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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
4章・ノグライナ王国での出会い。
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緑髪の女性との再会。

 女王であるリリーを『ポンコツ』と言ってしまった事を頭を下げて詫びると、許す代わりの交換条件としてディーネとスノウの2人と話をさせて欲しいと言われた。


 全面的に俺が悪いので断る事も出来ないので、剣の中に避難していた2人に謝りながらリリーと話して上げて欲しいとお願いした所、嫌そうな口調の念話が返って来た。


(共也……、私達を……リリー……に御機嫌取りの材料として……差し出すの?)

(ディーネ姉、酷いよね。 私達をその女に売り渡すつもりなんだ……クスン)

「い、いや……そう言う訳じゃ」


 2人の悲しそうな念話を受けて俺がどうしていいか分からなくなって、オロオロと慌てていると2人から今度は上機嫌の念話が聞こえて来た。


(アハハ! 嘘だよ共也、しょうがないからその女と話しをして上げるよ。 だからそのエルフの女に、もう少ししたら剣から出て話し相手をして上げるって伝えておいて)

「2人ともすまん……」

(いい……よ…。 その代わり……今度私達とも……ちゃんと、いっぱいお話しして…ね?)

「分かった、今度マリも含めた3人で何処かに遊びに行ったりして沢山話そうな」

(うん。 私達は共也と常に一緒)


 ディーネとスノウの許しを得た俺は、リリーに2人がもう少ししたら剣から出て来て話し相手をしてくれると伝えると、嬉しそうに両手を合わせて喜んでいた。


「本当ですか!? お茶を用意しないといけないわね! メイド長のライナさん、私のお気に入りの茶葉で紅茶を用意して! あとはお茶請けですよね! えっと、えっと他には「リリー落ち着きなさい。 そこまで色々用意されてると逆に落ち着けないから、あくまで普通に会話するように心がけなさい……」うっ……お姉様……はい……少し舞い上がってました、もう大丈夫です!」


 リリーも落ち着いて来たのでそろそろ2人が出て来るかな?と思っていると、ジュリアさんが俺の剣に顔を近づけると先程のリリーの行動を謝罪し始めた。


「ごめんなさいねディーネちゃん、スノウちゃん、落ち着きのない妹だけど悪い娘では無いから嫌わないで上げて? そして、出来る事ならあの娘と仲良くして上げてくれないかな?」

(う……うん……仲良くするのは……良いんだけど。 ……ほどほどに……してね?)

「リリー、大人しく2人と会話出来る?」

「はい、取り乱さないと約束します!」

(お願いね?)


 その後すぐに2人が剣から出て来てリリーの前に現れたが、先程と違いリリーも落ち着いてマリを抱っこしたまま、2人と会話を初めていた。


「……マリ!?」


 未だにマリを抱っこして拘束していたリリーに先程の約束を守ってもらい、マリだけは開放してもらった。


「ありがとパパ。 このままずっとリリーお姉ちゃんに抱っこされたまま過ごさないといけないのかと思った……」

「マリちゃん、私と一緒に会場を回ってくれる?」

「ジェーンお姉ちゃん、良いよ! 行こ!」


 リリーから開放されたマリは、ジェーンと一緒に晩餐会場を一緒に回りながら、テーブルの上に置かれている料理を美味しそうに食べて回っていた。


「共也ちゃん、私もリリーの監視の意味も込めてディーネちゃん達との会話に混ざって来るわ。 また後でお話ししましょ?」

「ジュリアさん、2人の事お願いします」


 ジュリアさんもリリーがまた暴走しないように監視してくれるらしいので、安心してディーネ達を任せる事が出来そうだった。

 もう大丈夫かなと思いその場を離れようともう1度だけジュリアさん達の様子を見ると、楽しそうに会話に花を咲かせていた。


 う~ん。 ダグラス達もまだ来てないみたいだし暇になったな……。


 会場を見渡すとシグルド隊長達も豪華な料理を楽しんでいる様なので声を掛けるのも憚られる……。

 気付くと俺はいつに間にか一人になっていたので、気分転換をする意味も込めて外へと続く扉を開けてテラスに出ると、程よく冷たい夜風が頬を撫でて通り過ぎて行くのだった。


 夜風が気持ち良いな。 そう言えばこの惑星に来てから1人きりになるのは久しぶりだな。

 ダリアの罠にかかって砂漠に飛ばされた時も常にエリアと一緒だったし、リディアの墓参りの時も鈴が一緒だったしな。

 あ、そう言えばエリアに鈴の事を話さないといけなかったの忘れてたな……。

 まぁ、鈴の事はあとで良いか。


(何でよ!!)


 そう頭の中で怒鳴った鈴が結界を纏った足で蹴って来る姿が思い浮かんだが、まぁいつか言うから待っててくれ!

 そう心の中で独り言を呟いた。


「綺麗だな……」


 そうテラスの手すりに寄りかかりながら感慨深げに城の周辺を見渡すと、視界の全てに背の高い木々が広がり、雲一つ無い空には青と黄色の2つの月が輝いている。

 城を取り囲む様に存在する透明度の綺麗な湖は、その青と黄色の2つの月の光を反射している湖面は何とも言えない美しさを表していた。

 その光る湖面を眺めていると、俺はこの世界に来てからの事を思い出しながら独り言を呟いていた。


「俺も遠くまで来たものだよな……。

 最初は千世ちゃんに恥じないように人助けをするつもりだったのに、いつの間にか海を渡り、1国の皇帝とエルフ国の女王様に親善大使として会ったなんて、あの世にいる千世ちゃんに言ったら何て言うかな? 目をパチクリさせて大きな口で笑ってくれるかな?

 もし……、もしもの話しだが……。

 千世ちゃんが生きていたなら、この風景を一緒に見る事が出来たのかな……」


 叶うはずも無い願いを呟く俺自身に対して、笑いがこみ上げて来る。


「クソ! 何でこんな時に涙が……」

「あら? 君はお昼頃に一緒に中庭に来た人じゃない?」


 急に後ろから声を掛けられた為、驚いてしまいそんな考えも一気に吹き飛んでしまった。


「き、君は……」

「こんな所で一人で居るより、仲間達と話した方が沈んだ気持ちも良くなると思うわよ?」

「これは違くて……」


 俺は自分が泣いている事を思い出して、袖で涙を拭った。


 俺に声を掛けて来た人物、それは俺がリリー達に探して貰っていた人物だった。


「ん? 私の顔に何か付いてる?」


 晩餐会に招かれているのか腰まで伸びている緑の髪を少しウェーブさせて、黄色のドレスを纏い胸の谷間が見える様に着飾った女性が腰を屈めながら近づいて来た。


「近い近い! 俺も男なんだから、そんな胸の谷間が見えるドレスで屈まないでくれよ!」

「シャイなんだから……。 ねぇ、君だからわざと見せてるって言ったらどうする? そこの暗がりにでも連れ込まれちゃうのかしら?」

「俺がそう言う事をしないって分かっててそう言うのは、ちょっと卑怯じゃ無いか?」

「そう? 会ったばかりだけど君の事を信頼してるんだから、そんな怒った顔をしないの! 分かった?」


 彼女は俺の額を人差し指で軽く押した上で微笑んでいた。


「あんた変わってるよな……」

「そう? 初めて言われたかも♪ で? 君は何でこのテラスに1人で居て、しかも泣いていたのかな?」

「会ったばかりのあんたに言う事じゃ無い……」

「会ったばかりだから気兼ねなく話しを聞く事が出来るんじゃないか。 お姉さんが全て受け止めて上げるから、心の中にある物を全て吐き出しちゃいなさい!」

「お姉ちゃんって……。 まぁ、誰かに聞いて欲しかったから愚痴を言うが良いんだな?」

「ムフフ。 ドンと来なさい!」


 嬉しそうに微笑む彼女に何故か俺はこの人になら俺がずっと思い悩んでいた事を言っても大丈夫かな?と思い、気付いた時には全て話し終わった後だった。


「そう……。 小さい頃に初恋の人に命を助けられてその人に恥じない人生を歩もうと思ったけど、この世界の美しさを見て唐突にその娘の事を思い出したと……。

 意外と重たい話しだったから、お姉ちゃんちょっとビックリ!」

「あんたが話してみろって言ったんじゃないか!! あ、そうだ、俺はあんたを探してたのを忘れてた」

「ん? 会ったばかりの私を?」

「そう、ちょっと聞きたい事があったから探してたんだ」

「ふぅん? 聞きたい事って? 答えれる質問なら答えて上げるよ?」


 大分話が脱線してしまったが、ようやくこの女性から……女性?


「答えてもらう前にさ、今更だけど君の名前を教えて貰っても良いかな?」

「あれ? 君に言って無かったっけ? ふふ~ん♪ しょうがないな、私の名前は【シル】よ、家名は無いからただのシル。 気軽に呼んで」

「分かったシルよろしく。 俺の名は最上共也だ、親しい人からは共也って呼ばれているからそう呼んでくれ。

 それでだシル、中庭で話していた時からずっと聞きたいと思っていた事があったから、君を探していたんだ」

「そうなの? 私ってどんな事言ったっけ?」

「えっと確か『暗黒神が人を助ける事は決して無い、もし助けてくれる事があるとすればそれは家畜を守る牧場主だから』って所だったかな」

「ああ、それか。 その言葉の何処が気になったの?」

「いや、暗黒神と言う存在を知っている者しか言い切る事が出て来ない台詞だったから、ずっと心の中で引っかかっていたんだ……シル?」


『暗黒神』と言う言葉が出た途端に、先程まで人懐こい笑顔で微笑んでいたはずのシルは感情の抜け落ちた様な表情で、ジッと俺を眺めたまま視線を逸らそうとしなかった。


「シル、一体どうし」

「あのクソ野郎の情報が欲しいって……。 君はあいつの情報を私から得たとして、何をするつもりなの?」

「シ、シル……?」


 今のシルは俺が何か間違った事を言えば容赦なく殺す。 そんな雰囲気が溢れ出てまさに抜身のナイフを首筋に当てられている様な感覚だった。


 暫く無言が続き、ようやくシルが喋ると先程の雰囲気は霧散して、会った時の彼女に戻っていた。


「ああ、ごめん、ごめん。 ちょっと嫌な事を思い出してね。

 クソ暗黒神の事だっけ? 詳しく知ってるよ。 共也君、君はあいつの事で何が知りたいのかな?」

「俺が知りたいのは……」


 俺はシルに暗黒神の情報が載っている文献が全く無い為、アポカリプス教団が俺達転移者の殺害しようと企むから、常に後手後手に回ってしまっている事。

 そして何故俺達異世界から来た者達を殺害しようとするのか。

 それは魂を暗黒神への生贄として捧げようとしている事などを、なるべく詳しく説明すると段々シルの表情が曇って行った。


「何て馬鹿な事を……。 共也……。 あなたの質問に答える前に、聞きたい事があるんだけど良いかな?」

「何だい?」

「君達の住んで居た世界から呼ばれた人の中から、アポカリプス教団に殺された、または入信したって人はいる? いるなら正直に答えて」

「いや、今の所は居ない……と思う。 シンドリア王国にまだ何人も居るから今は分からないけど、俺の幼馴染達は全員生きてこの国にいるよ」

「そう……。 なら良かったわ……。 ごめんなさい、共也が聞きたいのは暗黒神の情報だったわね」


 シルは一呼吸置くと、真剣な顔で俺を見ると暗黒神の情報を語り始めた。


「私も沢山の転移者達の人に正確に伝えて欲しいから、下手に濁さずに正直に言うわね?」

「ああ、頼む……」

「あなた達の様に別世界から呼ばれた人間を殺して、その魂を暗黒神に捧げると力を取り戻す事になってしまう事は確かよ。

 あなたも考えた事があるんじゃない? この世界に呼び出された事でスキルを付与される。 だけど、その元の力はどこから来たのかってね?」


 シルに指摘された事は、俺もこの世界に来てからずっと考えていた事だ。

 地球からこの世界に呼び出された俺達は、大なり小なりこの世界で生きている人達以上の強力スキルを無条件で取得している。

 召喚されただけ。

 この世界の人達が沢山鍛錬して得たスキルより、さらに強力で様々なスキルを付与してくれる力の出所に疑問を感じていたのは確かだ。

 シルはその力の出所が何処か、知っているのだろうか。


「シルは、スキルを付与してくれる力の出所を知っているのか?」

「ええ、知ってるわよ。 この世界を作った女神様が、あなた達みたいに異世界から呼び出された人がすぐに死なない様に、スキルなどの力を付与してくれてるんだもの」


 シルの言葉に、聞き逃してはいけない台詞がサラっと紛れ込まされていた。


「この世界に女神様なんているのか!? でもさシル。 俺もこの大陸にある街などを結構回ったけど、どこの街にも女神を崇めてる場所なんて無かったぞ?」

「そうなの? やっぱり今の人類は女神様の事をすっかり忘れちゃったのね……。

 女神様はね、この世界の人間に自分の事を考えられないように少し封印を施しているのよ。

 だからこの世界に神を崇める場所はすでに存在しないし、女神様に頼ろうとする考え自体が沸かない、だから暗黒神の様に分かりやすい神に縋りついたのかもしれないわね……」


 何故この世界を作ったはずの女神様は自分の事を考えられない様に封印を施したのか、その答えが分から無いでいると、シルは俺が女神の事を考えていると察した様で、少し顔をしかめてその答えを教えてくれた。


「昔の女神様は良く困った人の前に現れて、願いを叶えて上げたりしていたの。

 でもね、長い年月が経って人の生活に余裕が出始めると、女神様にお願いする内容が変わり始めたわ……。

 他者より上に、他者より豊かに。

 そんな傲慢な願いを叶えて貰おうとして、皆が女神様に殺到し始めたの。

 そして、一部の国の権力者が『我が国こそ、女神様に願いを叶えて貰うべき正当な国だ!』と権利を主張し始めた事でそれを許す事の出来ない国同士で小競が発生。

 そして小競り合いからから闘争に。

 そして闘争から大勢の人間を巻き込んだ戦争に発展してしまったわ」


 女神が作った子供達が自分を争いの種として殺し合う……。 その惨状を見た女神様の失望感はどれ程だったのだろう……。


「共也も想像出来たようね。 そう、自分を巡って殺し合う人類に一番悲しんだのはもちろん女神様だったわ。

 そして、そんな戦争を繰り返す人類に対して女神様は決断した。

 この世界の人間に自分の事を考えられないように封印を施そうと……ね。 でも、何かあった時の為に潜在意識に女神の名前を刻む事は忘れずに……だけどね」


 シルが悲しそうにその女神様の話を語っているのを見て、俺はずっと違和感を覚えていた


「シル……。 その話しは本当の事なのか? そして、何で君がその事を知っているんだ? 記憶を女神さまによって封印されているのなら、君が覚えている事がまずおかしいじゃないか……」


 俺は女神様が、自分の事を忘れる様に記憶を封印したと言う悲しい話を聞いて、何故シルにその記憶があるのか不思議でたまらず確かめずにはいられなかった。


「ふふ、何故私が女神様の名や記憶の封印が施されていないのか、それはまた後日話して上げる。

 それに今は女神様と暗黒神の話しを聞きたいのでしょう?」

「それはそうだが気になるじゃないか……」

「男の子なんだから我慢なさい!」

「子って歳じゃ無いんだが……」

「細かい事は良いの! えっと何処まで話したかな……。 そうだ女神様が何故記憶を封印したのか、だったわね。

 でも共也、勘違いしちゃいけないのは女神様は人類の事を見捨て訳じゃないって事よ?」

「そうなのか? 記憶を封印したって事は見捨てたものとばかり……」

「違う違う。 女神様は人を見捨てたりなんてしてないわ。 むしろ今でも彼女は人を愛しているわ。

 そして人と言う種がもう少し自分の欲望を抑制出来る様になったその時は再び封印を解除しようとして、その時を女神様は首を長くしてまっているのよ。

 だけどそんなお優しい女神様でもまさか人間の後に作った獣人、そして魔族によって劣勢に立たされる事になるとは思いもよらなかった。

 だから、人族側が少しでも劣勢を覆せるようにと、異世界からあなた達を呼び寄せた上で協力なスキルを1人1人に付与して回ったのよ。

 実際あなた達みたいにこちらの世界に呼ばれた人達は、現地の人達よりスキルが強力だと気付かない?」


 確かに俺の共生魔法も、最初は発動させる事すら出来ないスキルだったが、今はディーネ、スノウ、そして新たにマリが加わった事ですでに3種の魔法を使う事が出来る様になっている。

 こうして見ると俺のスキルもかなり強力なのか?

 あ、いや、待てよ……。

 こうして女神様の力で魂にスキルを付与されているのだとすれば、その魂を食らった暗黒神は……。


「どうやら気付いた様ね共也。 そうよ、女神様の力の一部を宿したあなた達の魂を暗黒神が食らう事で、女神様の力を取り込んで弱体化している力を取り戻そうとしてるのでしょうね」

「取り戻そうとして? 暗黒神は弱っているのか?」

「そうよ。 女神様がこの惑星アルトリアを創造し終えた頃に、この世界を乗っ取ろうとした一柱の邪神がいたわ。

 でもその邪神は女神様に完膚なきまでに叩きのめされた上に、幾重にも体を分けられた状態で厳重に封印されたから大部分の力を失ったの」

「まさかその邪神が?」

「そうよ、その封印された邪神が暗黒神よ」


 シルが話してくれた事は恐らくこの世界に住む誰もが知るはずの無い、遥か昔の神話時代と呼ばれるくらい昔の話しのはずで、俺はその話を聞いてさらにシルに対して違和感がぬぐい切れずにいた。


「シル。 どうして君は誰も知らないはずの、遥か昔の神話時代の話しを詳しく知っているんだ? それに君は言ってたじゃないか、この世界に住んでいる人類は女神様の事を考えられなくなっているって……」

「ふふふ、どうしてだと思う? ここで答えて上げても良いんだけど、今はまだ自分の足で答えを探す時間だと思うの。

 クソ暗黒神の正体に関しては答えて上げたんだから、私の事を知りたいならもう少し自分達で考えて?

 全ての答えを聞いて一つの道を決めてしまうより、様々な可能性を足掻いて探してくれた方が女神様も喜ぶはずだよ?」

「それはどう言う意味だ?」

「それも、自分で考えて答えを導き出すべきだね。 さて……君と話すのは楽しいから、もう少し話していたかったけど時間だね」

「シル、また会えるよな?」

「えぇ、必ず近い内にまた会う事になるでしょうから、その時にでも私の正体を君の口から聞かせてくれると嬉しいかな」

「分かった……。 君の正体に関しても考察しておくよ。 それで良いかい?」

「それで良いわ。 期待してるわ。 それじゃおやすみなさい、共也」


 このままシルを引き留めて女神様、暗黒神、そしてシル。 その全ての答えを聞いてしまいたい衝動にかられるが、きっと彼女は答えてくれないだろうな……。


「……分かった。 俺も沢山考えて答えを導き出すよ。 でも、シルに聞いた女神様の事を、俺の周りい居る人達に話しても良いのか?」

「構わないよ。 でもこの世界の人間に伝えても、すでに女神様の話しが失伝してもうどれだけの時間が立ってるのか分からないから、封印が悪さをするかもしれないから話す時は気を付けてね?」


 シルは俺に女神様の話をする時の注意点を語ると、両手を後ろに回して前かがみになると、後ろに下がり始めた。


「シル、もう行くのか?」

「うん。 そんな悲しい顔しないの、またすぐ会えるからさ」


 シルがテラスの角を曲がろうとしている所で、俺は肝心な事を聞いてない事に気付き彼女に再び声を掛けた。


「シル! 女神様の名前は何て言うんだ!?」


 シルが『しまった!』と言う顔をして俺に振り向くと、女神様の名前を両手を口に添えて教えてくれた。


『ディアナよ! 創造の女神ディアナ様! この優しい女神様の名前を忘れないであげてね!』


 その言葉を最後にテラスの角を曲がったシルの気配が消え去り、テラスに居るのは再び俺だけとなっていた。


(創造の女神ディアナ様か。 俺達地球組だけでも、名前を共有しておくべきだな)


 こうしてシルによって、アポカリプス教団が信仰している暗黒神の情報を得る事が出来た俺だったが、暗黒神と女神ディアナ様の情報をどうやって晩餐会場に居る皆に伝えれば良いのか、グルグルと頭の中で情報を整理しながら、テラスから晩餐会場へと戻るのだった。


 

ここまで読んでくれてありがとうございます。

緑髪の女性の名前はシルと判明し、暗黒神の正体も少し判明しました。

次回は“女神ディアナの情報共有”で書いて行こうと思っています。

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