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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
3章・親善大使として親書を届けに。
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大海の加護を。


 命からがら変異したゴブリンキングを倒す事に成功したダグラスだったが、大量の出血が影響し今にも呼吸が止まるんじゃないかと言う程フラフラの状態に陥っていた。 


「ダグラスしっかりしろ! エリア、急いで回復魔法を掛けてやってくれ!」

「は、はい! ダグラスさんしっかりして!」

「す、すまねえ……」


 横になり治療を受けたのおかげで、徐々に荒い息も落ち着き始めたダグラスだったが、血を流しすぎた事実は変わらず未だに予断の許さない状態だった。 


「やああああ!!」

「グゲ!!」


 そんな瀕死のダグラスが治療を受けている周りでは、ゴブリンキングと言う統率者を失った事でバフ効果を失い弱体化したゴブリン達が、ジェーンや魅影達の奮闘により次々と討ち取られていた。


 皆が動いてくれているからゴブリン達は何とかなりそうだが、魔法に頼り切りで輸血が存在しないこの世界ではダグラスの命を繋ぎとめられるかは、エリアの回復魔法にかかっていた。


「ダグラスさん、気をしっかり持って!!」


 傷の治療は終わっているはずなのに、ダグラスの呼吸が浅く、そして早くなって行く。


「ダグラスさん逝っちゃ駄目!」


 回復魔法を受けても今まさに命の灯が消えようとしているダグラスの様子を、ジッと見続けていたメリムの体が光に包まれた。


 そんな、光に包まれたメリムは今にも意識が途切れようとしているダグラスの横まで移動すると光が収まり、そこには紫の長い髪を持つ大人の女性が立っていた。


「メリム……、なのか?」


 ダグラスのその呟きに頷くと、メリムは無言で治療を受け続けているダグラスの額に自身の額を合わせた。


「ぐ、あ、熱い……。 メリム、お前何を……」


 合わせた額から何かの力が注ぎこまれているらしく、ダグラスは自身の体が異様に発熱している事を感じ取っていた。


「熱い……! メリム、止めてくれ!!」


 苦しむダグラスを見かねて止めに入ろうとしたが、エリアに制止されてしまう。


「エリア、何故止める!」

「もう少し、もう少しだけ待って共也さん。 もしかしたらダグラスさんは助かるかも!」

「はっ? 助かるって、現にダグラスは苦しんでいるじゃないか!」


 そう抗議した所で、ダグラスが急に脱力し無言になってしまった為、エリアを除く全員が絶句する。


 まさか!?


 だが、そんな俺達の予想を裏切るかのようにユックリと額を離したメリムは、ダグラスの頭を持ち上げ愛おしそうに膝枕をするのだった。 


「メリム、ダグラスの顔色が良くなってるけど、何かしたのか?」


 そう、俺達全員がダグラスは死んでしまったと思い込んでいたが、何故か顔色が良くなり幸せそうにスヤスヤと寝息を立てていた……。


 ただ単に気絶しただけだった様だ……。


「えぇ……、私の残った生命力を分け与えました。 これでもう大丈夫なはずですが、念の為そのまま治療は続けてください」

「は、はい!」


 メリムの助言に従い回復魔法を掛け続けていたエリアは、ダグラスが薄っすら目を開けた事に気付き声を掛けた。


「ダグラスさん、意識はありますか!?」

「う……、エリア嬢……? ここは……、ん? 頭が妙に柔らかい……って、うぉぉ! あんた誰だ!? それ以上に、何で俺はこんな美人に膝枕をさるイベントが起きているんだ!?」


 現状が理解できないダグラスは慌てふためき体を起き上がらせようとするが、先程まで出血多量で死にかけていた事もあり、眩暈を起こして再びメリムの膝枕に収まるのだった。


「駄目だ、立ち上がれねえ……」

「ぷっ!」

「共也、お前今笑いやがったな!?」

「す、すまない。 だけど、メリムの膝の上で慌てふためくお前の姿が可笑しくて……クックッ……」


 普段俺達を揶揄って遊ぶダグラスも、自信がネタにされて全員に笑われている今の状況は流石に恥ずかしいらしく顔が真っ赤に染まっていた。


「手前等、後で絶対に……って待て、メリム?」


 どうやら意識が朦朧としていたダグラスは、ようやく自分に膝枕をしながら微笑む美女が、海龍のメリムだと知り頬を紅く染めるのだった。


「そうだ。 私は人化の術を使い、人の姿になった海龍のメリムだよ」


 そう言いながら優しく微笑むメリムだったが、その顔は何処か寂しそうだった。


「ダグラス、お前が体を張ってゴブリン達から我々を守ってくれたお陰で、沢山の命が助かった……。 そんな私達が、そなたの頑張りに報いてやれる方法は【大海の加護】を与えるくらいしかないのだが……、それで良いか?」

「メリム……」

「何だ? 我々の加護では足りないか?」

「いや……。 そもそも大海の加護って何だ?」

「まずはそこからなのね……。 大海の加護とは、分かり易く言うと全ての状態異常を全て無効化するスキルの事よ」

「そりゃすげえスキル、俺が貰っても良いのか?」

「むしろお前に貰って欲しい。 な、皆」


 そう問うたメリムの視線の先には、沢山の海龍達がダグラスを見詰めながらその長い首を振り頷いていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――

【名前】

・ダグラス=相馬


【性別】

・男


【スキル】

 ・両手武器

 ・身体強化

 ・大海の加護(全状態異常無効)


――――――――――――――――――――――――――――――――


「じゃあ、ありがたく頂く事にするよ。 なぁメリム、それは俺の仲間達にも授ける事は出来ないのか?」

「すまないが、それは無理だ……。 一族の掟で大海の加護は、私達が命を分け与えても良いと思える人物にのみ授けるべし、ときつく言われているんだ。 悪党などに、このスキルをポンポン授けていたら大変な事態に陥るからでしょうね」

「だが……。 俺はお前の首を切り裂いて……」


 そう言われ自分の首に付けられた傷を触るメリムだったが、ダグラスを憎むような仕草は一切取っていなかった。 


「そうだな……。 いくら生命力の強い海龍と言えど、この傷ではそれほど長く生き続ける事は出来ないだろう……。 だが、私がこの後死ぬ事になったとしても、海龍達が恩あるお前達に報復するような事は絶対に無いから安心して……」


 己の膝に頭を乗せているダグラスを愛おしそうに優しく撫でるメリムが、自身の死を受け入れている事を察した。


「馬鹿野郎……。 なら、俺なんかに生命力を分け与える真似をしなければ、お前は生き続ける事が出来たって事じゃねえかよ……」

「気付いたのね……。 でもね、死にかけているあなたを見ていたら、私に残った生命力をあなたに託す事が一番良いと思ったのだからしょうがないじゃない……」


 涙が溢れて止まらないのだろう、腕で顔を隠すダグラスを安心させる為に、メリムは困ったように、だが優しく微笑んだ。 


「ダグラス、あなたはきっと重要な使命を帯びている。 だから……私の分も生きて……」                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                     


 そう言い優しく微笑むメリムだったが、彼女の顔色が徐々に悪くなり始めているのを近くで見ているダグラスがいち早く知る事となる。


「メリム……。 俺は……。 そうだエリア嬢、俺の体調も大分安定したから、メリムに回復魔法を掛けてくれ!」

「それは構いませんが、大丈夫なのですか?」

「こうやって意識もハッキリしてるし貧血だけは魔法で治せないなら、重傷のメリムに回復魔法をかけて上げてくれ!」


 どうしようか悩むエリアだったが、俺に視線を送り治療を中断しても構わないか確認を取って来たので、俺は当人が希望しているのだからと頷いて了承するのだった。


「分かりました。 ですが、まだ治療を終えていないのですから、決して動かないで下さいね?」

「分かった……。 エリア嬢、メリムの事頼む……」

「ふぅ……。 メリムさん、では治療を開始しますね」

「あぁ。 頼む」

「【ヒール】」


 回復魔法が発動した事で見慣れた緑色の光りがメリムを包み込むが、その光景を見ていた全員もそうだが回復魔法を発動させたエリア自身が一番違和感を覚えていた。

 いつも見慣れている優しく包み込む様な光は弱く、しかも一番治さなければならない首も全く治療されていない様子だった。


「な……。 問題無く回復魔法は発動しているのに、何故……」

「エリア嬢、あなたのせいでは無い。 恐らく回復魔法で増幅する生命力が、私にはもう残っていないのでしょう……」

「そんな……」

「嘘だろメリム……」


 どうにか出来ないか助けを求める様に海龍達に視線を向けるダグラスだったが、海龍達は首を垂れ下げて視線を逸らしてしまう。


 それは海龍達に取っても、どうする事も出来ない状態なのだと言う事を示唆していた。


「メリム。 お前はじゃあこのまま……」

「お前を助ける事が出来たのだ、私に悔いは無いよ」

「駄目だ! そんな事は俺が許さない!!」

「だが、この傷を治さない事には……」

「なら、私もその傷を治す手助けをすれば良いのかしら?」

「ジュリアさん!?」


 そう、エリアと共に回復魔法を掛ける為に現れたのは、赤い結界に覆われた途端にケントニス帝国の冒険者ギルドに向かっていたジュリアさんだった。


「ごめんなさい、冒険者ギルドのゴタゴタを収めて居たら来るのが遅れたの」

「ジュリアさん、メリムが死にそうなんだ、何とかならないか!?」

「話はハーディ皇帝から聞いて大体の事は把握してるわ。 だから、私から提示出来る策は1つよ」

「ジュリアさん、メリムを助ける策があるんですか?」

「有るわ。 ねぇメリムさん、少しだけ私の生命力を分け与えて回復魔法が効きやすくしますがよろしいですか?」

「それは願ったり叶ったりだが……。 ハイエルフであるあなたが他者にそんな施しをしたと本国に知られた場合、長老共が黙っていないのではないか?」

「あら、今の私は冒険者ギルドの受付嬢であるただのエルフである以上、本国の老害共の命令を聞く義理はないわよ?」

「老害……。 ふふ……。 そう言う事なら、少しだけあなたの生命力を頂いて良いですか?」

「はい、正直でよろしい。 行きますね【生命力譲渡】」


 白い光に包まれ気持ち良さそうにするメリムだが、首に付いた傷が治る様子が無い。


 もう駄目なのか……。


 皆がそう思い始めた時だった。 今まで剣の石の中で静かしていたマリが急に飛び出してくると、片ヒレを上げて挨拶をするのだった。


(きゅ~!)

「この気配は、ダグラス達の乗ったあの船で運ばれていた卵か……。 そうか無事に孵化する事が出来たのだな……良かった……」


 無事孵化出来た事実を知り胸を撫でおろすメリムは、マリに優しく微笑んだ。

 すると、ヒレをジュリアさんとエリアの背に乗せたマリが何かを呟いたと思った瞬間、2人の体が青い光に包まれた。


「え、これは……、マリちゃんの魔法?」

「え?え? ジュリアさん、この現象ってマリちゃんが起こしているんですか???」

「そうだとしか思えないけど……、効果は一体……」


 そんな2人の疑問は、直ぐに解消される事となる。 


「メリム、首の傷が……」

「え? あ……」


 ダグラスの指摘を受けて気付いた、あれだけ回復魔法を受けても効果が無かったメリムの傷が逆再生をする程の速度で塞がって行くのを。


「これは……。 まさか、この子の魔法は魔法自体に干渉する魔法……なの!? そんな魔法聞いた事無いわ……」

「マリちゃん、凄い!」

(きゅ~~♪)


 どうやらマリが発動した《海流魔法》は、魔法自体に干渉珍すると言う珍しい魔法らし、ジュリアさん曰く恐らく長い人類史の中で初めてでは無いかとの事だった。


 そして、ジュリアさんの生命力を補填する魔法と、エリアの回復魔法に干渉した海龍魔法のお陰で効果が跳ね上がった結果……。


「メリム首の傷が完全に塞がった……。 良かった……」

(きゅ~~!)


 回復魔法である緑色の光が収まると、そこには首の傷が綺麗に治ったメリムが居た。


「加護を授けたのに生き残ってしまったな。 ふふ、これじゃ恰好が付かないじゃないか」

「恰好を付ける事が出来るのも、生きてればいればこそじゃないか……。 今は生き伸びた事を素直に喜ぼうぜ、メリム」

「それもそうだな、ダグラス……」


 頬を染めながらそう言うメリムは、未だに貧血により身動きの取れないダグラスに対して唐突に唇を重ねるのだった。 


「んん!? んーー!?」

「きゃーーーー!!」


 女性達の黄色い声が響き渡る中、最初何が起きたのか理解出来無かったダグラスだったが、メリムの顔が至近距離にある事で、ようやく自分が何をされているのか理解した様で、逃れようと体を捩る。

 だが、悲しい事に弱ったダグラスでは自身の頭を挟むメリムの腕力から逃れる事は困難らしく、逃げられないと悟ったダグラスは暫く続く口づけを受け入れるのだった。 


 そして、タップリ2分近く接吻したメリムはようやく満足したのか、ユックリとダグラスから離れた。


「ぷは! お前急に何をするんだよ!? 窒息死するかと思っただろうが!」

「嫌だったか?」

「嫌……じゃねえが……」

「ふふ~ん♪ なら良かった」

「何がだよ……」


 嬉しそうにする彼女の口から出て来た台詞に、全員が驚きの声を上げた。


「いやな。 ここまで我々の為に動いてくれたお前に与える報酬が、大海の加護だけと言うのもどうなのかと思ってな」

「強力すぎるスキルを貰ったんだから、俺としては十分満足してるぞ?」

「お前達のバックには大国がいる以上、金銭を貰った所で満足はしないだろう?」

「メリムさんや、人の話はちゃんと聞こうか。 俺は十分満足してると言ってるんだが?」

「そこでだ、お前が喜ぶものは何かと考えた結果、1つの結論に辿り着いたのよ! そうだ! 私がお前の嫁になれば良いのだと!」

「はあああぁぁ!?」


 普段から何時か美人な嫁さんを貰うと豪語していたダグラスだが、海龍の、しかも、自身が殺し掛けた相手に求婚されるとは思ってもみなかった。


「その様子……。 私が嫁になるのは、嫌……なのか?」

「は!? いやいやいやいや、嫌とかどうとかじゃなくて、俺としてはお前がもし本当に嫁になってくれるなら大歓迎ではあるんだが……」

「なら何が問題だと言うのだ?」

「メリム、お前は自分の子供を取り返そうとして襲って来たって事は、旦那が居るって事だろ? 堂々と浮気宣言したらいかんでしょ!?」

「……何だと?」


 その台詞の何が気に食わなかったのか分からないが、メリムはダグラスの頬を思いっきり捻った。


「いたたたた!」

「お前は、私達がケントニス湾に集まった時に言った台詞を覚えていないのか? 私はこう言ったんだぞ『私達海龍達は子供を大切にする、それが自分の子供でなくてもな』とな」

「じゃあ、お前は……」

「そうだ、私はまだ未婚だ!」


 青筋を浮かべながら微笑むメリムの迫力を前にして、未だに膝枕されているダグラスはそれ以上何も言えなかった。


 唐突に突き付けられた【結婚】と言う名の圧力にダグラスが戸惑っている中、指を差しながら面白がる奴がいた。 そう、鈴だ……。


「あはははは! ダグラス、まるで蛇に睨まれた蛙じゃん! 結婚おめでと~!! メリムさん、私達一同はあなたを祝福しますよ~」

「あ、ありがとう!」


 そして、鈴は横になり呆然としているダグラスに視線を落とすと、その滑稽な姿に耐え切れず噴き出した。


「ぷふ!」 

「てめぇ!!」


 我慢の限界に達したダグラスは鈴の頭に拳骨をお見舞いしする為に立ち上がろうとするが、やはり血を失いすぎた体では満足に起き上がる事も出来なかった。


「鈴。 後で絶対にお前の頭に拳骨を落とすからな、覚悟しとけよ!!」

「そんな恰好で凄まれても怖くないで~~す! それに、物理攻撃で私の結界を超える事が出来るのかにゃ~~?」


 後で絶対に鈴の頭に拳骨を落としてやる、と心の中で固く誓うダグラスだった。


 そんな和気あいあいとした空気をぶち壊したのは、掃討戦に参加している菊流の声だった。


「ごめん共也、そっちにゴブリンジェネラルが2匹行ったわ!」

「分かった。 ディーネ、スノウ、迎え撃つぞ!」

(うん)(おっけ~~)


 一度攻撃を受け止めて両肩に乗っている2人にカウンターを叩き込んで貰おうとしたのだが、2匹のゴブリンジェネラルは俺を無視して横を通り過ぎて行った。


 しまった、奴の目的は身動きの取れないダグラスか!


 ジェネラル達の目的を察した俺は即座にディーネとスノウに指示を出し、氷の礫で1匹のジェネラルが持つ武器を弾き落とす事に成功したのだが、奴は地面に刺さっていたダグラスの()()()()()()両手剣を手に取った。


 その瞬間。


「ぐ、げ!!」


 何故か苦悶の表情を浮かべたジェネラルは、そのまま動かなくなり白い灰となった事に全員が唖然とするのだった。


「……は?」


 あまりにも衝撃な光景を見た事で一瞬固まってしまった俺達だったが、残されたジェネラルはむしろそれを好機と捉えダグラスを殺すべく距離を詰めた。


「しまった!!」


 間に合わない!と誰しもが思った瞬間、目をバイザーで覆った青髪の少女がダグラスとジェネラルの間に立ち塞がった。


「カトレア、止めろ!」


 悲鳴に近いハーディ皇帝の叫びを無視して、その少女は腰に帯びていた剣を手に取り目にも止まらぬ速度で振り抜いた。 


「ぐがあぁぁぁぁぁ!!」

「………………」


 剣を鞘に納めたカトレアに呼応するかのように、ジェネラルは拳大の魔石を1つ残して消滅するのだった。


「え……。 カトレア姫がジェネラルを倒した……のか?」

「はい、私がジェネラルを倒したんですよ。 共也さん♪」

「はぁ~~。 肝を冷やしたぞカトレア……。 お前の実力は私やシグルドも認めているが、お前がゴブリンジェネラルの前に立った時の私の気持ちも少しは考えてくれんか……?」

「もう、お父様ったら過保護なんですから! 皆さんが危なかったのですから、こんな時くらい力を振るっても良いではありませんか!」

「ほう? 私が過保護と言うのなら、此度の行動に対して執務室でジックリと話し合わないとなぁ、カトレア?」

「お父様の説教は長いですから、遠慮しておきます!」

「良いから後で私の部屋に来るんだ、これは決定事項だ!」

「ぶ~~~!!」


 頬を膨らませながら、父であるハーディ皇帝に抗議するカトレア姫に驚くが。


 だが、それ以上に俺達はダグラスの黒く染まった両手剣を握ったジェネラルの1匹が、苦しんで消滅してしまった事の方が気になっていた。


「共也……。 何でジェネラルはダグラスの両手剣を握っただけで死んだと思う?」

「俺が分かる訳無いだろ……」


 誰もがダグラスの両手剣に近づく事を敬遠している中、ある事に気付いたメリムがダグラスに剣を取るようにと提案する。 


「いやぁ……。 流石に握っただけでゴブリンジェネラルが消滅してしまう剣を、握る勇気は俺には無いかなぁ……」

「むう、私の言う事が信じられ無いと言うの?」

「いや、信じる信じないとかそう言う話しじゃ無く手だな……。 そうだ、鈴!」

「ん? 私?」


 どうやらダグラスは、鈴に結界魔法で両手剣を持ちあげて貰いたいらしい。


「う~~ん。 まぁ、誰かで実験させる訳にはいかないししょうがないか……」


 結界術を使い手を作った鈴は、地面に刺さっているダグラスの両手剣に触れさせた瞬間、弾ける様な音を残して消え失せるのだった。


 予想はしていたが、あまりの出来事に呆然とする鈴。


「え……。 ダグラスの両手剣に触れた瞬間、僕の結界が吸収されたんですけど?」

「ん? 破壊されたんじゃなくて、吸収されたのか?」

「うん。 ねぇ共也、この効果ってもしかしなくても……暴食……だよね?」 

「だなぁ……。 もしかして、あのゴブリンキングの黒い宝珠が砕けた時に噴き出た黒い煙の影響を受けて、ダグラスの剣にスキルが宿ったって事か?」


 その結論に至った瞬間、ダグラスは痛む体を押して体を起き上がらせる。


「マジで? 鉄志が作ってくれた、俺専用の両手剣がぁ……」


 ガックリと項垂れ悲しむダグラスだったが、メリムは俺とは違う何かに気付いた様だ。


「いや……。 もしかしたら、ダグラスは問題なくあの両手剣を使う事が出来るかも……」

「は? メリム、どう言う考えに至ったら、俺があの両手剣を使えると思ったんだ? 下手したら俺、あの両手剣を握った瞬間食い殺されるんだが?」

「恐らく大丈夫だろう。 ダグラス、お前に授けた大会の加護の効果を思い出してみろ」

「確かに全状態異常無効って書いてはあるけどさぁ……。 暴食って状態異常の枠組みなのか?」

「そ、それは……」


 さすがに加護を授けたメリム本人であっても、遭遇した事の無いスキルを防げるかなど断言できるはずも無く、ダグラスの指摘に狼狽えるのだった。


「…………た、多分大丈夫だ! お前が食い殺される前に、私がまたお前に生命力を注ぎ込めば即死する事は防げるはず……」

「それって全く安心出来無いよね?」

「い、良いから試してみろ!」


 このまま危険物となった両手剣を放置する訳にもいかず、時間を掛けて立ち上がったダグラスは恐る恐る黒く染まった両手剣を手に取るのだった。


意外なところからダグラスの嫁が決まりました。

次回は“今回の事件の終結”を書いて行こうかと思います。

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