狩り人100
そんな昼食を経て作業を進める。
カリンは自分がどの様な食材の下処理を行っているのか、それを身をもって体感した。
故にボアングの内臓に対する下処理を、より丁寧に行う様になっている。
その顔は真剣。
職人かくあらんや、そう譬えに出せる程の様相にて作業を。
明らかに午前中の作業とは真剣味が違い作業に没頭している。
原因は言わずと知れた昼食にあるのだろう。
なにせダリルは、下処理の済んだ内臓にて腸詰を作っているのである。
今朝、ダリルがボアング討伐へ向かう前に話しは遡る。
燻蒸穴より燻製肉と燻製腸詰を移動させた際に、燻製腸詰の一部を味見したダリル。
無論、その際にカリンも御相伴に預かっている。
そして分け与えられた鹿内臓の燻製腸詰の味たるや…
昨夜食べた鹿肉の味は今一だったと記憶しているカリンである。
正直、燻製腸詰の味には期待していなかったのだが…
分け与えられた燻製腸詰を食べた途端に目を剥いた物だ。
全く別物と言って良い代物だったのだ。
無論、先程に食したボアングの内臓に比べると話しにならないレベルと言えよう。
それでも昨夜食べた鹿肉と比べると天と地とでも言うべき味の差が産まれていた。
鹿肉でさえそれだ。
これがボアングの内臓で造られると言うのである。
その味たるや、想像するだけで堪らない物というべきであろう。
そして、その味を決定付ける要因の1つとして内臓の下処理が上げられよう。
それを聞いたカリン。
出来上がったら味見も当然あるとの事。
頑張れば、頑張る程に美味い食材となると言う。
そして味見程度とは言え、その腸詰を食せる可能性が…
ジュルリ。
おーっと、思わず涎がぁ…
そんな餌に釣られたカリンがマジにならぬ筈もない。
いや、食いしん坊か?
そんなカリンの頑張りにてペースも上がりはしたのだ。
故に、内臓は全て腸詰にされ温泉にてボイル工程まで完了となっている。
そんな腸詰は鹿肉を燻蒸している穴の近くにある別の穴へと運ばれた。
此方も鹿肉を燻蒸している穴と同タイプの穴だ。
このタイプの穴は後2つ存在する。
位置的にダリル達が行動の拠点にしている焚き火に近い方の穴から活用している形だ。
つまり拠点焚き火よりも少し遠い穴ではあるが、そこを第2の燻蒸穴と定めボアング内臓腸詰の燻蒸を行う事としたのである。
勿論、内部には破竹棒を設置可能な穴が無数に空いている。
この穴へ切った破竹棒を持ち込み棚を作製。
その棚へとボアング内臓腸詰を吊るして行く。
既にこの穴へは付近で焚いている焚き火の煙の一部が流れ込んではいる。
だが燻蒸するには弱い煙と言えよう。
故に新たに、この穴の前に焚き火を設けて燃やす事に。
そこまでを終わらせたダリルは夕食の支度へと。
カリンは燻蒸する為の焚き火番に。
今夜は留めた解体も進めておきたい。
故に泉にて魚と亀を獲り簡単な調理を行い、これを夕食とした様だ。
魚は程良い大きさの物を串に刺し塩を振り焚き火で炙る事に。
亀は解体して下処理を行った後は鍋へ投入して煮立たせ野菜や雑穀を加えた鍋雑炊とでも言えるしなへと。
時間を掛けずに簡単に調理を済ませた品となっていた。
それでもカリンには大変好評であった様だ。
まぁ、昼間の味は別格との認識での食事である。
(あれは比べたらダメだよねぇ)
そう思っている。
何かのイベントにて3星レストランにて高級料理を食べたとしよう。
それと自宅の家庭料理の味を比べるか否か。
その様な話と考えても良いであろう。
無論、ボアングの内臓料理が比較するのも滸がましいレベルと言って良い程に美味であったのであるが…
故に晩飯に対する不満はカリンには無い。
いや、比べる次元の物では端から無いと言うべきなのであろう。
食事を終え後片付けを。
それを終えたダリルはボアング解体の続きへと入る。
外側からの解体アプローチは不可能。
それを理解したダリルは内側より刃を通す事にて解体を進める。
丁寧に皮を剥ぎ、肉を分離させる。
そんな作業も深夜に及び、流石にダリルも今日は諦める事に。
タダさえ疲れているのに無理は無用との判断を下し就寝へと。
カリンも手伝ってはいたのだが、途中にて船を漕ぎ始める。
まだまだ体力の無い彼女には酷な作業と言えよう。
故に途中にて就寝させている。
そんな既に深き眠りへと誘われているカリンが眠る焚き火前へとダリルも移動。
そして何時もの様に半覚醒状態にて眠りへと付くのであった。
そんなダリルは、昨日の疲れを見せずに朝早く目覚める。
明らかに睡眠は足りない筈で疲れも抜け切れない筈なのだ。
それなのにケロリと疲れも見せずに活動を開始している。
おかしいとも言えるタフネスさである。
若さと言い切って良いレベルを超えているのだが…
超人か?
そんなダリルは恒例の早朝鍛練に勤しむ。
それを終え朝食の支度を。
まぁ、昨夜の残りを処理しただけであるが…
そんな料理が煮える薫りに誘われてカリンが目を覚ます。
此方は十分に睡眠を取り疲れを抜き去って…いない様である。
う~む、体力の無さが露呈した感じなのか、明らかに疲れている。
まぁ、抜けていない程度で行動に支障は無さそうではあるが。
そんなカリンに身支度をさせ朝食を。
その後は解体作業の続きである。
全ての解体作業を終えたのは昼過ぎである。
此処からも作業は続く事に。
ボアング肉の腸詰と燻製。
いや腸詰しない肉の燻製も行う。
その処置を行う前に昼食へと。
そう、ボアング肉のステーキが振舞われる事となるのであった。




