第二十三章 新たなる剣と限界の叫び
アリア・ヴァル・ノクティスの登場により、戦場に一瞬の隙が生まれた。
銀色の短い角と引き締まった戦士の体躯を持つ彼女は、直刀を構え、ガルド・ヴァルハラの攻撃を正面から受け止めた。
「ルリア様をお守りするのが私の役目です!
皆さん、少しでも時間を稼いでください!」
アリアは低く叫び、直刀を素早く振り回した。
「——影月斬!」
直刀が銀色の軌跡を描き、ガルドの側面を狙う。
ガルドは大剣で弾き返しながら嘲笑した。
「魔族の残党がまた一人か。
どれだけ増えようと結果は同じだ!」
零は血に濡れた鬼哭丸を杖代わりにして立ち上がり、荒い息を吐いた。
「アリア……か。
今は……感謝する……」
彼は最後の力を振り絞り、技を放った。
「——桜一閃!」
青白い光が弱々しく閃き、近くの重装騎士を二人切り倒す。
蓮も歯を食いしばり、二刀を構え直した。
「——双影旋風!」
二本の刀が風を巻き上げ、敵の側面を切り裂く。
しかし、動きは明らかに鈍い。
シルフィアとシルヴァーナは膝をついたまま、残った魔力で回復魔法をかけ続ける。
「癒しの緑風……!」
淡い緑の風が六人を包むが、その効果は以前の半分以下だった。
エレナ・ソルティアが杖を高く掲げ、狂信的な声で叫んだ。
「聖なる光よ! この穢れどもをすべて浄化せよ!」
「——聖雷・大浄化の槍!」
空からこれまでで最大の雷の槍が三本同時に降り注いだ。
アリアは直刀を素早く振り、
「——影月壁!」
銀色の光の壁を展開して一本を防いだが、残りの二本がシルフィアとシルヴァーナの近くに落ちた。
爆音とともに地面が抉れ、二人の体が吹き飛ばされる。
「シルフィア! シルヴァーナ!」
ルリアの悲痛な叫びが響いた。
零の瞳に、怒りと決意が宿った。
彼は鬼哭丸を両手で握り、血を吐くような声で叫んだ。
「——桜華散華!」
鬼哭丸が最後の力を振り絞って高速回転し、無数の桜の花びら状の斬撃を撒き散らす。
前衛の騎士十数人を切り裂き、ガルドの足を一瞬止めた。
しかし、その代償は大きかった。
零の体が大きくよろめき、膝をつく。
視界が真っ白になり、意識が遠のきかける。
(……もう……動けない……
だが……まだ……守らねば……)
ガルド・ヴァルハラが大剣を高く掲げ、冷たい笑みを浮かべた。
「ようやく……すべてが終わるな。」
バルド・クロムウェルが戦斧を振り回し、クロード・シルバンが弓を構える。
エレナ・ソルティアの目には勝利の色が浮かんでいた。
六人は、雨と雷に打たれながら、絶望の淵に立たされていた。
アリアは直刀を構え直し、ルリアを背後に庇うように立った。
「ルリア様……私は最後までお守りします……」
その声は力強かったが、彼女の腕もすでに震え始めていた。
戦場に、重く長い沈黙が落ちた。
次の一撃で、すべてが決まる——そんな予感が六人の胸を締めつけた。




