んないよぉ~」

シャクシャク?

はて?

うむ、どうやら破竹の竹の子を軽く湯がいて刻んだ物であるらしい。

なかなか芸が細かい様だ。

感動してボアングのステーキを食べ進めるカリン。

この度は薄切りにして両面を軽くソテーした物にて具材を挟み再度焼き上げたと見える。

段々と調理方法が巧妙化して行く様だが…

彼は何処を目指しているのであろうか?

そんなダリルが沁み沁みと告げる。

「う~むぅ。

 此処最近は獲物に恵まれ過ぎていると言えるな。

 随分と贅沢な食事にありついているものだ」

最近の食事を振り返り思い出す。

それを鑑みて、実に自分達が贅沢な食事を摂っている事に今更ながらに気付いたとみえる。

まさに贅沢の極み王侯貴族並みのラインナップであった。

まぁ、それも致し方ない話ではある。

今回のステーキにおいても傷む前に食す必要があるであろう。

無論、燻製肉や燻製腸詰などにも加工はする。

だがステーキなどで食べられる期間は短い。

初夏に近付いている季節であり、夜はまだまた冷えるが昼の気温は高くなってきていると言えよう。

そんな状況にて食材を加工せずに放置すれば傷むのが道理と言う物。

故に新鮮な内に味わえる物は食すべきである。

特に命懸けで狩った者に対する対価であり当然の報酬なのだから…

そんな昼食を終え、加工も何とか進める事が出来た。

ボアング皮の鞣しにおいては、鞣す為の鞣し液が足りない状況へと。

だが幸いな事に、鞣し液が取れる草と木が此処の林には存在した。

草を擂り潰し煎じる。

木の樹液を集め、それを草の煎じ液にて伸ばし、それを一晩置いた物で鞣していくのである。

無論、傷む原因となる肉片や脂片などは丁寧に除去する事は忘れない。

その様な工程を経て鞣し液を塗り防腐処置、つまり鞣し処置となる訳だ。

っと言ってもだ、これは簡易工程に過ぎない。

一時的に傷みを押さえた状態と言えるであろう。

早めに納品して本業の革職人へ引き渡す必要があるだろう。

所詮は猟師が獲物を納品前に1次加工したに過ぎないのだから。

ただ燻し作業の工程を加える事により、より傷みを押さえる事ができる。

故にボアングの革も燻す事に。

ただ…

「ふぅ~む。

 どうせ燻すならば香木にて燻したい所ではあるな。

 彼処へ行けば、まだ香木が得られるやもしれぬ。

 一度行ってみるべきか…」

その様な事を呟くダリル。

あのロアンデトロスを狩った河原近くにてカリンが香木を得ている。

品質が高い品は論外であるが、品質の低い品であるならば燻蒸に用いても良いのではなかろうか?

その様に考えたダリルは、持ち切れずにあの地へ隠した品も此処へ持って来る事を考え始めていた。

肉や腸詰は岩塩窟へ移動させ塩に埋めてしまえば良い。

革も同様に岩塩窟に保存すれば暫くは良かろう。

そう判断したダリルがカリンへ告げる。

「明日なのだがな」

「へっ?」

遅めの夕食に夢中になっているカリンへ告げると、急に話し掛けられキョトンとするカリン。

そんな彼女へ続けて告げる。

「ロアンデトロスを狩った河原へ一度戻ろうと思う」

その様に告げられ、カリンが意味不明といった風に呆然としてダリルを見る。

そんな彼女に苦笑して説明を。

「あの地に隠した品を回収して此処へ持って来るのと、香木が見付かるなら採って来たいのだよ。

 あのボアングの革は極上と言えよう。

 ならば燻しにて香木が使えるなら、より高値で売れる品となるだろうからな」

その様に。

そんな事を告げるダリルに「オイラは?」、そう確認する。

「此処に…」

「やだぁっ!」

「いや、しかしだな」

「やだもん、一緒に行くんだからねっ!」

そんなカリンにヤレヤレと溜息を吐き。

「良かろう。

 ただし行きは空荷の背嚢持参とするが、帰りはおまえにも荷を持って貰うからな。

 荷の大半は此処の岩塩窟へと隠して行くとしよう」

その様に明日の方針を伝え就寝とするダリルであった。

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