第61話:王都の生活7
微量年少者に対する性的といえないこともない表現を含みます。
苦手な方はアイラ視点が終わったら読むのをやめても大丈夫な様に調整します。
たぶんします。
短い秋も半分過ぎた8月初頭、王都は歓喜に包まれていた。
今年の頭に迎えた養子とは違う、純正の、真実の新しい王族、それも皇太子と正室との間の姫君の誕生はメインの収穫直後という恵まれた時期もあって、盛大に祝われた。
そして8月24日、すでに命名されたが秘匿されていた姫の名を民に報告する式典にてその役割を件の養子に任されたことから、王室が養子に対しても並々ならぬ愛を持って接していることも十分に民に伝わった。
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(アイラ視点)
大きな歓声を受けながら城の正門側にせり出した高台を辞した。
今日はセシリアの名を王都の民に告示する式典が行われ、通常はサリィかハルベルトに任せるであろう名前の発表はボクに任された。
といっても、ボクの身長では高台の柵の上に顔が半分も出ないので、ヴェル様に抱きかかえられてボクの口から新たなプリンセスセシリアの名前を発表した。
内クラウディアはお祭りムードで、イシュタルト王家が民衆に好かれているのが良くわかる。
「これで、内クラウディアのほとんどの民にアイラちゃんの姿が認知されたはずですね。」
とサリィはボクの右手を握りながら顔を覗き込んでくる。
「はいサリィ姉様、ただボクが認知されるとアイリスも街を歩きにくくなりそうです」
何せ目付きと目の色以外大体同じデザインだし。
「もともと歩きにくいとは思いますよ?アイリスちゃんもとてもかわいらしいので、人目を引きます。アイラさんお疲れ様ですとても素敵でした。」
と、室内で見守っていた神楽がボクに寄り添ってきながらボクの左手を握る。
「ありがとう、噛んだりしてなかったかな?」
「はい、とってもかわいかったです!」
「ん?」
微妙に答えになっていないけれど、見苦しいことになっていなかったのであればいいや、とボクはあきらめた。
セシリアの名前はサリィとフローリアン様が決めた。
ただ愛称はボクが決めていいよ?といわれたので、シシィと呼ぶことにした。
ほかにセシルとかセシリィとかも候補だったみたいだけれど、サリィともエミィとも語感が近いのでシシィで良いということになった。
シシィはまだ首も据わっていないので、基本的にフローリアン様の部屋か同じ区画に設けた育児用の部屋で世話をされている。
まだ例の、寝耳に水な養子縁組やらの提示を受けた日に使った女児用の部屋は使っていない。
あそこは生後半年くらいから使う予定らしい。
それからさらに2週たち季節は冬を迎えつつあった。
多くのものが祝いの言葉を述べに訪れたが、会うことが許されたのは限られた人間のみだった。
そもそもこの頃の姫君にあって何を言おうというのか・・・。
そんなわけで今日もシシィはフローリアン様の部屋と、その近くの育児部屋とを行ったり来たりする生活。
ただ今日いつもと違うのは・・・
「シシィちゃー、アニスおねーちゃよぉ?」
今日はアニスをつれてきても良いとジークやフローリアン様に許可を得ていて
朝からお勉強もせずにサークラ、トーレス、アイリスもともにみんなで育児部屋にお邪魔している。
アニスは久々の赤ちゃんにテンションが上がっていて、すごくシシィにかまっているけれど、シシィは舌を唇の間から出したり入れたりして口を涎まみれにさせながらどこか宙を見ている。
アニスはそれでも楽しいようで、キャッキャとはしゃぎながら
「おねーちゃおねーちゃ、今シシィちゃ、おめめパチパチってしたよ?」
「あははは、変な声・・・」
と何度もシシィのベッドとボクたちのところとを往復してはシシィのかわいいところを報告してくれる。
部屋の中にはボクたち姉妹と、ボクについてくる神楽、エッラ、エイラ、それにサリィ、ハリー、リント、キャロル、エミィ、それからシシィより半年早く生まれたエステルとその母で乳母として選ばれたメイドのラシェルがいる。
本当はオルガリオもくるはずだったのだけれど少し遅れている様だ。
セラディアスが処罰されて以降オルガリオもその母であるオリヴィアも割りと頻繁にこちらの付き合いに顔を出している。
オリヴィアはセラディアスの件を気にした様子もなく、自業自得と割り切っていて、むしろセラディアスにつけられていた監視が消えたことで離宮暮らしが楽しくなったと笑っているそうだ。
オルガリオももっと小さい頃は頻繁に顔を見せにきてくれる祖父になついていたものの、来る度に調度品が減ったりするのに気づいてからは祖父のことを疎んでいたらしく、まだ8歳だというのに祖父のたどった末路に対して微塵も悲しみを感じさせなかった。
かと思えば、ボクや二人の妹との初対面のときには、すごく気合が入っていて特にアイリスのことを気に入って、以来花やリボンを何度かアイリスにプレゼントしてくれている。
今日もオルガリオにとっては貴重な、アイリスと出会えるチャンスであるのだから、遅れずにくると思っていたのだけれど・・・。
まぁ来てないものは仕方ない、体調でも崩したのだろう。
そう考えたボクたちは部屋に来てから1時間ほどのところでシシィがおっぱいタイムに入ったので、男3人は剣術の訓練に向かい。
ボクたち女衆はラシェルが乳母としての本領を果たすのを見届けてから部屋を出ることにした。
あまりかまって疲れさせてもいけないし、何より主役のシシィがねんねしてしまったから。
アニスはまだ構いたそうにしていたけれど、聞き分けの良い子に育っていてちゃんということを聞いてくれた。
代わりにというわけではないけれど今日は平日にもかかわらず、このまま王城でサリィやエミィたちと遊ぶ予定になっている。
「それじゃあラシェル、シシィのこと頼みますね?エステルもまたね?」
サリィがエステルに手を振るとエステルはキョトンとした目をしていたけれどそれはそれでかわいくて、ボクたちは後ろ髪を引かれる想いで部屋を出ようとしたのだけれど。
トントンと部屋の扉がノックされて、取次ぎのメイドが
「オルガリオ王子がお越しです」
と来客の名を告げた。
遅刻はしたものの、腹違いの妹には会いに来た様だ。
サリィが許可を出して扉が開かれるとそこには・・・
「オルガ遅かったですね、それにグレゴリオも着たのですね。」
サリィが意外そうにつぶやく、サリィの言うとおりそこにはオルガリオとグレゴリオ、それにグレゴリオのメイドのカリーナがいた。
「はい姉上様、遅れて申し訳ございません、せっかくセシリア姫様にお会いできる機会なのだからとグレゴリオ兄様をお誘いしてまいりました。」
そういってにっこりと笑うオルガリオに対して、グレゴリオは憮然とした表情でただペコリとサリィに頭を下げた。
サリィ以外を無視した様なグレゴリオの態度は頂けないが、腹違いの妹の存在に興味を持ったということなのだろうか?
招待状は送っていたがわざわざ来るだなんて思っていなかった。
「そう、それではせっかくなので一撫でしていってあげて、残念ながらシシィはもうおねむになってしまったけれど、いい夢が見られる様に」
そういってサリィが手で示すと、オルガリオはシシィの寝ている籠ベッドにまっすぐに向かうとすぐにほほをほころばせた。
「うわぁかわいい、これが、セシリア・・・姫様。」
ため息が聞こえてくるほどかわいさに感動したらしいオルガリオにサリィはやさしく告げる。
「腹違いとはいえオルガの妹です、もっと親しく呼んで良いのですよ?」
「いえ、セシリア姫様は正室のフローリアン様の姫、私とは立場が違います。」
やさしいサリィの言葉に対するオルガリオの声は実直なもので、さらに彼は続ける。
「・・・それに私はセラディアスの孫ですから・・。」
悲しそうにつぶやくオルガリオにボクたちは胸を痛めた。
「そんなこと・・・オルガには関係ないではないですか、親の罪を子が背負うことはないです、ましてあなたは孫なのでしょう?」
そういってオルガリオの持っているらしい罪悪感をなんとか緩めようとするサリィとの問答を聞いているのかどうか・・・グレゴリオはオルガリオの傍らを抜けセシリアの前に立つと少しの間ジロジロとシシィの寝顔を見ていたが、おもむろに手を上げるとその頬を張った。
「これ、余がわざわざ会いに来て居るのだ。おきぬか!」
パチ、と小さな音が響き、突然の衝撃に驚いたシシィが火をつけた様に泣き出した。
その場にいるもの全員がその所業とシシィの泣き声に驚いた。
「うぇぁ・・・あなたは何をやってるんですの!?」
「グレゴリオ、あなたには王子とか貴族とかいう以前に身につけるべきものがある様です。」
シシィの近くに居させたくない、そう思ったボクはシシィとグレゴリオとの間に割って入る。
「な!なにをいうか・・・養子に入っただけの貴様に王族のなんたるかなぞは・・・・」
「わかりますよ!あなたよりは!!あなたには泣いているシシィを見て痛む心はないんですか!」
言い放つボクをにらむ様にして、グレゴリオはすさまじいことを言い始める。
「そもそも、余は軽くはたいただけだ。その者が余を貶めるために派手にないているのに違いないのだ!!今の程度ではカリーナは泣かぬ!!」
そのときだ。
ボクの前にアニスが割って入ってくる。
直感的にヤバいと思った。
「アニス、待っ!」
しかしボクが加速するのすら間に合わない、恐ろしい判断力。
ペチ、と音がしてグレゴリオは床に倒れこんだ。
「何だこれは!痛いじゃないか!何をするこのチビが!!余は王子だぞ!!」
3歳ちょっとのアニスの、それもずっと背の高いグレゴリオを狙ったビンタなんてたいした威力はないはずなのに、グレゴリオは大げさに痛がった。
「痛い?3歳のアニスのビンタを9歳のあなたが?だったらシシィにはどれほどの痛さだったか・・・」
もしかするとアイリスよりもはっきりとした喋り、これはあのアニスだ。
前世で何度かだけ見られた年不相応にしっかりとしたアニス。
アニスは一度だけキッとにらみ付けるともうグレゴリオに対して興味は失ったという様に振り向くとまだ泣いていてラシェルにあやされているシシィの横につくと一緒になってあやし始めた。
グレゴリオは自分が王子であると叫んだのに無視されたことで少し呆然としていたが、サリィとエミィがそれを許さなかった。
「グレゴリオ、あなたはこれだけの人の前で、まだあまりにも幼いシシィに手を上げました。これを許すことは断じてできません」
「なにを言おうと私たちはあなたがちいさなシシィに手を上げたことはここに居る全員が見ています。」
呆然としているグレゴリオをカリーナが立ち上がらせカリーナが謝罪し、カリーナが肩を貸して立ち去っていった。
なんのことはない、グレゴリオは叩かれたことすらなかったということだ。
それがわかると、グレゴリオもかわいそうな子だと思える。
そしてそれよりもアニスだ。
アニスは今絶対に3歳が話さない様なことを口走った。
以前にアニスを鑑定したとき彼女は年齢相応のステータスであったが、今の彼女はどうだろうか・・・?
そう思ってアニスのステータスを鑑定してみるけれど、幼女として特におかしな数値をしていることもなく、魔力の値が200台とかなり高いけれど、これはボクやアイリスにも共通することなのでおそらくは遺伝なのだろう。
うちの家族の女は魔力が高いのだ。
「シシィちゃーいたいいたいねーよちよち」
と舌足らずにシシィを労わっているアニスはもう普通の幼女にしかみえないけれど、やはりこのアニスはただの幼女ではないのかもしれないと、心に留めておくことにした。
グレゴリオの処罰は行われなかった。
まだ1桁とはいえ理由なくシシィに手を上げたことは重罪で、本来なら処罰するべきなのだろうが、それを祖父であるジークの名の下に行うのは憚られた。
グレゴリオを連れてきたことを気に病むオルガリオがこれ以上思いつめない様にしたかったというのも大きな理由である。
またアニスがグレゴリオを叩いたのも事実なので、こちらも本来は重罪であるが、グレゴリオの非を証言する者が多くある上、グレゴリオ側が取り沙汰しないのであれば3歳の幼女に厳罰を望むものなど居るはずもなく 結局はそのまま放置された。
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(グレゴリオ視点)
8月、父上とあのフローリアンという正室との間に生まれたらしい余の腹違いの妹とやらが生まれたので挨拶にくる様にという知らせが余と母上の住む離宮に届いた。
署名は余の父上であるヴェルガ皇太子と、その正室のフローリアンであった。
母上はフローリアンの署名があるので挨拶になど行く必要がないといって、その日は余を離宮から出してくれなかった。
母上が言うには、フローリアンはたまたま先に父上の目に留まったために正室の座を手に入れた運だけの女で、正室にふさわしくないという。
母上が余に嘘を教えるはずがないので、その通りなのだろう。
余の教育係としてつけられているブリミールも日頃からいっている、余こそ血筋も才能も真の王の器であり、サーリアなどという女に継承権で負けているハルベルト、リントなどというものを兄と敬う必要もないと・・・
母上は王国に名高い子爵家のひとつであるイース家の出身で幼い頃から将来王族に嫁ぐべく教育を受けてきたという、それがほんの数年の差でフローリアンが父上に見初められたため、その後塵を拝することになり悔しい思いをしている、だがそれも、真に王にふさわしい余が陛下や父上に見初められ父上の次の王になることができれば母上もフローリアンを見返すことができるのだとブリミールがいつも余に教えるのだ。
「真の王子たるグレゴリオ様が他家や他の王子からのやっかみを受けずに国王の座に着くには、王室の娘を娶ればよいとそうすれば他のものに恨まれることなく国王となれる、血は濃いほど良いのだから」
ブリミールは、母上が実家に帰っている時期に余の勉学のためにやってくる母の甥に当たるもので余の11年上のガルガンチュア子爵家の男だ。
母上の姉の長男なので血縁的には従兄に当たるが、余は王室に含まれるので、母上から見て甥ではあるが余から見れば臣下となる。
このブリミールも常々言うのだ。
「グレゴリオ様こそ、王を継ぐにふさわしいお方だ。」
「グレゴリオ様、王者たるものは何者にも媚びず、逆らう者を許してはなりません」
「グレゴリオ様の思い通りにならないものなどあってはならないのです」
ある時余につけられた教師の一人に、なぜ母上のほうが優れているのに、フローリアンが父上の正室なのかと尋ねたら、フローリアンのことを母上よりも上だと評し、ちゃんとフローリアン様とお呼びするべきだと、語ったものがいたそのことを母上には聞けずブリミールに尋ねると
「それはたまたま先に正室になることができたから正室であり、身分が正室であるがゆえに側室より優れているといわざるを得ないのだ。」
と正しいことを教えてくれた。
「誤解を与える様なものいいの教師は要らないですね、新しい教師を選びましょう」
そういってブリミールが言うと次の週から教師が変わった。
やはりブリミールのいったことが正しかったのだろう。
今年の頭に父上が養子を取った。
それも余の2年度下の娘をだ。
これを聞いた時母上は喜んでいた。
余の二つ下ということは、父上たちはこれを余の嫁として用意したに違いない、余に嫁がせるのにはサーリア姫は年上な上に態度が大きい、エミィは筋肉質な男が好きな上側室の子のため、余に対して失礼になるから余に与えるために正室との間に養子を取ったのだ。と
ようやく余のことを真にふさわしい王子だと認めたに違いないと
しかし、この娘への挨拶のための場への招待状には、父上とフローリアンの連署がされていたため、母上は「フローリアンごとき女に上から目線で嫁を紹介されるのは御免蒙るのじゃ、向こうから頭をさげて紹介してくるまで会わぬ、そなたもあってはならぬぞ?」
と、余にも会うことを禁じた。
何度か遠目にその顔を見る機会があったが、金髪の小柄な娘で、とても可愛らしい容姿をしていた。
陛下が天才だと褒め、父上も溺愛している様だった。
余は早く将来の嫁に会いたかったが、母上の命令があるので無理やりあったりはしなかった。
夏のある日、9歳になったころ少し暑かったので剣術の稽古を取り止めて行水をしているとブリミールが
「仮にあの姫を嫁にとったとして、王である前に男としてあの嫁をつなぎ止めねばなりません、そのためには女を満足させる必要があります、殿下は9歳、手ほどきには少しばかり早いですが、カリーナは役目を果たすには適任でしょう、この年齢ならば後腐れもないですし」
といって、カリーナに服を脱がせた。
カリーナは余の乳姉に当たる者で、当初は離宮には居なかったが、乳母が行方不明になった際に、代わりにと離宮にやってきた。
といっても余より2ヶ月ほど生まれが早いだけで、お互いまだ1歳の頃だったため良く覚えていないが、時々口うるさいこともあるが基本的に余の言うことを聞くし、業務については有能だ。
そのカリーナの裸を見るのははじめてのことであったが、余はいたく興奮した。
特に服を脱がせたブリミールに対して
「そんな、お役目は果たすと約束しましたが、ブリミール様が一緒にいらっしゃるだなんて伺っておりません!」
と涙目に顔を赤くしているのをみて、これまでにないほど気分が高揚した。
「カリーナ抗うな!隠すな!ブリミール余はどうすればよい?」
カリーナは顔を赤くしながらも余の命を良く聞き、ブリミールは女の体をどの様に扱えば良いのかを実践によって余に示した。
ブリミールは最後に体のつなぎ方を教えると、浴室を去り、余はカリーナと体をつないだ。
痛がるカリーナに興奮する様になり、口答えをするカリーナに折檻を加える様になった。
それから週に2度ほどカリーナと関係を持ち、こなれてきたところでブリミールに言われ離宮のメイドのうち年の近いものにも大方手をつける様になった。
ブリミールが「女人というものは気持ちよくなることができればそれで懐くが、それぞれ体の具合が異なるのでより多くの者を扱える様になっておくことで、より確実に嫁を喜ばせ懐かせることができるだろうからたくさん覚えるべきだ。」といい
「それは余が女に媚びるということではないのか?」
とたずねたところブリミールは
「これは王の資質のひとつであり、女を悦ばせることは男の甲斐性の問題であり、媚びるということにはならない現に陛下も若い頃から多くの女性と関係を持った。」と言うし、余も女人とつながることがとても良いことだと理解できたので積極的にこの教育を受ける様になった。
そして、60日も経つ頃には女の扱いにも慣れてきた。
この頃になると、いつまで経っても嫁が余のところに挨拶に来ないことが余のことを苛立たせる様になった。
そしてある晩母上が言ったのだ。
「今日アイラに会ってきた。あれはどうもフローリアンの横槍にあって、フローリアンの実家に嫁ぐ様に言われた様だ。わざわざ養子にとって王族にしてからあの女の実家に嫁がせるなどありえぬ、幼い故言いなりになっているが、そなたの人となりを知ればそなたのことを気に入るに違いない、そなたもあの娘気に入って居るのじゃろう?あってモノにしてくるのじゃ!」
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翌日、母に言われたとおりまずは顔を合わせてみようと思いアイラが日中居ることが多いという研究室なる場所を訪れた。
ここは人払いされているらしく見張りも少し離れた位置にしか配置されていない、またイシュタルトの王子である余を止められる見張りなど居るはずもないので一人二人叱責することにはなったが難なく研究室の前まで着いた。
カリーナに扉を叩かせ、体を半分覗かせた身長の割に乳房の大きな青っぽい髪のメイドにアイラに会いに来たと告げるとそのメイドはあろうことか余の入室を拒んだのだ。
「申し訳ございません、向かいの応接室で対応いたしますので今しばらくお待ちいただけないでしょうか?」
「なぜか!?余が会ってやるといって居るのだ。すぐに扉を開けるべきだろう!!」
見た目は悪くないが教育のなってないメイドだ。
乳房にばかり栄養が言っていると見える。
「申し訳ありませんがこちらの部屋は入室に制限がございます。一旦廊下のほうまでお下がりいただきお待ちいただきたいと・・・」
なおも拒むので
「なぜか!?余は王子であるぞ!!カリーナ、こじ開けよ!」
とカリーナに命じたところ
「いえ王子、ですが、ここはアイラ姫殿下の研究室ですので、こちらのメイドが言うとおり勝手に押し入っては、皇太子殿下どころか国王陛下直々の叱責を受けるかと思います。」
そういって口答えしたのだ。
これは後で折檻しなければと思いつつメイドに命じる。
「余はこの国の王子、従わねば一族郎党の首が飛ぶぞ?」
「私は王子殿下ではなくアイラ姫殿下のメイドにございます、アイラ姫殿下から開扉の取次ぎを任された以上正当な理由なしに規則を曲げることはできません」
と生意気にも三度断った。
すると扉の向こうで動きがあったらしくアイラがこちらに向かってきた。
メイドに代わりアイラが扉の向こうにたった。
「グレゴリオお兄様申し訳ありませんが、メイドの言うとおり、こちらのお部屋ではお兄様のお相手をすることができませんので向かいの応接室にてお待ちいただけないでしょうか?」
第一声はつれないもの、しかし余にはわかるこれはメイドを守るための言葉だ。
メイドが自分自身の判断で余を追い返そうとしたのをすぐに入室許可をだしてはメイドの非を攻めなければならないと思ったのだろう、余でもカリーナを守るためにそうする。
「どうして王子である余に遠慮しなければならない、中に入れよ」
そういって王子相手なのだから機密など関係ないだろうと伝えてやればメイドも自身の過ちに気付き、またアイラもメイドを罰する必要がないので余を中に入れるだろうと思ったが、アイラの言葉は変わらなかった。
「グレゴリオお兄様、こちらの部屋は王族でも陛下やヴェルガお養父様くらいしか入室をできない様になっております。たとえサリィ姉様やハリー兄様相手でも事前の許可なしには入室できないのです」
その目線は強い、おそらく一度メイドが断った以上曲げればメイドが罰せられると思っているのだろう、しかし余とてこのまま引き下がっては沽券にかかわる
「ええい、くどい、中に入れよ、余はそなたの兄ぞ?」
「今申し上げた通り、ハリー兄様相手でもお断りするのですグレゴリオお兄様を入室させるわけには参りません」
余よりも頭一つ小さい養妹は強い意志を持った目で余に抗った。
「グレゴリオお兄様、貴方がここに無理やり押し入れば、グリゼルダ殿とカリーナは処刑されます。またここにある物の情報を少しでも漏らせばお兄様でも毒杯を頂くことになります!」
とアイラがにらみつけながら余の死を連想させる言葉を吐いたことで少しうろたえてしまった。
「な、なんだと!?そんなはずはない、余は王子なのだぞ!!」
王子である余が毒杯を賜ることなど、謀反でも起こさぬ限りないはずだ。
扉から手を離してしまい先ほどまでよりも扉の開いている部分が小さくなる。
「グレゴリオお兄様、それが国家機密というものです。それにお兄様は所詮側室の生んだ御子であり王室における重要度はさほど高くありません、それこそ養子に入ったに過ぎないボクに許される本殿暮らしが許されない程度に・・・。あぁそもそもこの区画ってグレゴリオお兄様は入って大丈夫でしたかしら?」
挑発的な物言いに余は怒りよりは、この強い瞳を屈服させたい、カリーナの様に痛めつけて痛みと快楽の狭間で飼い殺しにしたいという欲望を感じた。
それはすごくイイことだと思えて余は扉の間から見えているアイラの顔面めがけて振り下ろすべく拳を固めたが、しかしそれをすぐにカリーナにつかまれていた。
「いけません王子、それをやられては本当に処罰されます。相手は陛下のご寵愛の姫君です。それこそ王子よりも・・・!」
カリーナは良いメイドだが少し口うるさいのが珠に瑕だ。
「うるさい!」
つかまれたその拳でカリーナの頬を殴り、もう一度半開きの扉の中にいるアイラに繰り出そうと振り上げたが、ほほを腫らして倒れこむカリーナを見ていると欲望がむくむくと頭をもたげ今すぐカリーナを折檻してかわいがりたいと思った。
それをするなら早いほうがいい、カリーナのかわいい顔に傷を残すと今後楽しめなくなるので治癒術士の手配も必要だ。
「クソ!余を無視したこと忘れんからな!覚えておけよ!」
と、アイラにいつかこの分の折檻は加えるからと暗に言い残してその場を去った。
翌日、フローリアンとの間に異母妹が生まれたという知らせが届いた。
やはり母上はフローリアンの連署だったので挨拶に行く必要はないといっていたが、余は少し妹というものが気になった。
というのも、アイラという妹は余の言うことを聞かなかった初めての人間であったので、興味をひかれたのだ。
妹というのはそういうものなのかもしれないと
といっても最初の招きを無視したため、こちらから妹に合わせてほしいといって尋ねるのもなんとなく悔しいのと、カリーナがようやくつながることになれてきたのか、反応が良くなってきていたのでそちらが楽しくなってしまって、しばらく離宮にこもっていた。
その日は、よく晴れた日だった。
朝から異母弟のオルガリオが余をたずねてきていた。
曰く・・・
「小さな妹というのはそれはもう可愛らしいものです。あの様に小さな時期はあっという間に過ぎてしまうのですから、一度グレゴリオお兄様もご覧になって損はないかと思います」
と誘いに来たのだ。
「側室腹の弟など付き合うだけ損じゃ」
と母は言ったが
「仮にも弟の頼みだ。ワガママを聞いてやるのも甲斐性でしょう?」
と母に尋ね返すと渋々といった感じに同行を許可してもらえた。
通常余は、アイラの言っていた通り本殿に入ることはできないがこの日は朝から妹との対面のために訪れるオルガリオの許可も出ていた様で余もやすやすと本殿のフローリアンの居室まで入ることができた。
生まれてからまだ5回ほどしか入ったことのない区画で少し緊張しながらも、異母弟の手前それと悟られない様に堂々とカリーナを引き連れて歩いた。
部屋に着くとすでにアイラやサーリアが居り、他にも数名女ばかりが居たので年長者のサーリアにだけ頭を下げた。
やたらと年長者面をするハルベルトが居ないことに安堵しつつ余は部屋の中を見渡して、籠の上の小さな者を見つけた。
オルガリオは籠を前になにやらサーリアたちと会話していたが、余の視線はすでにその籠の上の赤子に吸い寄せられていた。
赤子はなにやら満足げに眠っていたが、そのふっくらとした質感は触ってみたいと思わせたし、もっと動いているところを見たいと思った。
そもそも余がわざわざ挨拶に来てやったというのに、寝ているのは失礼というものだ。
腹違いとはいえ兄として、年長者への礼儀というものを教えてやらねばならん
「これ、余がわざわざ会いに来て居るのだ。おきぬか!」
軽く、普段からカリーナに言うことを聞かせるためにやっている程度に頬を張った。
パチ、と小さな音が響く。
すると同時にその小さな者は激しい声を上げた。
「ふぎゃぁぁぁぁぁ、あぁぁ、あぁぁぁぁぁぁぁ」
その場にいたもの全員が余のことを非難がましい目で見た。
しかし余はそんな痛くなる様な叩き方はしていない、カリーナならこれでむしろ気持ちよがるくらいの・・・
「うぇぁ・・・あなたは何をやってるんですの!?」
「グレゴリオ、あなたには王子とか貴族とかいう以前に身につけるべきものがある様です。」
生意気にもエミリーが余をなじり、アイラが余と泣いている妹との間に割って立つ。
妹たちが余が悪いと3人がかりで責め立てる。
しかも一人は養子の分際で!!
「な!なにをいうか・・・養子に入っただけの貴様に王族のなんたるかなぞは・・・・」
「わかりますよ!あなたよりは!!あなたには泣いているシシィを見て痛む心はないんですか!」
泣いているシシィ?この妹のことか?
余はこんなに泣くほど叩いていない!つまりこれは余を悪者にするための罠だ!
「そもそも、余は軽くはたいただけだ。その者が余を貶めるために派手にないているのに違いないのだ!!今の程度ではカリーナは泣かぬ!!」
そうだカリーナならこの程度では足りない、もっともっと強く叩かなくてはよがるばかりなのだ。
それでは罰にならぬ!
ならばこの妹たちにも罰を与えてやらねばと余は右手に力を込めて
右の頬に小さな痛みがあった。
遅れてペチと音が聞こえる。
小さな音はなぜか頭の中で何回も響き、右の頬が焼ける様に痛かった。
気がつくと余は床に倒れこんでいた。




