ep.9
ひとりになって考えるのは、あの日の夜のこと。あの時、助けなきゃという一心で身体が動いていた。そしたら鈴が心無しか大きくなって、両手に収まっていて。そういえば魔力共振に反応するんだっけ、と思い出したのは随分と後だった。
なんとなしに服の中に隠しているネックレスを服越しに握る。ネックレスがシャラン、と静かに音を奏でた気がした。
魔力共振とは、その名の通り魔力が感情などに反応して発現するという共振反応である。主に感情が特に豊かな幼い頃に起こることが多い。実際どういうものなのかというと、例えばルミナスさまは火の魔力を持っているため、怒りに震えている時など火の粉がパチパチと弾ける。私はダブル、水と土の魔力を持っているため、悲しい時は水蒸気が、怒る時は石の礫が、といったように発現する。といっても、成長につれて感情を律せるようになるため、魔力共振が起こるのは珍しくなっていく。
このネックレスになっている鈴も、魔力共振を利用した魔具であるらしい。願いを込めて魔力を通さないと、振れるほどの大きさにならないし、鳴らないのだ。よく出来た魔具だと思う。幼い頃は、この鈴でよく舞踊って母様に褒められたなぁと、なんだか懐かしくなる。
シャラン、シャラン、シャララン。
『かあさま、みてみて!』
『ええ、上手ね、ミーナ。本当に、上手……。』
そういえば母様はこの時、どちらかというと悲しそうな顔をしていたような……?今となっては事実は分からないけれど。
それにしても、とぶるりと震える。あの時は無我夢中であったが、思い返してみるとかなり危険なことをしたのではないかと思う。あれは確実に魔力暴走だったし、私はそれを舞でおさめて。つまり、私は魔力暴走を止められたということである。魔力暴走を止められるのは、巫女だけである。滅んだはずの、巫女だけ。
あの時は人の音にビックリして逃げたが、正しかったのではないかと思う。私が巫女かは分からないが、巫女だと断定されたら。そうしたら、私の未来は……。
ひとり、布団の中でずっと震え続けた。
***
最後に見たのは、美しい銀髪の女の顔。
『いい〜?キミは魔力枯渇で倒れた、そうだねぇ?』
『アカーチャ医療班長、私は……っ!』
『魔力枯渇だ、いいね。』
『……っはい、……。』
状況を整理してみると、アカーチャ医療班長の判断は正しいと思う。確かに医療班長としては間違いかもしれない、しかし彼女に迷惑がかかるくらいなら、清濁併せ呑むつもりだ。
なんとしても彼女を助けなければ。彼女の正体の予想が正しければ、きっと困っているだろうから。
男の瞳には、小さな炎が灯っていた。
本日はここまで。
次回は明日。




